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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第五章 暗雲

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戦闘狂の爆弾魔

 クラウドはメガ正宗で、ムラサメに殴りかかる。

 ムラサメはその腕を取ると、そのまま背負い投げを放つ!

 受け身を取るクラウド。ムラサメはその顔を踏み潰そうとするが、クラウドはとっさに体を反転させてかわし、態勢を立て直して、すぐまた攻撃に転ずる。


 クラウドは、晴海に取り付けられた爆弾の解除番号を聞き出すため、ムラサメに挑んでいるが、動きに焦りが目立ち精彩を欠く。

 歴戦の勇、サバイバル同好会のムラサメ少尉に、そのような甘い攻撃が通用するはずもなく、軽く流されて、背後に回りこまれる。


「1人で盛り上がんなよ。もっと楽しく()ろうぜ」

「うるせーっ! インディコの爆弾を外せーっ!」

「ガムシャラに突っ込んで来るだけじゃ、俺様には勝てねぇなぁ……」


 ムラサメはクラウドの体をかつぎ上げると、地面に叩き落とす。


「ぐうっ!」


 さらに、ひじ打ちを畳み掛けるムラサメ。

 ゴロゴロゴロっと体を転がしてかわし、またしても接近戦で殴り合いを挑むクラウド。


「それじゃ、勝てねぇって。まだ凝りやがらねぇのか?」

「うおおおおおーっ!」


(すぐ熱くなる、威勢がいいだけのバカが。反吐が出るほどムカつくぜ……)


 雹河の言葉が、脳裏に響く。


「つまんねえ戦いしかしねぇんなら、もう終わらすぜぇ!」


 突撃してくるクラウドに、カウンターを合わせようとするムラサメ。だが、クラウドは急にバックステップを入れる。


「誘い込みだと!?」

「どおりゃーっ!」


 体勢を崩すムラサメにフルスイングのメガ正宗を放つクラウド。


 ドガッ!


 ムラサメは両腕をクロスしてガードするが、弾かれて仰向けに倒れる。

 ムラサメは笑いながら、ヘッドスプリングで起き上がった。


「ははっ、急に動きが良くなったじゃねぇか、ようやく頭が冷えたみてぇだな?」

「まあな。もう同じ手は食わねーぜ」

「いいだろう、じゃあ俺様も本気で()らせてもらうぜぇ!」


 走り込みからのボディブローを放つムラサメ、後方回避するクラウド。

 だが、ムラサメもバックステップしながら、握っていた物を手から離す。その物体は。


「ダイナマイトっ!?」


 瞬発的に、爆風から顔を庇うクラウド。


「こいつが俺様の本領だ。続けて行くぜぇ! おらおらおらぁーっ!」


 次々と爆弾を投げ付けるムラサメ。クラウドは必死に爆発から逃れるが。


「うわっ!」


 爆風で地面にできた窪みに足を取られ、隙を見たムラサメは、一回り大きな爆弾を投げ付ける!


「炸裂弾だ! 当たると体力10割行くぜぇ、食らいやがれえぁーっ!」


 後ろに避けても、爆風で大ダメージを受ける事は必然。

 ならばと、クラウドは無謀にも前に出る!

 メガ正宗で炸裂弾をすくい上げ、頭上に掲げて、大爆発の衝撃を全身で持ちこたえる。

 爆風をすべて、上方に逸らした!


「……オレも、火遊びはちょっとしたもんだろ?」


 一連の動きを見たムラサメは、実に楽しそうに。


「おめぇ……、面白ぇ! さすがは俺様が見込んだとおりだぜぇ!」



 *



「ふう、長いこと吊られて肩が凝ったでござる」

「うお! インディ娘ちゃんに爆弾がくっついとるー!」


 辛くも罠を脱出し、晴海と合流するブラザーズと雷也。

 だが、拘束された晴海の姿を見てびっくりする。


「何やってんだー? 新手の放置プレイ?」


 雷也は、タイマーのデジタル表示に気付き。


「これは……時限爆弾でござるな。くらうどはどこでござる?」

「クラウドくんは、サバイバル同好会のムラサメって隊長さんと、戦いながらどっか行っちゃったよ」

「05:00って、あと5分かー。おしっこかけたら止まるかな?」

「やめてよ! あたしにもかかるじゃない!」

「よく、そんな発想が出るでごさるな」

「爆弾は4ケタの解除番号を打ち込むようになってるみたいよ、試してみて」

「じゃあ、1126(いいふろ)っと」


 すると、ピピピピと電子音が鳴り、04:45と表記されていた時間が1分マイナスされて、03:45に変わる。


「えっ!?」

「間違えたら、時間が短くなるみたいでござるな」

「そんじゃ、1010(せんとう)っと」

「ちょっと、ちょっと、なんで銭湯!? なんで、お風呂関係ばっかり?」

「いや、サバイバル同好会だから、たぶんこれで間違いないぜー」

「あ、なるほど。戦闘(せんとう)の方ね」


 ピピピピっとエラー音が響き、03:30の数字が02:30に変わった。


「何が、間違いないよ! 全然違うじゃない!」

「やべっ! あと2分だ、やれ逃げろー」

「それ逃げろー!」


 ダッシュで晴海から離れるブラザーズ。


「ちょ、ちょっと待ってよー、この薄情もーん!!」


 そして、ダッシュで戻って来たブラザーズは、ビシッと親指をを立てて。


「ジョーク、ジョーク。オレらはインディ娘ちゃんと運命を共にするぜー」

「もう! よくまあ、この土壇場でそんな冗談が言えるね」

「ぶれることないその姿勢、感心するでござる」


 爆弾のタイマーは、ピッピッと非情にも時を切り刻んでいく。


「あとは、クラウドに期待するしかないなー」

「うん……」



 *



 取っ組み合いながら、森の中を突き進む2人。

 サバイバル同好会のベースキャンプまでもつれ込み、近くにある木造の小屋の中に飛び込んだ。


「ここは……?」

「ここは俺様の火薬庫だ、特製の爆弾どもが並んでんだろい」


 見れば、棚には紙巻き爆弾が大量に並び、中には尺玉クラスの花火まである。

 若干、自慢げに説明するムラサメ。


「へえ、これ全部爆弾か」


 クラウドは不敵にニヤッと笑うと、背中のリュックからカムチャッカマンと殺虫剤を取り出す。


「おい、おめぇ。それをどうする気でぇ?」

「こうするんだよっ!」


 カムチャッカマンの火を付け、それに向け殺虫剤を吹き付ける。

 火炎放射器のような炎を四方八方に撒き散らし、小屋中の爆弾に点火した。


「うわっ! おめぇ、何て事しやがる!」

「お先!」


 ムラサメを押しのけ、素早く小屋から抜け出るクラウド。ムラサメも出ようとするが、扉が開かない。


「おい、開けろ! 死ぬ、死ぬ! マジで死ぬ! 俺様を出しやがれーっ!」


 扉を足で押さえるクラウド。


「3、2、1、それっ!」


 ダッシュで逃げるクラウド。慌てて小屋から飛び出すムラサメ。


 ドッカーーーーーン!!


 大爆発を起こし、扉を、壁を、屋根を吹き飛ばし、小屋が粉微塵にぶっ飛ぶ。ムラサメは爆風にあおられて、命からがらもんどり転がる。


「なんて事しやがんだ、あの野郎……」


 後ろから、メガ正宗をムラサメの首筋に突き付けるクラウド。


「そこまでだ、降参しろ!」


 ムラサメは燃え盛る小屋を見ながら、両手を上げた。


「がはははは、確かにな。俺様の負けだ」

「インディコに付けた爆弾の番号を言え、早く!」

8982(ばくはつ)だ、打ち込めばタイマーが止まるぜぇ」

「よし。インディコ、今すぐ助けてやるから……」


 ドーンと、晴海が捕まっている場所から爆音が聞こえた。


「おっ? 思ったより早かったな」

「嘘だろ……。インディコーっ!」


 頭の中が真っ白になりながら、夢中で駆け出すクラウド。


 晴海が死ぬ……? そんな事、あってたまるかよ!


 爆心地に到着してみると、ブラザーズと雷也が腰を抜かし、なぜか紙吹雪が舞っていた。

 晴海は紙テープに巻かれた状態で。


「あ、クラウドくん、おかえり……」

「こ、これは………?」

「心配して来てくれたんだ、ありがと」

「ああ……」

「いやー、負けた負けた。おめぇらやるなあ!」

「ちょっと、隊長さん! これはどういうこと?」


 後からやって来たムラサメに、晴海は説明を求めると。


「あん? この爆弾の事かぁ? そりゃ、あいつを本気にさせるための偽物(フェイク)だよ。俺様がおめぇみてえな別嬪(べっぴん)さんを爆殺する訳ねぇだろ」


 ムラサメは親指でクラウドを指差しながら言うと、別嬪さんと言われた晴海は頬を染めるが。


「だが、乳の方はまだまだ『お嬢ちゃん』って感じだがなぁ」


 がっはっはっと、晴海の胸を指さして笑うムラサメに。


「~! このっ、セクハラ隊長っ!」


 晴海は顔を真っ赤にしながらパチンコを放ったが、逸れるばかりで1つもムラサメには当たらなかった。


「クラウド、陰気な顔してどうしたー?」

「間に合わなかった……」


 ブラザーズが突っ立ってるクラウドに話しかけるが、聞こえてないかのように、小さな声でボソボソと呟く。


 爆弾がフェイクでなければ、晴海を救えなかったという事実に、改めて自分の無力さを思い知らされたクラウドは、1人虚ろな目で立ちすくんでいた。

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