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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第六章 最終決戦

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決着1 vsサバイバル同好会

「ハイ、ハイ、ハイ! せぇーい!」


 白い物干し竿を操り、舞うような体さばきを見せる、ムラサメ小隊・副隊長、グリーンベレーのニワカ軍曹。


「があああああっ、ごああっ!」


 対するは(サイ)のような巨体を揺すぶりながら、角材を力任せに振り回す、サバイバル同好会のサミダレ大佐。


 満月を背景に、牛若丸と弁慶のような対照的な戦いぶりを見せる2人。

 サミダレ部隊に数で劣っていたムラサメ小隊だったが、奮戦の結果、隊員たち同士はほぼ相討ちとなり、2隊の勝負の行方はニワカとサミダレに委ねられている。


「もらった!」


 小回りの効かない材木の隙間を縫って、サミダレの首元に棍を突き入れるニワカ。

 だが、ぶにょんとした手応えとともに弾かれ、逆にスキを見せてしまう。


「ごばぁ!」


 そこへ、叩きつけられる15cm角の木材。

 かろうじて竿で防御したものの、吹き飛ばされたニワカは、思いっきり城壁に背中を打ち付ける。


「ぐうっ……!」

「ぐっはっはっ、普通なら喉は人体の急所だがな。だが、ワシの脂肪の鎧までは突き通せなかったようだな」


 腹をさすって高らかに笑いながら、ゆっくりと近づいてくる、サミダレ大佐。


「マジ、大佐だけあって、(ゴツ)いっすね……」

「当然だ。ワシは新兵の頃から戦功を積み重ねて来た、言わば叩き上げ。貴様のようにいきなり軍曹からスタートした、モヤシのような輩とは訳が違う」


 勝ち誇ったサミダレは、さらに言葉を続ける。


「ムラサメにしてもそうだ。特殊技能だけで士官を名乗りおって……。実力も無いくせに、分不相応な地位にある輩を、ワシは叩き潰す事にしているのだ」

「へっ、とんだパワハラ豚野郎っすね。俺は軍医で軍曹、隊長も実績で少尉になってんすから、文句言われる筋合いはないっすよ……」

「口だけは達者な奴だ。ワシはそういう輩も許せんのだ!」


 角材を高々と振りかざし、ニワカの頭をスイカのように叩き潰そうとするサミダレ。

 それをかわそうとするニワカだが。


「くそっ、身体が、思うように動かない……」


(困った時には、手元のボタンを押せ!)


 クラウドの言葉を思い出し、ワラをも掴む思いで、竿の手元のスイッチを押す。

 すると。


 ビュンッ! ドカッ!


 突如、物干し竿が伸長し、射線上にいたサミダレの体を突き飛ばす!


「ぐぼっ!」


 予想外の攻撃に、尻餅をつくサミダレ。

 ニワカはもう一度、手元のボタンを押してみると、シュルシュルと棒は元の長さに戻る。


「こ……、これは如意棒じゃないかっ!?」


 一瞬で物干し竿の特性を把握したニワカは、最後の力を振り絞り、立ち上がってダッシュ。

 竿を伸ばして棒高跳びの要領で高々と空を飛ぶ!

 その姿は、獲物を狙う(イーグル)の羽ばたき。

 そして、空中で1回転すると。


「のびろ、如意棒!」


 再度物干し竿を伸ばし、回転エネルギーと遠心力を加えた一撃を、サミダレの脳天に叩き込む(ストライク)


 ゴバキャッ!


「ぐおおおおおっーーーっ!」

「さすがに、頭の天辺(てっぺん)に脂肪は付いてなかったみたいっすね」


 ドサッと仰向けに倒れるサミダレ大佐を見つつ、着地するニワカ。

 ようやく一息つき、その場にへたり込む。

 だが。


「ばああああああああああっ!!」


 魔獣の叫びを上げて、サミダレは立ち上がり、再び角材を頭上に(かか)げる。


「マジ……? 俺、もう無理っすよ……」


 しかし、サミダレはその格好のまま固まり、微動だにしなくなる。

 どうやら、立ったまま気絶したようだった。


「びっくりしたー……。弁慶の立往生って奴っすか。敵ながら、アッパレっした!」


 ニワカは軽い口調で敬礼すると。


「あー、しんどー……」


 どてーんと、その場でひっくり返り、月明かりで青白く輝く城を見上げる。


「さーて、あちらの戦況は、どうなってるんすかねえ……」



 *



 はぁ……、はぁ……、と肩で息をする迷彩服の男、ムラサメ小隊・隊長のムラサメ。

 対して、全く疲れた様子を見せない、ドイツ軍服のアイパッチの男、サバイバル同好会・会長のバイウ元帥。


「くそったれがぁ……、まるで手応えがねぇ……」

「当たり前だ。貴様に格闘術を叩き込んだのは私だ。貴様の挙動は手に取るように分かる」


 燭台の炎が石壁と2人の陰影を浮かび上がらせる。

 バイウ元帥に肉弾戦で挑むムラサメだったが、純粋な格闘技術では足元にも及ばない。

 その上。


「くそがぁっ!」

「ふっ!」


 バイウ元帥が、ムラサメの蹴りを片手で受け止めた瞬間。

 体内のエネルギーを吸収されるような感覚が走る。


「またかっ!?」

「はっ!」


 バイウ元帥が軽く手をひねるだけで、まるでピンポン球のように、ムラサメの身体が軽くふっ飛ぶ。


「ちいっ!」


 ムラサメは、バク転の要領で態勢を整えると、再びバイウ元帥に向かうが、ガクッと石畳の床に膝を折る。


「触れた者から力を奪い取る能力、『深紅の死神プルプルンゼンゼンマン』。忘れた訳でもあるまい」

「おめぇと戦りあうのは久しぶりだが、何度聞いても変な名前だぜぇ……」


 軽口を叩きながら、立ち上がるムラサメ。


「接近戦で私に勝つことはできない。そして……」

「おらおらぁー!」


 ムラサメは連続で爆弾を投擲するが。


「中距離戦でも、私には(かな)わない……」


 バイウ元帥は、爆発のタイミングを読み切り、爆風をかわしながらムラサメに接近。

 ムラサメの右腕を取ると。


 ゴグッ!


「ぐあっ!」

「『タイガーシャーク』と言えども、牙を抜かれては噛みつく事もできまい」


 ムラサメは苦し紛れに左腕で裏拳を繰り出すが、そこにバイウ元帥の姿は無い。

 肩の間接を外され、だらんと右腕が垂れ下がるムラサメ。

 だが。


「があっ!」


 ムラサメは左腕で右肩を押し込み、自力で無理やり脱臼を治す。


「はぁ……、はぁ……、やっぱ、おめぇは段違い(ダンチ)で強えぇな」

「当然だ。サバイバル同好会はその辺の軟弱な部活動などとは、比べ物にならない訓練を積ませているが、私はそれを遥かに超える鍛練をしているからな」

「じゃあ、なぜ、その力を正しい事に使わねぇ!」


 ムラサメは、今までに無い怒気を交じらせながら、バイウ元帥を睨み付ける。


「俺様たちは、純粋にサバイバルゲームを楽しむため、サバゲの市民権を勝ち取る為に戦ってたんじゃなかったのかよ! なぜ、カリスマ教なんかのクソ野郎共の下っ端に成り下がっちまったんだ!」

「貴様も屈辱を味わって来たはずだ。サバイバルゲーマーというだけでキャンプ場から出禁を食らったり、周囲から非難の目で見られた事もあった……」


 対する、バイウ元帥は無表情のまま。


「だが、カリスマ教の目的を達すれば、この島を与えてくれるそうだ。ようやく我々が渇望していた、自由を手に入れる事ができる」

「『自由とは与えられる物じゃない、勝ち取る物だ』って、かつて、あんたが言ってたんじゃなかったか? 『竜騎将(ドラグーン)』と謳われた、あの頃のあんたはどこへ行っちまったんだよっ!?」

「何とでも言え、それでもこの飢えを、この渇きを癒せるのなら、卑怯者の謗りは甘んじて受ける」


 バイウ元帥の片眼(モノアイ)は赤い妖しい輝きを放ち、憎しみで染め上げられた心を深く投影しているかのように見える。

 だが、ムラサメはその奥底に眠る、戦士にしか分からない、哀しい光を見て取った。


「……ははっ、おかしいと思ったぜ。そんな数週間で人格まで変わる(わき)ゃねぇよな……」


 ムラサメは、バイウ元帥に向かって左の拳を突き出すと。


「やっぱ、おめぇはカリスマ教の奴等に洗脳されてやがるみてぇだな! なら、とっとと俺様がおめぇの目を覚ましてやらぁ!」


 ムラサメは爆弾に火を点けると、それを足で踏み潰す。


「貴様……、何をやっている?」

「痛てぇから、あまりやりたか無ぇけどな……っと!」


 ドンッ! と、爆弾が炸裂し、衝撃を足で受けたムラサメは、一瞬でバイウ元帥に迫る。


 ドガカッ!


「ぐわあああああーーーっ!」


 ムラサメの頭突き(ヘッドバッド)が顔面に直撃し、バイウ元帥は派手にぶっ飛んだ。


「俺様のとっておき、『ハンマーヘッド』だ! これでちったぁ目が覚めたか? ん? それとも、逆かぁ?」


 バタリと倒れ伏したバイウ元帥は、ピクリともしない。


「痛ててててっ。ははっ、ちょっと無茶をし過ぎちまったなぁ」


 勝利を確信したムラサメは、片足でケンケンをしながら、バイウ元帥に背を向ける。

 ところが。


 ヴンッ!


 一瞬でムラサメの背後を取ったバイウ元帥は、ムラサメの左腕を掴むと、エネルギーを吸収しながら、アームロックを()める。


 ガボキッ!


「ぐわあああああっ!」


 左肘を折られる音が、ムラサメの内耳に響く。

 ムラサメは無理矢理身体を振りほどいたが、さらに追撃の回し蹴りを受ける。

 なす術もなく蹴り飛ばされるムラサメ。

 転がったまま、上を見上げると、赤い目を漲らせたバイウ元帥が、宙から鉤爪(かぎづめ)を立ててムラサメを襲う!


「ぐっ……!」


 とっさに、身体を捻ってかわしたが、バイウ元帥が地面に手を叩きつけた瞬間、爆発したような衝撃と共に、石の床板が破砕する。

 それは、まさに竜の爪。

 ムラサメはよろよろと立ち上がると、バイウ元帥と対峙する。


「リミッターが、壊れてやがる……。どうやら人体実験まで施されてるみてぇだな……」


 バイウ元帥は物も言わず、赤い眼を輝かせながら、ゆっくりと近づいてくる。

 そのさまは、北欧神話に伝えられる狂戦士(バーサーカー)もかくやと思わせる。


「しくったぜぇ……。両腕もイカれ、体力もゴッソリ持ってかれちまった。どうやら、俺様もここまでのようだな……」


 両腕を垂らしながら、彼らしくない諦めとも取れるセリフを吐き出すムラサメ。

 だが、次の瞬間、不敵な笑みを浮かべながら。


「打つ手は、これしか残って無ぇからなぁ」


 ムラサメが上着をはだけると、その裏地と腹周りには無数のダイナマイトが仕込まれている。

 ムラサメはかろうじて動く右腕で、導火線に火を点ける。

 無言だが、何か物を言いたげなバイウ元帥に向かって。


「狂ってるのかって? そりゃ、おめぇの方だろ? ま、俺様も似た様な戦闘狂(もん)だがなぁ……」


 特攻をかけるムラサメ。


「来世で会おうぜ、くたばりやがりゃーっ!!」


 爆音を轟かせ、戦士達を灼熱の炎が包み込んだ。

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