ジャングル探険行
5日目、5月6日の朝。
青い空、白い雲、太陽は1つ。
異世界にも、普通に朝はやって来る。
「お前、ものすごくやつれてないかー?」
「……まあな」
憔悴しきったクラウドは、この世の終わりのような灰色のオーラを出している。
これで、丸4日ほとんど寝ていない。
クラウドが朝からテンション低いのは、いつもの事ながら。
「さーあ、とっととあの城に乗り込んで、カリスマ教なんかブチのめしちゃいましょー!」
一方、先頭を歩く晴海は、これでもかという位に元気そのもの。だが、その目の周りにはクマが出来て、パンダのようである。
「晴海ちゃんは、元気いっぱいだなー」
「しかし、何か無理をしている様に見えるでござるが……」
クラウドが視線を上げると、たまたま後ろを振り向いた晴海と視線が合ってしまい、晴海はプイッと顔を背けてしまう。
やっば、傷ついてるよな……。
と、ますます落ち込み、うつ向くクラウド。前方の枝に気づかず、ゴンッと思いきり額をぶつける。
ブラザーズと雷也は、そんな2人を見比べ。
「なんか冴えないでござるな」
「昨日、うまくいかんかったんかなー?」
木の枝や蔓をかき分けかき分け、森の中を進んで行くノーテンキ冒険隊の5人。
森の中は木が繁っているものの、ところどころ日の光が差し込んで来るので、真っ暗という訳ではない。
見渡せば、深緑色の世界。
じめっとした空気や、粉っぽいすえた匂い。
ホウホウホウと鳥の声、キーキーキーッと獣の叫び声が響く。
森が持つ独特の雰囲気に包まれながら、晴海たちはどんどん進んで行く。
無言のまま歩き続けること、1時間。
「変ねえ……」
「インディ娘ちゃん、どうしたー?」
「ほら、これを見て」
晴海の足元に、草を縛ったマーキングがある。
「これは、さっきあたしが作ったものだけど、もしかしたら、同じ所をぐるぐる回ってるだけかも知れない」
「マジでー?」
「結構歩いて来たはずでござるが、振り出しでござるか?」
「迷いの森ってやつかな? さっきから、微妙に感覚が狂ってる感じがするのよね」
そして、晴海はクラウドに、緊張の面持ちで。
「クラウド……くん、あの、方位磁針とか持ってないかな?」
「あ……、ごめん、残念だけど持ってない……」
「あ、そ、そうなのね……」
「今度は、ちゃんと入荷しとくよ」
「つ、次ね、よろしくね……」
そして、また無言になる2人。
「気まずいなー」
「ぎこちないなー」
「じゃあ、拙者が木に登って城への方向を見てみるでござる」
「あ、あたしも行く!」
雰囲気の悪さを察した晴海は、雷也とともに近くの高そうな木を登って行く。
猿のようにスルスル登る雷也と、えっちらおっちら登る晴海。
「無理そうだったら、拙者だけでも見てくるでござるよ」
「大丈夫よ、小さい頃は良く木登りとかしてたもん」
ギリギリまで登れるところまで行き、2人で城の方角を視認する。
「うーん、微妙に進行方向がずれてたようね」
「途中、川があるみたいでござるから、水音を頼りに進んだら良さそうでござる」
「雷也くん、耳がいいもんね。じゃあ、先導をお願いするね」
方針が決まると、一気に木から飛び降りる雷也。
さすがに晴海はそうはいかないので、ゆっくり降りてくる。
登る時は上しか見てなかったが、降りる時は急に恐怖心がわくので、慎重に枝を選んで足場にしていくが。
バキッ!
「えっ?」
足を掛けた枝が折れ、木から墜落する晴海。
地面に叩きつけられるかと思ったが、何者かに受け止められたような感触があり、事なきを得る。
「あ、ありがとう、クラウドくん」
「ちがうよ、雨森ブラザーズでーす」
下を見ると、ブラザーズが晴海の下敷きになっていた。
「え? あ、ごめんね、ブラザーズくんたち……」
「どういたしましてー」
周囲を見回すと、クラウドの姿もあり、明らかに助けに行こうとしたものの出遅れた格好で固まっていた。
晴海は立ち上がって、唇を引き締めると、再び目的地に向かって歩き出す。
「ヒップアタック!」
どーんと、クラウドに尻から体当たりを食らわすブラザーズ。
「いてっ、何すんだよ」
「インディ娘ちゃんの面倒をみるのは、お前の役目」
「……るっせえな」
「おまえー、昨日インディ娘ちゃんに何かしたんか?」
「何もしてねーよ」
「ああん? 2人っきりで何もしてないのかよー」
「むしろ、引くわー、このヘタレ!」
言いつつササッと、メガ正宗か蹴りか、その他の何かで来るだろう反撃に備え、防御の構えをとるブラザーズ。
だが、クラウドは、はあぁとため息をついて、怒りもせずにトボトボと歩きだす。
「こりゃ、ホントに重症だなー」
「どうしたもんでござるかな」
微妙な雰囲気のまま、森の中をさ迷う冒険隊。
せせらぎの音を雷也の耳を頼りに進むなど、進行方向を調整しながら進んで行く。
途中でバナナの木とココヤシの木を見つけ、それらを飲み食いしながら探索を進めていくと、ようやく川にたどり着く。
意外と急流なので、ロープを渡して流されないように、全員で対岸に渡り切る。
しばしの休憩をはさみ、再び森の中に足を踏み入れる晴海たち。
だが、その時、敵の包囲網の真っ只中にいるということに、気づく事は誰にもできなかった。




