表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第四章 異世界へGO!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/93

洞窟探険行

 異世界の入口という祠に入った冒険隊。

 中は四畳半程度の広さで、木の板壁の上の方に神棚を祭ってある。

 だが、それはあくまで体裁のためで、本尊と言うべきものは足元の赤く塗られた鉄扉だと思われる。


「たぶん、この赤いのが入口だよね。あたしが開けてみようっと」


 うんしょ、と取手を引っ張る晴海。だが、ピクリとも動かない。


「あたしじゃダメみたいね。雷也くん、お願い」


 雷也が力を込めると、ガコッと音を立てて、扉が開いた。


「下に降りる階段になってるみたいだなー」

「さすがに、いきなり異世界に突入って感じじゃねーな」


 扉に吸い込まれ、目が覚めたら異世界転移でした。的な展開を期待していた訳ではないが、ちょっとガッカリするクラウド。


「よし、早速入ってみましょ。最後の人は扉を閉めて来てね」

「扉を閉めたら、真っ暗でござるな」

「懐中電灯なら持ってるぜ」


 クラウドはリュックから、頭に装着するタイプのヘッドライトを人数分取り出す。


「気分が出るから、松明(たいまつ)にしようぜー」

「待って、こういう洞窟には腐敗物から毒ガスが出てる事があるから、松明は引火する危険があるよ。ヘッドライトにしときましょ」


 洞窟にある腐敗物。死体でもあるのか?

 クラウドは身震いしながら、全員にライトを渡す。

 LED電球なので5人で照らせば、洞窟の中も昼のように明るくなった。

 先頭に立って歩く晴海。後に続くクラウドたち。

 洞窟は木の枠組みが天井と壁を支えてあり、時代劇とかでよく見る金鉱のような風情である。


「ここ掘ったのって江戸時代とか戦国時代とかじゃないだろうな。崩れてこねーかな?」


 晴海は壁と木の枠を触ってみる。


「たぶん大丈夫よ。地盤もしっかりしてるし、わりと最近のものみたいね」


 幾分の不安もあるが、とりあえず冒険隊は歩き続ける。

 基本的には一本道、道が脇に逸れている所もあったが、クラウドたちは大きな道を選んで歩く。


 ガンガン歩く。けっこう歩く。同じような景色が続くので距離感が薄れてくるが、我慢して歩く。


 しばらくすると、いかにもRPGのダンジョンっぽい感じになって来た。

 赤茶けた岩がゴツゴツしていて足場が悪く、つまずきそうになる。

 少しずつ湿った空気が濃くなって来ているように感じ、だんだん涼しくなって来た。

 そして、広い場所に行き当たる。


「わあ……」

「何だ、ここは………」


 いうならば、恐竜の(あぎと)といった風情。

 天井から、なめらかな白い岩が、ツララのように吊り下がっており、下からはトゲが突き出ていた。


「これが、鍾乳洞って奴か……」

「すごいなー」

「拙者、初めて実物を見るでござる」

「へえ……。上沢市はむかし海だったって聞いてたけど、これを見たら納得だね」

「ん? どういう事だ?」


 ちんぷんかんぷんのクラウドたちに、えっへんと言いながら晴海は説明する。


「うん。鍾乳洞は石灰岩の地層から、地下水が染み出てできるんだけど、鍾乳石の材料があるって事は、貝殻とかが積もった地層。つまり、上沢市が海だった時代があるって証明になるんだよ。わかった?」

「なるほど、分かりやすいなあ。インディコは先生とか向いてるんじゃないか?」

「なんなら『博士』と呼んでくれても良いよ。あと、ブラザーズくんたち、鍾乳石は保護されてるから、ツララを折ったりしちゃダメよ」


 お土産に持って帰ろうと、今まさにへし折ろうとしていたブラザーズを止める。


「でも、こういうトコに来ると、なんか冒険って雰囲気でドキドキするね」


 まさしく、気分は探検隊。

 晴海は意気揚々と進んで行く。気持ちお肌がテカテカしているようにも見える。

 こういう場所はきっと大好物なんだろうな、とクラウドは思う。

 鍾乳洞が終わり、普通の洞窟の外観に戻った。


「ん? 何か聞こえない声が、聞こえるでござる」

「超音波か? んなもん、聞こえる訳ねーだろ」

「いや、何かいるよ!」


 晴海はライトを前方に照らすと、無数に飛来して来る小動物が!


「コウモリだ!」


 ぶわーっと、一斉にたかって来るコウモリの群れ。


「みんな、突っ切るよ!」


 コウモリの嵐に立ち向かうクラウドたち、急に目の前に壁と扉が現れる。

 慌てて飛び込み、扉を閉めてコウモリをシャットアウト。


「ふう、やれやれ……って、なに、この部屋?」


 六畳ほどの、洞窟の壁や天井が不自然に正方形に切り取られた、何も無い部屋に入ってしまった。

 入口の真向かいにある、出口に向かう晴海。だが、扉が開かない。


「しまった! みんな、戻って!」


 さらに入口の扉も開かない。

 そして、お約束というか、ゴゴゴゴゴっと天井が降りて来た。


「吊り天井!」


 潰されまいと、天井を支えようとするクラウドたち。

 だが、ベキベキッと悲惨な音を立てて、天井は地面に到達した。


 しかし、クラウドたちは潰された訳ではなく、岩壁を模したハリボテを突き破って呆然と立ちすくむ。

 すると、キィーと軋む音を立てて、出口の扉が自動的に開く。


「あ、開いた」

「なめてんのか、この部屋」


 パッパラーという効果音と共に、ドッキリ大成功の看板を持った人が現れる訳でもなく、扉の先にはまた暗い一本道が続いていた。


「いつまで歩かせるつもりだよ、一体……」


 クラウドたちはどこまで続くとも知れない、長い道をひたすら歩き続ける。



 *



「何で、こんなトコにこんなもんがあるんだ?」


 クラウドたちは洞窟の行き止まりにぶち当たった。

 そこには、ミロのビーナスの様な石膏像がぽつんと鎮座していた。


「台に何か書いてあるね、えーと……」


 台の石板に『このビーナスを押せ』とあった。


「謎を解き明かさないと先に進めないって事かな? なんかトレジャーハンターって感じがするね」


 ワクワクが止まらない様子の晴海。

 だが、上半身裸のビーナス像を見て、ちらっとクラウドの様子を伺う。


「あれ? いつもと反応が違うね」

「くらうど、いつもの発作はどうしたでござる?」


 見ると、クラウドは気恥ずかしさから、ビーナス像から目を背けている。


「いや、そんなに胸大きくねーし。つーか、オレは別に巨乳が好きって訳じゃないんだからね!」


 ツンデレヒロインのような台詞を言うクラウド。

 確かに、ビーナス像の胸の大きさは、Bカップ程度でCまではないように思われる。

 古代ローマでは、女性の魅力は胸よりもお尻の大きさが重要視されており、その時代の女性像は胸を小さく造形されているものが多い。


「あれで小さいなら、クラウドくんはどれだけあったら満足するの……?」


 こっそり、晴海は自分の胸を触ってサイズを確めてみる。


「じゃあじゃあじゃーあ、オレからやるー」


 謎解き1番手に立候補する、ブラザーズ北斗。ビーナス像に近寄って。


「ビーナスを押せって事だろ? じゃあ、これしかないよなー」


 北斗が押したのはビーナスの右胸、しかも乳首。

 ゴゴゴゴゴと地響きが鳴り渡る。


「なに、何、なにが起きるの?」

「よっしゃ! 当たりみたいだなー」


 突然地響きが収まり、上からタライが降って来た。

 くわーん、と金属音が洞窟内に響き渡った。


「うおおおおおー」


 頭を押さえてうずくまる北斗。お約束と言えばお約束。


「今の、どこから降ってきたのかな?」

「やましい事考えてるから、そうなるんだよー」


 次は南斗がビーナスの謎に立ち向かう。


「ポチっとな」


 ビーナス像の左胸の乳首を押す。また一人、タライの犠牲者が。


「おおおおおおー」

「ブラザーズくん達のエッチ!」

「双子だけに同れべるでござるなあ」


 同じポーズでうずくまるブラザーズを押しのけ、次に雷也がチャレンジする。


「ちょっと考えたら分かるでござる、さみんぐでござる!」


 ビーナス像に目潰しを食らわす雷也。直立のままタライを食らう。


「違うでござるか? 次は人中! 水月! ればーぶろー!」


 思いつく限りの急所を突く雷也。次から次へと衝突するタライ。


「これだけやって、なんで当たらないでござるか?」

「はい、次。クラウドくんお願い」


 晴海は次の刺客にクラウドを指名する。


「いや、オレはいいよ」

「お願い、一応やってみて」

「分かったよ。しょーがねえな……」


 あんまりオレはやりたくないけどな、と言いつつニコニコしながらビーナスに近づくクラウド。

 隊長の命令だもんな、と言いつつビーナスのセミヌードを堪能する。

 その様子を見て、小さくても興味がないわけじゃないのねと安心する晴海。

 でも、ちょっとシャクなので。


「クラウドくん、おっぱい触っちゃダメだかんね」

「……」


 晴海に釘を刺され、クラウドはうーんと唸って、一つの答えを導き出す。


「へそ」


 くわーん。


「もう! みんな頼りないなあ。やっばり、隊長のあたしじゃないとダメかな?」


 晴海はビーナス像の前で腕組みをする。

 ビーナスを押せ、押せ。ビーナスを押せ……?

 晴海はやおらにしゃがみ込むと、土台ごとビーナス像を前に押す。

 ズズズっと像が動き、いつの間にか前方にできた四角い穴にビーナスが吸い込まれて行く。

 ドガガガガガガと、地面が揺れる。


「みんな、あれを見て!」


 晴海が指さす方向、行き止まりだった壁が左右に真っ二つに裂け、新しい道ができる。

 揺れが収まり、前方に視界が広がった。


「どう? 謎解きってのはこうやってやるのよ」


 フェルトの帽子のつばを人差し指で弾き、さっそく新たな道に向かう晴海。


「結局、今のは謎解きってレベルだったか?」

「何か言った?」

「い、いや、別に……」

「なんか、オレらいいとこ無しだったなー」

「男性向きの問題じゃなかったでござる」


 なにはともあれ、謎解きで食った遅れを取り戻すべく、冒険隊は先を急ぐ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます!
ブックマーク評価感想
レビューをいただけると狂喜乱舞します。

小説家になろう 勝手にランキング

『水兵チョップ海を割る ~西の島国の英雄譚~』
i410077
海洋バトルアクションファンタジー(完結済)です!

『パンダ娘は白黒つけない』
i457072
日常系学園ゆるふわラブコメディです!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ