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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第六章 最終決戦

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ノーテンキ・ムラサメ同盟軍

 5月7日、20時00分。


「おう、クラウドぉ。身体の具合はどうでぇ?」

「ああ、テーピングと痛み止めが効いてる。これなら何とか戦えそうだ」

「ウチの軍医の腕は確かだろ?」


 クラウドと、深緑色の迷彩服の集団。独立愚連隊と化したムラサメ率いるムラサメ小隊は、夜の森の中を進軍して行く。

 クラウドは、先頭を行くムラサメの直後について歩く。


「……なあ、ムラサメ、ひとつ聞いていいか」

「何でぇ?」

「カリスマ教って一体何なんだ? 極悪非道の邪教集団みたいだけど、上沢高校を征服するだの、消滅するだの、結局どうするつもりだったんだ?」

「正直、俺様も良く分からねぇ。そもそも、俺様たちゃカリスマ教の傘下って訳じゃねぇからな」

「えっ? どういうことだ?」

「俺様たちサバイバル同好会は、現生徒会を打倒して、新たな政権を擁立しようとしていた。そこにたまたまカリスマ教が上沢高校を乗っ取ろうとしてやがったから、手を組んでただけだ。まあ、利害の一致って奴だな」


 トレードマークのバンダナを、黄色から赤色に変えたムラサメは、前方に目を向けたまま振り向かずに答える。


「なるほどな。でも、なんでそんなに生徒会を敵視してんだ?」

「生徒会は、サバイバル同好会が部に昇格する条件を満たしてるのに、戦争ゴッコに部費は出せねぇとか難癖つけやがるからな。そのくせ、歴史が長ぇってだけで『都こん部』は部として認めてやがる。そりゃ、クーデターも起こしたくなるってぇもんだろ」


 それについては、同情するしかないクラウド。

 話を終えたクラウドたちは、黙って歩みを進める。

 ついに森を抜け、カリスマ教の拠城が姿を見せた。


 仲間および上沢高校生徒会救出のための、制限時間は残り4時間。

 空には満月が煌々と夜空と城を照らし、隠密行動には向いていない。

 時間とシチュエーション、両方ともギリギリの状態ながら、作戦名『テンペスト』、クラウドたちの最終決戦の幕が上がった。


「待ってろよ、晴海。絶対に助けてやるからな」

「よし、2隊に別れて作戦開始(カチコミ)だぁ!」

了解(ヒャッハー)!」


 ドーン!


 数人の陽動部隊が城門に爆弾を仕掛け、木造の門を爆破する。

 城内の警備兵が正門側に殺到するスキに、クラウドとムラサメ、ニワカを含む本隊は、1日前にノーテンキ冒険隊が使った、古井戸に見せかけた潜入口から、城壁の内側に侵入する。

 潜入口の出口に付いている見張りは、ムラサメ小隊の隊員たちが後ろから忍びより、サクッと当て身で気絶させる。


「ずいぶん、手慣れたもんだな」

「あったぼうよ。俺様たちゃ常日頃、SWAT並の訓練してるからなぁ」


 陽動作戦が効いているのか、辺りに人の気配は無い。

 芝生から出ているライトの明かりを巧みに避け、城の本丸を目指して、中庭をひた走る。

 だが、その時。スポットライトがクラウドたちを射抜いた。


「よーう、ムラサメ。久しぶりだな」

「シグレ部隊!」


 青紺色の迷彩のくわえタバコの男、シグレ隊長は高台からクラウドたちを見下ろす。


「どうする? ムラサメ」

「まだ反乱の事はバレてねぇかもしれねぇ。ばっくれてみるか」


 ムラサメはシグレ部隊隊長、シグレ少佐に向けて完璧な敬礼を取り。


「シグレ少佐! 我々ムラサメ部隊、敵の襲撃の情報を聞き、守備の任を果たしに来ました!」


 シグレ隊長は、火の点いてないタバコをプッと吐きながら。


「何をしゃあしゃあと。貴様らの反逆はとっくに知れてるんだよ!」

「おい、しっかりバレてんじゃねーか!」

「ありゃ、なんでだ?」

「普段やらない、敬語とか敬礼とかやってるからじゃないすかね?」

「それもそうか」


 もともとごまかせるとは思ってなかったので、特に悪びれないムラサメ。


「そもそも、あんな陽動に引っかかかると思うか? 貴様らの単純な作戦なんぞ、お見通しなんだよ」


 曲がり角から次々と現れる、迷彩服姿のシグレ部隊の隊員たち。


「積もる話はたくさんあるが……、とりあえず死んどけ!」


 シグレ隊長はグレネードランチャーで、ムラサメを狙い撃つ。

 暴徒鎮圧用スラグ弾、クラウドにケガを負わせたものと同じ、X型の弾丸が迫る。


「させるかよ!」


 クラウドはメガ正宗で打ち返すべく、ムラサメの前に出ようとするが、それよりも早く対応したニワカ軍曹が、自らの武器の(ロッド)で弾丸を防ぐ。


「何っ!?」

「おめぇは大人しく、寝てやがれ一っ!」


 ムラサメは、火の付いたダイナマイトを投げ付ける。

 吹っ飛ぶシグレ。たて続けに爆弾をばらまくムラサメ。爆発が爆発を呼び、シグレ部隊を瞬く間に全滅させた。


「油断しすぎっすよ、隊長」

「おめぇが防ぐのが分かってるのに、わざわざ避ける必要あるか?」

「すっげー……」


 ムラサメとニワカ、2人のコンビネーションに呆気にとられるクラウド。


「感心してる場合じゃねぇ、陽動作戦がバレちまったんだ。敵の大軍が押し寄せて来っぜぇ」


 案の上、爆発の音を聞き付けて、警備兵が近づく気配を感じる。

 これで、本丸に向かうには、敵を蹴散らして行かねばならなくなった。


「くそっ! これじゃ、時間がいくらあっても足りねーぞ……」


 突然、モコッモコッと足元の土が盛り上がる。


「うわっ!?」

「罠か?」

「新手か?」


 ボコーンと地面から飛び出して来る、白と黒の人影。


「どおりゃーっ!」


 バキッ!


「うーわ! うーわ、うーわ……(ダウン時のエコー音)」


 超反応でメガ正宗を振るったクラウドは、白い物体、雨森ブラザーズの片割れ、雨森北斗をぶっ飛ばした。


「ブラザーズ!?」

「脱獄成功でござる」

「雷也!?」

「おー、クラウド。やっぱり来てたなー」

「あれ? 何で、むらさめと一緒にいるでござる?」

「お前ら、無事だったのか!?」

「ついさっきまでは、でござる」

「うわ、兄者の瞳孔が開いてるー!」


 見れば、北斗が倒れたままピクリともしない。


「あー、全力でやっちまったからなあ」

医療班(ニワカ)、あの白いチビを見てやってくれ」

「世話がやける奴らっすねー……」


 ムラサメの命令で、ニワカ軍曹が北斗の元へ近づき。


「おーい、自分の名前は分かるかー、おーい」

「あ……、あ……」


 雨森北斗と言うのかと思いきや。


「アントニオ(いの)()


 全員、ガクッとずっこける。


「違う違う、お前の本当の名前を言え!」

(いの)()(かん)()

「誰がアントニオ猪樹の本名を言えといった! おーい!」

「谷若……。そいつ、もう起きてるぜ」


 目を覚ました北斗は、ぴょーんと跳ね起き。


「さっ、みんな! 遊んでないで先を急ぐぞ!」

『お前が言うな!』


 その時、ドーン! ドーン! と至る所から爆発音が響く。


「わっ、何だなんだっ!?」

「おっ、始まったようだなー」

「始まったって、何が?」

「オレらが捕まってる間に、カリスマ教に無理やり働かされてる奴らと仲良くなったんで、城内を扇動させてるんだ」

「今頃、あちこちで同士討ちが起こってるんじゃないかなー」

「お前ら、相変わらずタダじゃ転ばねーなあ」


 苦笑いしながら呆れるクラウドに向かって。


「敵がいちばん嫌がる事をおみまいする」

「それが、雨森ブラザーズ!」


 シャキーンと、2人だけで戦隊ポーズを取るブラザーズ。

 しかし。

 いたぞー! という声と共に、数人の軍服姿の男達がクラウドたちを目掛けて走ってくる。


「さすがにサバイバル同好会の連中にゃ、通用しなかったみてぇだな」

「うわ! どうしよー、どうしよー」

「拙者にまかせるでござる!」


 雷也は、敵の一団に単騎で突っ込むと、ドカバキズコッと、あっというまに敵を叩きのめす。

   

「今宵の拙者の拳は、研ぎ澄まされているでござる」

「さっすが、雷也。頼りになるぜ! よし、ムラサメ! こっちも役者が揃ったぜ!」

「いいだろう! そんじゃあ、ノーテンキ・ムラサメ同盟軍、突撃だぁーっ!」

『ヒャッハー!』



 *



 クラウドは走りながら、簡単ないきさつをブラザーズと雷也に説明し、ムラサメ小隊と共に、迷路のように入りくんだ城内を突き進む。

 特に目を引く戦いぶりを見せるのは、ニワカ。

 彼の棒術は、まるで舞っているかのような華麗さで、攻防一体の技で敵を蹴散らしていく。


「谷若。お前、棒術もいけるんだな」

「まーね。俺は西遊記や昔の中国映画が大好きでな、棒術使いって奴に憧れてんだ」

「ふーん、映画の影響を受ける奴って、けっこう多いんだな」


 クラウドは、インディ・ジョーンズに憧れる少女の姿を思い浮かべる。


「それより、侵入方法は作戦どーり、正面突破でいくぞ」

「望むところだ!」


 建物内に入るためには、正面玄関から行くか、城の屋上まで続く外付けの螺旋階段を登って、窓から侵入する2通りの方法がある。

 少数によるゲリラ戦法なら、螺旋階段ルートが好ましいのだが、敵もさるもので、螺旋階段の直下にサバイバル同好会の拠点を築いているため、それはすでに得策ではない。

 ならば、堂々と正面から突破するべく、同盟軍は城の本丸に向かって進軍する。


 突然、スポットライトがクラウドたちを照らした。

 このままでは、集中砲火を受ける!


「くそったれがぁー! 俺様に任せやがれ!」


 ムラサメは煙幕弾を投げる。白煙が包み、敵の目をくらます。


「ナイス、ムラサメ! オレもやるぜ!」


 クラウドも背中のリュックから消火器を取り出し、粉塵を巻き散らかす。


「うぉしゃあ、行くぜぁー!」


 クラウドたちは白い煙を纏いながら、一丸となって城の正面に突っ込んで行く。

 だが。


 ブオンッ!


「うわっ!」


 いきなり、建築用の木の柱が横殴りに振るわれ、とっさにかわすクラウド。

 暴風が煙を吹き飛ばし、目前に現れたのはデザートパターン、砂漠色の迷彩服の男達。


「やはり、裏切ったな、ムラサメェ……」


 そして、それを率いる、象のような肥満体の男。

 サバイバル同好会の幹部、サミダレ大佐が角材を担ぎ、仁王像のような立ち姿で、門の前に立ち塞がっていた。

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