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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第六章 最終決戦

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最上階で待つ者

「はぁ、はぁ……」

「クラウド、大丈夫か?」


 クラウドたちは、最上階に続く階段を登っている。

 クラウドを先頭に、ブラザーズはその後をついていくが、クラウドは脇腹を押さえながら、足を引きずるように歩いている。


「へへっ、どうやら痛み止めが切れちまったみてーだ……」

「そりゃ、あんだけ飛んだり跳ねたり、無茶してりゃあなー」

「なんなら、肩貸そうか?」


 クラウドは後ろを振り向くと、ブラザーズの好意にふるふる首を振り。


「いらね。お前らに貸しを作ったら、後から何を請求されるんだか」

「そんだけ減らず口を叩けりゃ充分だなー」

「なら、キリキリ歩けい」


 ブラザーズは、後ろからクラウドの尻に蹴りを入れる。


「だからって、そんな邪険にしねーでも……」


 そうして、なんとか塔の中の螺旋階段を登り切ったクラウドたち。


「ここが最上階か……」


 上を見上げるとステンドグラスの天井が、月の光を透過し、足元に色とりどりの夢幻の世界を繰り広げる。

 おそらく最後の関門になるであろう、部屋の鉄扉を3人は静かに開けた。


「趣味悪りー……」


 天井のシャンデリアで照らされた部屋、横には黄金の像が飾られ、足元に広がる赤絨毯の伸びる先、一段高くなった場所の玉座に黄フードの男がいた。


「おい、お前がカリスマ教の親玉だな!」

「インディ娘ちゃんと雪姫ちゃんを返せー!」

『ふん、やっと来たか。待ちくたびれたぜ……』


 聞き覚えのある不遜な声に、クラウドたちは顔を見合わせる。


「おい、お前……?」


 男は玉座から立ち上がり、無造作にフードを捲り上げると、白金(プラチナ)の髪が零れ落ちた。


「うーわ、マジかー!?」

「氷室! 何で、お前が!?」

「この格好を見て、理解できないか。脳みそ持ってるのか?」

「何だと……。まさか、お前がカリスマ教の黒幕だったのか……?」


 雹河は唇の端を僅かに吊り上げ、クラウドはそれを肯定の意味と取る。


「上沢高校を消滅させようとしてるのも、晴海をさらったのも、全てお前の仕業なのか!?」

「だとしたらどうする?」

「否定はしねえんだな……」


 クラウドは雹河を見据え、拳を握る。


「許せねえ……! オレがぶっ飛ばしてやる!」

「ならやってみろよ。女1人守れないクズにできるもんならな」


 雹河はフードを脱ぎ捨て、元の黒コート姿になると、右手の親指で鉄扉を指差す。


「晴海と白鳥財閥の令嬢は、そこの扉の先にいる。ボクを倒すことが出来たら、解放してやるよ。あと……」


 雹河の姿がかき消え、こっそり扉に向かおうとしていたブラザーズの前に現れる。


「抜け駆けは禁止だ」

「やってやるぜ……、負けて吠え面かくなよっ!」


 クラウドと雹河はお互いダッシュで問合いを詰める。

 雹河は顔面にストレートを撃つ。クラウドは避けずにカウンターパンチを放つ。

 クロスカウンター!!

 クラウドは歯を食いしばり、拳を頬で受ける。

 そのまま、クラウドと雹河は防御を無視してお互いに殴り合う。


「てめえ……。なぜ、いつもの様に避けない?」

「避ける暇があったら、お前の面にブチ込んでやりてーからだよっ!」


 本当は違う。

 真っ正面から殴り合うのは今までの自分にケリを付けたいから。

 オレはあの時、晴海の気持ちから逃げ、晴海を傷つけてしまった。

 もう、オレは二度と逃げたりしない。

 こいつに真っ向勝負で勝ち、オレはそれを証明する!


 クラウドは、雹河の顎に向けアッパーを放つ。が、雹河はそれを見切ってかわす。

 代わりに雹河の掌底が、クラウドの右脇腹を狙う。

 とっさに肘でガードするクラウド。

 素早く態勢を立て直し、再度攻撃に移ろうとする。だが。


「ぐっ!」


 確かに防御したはずが、衝撃が体内を駆け巡り、膝をつく。


「中国拳法の発勁のようなものだ。ガードを貫いて内部にダメージを与える事が出来る。中学の時と一緒にするなと言わなかったか?」


 こいつ、前より強くなってる……。


 脇腹に負った傷の痛みがぶり返し、顔をしかめるクラウド。


「くだらねえ……」


 それを見て、雹河は攻撃の構えを解いた。


「やめだ……、降参しろ、三雲」

「あ? どういうつもりだ?」

「手負いのてめえに勝ち目は無い。後はなぶり殺しになるだけだ。心配するな、晴海はボクがたっぷりと可愛がってやる。ありがたく思え」

「っだと……! ナメんじゃねえーっ!!」


 リュックから取り出したメガ正宗で、自分の脇腹を殴るクラウド。


「!?」

「っつ、かあああああーーーーーっ! 気合い入ったーっ!」


 唖然とする雹河に、クラウドは中華ナベを突き付け。


「ケガなんて痛くもなんともねー! 絶対にお前を倒して晴海を取り戻す! 殺せるもんなら殺してみやがれ!」


 クラウドの闘志の炎に当てられ、雹河は氷の男に相応しくない笑いを見せる。


「バカが……、死ぬ覚悟ができた様だな」


 パキッと蒼いグローブの左手を鳴らす。


「なら、てめえの望み通り、手加減抜きで殺ってやるぜ」


 黒いコートの裾を翻し、雹河の影が一瞬でクラウドの背後に回る。


「そんなの止まって見えるぜ!」


 クラウドはすでに防御態勢を取っており、雹河のパンチをメガ正宗で受け止めていた。

 雹河は間合いを空けると、すぐに姿を消す。

 次はクラウドの背後と左サイドに現れたかと思いきや、右サイドに現れる。


「と、見せかけて3段フェイントだろ!」


 クラウドは正面に出現した雹河に中華ナベを振り下ろす。が、それもフェイク!


「4段フェイントだ」


 雹河はクラウドの背中に蒼いグローブ、冷気を纏った左の掌底を打ち込む。

 とっさにメガ正宗で防御するクラウド。だが、掌底の衝撃は、防御無視で貫通する。

 まともに受けたクラウドは、勢いよく吹っ飛んだ。


「チッ、本気で殺す気で撃ったがな……」


 ムクリと起き上がるクラウド。その両手にはメガ正宗と、伝説のフライパン、ピコ正宗が握られていた。


「おお、二刀流かー!」

「中学の時に言ったはずだぜ、お前の動きは見切ったってな!」

「やるな……。だが、もう左手は動かせない筈だ」


 クラウドの左手が凍り付き、フライパンから離す事ができない。

 だが、クラウドはためらい無く、ベリベリッと強引にフライパンをひっぺがし、カムチャッカマンで凍った左腕をあぶる。


「熱っちっちっちっ! 誰の手が動かねーんだって?」


 クラウドは左手をにぎにぎして状態を確める。 

 凍りついた皮膚を無理やり剥がした左手から、流れ出る血が絨毯を染める。

 だが、そんな事はお構い無しに、クラウドは再び中華ナベとフライパンを構えた。


「やはり、てめえが相手だと退屈しないぜ……」

「あー? 何か言ったか?」


 とはいえ、このまま防戦一方ではジリ貧になるのは確実。

 クラウドは打開策を練ろうとするが。


「何をボサッとしている?」


 一瞬の隙を突いて、クラウドの側面に現れた雹河は、さらに強烈な掌底を加える。


「ぐわあああーっ!」

「クラウドー!」


 クラウドは弾かれたように吹き飛び、石壁に叩きつけられる。

 追い討ちをかけるべく、ゆっくりと歩み寄る雹河。

 だが、ブラザーズがその間に割って入る。


「どけ……、死にたくないならな」

『いやぴょーん』

「死にたいらしいな……」


 雹河との実力の差は、東中時代に思い知ってはいるが、ブラザーズはそれでもクラウドを守り、道を譲ろうとはしない。

 すると。


「ブラザーズ……、悪いがそこ、どいてくれねーか」

「クラウド……」


 ふらふらと立ち上がり、北斗と南斗の間を抜けて、歩くクラウド。


「オレは決めたんだ、オレはオレの手で、オレの力で晴海を救い出すと。もう少し、あともう少しで、何かが見えてきそうなんだ……」


 傷の痛みも体力も限界を迎えながら、それでも雹河に立ち向かう。


「下がっててくれ、次はあいつを捉えてみせる!」

「口だけは減らないようだな。なら、望みどおりにしてやる!」


 雹河は爆発的に加速すると、クラウドの周辺に複数の雹河の残像が現れる。

 そして、対するクラウドの行動に、ブラザーズは思わず叫び声を上げた。


『目をつぶってる!?』

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