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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第三章 古文書争奪戦

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「さあ、次はどなたですか?」


 綱の上で仁王立ちをしながら、次戦の相手を要求する草薙。

 堂々とした立ち姿が、実に絵になる女性である。


「次は南斗くんの番だけど……」

「グオオオオオーーーーーッ! ◎△$♪×¥●&%#ーーーッ!!」

「やべえ、本当になんか召喚されそうだ」


 対する冒険隊の2番手は、ブラザーズの南斗の予定だが、魔獣化しつつあるクラウドを、羽交い締めしているので手が放せない。


「北斗くん、コレどうにかならない?」

「わかった、ここはオレにまかせときなー」


 コレを指すのが、事態の収拾かクラウド自身なのかはともかく、ブラザーズの北斗が前に進み出る。


「策はあるのか、兄者?」

「オレらもこのままじゃ勝負にならないし、全滅の恐れもあるからな。まあ見とけ」


 北斗は仲間達に、南の島の大王のようなビッグスマイルを見せる。

 そして、草薙に向かい、玄関先で土下座をすると。


「ナギナギさん!」


 え? わたくしですか? と、自分を指さす草薙(くさなぎ)凪沙(なぎさ)さん。


「僕たちは童貞(チェリーボーイ)です!」

「………………はい?」

「しかるに、今のあなたのあられもない格好ですと、僕たちは()ってしまって、立って戦う事ができません!」

「え、え、え?」

「ですので、勝手なお願いとは存じますが、その上着を着ていただけないでしょうか。なにとぞ、あ、なにとぞお願いいたしまするー……」


 そして、北斗は地面に頭を擦り付ける。


「すごい……。身もフタも恥も外聞もない、こんなに潔い土下座、初めて見たよ」

「でも、セクハラで訴えられないかしら」

「兄者……、男だぜ……」

武士(もののふ)の生き様を見せてもらったでござる」


 なぜか涙を浮かべる、南斗と雷也。

 北斗の魂の訴えが届き、草薙は上着を着直す。

 興奮状態のクラウドも、それをきっかけに落ち着きを取り戻した。


「おい、クラウド大丈夫かー?」

「はあ、はあ、はあ……。オレは巨乳好きじゃねーぞ……」

「何を説得力の無いことを」


 ようやく、闘える態勢を取り戻した冒険隊。


「じゃあ、2番手は南斗(オレ)で、3番手は北斗(あにじゃ)だな」

「あとはオレらにまかせて、お前らは昼寝でもしてな」


 5分後。


 雷也の隣には、墨汁に叩き込まれた2人の姿が。


「ブラザーズくん達! もうちょっと粘ってよ!」

「だってー、綱の上に立つだけでも相当難しいんだぜ」

「その上で戦うなんて、これはもう変態の所業としか」


 ムリムリと手と首を振る、真っ黒けのブラザーズにクラウドは。


「ははは、生まれて初めて、お前らの見分けがつかないぜ」

『大きなお世話だー!』

「やれやれ、オレの番まで回っちまったか……」


 クラウドは軽量化のため、リュックを下ろし始める。

 すると、晴海がクラウドの腕をつかみ。


「もう、我慢できない! お願い、順番あたしと代わって」

「えー、だめだめ。お前は秘密兵器だからな」

「え……、そうなの?」

「最後まで秘密にしておきたい感じの」

「それって、役立たずって意味だよね!」

「じゃんけんに負けたのが悪いんだろ? 大人しく見てろよ」


 足を踏まれた事を根に持っているのか、毒を吐くクラウド。

 まあ、女の子に危ない事はさせられないという、彼の優しさから来るものなのだが。

 ふくれる晴海を尻目に、クラウドはロープに足を乗せる。

 多少ふらついたものの、すぐにバランスの取り方に慣れた。


「草薙さん、オレはこれを使うつもりだけど、途中で武器交換も可能かな?」


 クラウドが見せたのは、いつもの中華ナベではなく、2m弱の白い棍。


「クラウドくん、いつもの中華ナベじゃないの?」

「あれじゃ、リーチで負けるからな。今回はこれがベストだ」

「そんな棒、よくバッグの中に入ってたね」


 四次元ポケット? と、疑問に思う晴海。


「最初にも言いましたが、何を使ってもらっても構いませぬよ」

「ありがとう。じゃあ、オレはいつでも始められるぜ」

「それでは……」


 一礼をする草薙。真似をしてクラウドも礼を返す。


「参ります、せえええい!」


 いきなり突進してくる草薙。クラウドはまずは様子を伺うつもりだったが。激しい突きを寸ででかわす。

 続けて、2段3段の突きが襲ってくるが、白い棍をうまく使っていなしていく。


「やあああああああっ!」


 面打ち、側面、すね、胴、小手、素早い切り払い、怒涛の連続攻撃。

 だが、クラウドはそれも見切りだけですべてかわした。


「貴方も、かなりやりますね……」

「どうだい? オレの棒術もちょっとしたもんだろ?」


 言いつつ、西遊記の孫悟空のように、棍を振り回すクラウド。

 最初の立ち合いで、侮れないと見た草薙は、スッと半身になり、竹刀を立てた構えに変わる。

 いわゆる、八相の構えと呼ばれる、超攻撃型の体勢。


「草薙流(いち)乃太刀(のたち)風裂断(ふうれつだん)』!」


 強烈なエネルギーを持った力の一撃、まともに受けるのは無理だと判断、クラウドは真後ろに跳ぶ。

 だが、かわされる事を先に想定していた草薙は、目標をロープに変えて竹刀を叩きつける。

 足場が揺れ、一瞬バランスを崩すクラウド。


二乃太刀(にのたち)風破斬(ふうはざん)』!」


 今度は横からの薙ぎ払う様な攻撃。しかし、この間合いでは恐らく届かない。

 だが、目の錯覚か、気合と共に竹刀の先が伸びる。

 クラウドはかろうじて跳躍、切っ先を避ける。

 さらに、息も付かせぬ対空技!


「草薙流(さん)乃太刀(のたち)翔風剣(しょうふうけん)』!」


 草薙は、ジャンプしながら斬り上げる。

 クラウドは空中にも関わらず体を捻り、攻撃を避ける。


(ぎゃく)(さん)乃太刀(のたち)落風剣(らくふうけん)』!」


 振り上げられていた竹刀を叩きつけるが、クラウドは棍でがっしりと受け止めた。

 同時に着地する2人。


「うわっととと……、怖っえーっ!」


 凄まじい猛攻に、たじたじになるクラウド。

 草薙は肩の力を抜き、両腕を下げる。


「凄いですね。正直ここまでやるとは思いませんでした。やはり、奥義を使わせていただきます」


 草薙は竹刀を片手で握り、弓を引き絞るように構える。


「次の技は当たり所が悪ければ死にます。出来る事なら今の内に降参してもらいたいのですが……」


 恐ろしく物騒な事を言い出す草薙。

 だが、クラウドは後ろ目で、チラッと晴海の姿を見ると。


「できたらそう願いたいけど、うちの隊長は逃げる事が嫌いなんでな」

「そうですか……。なら、遠慮はしません。いざ参ります!」


 空気の流れが止まる様な感覚がクラウドを襲う。


「奥義、草薙流四乃太刀(しのたち)風槍突襲撃ふうそうとっしゅうげき』!!」


 草薙は突進しながら、風の槍を繰り出す。

 片腕を捻りながら突き出された竹刀は、肉をえぐるような回転エネルギーを持ち、クラウドの心臓を狙う。

 クラウドはかわすどころか、防御行動すら取らない。真っ向から受けるつもりか?


「クラウド、避けるでござる!」


 バキッと骨が砕けた音を発して、まともに食らったクラウドは、後方に吹き飛……ばない。


「ぐあああああああっ……、なんちゃって!」


 骨が折れた音のように聞こえたが、折れていたのは草薙の竹刀。

 そして、クラウドの懐から見えたのは、伝説の中華ナベ『メガ正宗』。

 クラウドはメガ正宗を服から抜き取り、発射ボタンを押して、黒光りするナベを草薙に撃ち放つ!

 辛うじて折れた竹刀でガードする草薙。

 改めてクラウドに向かうが、クラウドはその場で棍をスイングしている。


「その長さでは、当たりませぬよ!」


 だが、2mくらいとタカをくくっていた棒が、グワッと伸長し、間合いを無視した一撃が、草薙の足を払い飛ばす!


「くっ!?」


 草薙はバランスを崩し、墨の池に落ちると思われたが、綱を掴んで落下するのを防ぐ。

 だが、竹刀を手放した、草薙の敗北は時間の問題。

 クラウドは、草薙を見下ろす位置まで近付く。


「その棒は、一体……」

「これ? 三雲雑貨店特製『如意物干し竿』。ボタンを押せば長さが変わるんだ」


 クラウドは手元のボタンを押して、竿の長さを変えて見せる。


「参りました、止めを刺して下さい。わたくしを池に叩き込めば、貴方の勝ちです」

「うーん……、それはオレにはできねーなあ」


 クラウドは、草薙を綱の上に引っ張り上げる。


「なぜ、私を助けるのですか……?」

「いやー、女の子を墨汁塗れにするのは気が引けるし」

「もし、また私が貴方に襲いかかって来たら、どうするおつもりですか?」

「ん? そんなことは、まったく考えてなかったな」


 はっはっはと笑うクラウド。

 しばらく神妙な面持ちで、考え込んでいた草薙だったが。


「……わたくしの負けです。約束通り、皆さんに古文書をお渡しします」

「やったね、クラウドくん!」


 喜ぶ晴海に、指を立てて見せ、足場に戻ろうとするクラウド。

 草薙も後に続こうとするが、連戦の疲れで足がもつれて、バランスを崩す。


「危ねえっ!」


 足を踏み外しかける草薙を、クラウドは抱き止め、図らずも草薙の体を抱き締める格好になる。


「申し訳ありませぬ……。また、助けて頂きましたね」

「いや、別にいいよ。それより早く上がらないと」

「すいません、足がすくんで……動けないのです」


 草薙にしがみつかれて、離れる事ができないクラウド。

 そして、その拍子に草薙の衣服が乱れ、胸元が目に入ってしまう。

 そこはさらしに巻かれて、谷間がくっきり浮かんでいた。


「ヤバい……。魔獣が……目覚メル……ッ!」


 ぐおおおおおーっと唸るクラウドの身体から、黒いオーラが溢れ出し、とにかく色々大変な事になりそうになる。

 そこへ、晴海のパチンコから放たれたクルミが、クラウドの背中を直撃する。


「あ?」「え?」


 ドッパーン、とクラウドと草薙は、墨汁の中に突っ込んだ。


「ぶはっ、何すんだよ! ひでーじゃねーか!」

「ごっめーん! でも、魔獣を止める方法が他に思い付かなくって~」


 あっけらかんと言ってのける晴海。


「はははー。結局、クラウドも真っ黒だなー」


 こうなっては、もう誰が誰で、誰がしゃべってるのかも分からない。

 晴海は、生徒会副会長の山瀬に尋ねる。


「玲華さん、どっかで体を洗う所ないかな?」

「そうね……、一番近いところなら、プール場があるわ」

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