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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第三章 古文書争奪戦

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夜の女子会

 だが。


「悲しい、()……」

「えっ!?」


 既に自我が失われたと思われていた、晴海が一言つぶやく。

 その眼から涙が溢れて流れ出し、そして、だんだんと彼女の意識が回復していく。


「ごめんなさい。玲華さんの瞳を見ていたら、玲華さんの辛い気持ちが、あたしの心の中に流れ込んで来たみたいで……」

「まさか……、自力で……?」

「たしかに、あたしは玲華さんの気持ちを全部理解(わか)るとは言えません。ですが、あなたが苦しんでいるのなら、その苦しみを分かち合えるようになりたいと思います」


 涙をぬぐいながら、言葉をかける晴海。

 思わぬ気遣いを受け、戸惑う山瀬。


「……どうして、あなたは今日会ったばかりの私に、そこまで言ってくれるの?」

「あたしもこんな感じですから、変わり者変わり者と言われ続けて、以前は独りぼっちでした。だから、ほっとけないのかもしれません」


 晴海は、改めて山瀬の瞳を見据える。

 言葉とは裏腹に、山瀬の心が救いを求めている事だけは分かる。

 ここで引いてしまうと、山瀬玲華という存在を永遠に見失ってしまうと感じ。


「だから、あたしは、誰がなんと言おうと、あなたの友達になります!」


 力強く断言すると、晴海は自らの慎ましい胸を張った。


「……あなたは、本当に強い娘ね」

「いえ……。あたしが強い気持ちでいられるのは、仲間がいてくれるからです。そして、あたしは、その中に玲華さんも入って欲しいと思ってます」


 晴海は、山瀬に向かって手を伸ばす。


「だから、やっぱり、あたしと友達になってください」


 けれん味のない晴海の言葉と瞳に、山瀬は。


「あなたともっと早く出会えてたら、違ったのかしらね……」

「え?」

「負けたわ。私と友達になってもらえるかしら?」

「はい!」


 山瀬は伸ばされた晴海の手を取り、晴海も山瀬の手を握り返す。


「さっきも言ったけど、後悔しても知らないわよ」

「その時が来たら、なんとかします。あたし冒険家なので」


 えへへっと、帽子のつばを上げながら、いたずらっ子のような笑顔を見せる晴海に、山瀬はかなわないなと言いたげな微笑みを浮かべる。


「では、友達になった玲華さんに、聞きたい事があります」

「……何かしら?」


 先ほどの術についてか、今回の事件に関わる事か、もしくは自分の素性についてだろうか。

 山瀬は、次に晴海から放たれる言葉に身構える。


「おっぱいって、どうやったら大きくなりますか?」


 一瞬の沈黙。


「は?」

「どうやったら玲華さんみたいに大きくなれるのかな~っと思って、なんかコツがあったら教えてもらえたらなって」


 想像の斜め上の質問に、山瀬は肩の力が抜ける。


「えっと……、あなた、何も憶えてないの……?」

「なんのことですか?」

「いえ、それならそれで都合がいいけれど……。なんで、そんなことを聞きたいのかしら?」

「あたしの好きな人は、胸が大きな女の子が好きみたいなんで、あたし小さいから悩んでるんです」


 持つものは持たざるものの悩みを量ることができないが、年頃の女の子らしい相談に、親近感を覚える山瀬。


「あなたの好きな人って、三雲くんかしら?」

「え? いや? その……」


 明らかに分かる狼狽をみせる晴海。


「むっつりスケベの?」

「あー、それはちょっと……」

「そうねえ、あの子、私の胸もちらちら見てるし、分かりやすい性格してるものね」

「クラウドくんったら……」


 おそらく、今ごろ盛大なくしゃみをしているだろうクラウドを思い、苦い顔をする晴海。


「ふーん、ふーん、なるほどねえ」


 ニマニマしながら、晴海の顔色を伺う山瀬。


「もう! あたしが誰を好きだっていいじゃないですかー!」

「意地悪だったわね、ごめんごめん。そうねえ、私も特に何かしてるって訳じゃないけど、例えば寝る前に牛乳を飲むとか」

「それはやってましたが、胸に付かずに身長だけが伸びました」

「それで、あなたはそんなに背が高いのね。じゃあ……」


 山瀬は、大人びた表情を見せて。


「男の人に揉んでもらったら大きくなるって言うわね」

「えっ……」

「あと、エッチなことすると、女性ホルモンが分泌されて、女らしい体つきになるとか……って、これはまだあなたには早すぎたかしら」


 トマトのように真っ赤になりながら、うつむく晴海。

 山瀬はそんな様子を見て、妹を見る姉のような気持ちになる。


「でも、そんなことをしなくても、あなたは素敵な子よ。だって私みたいなのを綺麗って言ってくれたもの」

「い、いえ、それは思った事を言っただけですから……」

「あなたみたいに、素直で可愛い子は他にいないわ。もっと自分に自信を持ちなさいな」

「はい……」

「あとは、三雲くんみたいな奥手なタイプは、自分から積極的にアプローチするのも手よ。私ならすぐに落とせるかな」

「玲華さん!?」


 慌てる晴海に、山瀬はにっこり笑って。


「冗談よ。あなた達がうまくいく事を心から願ってるわ」


 そう言って、山瀬は小さなあくびをすると。


「私は、そろそろ寝るわね。あなたは?」

「あたしは、もう少し夜風に当たってから寝ます。なんか、身体がほてっちゃって」

「早寝して、良い睡眠を取るのも胸を大きくする秘訣らしいわよ。じゃあ、おやすみなさい」


 ひらひらと白い手を振って、山瀬は校舎に向かう。

 その背中を見送りながら、晴海は頬を染めてつぶやく。


「大人だなぁ……」



 *



「で、これはどういう状況なんだろう……」


 生徒会室から災害対策用の毛布を拝借して、すっかり冒険隊の寝室と化している1-10教室。


 ようやく寝付いたクラウドだったが、違和感を覚えて目覚めると、晴海が自分に抱きついて寝ていた。

 とても幸せそうな顔で寝ている晴海。

 無意識の内に、積極的なアプローチと良い睡眠のアドバイスを実践しているのだろうか。

 そして、反対側の隣には山瀬が寝ているが、寝やすいように衣服をゆるめているのか、覗き込んだら谷間とか、白い肌や色んな物が見えそうな状態である。


 こんなんで、寝れる訳ねーだろ!

 と、怒り半分、嬉しさ半分で、結局今日も寝ることができないクラウド。



 5月4日の夜は、波瀾を含みながら、ゆっくりと更けていった。

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