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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第三章 古文書争奪戦

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真紅の瞳

 山瀬を新入隊員に迎え、ディナーパーティーをしたいノーテンキ冒険隊。

 生徒会室に眠っていたスパゲッティの麺を手に入れると、晴海は家庭科室でパスタを茹で、持っていためんたいふりかけをかけて。


「めんたいパスタの出来上がり♪」


 飲み物は、校内の自販機で購入したジュース。

 簡単ではあるが、歓迎会の準備が整った。


「それでは、僭越ながら、隊長のあたしから一言……」

『かんぱーい!』

『いっただきまーす!』

「ちょっと、みんなフライングしないでよー!」

「ふふふっ」


 昼はカップ麺で夜はパスタと、麺類が続いても不満を言うような細かい奴は誰もいない。

 わいわいと晩餐が進み、話の流れで一発芸大会が始まった。


「忍法、逆立ち片手腕立て伏せの術でござる」

「すごいけど、忍法じゃねーな」

「じゃあ、次はオレらだなー。分身の術!」

「さあー、どっちが本物か分かるかな」

「いや、双子が並んでるだけだし。色で見分けが付くし」

「ツッコんでばかりいないで、お前もやってみろよー」

「そんじゃ、傘を回して土瓶を乗せて……、いつもより余計に回っておりまーす!」

「マジメか」

「真面目でこざる」

「そこは、ボケを重ねるところだろー?」

「いや、パツ芸って、こういうもんじゃねーのか?」

「アドリブ効かんやっちゃなー」

「はいはい! 次はあたし! ブラザーズくん達、よろしく!」


 ブラザーズが背後から忍び寄り、クラウドの頭にリンゴを乗せる。


「えっ、まさか……」

「そして、パチンコで撃ち落とします。えいっ!」


 ドゴッ! と、放たれた弾は、クラウドの額に直撃。


「わー! クラウドくん、しっかりしてー!」

「お約束でござる」

「でも、だいぶ惜しかったなー。やっぱり腕が上がってるんじゃないか?」

「えっ? やっぱり、そうかな?」

「次は絶対当たるから、もう一回やってみよう」

「お前ら……、覚悟はできてんだろうな……」

「うわ! クラウドが生きてた」

「インディ娘ちゃん、とどめさせ!」

「うん!」

「うん、じゃねーよ!」

「あなた達、見てるだけで楽しいわね」


 なんだかんだで、大盛り上がりの歓迎会。

 ちなみに、リンゴはスタッフが美味しくいただきました。



 *



 それから、数時間後。


「えいっ! えいっ!」


 気合と共に、パチンコからクルミの弾が放たれる。

 だが、木に描かれた的に当たらず、外れた弾丸は闇の向こうに消えていく。

 晴海は皆が寝静まったところを抜け出し、校庭で街路樹を相手にパチンコの練習をしていた。


「はー、なかなか当たらないね。……よし、もう一回!」


 晴海はクルミを拾い集めようとすると、木の陰からふわっと白い女性が現れる。


「これを集めたらいいのかしら?」

「ひあっ! あー、びっくりした。玲華さん……」

「驚かせてごめんなさいね。パチンコの練習をしているの?」

「はい。あたし、実はスリングショットは上手じゃなくて、戦闘の時はいつもみんなに助けてもらってるんで……」

「あなたは、頑張りやさんなのね」


 山瀬は晴海を見つめて、艶然と微笑む。

 美しさも超越すると、男女の別も構わず魅了されるのだろう。


「え、いや、その、冒険隊の隊長ですから、みんなを守らなくちゃいけないのであります」


 晴海はドギマギしながら答える。


「玲華さんは、どうしてここに?」

「なかなか寝つけなくて、ちょっと散歩をね」

「あー、教室で寝泊まりなんて、寝心地が悪かったですよね……。無理言ってごめんなさい」

「そうじゃないわ。むしろ、キャンプしてるみたいで、みんなと仲良くなれて楽しいわ」


 そう言って微笑む山瀬は、なぜか少し寂しそうに見えた。


「今日は月が綺麗ね……。夏山さん、少し私とお話しない?」

「あたしも、玲華さんと話がしたいと思ってました」


 近くにちょうどいいベンチがあったので、並んで腰かける2人。


「私を仲間に誘ってくれて、ありがとう。とっても嬉しかったわ」

「いえ、あたしたちも、玲華さんみたいな仲間が増えて嬉しいです。特に女の子はあたし1人だったんで」

「私はずっといじめられっ子だったから、初めてよ。あなたたちみたいに、私を偏見なく扱ってくれたのは」

「えっ……」


 晴海は山瀬の顔を見つめる。

 白い髪、白い肌、赤い瞳。

 遠い闇を眺める山瀬の横顔は、蒼白い月明かりを受けて、妖しげな輝きを見せる。


「私は、常に好奇の目にさらされて来た。心無い人から中傷を受け、嫌がらせを受け続けて来たわ」

「そう、だったんですね……」

「こんな身体に生んだ親を恨んだこともあったわ。でも、私はこの身体だから私なんだって、ずっと耐えてきた」


 山瀬も、晴海の顔を見つめる。


「ほとんどの人は、私を見た瞬間、気持ち悪いものを見るような視線を向けて来たの。だから、あなた達のように、最初から普通に接して来た人は初めてだったかもしれない」


 目立つ容貌に、類希(たぐいまれ)な美貌。

 さぞ、奇異の目で見られる事が多かったのだろう。

 山瀬の心中を察すると、心が痛む。


「でも……、生徒会の人たちとは、仲良くなかったんですか?」

「生徒会の皆は良くしてくれてるけど、やっぱりよそよそしいというか、壁を感じてたわ」


 山瀬は高い空にある、頭上の月を見上げる。


「だから、私が生徒会(みんな)を助け出す事ができたら、きっと本当の仲間と認めてもらえるって思って、だから1人でも頑張ろうって思っていた所だったの」


 そんな状況でも、1人で戦い抜こうという山瀬に、晴海は昔の自分の姿が重なって見えた。


「1人じゃないですよ、玲華さんは。もう、あたし達の仲間なんですから」

「そう……、だったわね……」

「あの、お願いがあります」


 晴海は山瀬に向き合い、山瀬の白い手を握る。


「あたしと友達になってもらえませんか?」


 晴海の言葉に、山瀬は表情を曇らせた。


「それは、止めといた方がいいと思うわ」

「えっ……。どうしてですか?」

「私と友達になっても、不幸になるだけよ。辛いだけだわ」

「そんなこと……」

「私には、夢があるから」


 山瀬はゆっくり、晴海の手をほどき、ベンチから立ち上がる。


「私は、今までずっと人間の嫌な面、人の心の醜い所を見続けて来た。この世界では、見た目や生まれた場所、言葉の違い等で差別され、迫害を受ける事が少なくない」


 一歩、二歩と、晴海のいるベンチから離れ、そして山瀬は振り向き、言葉を放つ。


「だから、私は、この歪んだ世界を変えようと思ってるの」


 月の光を浴びて浮き上がる山瀬の姿は、一瞬、神の使いか堕天使を彷彿とさせる。


「そのためには、あなたも……」


 すぐそこにいるはずの山瀬が紡ぐ言葉は、彼方遠くから聞こえるように思えた。


「私の()を見て……」


 晴海は言われるがままに、山瀬の瞳を見る。

 真紅の瞳が、輝いているように見え、その光から目が離せなくなる。


「緊張しなくていいのよ……。身体の力を抜いて……」


 山瀬のささやきが脳の中に響き、晴海の体が弛緩していく。


「まだ、力が入っているわ……、楽にして……」


 山瀬の瞳の輝きが強さを増す。

 その瞳を見続けていると、もう何も考えられなくなる。


「そう、怖くないからね……。私に身も心も捧げなさい……」


 晴海の意識が混濁し、そして、山瀬に全てを委ねるような感覚に陥っていった。

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