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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第三章 古文書争奪戦

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特殊工作部隊

「……というわけで、あたしたちはカリスマ教と戦っているの」

「まさか、わたくし達の学校がそんな事になっていたとは……。武道場荒らしが増える訳ですね、得心いたしました」


 晴海は草薙に、現在の上沢(うえざわ)高校の状況を説明しながら歩いている。

 古文書を取り返したノーテンキ冒険隊は、場所を変えるためにプール場を後にした。

 一旦は、プール場で古文書の箱を開けようとしたのだが、アクアリーグの手の者が盗み聞きしていないとも限らないので、出来るできるだけ人目を避け、森の中の少し(ひら)けた場所まで来たところである。


「このへんなら、今度こそ邪魔が入らないかな。ナギナギさん、古文書を出してくれる?」


 晴海に言われ、草薙は古文書が入った玉手箱を取り出す。


「あれ? そういや、山瀬さんは?」

「玲華さんなら、なんか調べものがあるって言って、どっか行っちゃったよ。すぐ戻ってくるらしいけど」

「何だと? 1人きりにしちゃ危ないんじゃねーか?」

「それはそうなんだけど、まあ、その……」


 と、クラウドの質問に、晴海は珍しく口ごもる。


「ああ、なーんだ、便所か!」

「デリカシーないなあ、クラウドくん。そういうトコ直さないと、女の子にモテないよ?」


 晴海にはっきり言われ、ガーンとショックを受けるクラウド。

 そんな彼の肩をたたいて、なぐさめる雨森ブラザーズ。

 だが、顔はめちゃくちゃ笑顔である。


「まあ、あたしはクラウドくんがモテなくても、一向に構わないんだけどね」

「ん? なんか言ったか?」

「べっつに。玲華さんは先に始めてていいって言ってたから、さっそく古文書を見てみよっか」


 晴海は玉手箱の紐をするするっと解き、箱のフタに手をかける。


「開けたら、白い煙が出て来て、ジジイになってしまうとかー」


 ブラザーズ北斗の一言に、箱を覗き込んでいた全員の表情がピシッと固まる。


「なんてな、はははー」

「いやねえ、北斗くんてば、そんな事ある訳ないでしょ」


 ははは、とみんなで笑う。


「じゃあ、今日は風も強いし、箱を開けるのは中止ということで」

「もう、クラウドくんまで何言ってんのよ。いいよ、あたしが開けるから、みんな下がってて」


 冒険隊の面々が、少し距離を空ける。

 晴海はおもむろにフタを、えいやっと開ける。

 中には古ぼけた巻物が入っていた。


「よかったー。ちゃんと入ってたみたいね」

「それ、水に浸かってたけど大丈夫か?」

「昔の密書は、柿の(しぶ)や油や(ろう)で防水加工をしているはずでござる。たぶん大丈夫でござるよ」

「おおう。まさか、雷也から知識が語られるとは」

「お前の頭は、頭突きするだけじゃないんだなー」

「歴史に関しては、博識のつもりでござる」

「じゃあ、巻物を開けてみるね……」


 シュルルルル、シュパッ!


 晴海が巻物を広げようとした瞬間、カギ手が付いたワイヤーのような細い金属線が飛来し、晴海の手から巻物を奪う。


『!?』


 ワイヤーが巻き戻り、巻物が何者かの手に渡る。

 晴海たちの場所から20m以上離れた、その場所にいたのは、迷彩服と迷彩柄のヘルメットを身に付けた人物。

 タクティカルゴーグルとバンダナで覆われ、その顔を確認する事はできない。

 ただ1つ分かる事は、古文書が敵に奪われたという事である。


 何も言わず、その場から背を向ける迷彩服の男。


「待て!」


 晴海から距離を置いていたクラウドは、電光石火の収奪劇に反応が出来ず、全てが後手に回る冒険隊。

 だが、逃げかける敵に立ちふさがる、白い姿が。


「返しなさい! それは、私達のものよ!」


 集合場所に遅れてやって来た山瀬が現れ、迷彩服の男に掴みかかる。

 敵が持つ巻物に手をかけた、その時。


 ドムッ!


「うっ!」


 男は、山瀬の腹に拳を入れる。

 息をつまらせ、気を失う山瀬。


「玲華さん!」


 男はぐったりとしている山瀬を、巻物を持った右腕で肩に担ぎ上げ、空いた左腕を頭上に向ける。


 パシュッ!


 軽い音を立てて、カギ手付きのワイヤーが左腕のギミックから打ち出されると、木の枝に絡み付く。

 ワイヤーが自動で巻き直されると、男は山瀬の身体もろとも宙に浮き、木の上に飛び乗った。


「なんだ、あいつはー!?」

「クモイダーマンか!?」


 さらに男は、前方の木にワイヤーを射出すると、山瀬を担いだまま枝をぬって飛んで行く!


「まずい! 奴に逃げられる!」

「うおおおおお、でござる!」


 雷也は近くの木に飛び蹴りをすると、三角跳びで木の枝に乗り移り、まさしく忍者のように枝から枝へ、木の上を駆けて行った。


「さっすが、雷也だな」

「あたしたちも追うよ!」


 クラウドたちも森の中を走り、迷彩服の男を追跡する。


「なんだ、あいつは? 手練れみたいだが、カリスマ教か?」

「もしかしたら、雪姫をさらった奴かも! 絶対捕まえるよ!」


 ギミックを使っているとはいえ、山瀬を担いだ状態で素早い移動は難しいのか、敵との距離が徐々に詰まっていく。

 これなら、もう少しで追い付ける。

 そう思った、その時。


 バサバサッ!


 地面の枯れ葉が舞い上がり、地中に隠れていた3人の男たちが姿を現す。

 どの男も古文書を奪った男と同じようなスタイルで、ゴーグルとバンダナで顔を隠している。

 無言のまま対峙する、クラウドたちと迷彩服の男たち。


「あれっ、三雲!?」

「えっ?」


 だが、その沈黙を破ったのは、意外にも敵の一団の1人。


「お前は……」


 クラウドが、その男に語りかけようとしたが。


「時間稼ぎにゃ充分だろ。行くぞ、副隊長!」

「あっ、待ちやがれ!」

『ヒャッハーッ!』


 ボフンと、煙幕がクラウドたちの視界を遮り、男たちの姿が煙の中に消える。

 煙が晴れると、冒険隊の姿しかなく、男たちの痕跡すら残っていなかった。


「くそっ、足止めが狙いだったのか……」

「クラウド、さっきの奴は……」

「ああ。多分、お前らも知ってる奴だ」


 そこへ、スタッと木の上から雷也が下りてくる。


「雷也くん! 玲華さんは!?」


 雷也は静かに首を振り。


「……妨害が入って、姿を見失ってしまったでござる」

「そんな……。玲華さん……!」


 晴海はその場に崩れ落ち、大粒の涙を地に落とす。

 ブラザーズも戦争に敗れ、玉音放送を聞いた日本国民のように地面に突っ伏す。

 その姿に言葉の掛けようがなく、ただ立ちすくむ草薙。

 事件の手掛かりを握る古文書を失った事は痛手だが、かけがえのない仲間を、山瀬を奪われた事の方が、冒険隊にとっては何よりも大きい。


「くそっ!」


 クラウドは、ガツッと近くの木を殴る。

 目の前の女性の危機に、何も出来なかった自分自身に怒りをぶつける。


 しばらく誰も動かず、悲しみにくれる冒険隊。

 だが、いつまでも悲しんでばかりもいられない。

 しゃがみ込んでいる晴海にクラウドは近寄り。


「助けたい人が、増えちまったな」

「うん……」


 晴海は立ち上がり、革ジャンの袖で涙をぬぐう。

 そして、上を向き、前を見据える。

 一刻も早く事件を解決し、雪姫と山瀬を救い出す。

 冒険隊の胸に、新たな目標が刻み込まれた。



 *



 ヒュルルルル、シュパッ!


 軽い音を立てて、伸ばした左腕にワイヤーが巻き戻る。

 冒険隊の追跡をかわし、任務を完遂した迷彩服の男は、ゆっくりと山瀬の身体を地面に下ろす。

 そこへ、同じような格好をした5人の男達が、隊長とおぼしきワイヤーギミックの男の元へ集まって来た。


「ぶはーっ! やっぱ、この格好は息がつまるぜぇ!」


 口元のバンダナとゴーグルを外し、顔を見せたのは、太い眉毛の男臭い顔付きをした青年。

 サバイバル同好会の、特殊工作部隊長のムラサメ少尉と呼ばれる男であった。


「任務中は喋る訳にはいかねぇから、我慢するのが大変だったぜぇ」

「隊長は、1人でも騒がしいっすからね」

「余計なお世話だ。おめぇらだって、大して変わんねぇだろが」

「あ。そういや、副隊長は奴らに話しかけてました」


 隊員の1人が、ジロッと非難がましく副隊長らしき男を見る。


「げっ、いらんこと言うなよ」

「なんでぇ、ニワカ? おめぇがミッション中はおすまししとけっつってたんだろうが」

「すんません、クラスメイトがいたもんで、つい」

「まあ、やっちまったもんはしゃあねぇわな、次から気を付けろい」

了解(ヒャッハー)


 特に部下を咎めることもなく、ムラサメ隊長は鷹揚に構える。

 副隊長のニワカ軍曹は、地面に倒れている山瀬の姿を見て、目を丸くする。


「これが、ターゲットの生徒会副会長っすか? 髪も肌も真っ白っすね」

「ああ。すんげえ別嬪(べっぴん)だろ。その上、乳もでけぇと来てやがる」

「こんな、かわい娘ちゃんをかっさらって、カリスマ教ってのはどうするつもりなんすかね?」

「さあな。最近の上層部の考えは分からんからな……、にっくき生徒会の一員とはいえ、あんまり手荒な扱いはして欲しくねぇなあ。気絶させた俺様が言うのもなんだが」

「少尉なんだから、自分も上層部でしょうに」

「俺様は現場主義なんだよ」


 言いながらムラサメは、奪取して来たもう一つの標的(ターゲット)、古文書の巻物を軽く放り上げる。


「それ、形が似てるからって、ダイナマイトと間違えて投げんで下さいね」

「うっせぇな、おめぇはオカンか」

「軍曹っす。じゃあ、そろそろ隊長が嫌いな上層部に、報告をお願いします」


 ニワカ軍曹から、皮肉混じりにトランシーバーを手渡され、隊長のムラサメは本部に電波を繋ぐ。


「こちら、ムラサメ。オペレーション、オールクリア。オーバー……」

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