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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第五章 暗雲

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 ドスのきいた声に視線を這わせてみると、冒険隊は迷彩服を着た集団に囲まれていた。


「これは!?」

「はっはっは。こんなに面白い様に引っ掛かってくれるとは思いませんでしたよ」


 ここまで道案内をしていたムラサメが、口調をガラリと変えて、愉快そうに笑っている。


「隊長さんじゃない……? あんた、いったい誰!?」

「今頃、気付きましたか。私はムラサメ少尉ではありません」


 ムラサメの姿をかき消すように、ボンと白い煙が上がり、そして中から現れたのは、仮面を付けてタキシードを身にまとう、洞窟の中で出会ったあの男。


「また、お会いしましたね」

「トランプマン!?」

「トランプ大統領!?」

「……ミラージュです。私は演劇部も掛け持ちしてまして、演技には自信あるんですよ。今回の化かしあいは、私の勝ちのようですね」


 逃げようにも、すでに入り口の井戸も押さえられ、退くこともままならない冒険隊。


「そして、この部隊の指揮権は私にあります。指1本動かすだけで、あなた方を蜂の巣にすることも可能なのですよ」


 ハーッハッハッと、前回の敗北は帳消しだと言わんばかりに、高笑いをするミラージュ。

 そのスキをついて、雷也は敵にタックルを仕掛ける。

 勝ち誇っていた敵は一瞬ひるみ、囲いにわずかな隙間ができた。


「いんでぃこ殿! 拙者が食い止めるから、今の内に逃げるでござる!」

「そんな事……できる訳ないじゃない!」


 その時、今まで沈黙を貫いていたクラウドが、グイッと晴海の腕を引く。


「インディコ、逃げるぞ」

「クラウドくん……? 雷也くんを置いて逃げるっていうの!?」

「今、ここで全員捕まる訳にはいかないだろ! 1人でも逃げのびる方が先決だ!」

「だけど……」

「オレだって辛いさ! だけど、雷也の覚悟を無駄にする気か!」


 相当な人数だが、雷也が必死になって食い止めている。


「……ごめんね、雷也くん! 後で、必ず助けに来るから!」


 血を吐くように晴海は叫び、2人は揃って駆け出す。

 それを見送った雷也は、再び敵の一団を相手取って戦い続ける。


「そこまでだ、この2人がどうなってもいいのか?」


 見ると、ブラザーズが後ろ手にされて、縄を巻かれて捕まっていた。


「すまん、雷也ー」

「捕まってしもうたー」

「くっ、でござる……」



 *



「くそっ、ブラザーズもはぐれちまったか……」

「クラウドくん、逃げるって言ってもどうするの!」

「この騒ぎで、今なら守りが薄いはずだから、正門から逃げるぞ!」


 城内の中庭を駆け抜ける、クラウドたち。

 だが、城壁の上からスコープで狙いを定める邪悪な目がある事に気づいていなかった。

 迷彩服を着た、その敵が構えるのは、ライオットガンと呼ばれる暴徒鎮圧用のリボルバー式グレネードランチャー。

 敵はフェルトの帽子が目を引く、晴海に狙いを定める。


 バシュ!


 人間の二の腕ほどもある、ゴム製の筒型の弾は、一定の距離を飛行すると、空気の抵抗で大きなX型に開く。


 晴海を襲う、その弾丸。


 集中力を欠いていたクラウドは、その存在に気づくのが、いつもの反射スピードよりコンマ数秒遅れてしまう。

 とっさに、メガ正宗を抜こうとしたが、間に合わない!


 まただ……。

 また、晴海を救う事ができないのか?

 それなら、せめて……。


 クラウドは体を張って、弾丸から晴海をかばう。


 ドグッ!!


 鈍い音を立てて、暴徒鎮圧(スラグ)弾がクラウドの胸部にめり込み、息が吸えない程の衝撃を味わう。

 跳ね飛んだクラウドは晴海とぶつかり、2人は固まって倒れ込んだ。


「あいたたた……。あたしをかばって……? クラウドくんしっかりして、クラウドくん!!」

「逃げろ……、インディコ……」


 口から血を流し、息を吐き出しながら、かろうじてそう言うと、クラウドの体から力が抜けた。


「クラウドくん? 目を開けて、クラウドくん!」

「いたぞ! あそこだ!」


 押し寄せて来る、敵の一団。


「逃げなきゃ……」


 だが、晴海はクラウドを置き去りにせず、背負って歩き始める。


 あの時も、クラウドくんはあたしを助けてくれた。

 今度は、あたしがクラウドくんを助ける。

 もう絶対、離れたくない……!


 あと少しで、敵が2人を捕らえようとした時。

 ボウンと白煙が一帯を包む。


「な、何だこれは!」

「敵だ! 敵襲だぞーっ!」


 不測の事態に、統率を失うカリスマ教の集団。

 そして、晴海の目の前に現れたのは、サバイバル同好会のムラサメ少尉。


「嬢ちゃん、ここにいやがったか」

「た……、隊長さん?」

「ちょっとだけ様子を見に来たんだが……、一体全体どうなってんでぇ?」

「えい!」


 晴海は、ムラサメに向けてパチンコを放つ!


「あぶねっ! おめぇ、何しやがる!」

「ニセモノめ! もう、だまされないんだから!」

「いやいや、俺様はモノホンだって」

「じゃあ、証拠を見せてよ!」

「証拠って言われてもなぁ。疑り深い貧乳女は嫌われるぜぇ?」

「貧乳は関係ないでしょ! どうやら、本物のセクハラ隊長のようね」

「分かりやがったなら、とっとと行くぞ」

「待って、クラウドくんが……」

「置いてけ……とは、言えねぇか」


 クラウドを抱き締めながら涙ぐむ晴海を見て、クラウドの体を肩に担ぎ上げあげるムラサメ。


「重量オーバーだが、まとめて面倒見てやらぁ! 嬢ちゃんは俺様にしがみつけ!」


 晴海が首ったまにしがみつくと、ムラサメは左腕からワイヤーを射出して、城壁の天板にひっかけて巻き上げる!


「よっしゃあ! とっとと、ずらかるぜぇ!」


 晴海は自責の念に駆られながら、ムラサメと共に、白い煙と喧騒に包まれる、敵の拠城を脱出した。

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