vsサバイバル同好会・サミダレ部隊
「よりによって、門の守備はサミダレの野郎か……」
「ぐっはっは、この日を待ちかねていたぞ……。これで、合法的に貴様を叩き潰す事ができる」
男が持つ強者の気配に、クラウドの危険察知アンテナが、高い警戒レベルを感知する。
「ムラサメ、あの角材持ったバカでかい奴はなんだ?」
「あいつはサバイバル同好会の幹部、サミダレ大佐。サバイバル同好会の『武蔵坊弁慶』とも呼ばれる男だ」
「武蔵坊弁慶……」
「ちなみに本名は、五月女乱丸。星座も乙女座だ」
「五月女ー?」
「乱丸ー?」
プーッ、ゲラゲラゲラと大笑いするブラザーズ。
「あの顔で『さおとめ』だってー。どの面下げて言ってんの?」
「『らんまる』って、イケメンネームだよなー。改名するか、生まれ変わって出直せばいいのに」
ビキッと、サミダレ大佐の額に青筋が走る。
「乱丸っていうより、まんまるって感じだよなー」
「武蔵坊っていうより、皮下脂肪弁慶!」
言いたい放題のブラザーズに、どっと笑いが起こるムラサメ小隊。
ムラサメは流石にやり過ぎだと思い、ブラザーズをたしなめる。
「おめぇら、無駄に挑発すんなよ。ストレートにデブかブタって言えば一言で済むだろうが」
「隊長、それもどうっすかね?」
「き、き、貴様らぁーーーーーっ!!」
怒りが頂点に達したサミダレは、竜巻のように角材を振り回した。
「うわ、こいつ怒ったぞ?」
「短気なやつだなー」
「おめぇらがいらん事を言うからじゃねぇか!」
「いや、お前も大概だったぞ」
だが、サミダレは鈍重そうな見た目に反した身軽な動きで、宙を舞う。
『え?』
ドゴオァッ!
着地しながらの角材の振り下ろし。
その重くて速い一撃は、ムラサメ小隊の隊員を数人吹き飛ばす。
さらに木柱を振り回し、その暴風圏内にはまり込んだ隊員たちも、サミダレの餌食と成り果てる。
一瞬の内に、半数の隊員を失ったムラサメ小隊。
「ごあああああっ!」
野獣の咆哮を上げながら、サミダレ大佐はムラサメに向かって一撃を放つ。
ガキャッ! ドカッ!
だが、それはニワカ軍曹のロッドで力を受け流され、あらぬ所を穿った。
「ニワカ!」
「やっぱ、強いっすね……!」
ニワカが目を巡らすと、倒れ伏す仲間達の姿。
このままでは全滅の恐れもあり、よしんば全員がかりで倒せたとしても、首領の所にまでたどり着くまでに、戦力の低下は免れない。
ならば。
「隊長! ここは、俺たちが食い止めます! 三雲たちと一緒に先行って下さい!」
「分かった! おめぇらに任せるぜぇ!」
ムラサメとクラウドたちは、城の入口に向かう。
「ワシが、それを許すと思うか!」
サミダレは、脇をすり抜けようとするムラサメに、角材を振るうが、再びニワカに防がれる。
だが。
パキン!
ニワカの棍が、度重なる衝撃に耐えれずに、真ん中からへし折れる。
「あっ、やべっ……」
「ぐははは、とどめだっ!」
容赦なく叩きつけられる、サミダレの角材!
「谷若! これを使えっ!」
クラウドはニワカに向かって、薙刀部の草薙と戦った時に使った、白い物干し竿を投げる。
受け取ったニワカは、ポールダンスの要領で回転し、三たびサミダレの重量級の攻撃をかわした。
「助かったぜ、三雲!」
「困った時には、手元のボタンを押せ! お前なら使いこなせるはずだ!」
「おめぇらぁー! 地獄で会おうぜぇ!」
ムラサメが隊員たちに向けて親指を立てると、重そうな城の扉を蹴り飛ばし、クラウドたちはその隙間から転がり込んだ。
「くそがっ! 逃がさんぞっ!」
サミダレ大佐は巨体を揺らしながら、ムラサメの後を追おうとしたが。
「へへっ、攻守交代ってところっすかね」
今度はチャラい笑顔を浮かべたニワカ軍曹と、残りの隊員たちが、扉の前に立ちふさがる。
ニワカは棍をヒュンヒュン振り回し、ビタッと構えると。
「ここを通りたけりゃ、サバイバル同好会の『ストライクイーグル』ことこの俺と、ムラサメ小隊を倒してからにしてもらいましょーか」
ニワカに続いて、やんのかゴルァ! かかって来いやー! と挑発する隊員たち。
「ニワカァ……、貴様らぁ……!」
「よし、侵入成功! ムラサメ、これからどう行けばいいんだ?」
「こっから先は俺様も知らん! 城の中までは入った事が無ぇからな。分かってんのは敵が来た時の為に罠が大量に仕掛けてあるのと、ロイヤルガードが最上階までの部屋を守ってる事ぐらいだな」
「ロイヤルガード? なんだそりゃ?」
「カリスマ教直属の親衛隊だ、どいつもこいつも超人的戦闘力を持っていやがる。このまま行けば、衝突は避けらんねぇが……」
「今さら後戻りはねえ。どんな奴らが相手でも、前に進むだけだ!」
「いい返事だ。そんじゃ、気合入れて行くぜぇー!」
クラウドたちは、眼前に広がる石畳の廊下を走り始めた。
*
雷也の前蹴りが、敵の腹を襲う。
続けて、牢屋番の胸部を昇るように蹴り上がり、最後に組んだ両手をハンマーの様に、男の脳天に振り下ろす!
物も言わずに敵の体は崩れ落ちた。
「必殺、昇雷落としでござる」
「よし、みんなを助けるぞ」
先を急ぐところだが、寄り道をして地下牢に来たクラウドたちは、捕まっている生徒会役員を救い出そうとしていた。
「……ったく。なんで、腐れ生徒会なんかを助けなきゃなんねぇんだ?」
生徒会に良い感情を持っていないムラサメは、苦い顔で愚痴をこぼす。
「そう言うなって、オレらも生徒会とは色々あるんだよ」
「同じ地下牢に閉じ込められた縁もあるでござるし」
「白鳥雪姫ちゃんの印象も良くなるしー」
階段を降り、ブラザーズと雷也が地下牢に登場すると、彼らが脱走したことを知っていた、檻の中のモブ顔の生徒会長はじめ、生徒会役員たちが色めき立つ。
雷也がしーっと唇に指をあてて、それを静まらせた。
「しっかし、鍵があり過ぎて、どれがどの牢のカギか分かんねーな」
地下牢は何個もの小さな小部屋に別れており、それに応じてカギの数も多い。
「げっ! しかも、牢よりカギの数が多いってどういう事だよ?」
「急げ、おめぇら。時間がかかると敵の守りが厚くなるし、ニワカたちが抜かれたら、後ろから追っ手が来るぞ」
入口で見張りをしているムラサメの声が、クラウドたちを急がせる。
「……その一番長いカギで、ワシの牢を開けてもらえないか?」
クラウドたちは声のする方を見る。地下牢の最奥の部屋に、アフロ頭のアラブ人の容貌の男。かつての敵の姿があった。
「お前は……、ヨガ男!?」
クラウドたちの情報を漏らさなかったヨガ男は、拷間の末に地下牢に閉じ込められていたのである。
「ワシはここのカギを全部知っている。この牢を開けてもらえれば、ワシが他の牢を開けてもいい」
「敵だったお前が、なんで力を貸そうという気になったんだ?」
「ワシは、あの娘に借りを返したいだけだ」
クラウドは、ヨガ男の目をじっと見る。そこに危険な光は見い出すことはできない。
「……分かった、信じるぜ」
クラウドはヨガ男の牢のカギを開けてやり、カギの束を渡す。
「ついでに頼まれてくれねーか? 生徒会の連中を守って逃げてくれ。オレらは急いでる真っ最中なんだ」
「あの娘が捕らわれているのだろう? いいだろう、引き受けた」
「すまねえ、恩に着るぜ。あと、生徒会副会長の山瀬さんがいないようだけど……」
「おい! クラウドぉ! 用が済んだなら、さっさと行くぞぉ!」
焦れて出発を急かす、ムラサメの声。
「上だ。最上階にいるはずだ」
「わかった! ありがとうな!」
ヨガ男と笑顔で別れ、クラウドたちは地下牢を後にした。




