新入隊員誕生
「何でそんな事になってるの? それは誰から聞いたの? ソースはどこから?」
その情報は、山瀬にとって寝耳に水だったようで、焦った様子でクラウド達に詰め寄る。
そして、焦りすぎて、めちゃくちゃおっぱいが揺れている。
「山瀬さん、落ち着いて下さい、ソースなら家庭科実習室にあります!」
「クラウドくんも落ち着いて。ソースは情報の出どころって意味よ」
「はっ! ごめんなさいね、取り乱してしまったわ……」
先ほどまでの、落ち着きを取り戻す山瀬。
生徒会の副会長を務めるくらいなので、学校への愛着は人一倍なのだろう。
一見、クールに見えた山瀬だが、心には熱いものを持っているように思われた。
「この情報は、考古研を倒した時に聞き出したものです。そして、あたしたちは生徒会の捜索と同時に、カリスマ教の陰謀を食い止めようとしてたところです」
「私が知らない間に、そんな事になっていたのね……。これは調べてみる必要がありそうだわ」
山瀬は自分の思考に没入する。
白い肌も相俟って、その姿はルーブル美術館に飾られている彫像のように美しい。
「ねえ、クラウドくん。玲華さんも冒険隊の仲間になってもらったらどうかな。玲華さんも生徒会を探してるし、目的が一致してるでしょ?」
「うん? そういや、そうだな……」
クラウドは、考えに耽っている山瀬に視線を向ける。
そして、その視線が胸に移動し。
「うん。いいんじゃねえかな♪」
「自分から言い出した事なのに、なんか釈然としないなあ……。けど、まあいいか」
晴海は、てけてけっと山瀬に近づき。
「玲華さん。もし良かったら、あたしたちと一緒に行きませんか? 1人だとまた敵に襲われるかもしれませんし、玲華さんの知識があると、あたしたちも心強いですから」
それを聞いて、山瀬は驚いたような顔をする。
「それは願ってもないことだけど……。私はアルビノよ。あなた達は私の事、気持ち悪くないの?」
気持ち悪い? 何が?
逆にクラウドたちが驚いたような顔をする。
「全っ然! むしろ良いものをお持ちだと思います」
「は?」
「あたしは、綺麗だなって思います」
「はいはい! オレも弟に色素を吸われたのが、オレって言われてるし」
「オレも兄者の2Pカラーと言われてるしー」
「きれいなお姉さんは大歓迎でござる」
色白の北斗と色黒の南斗は、お互いを指差して言い、雷也は美少女りすとをペラペラめくる。
山瀬は、ぷっと吹き出し。
「ふふふっ、あなたたち本当に面白いわね。私の方からもお願いするわ。仲間に入れてもらえるかしら」
『よろこんでっ!』
わーい、わーい、美人が仲間になったー、と喜ぶクラウド達に山瀬は言う。
「じゃあ、新参者から意見があるんだけど、聞いてもらっていいかしら」
「あ、はい、お願いします」
「古文書ってことは、おそらく昔からある部が係わってると思うのね。だから、学校創設時からあるクラブから当たってみるのはどうかしら?」
『玲華さん、あったまいー!』
「インディ娘ちゃん、古い部活と言ったら『都こん部』が、かなり古いって聞いた事があるぞー」
「そうなの? じゃあ、手始めに都こん部の奴らから血祭りに上げるよ!」
『うおおおおおーーーっ!』
晴海の号令に、男たちは戦いの雄叫びを上げた。
「いや、私はもうちょっと、違う部から始めた方がいいと思うけど……」
*
「くっ! こいつら、将棋部のくせに動きが速い!」
「いや、速いというより、こちらの攻めを読まれてる感じでござる」
古文書の存在を知ったノーテンキ冒険隊は、午後からは古文書の捜索を実施し、いくつかの古参のクラブの部室探索をしたが、なかなか古文書の手掛かりは見つからなかった。
この間に特筆すべきことと言えば、昼飯に生徒会室でカップ麺をごちそうになった事と、山瀬が普段はメガネをかけていることが分かり、メガネ属性もあるのかよーと、雨森ブラザーズが頭を抱えていた事ぐらいである。
動きがあったのは、太陽が西に傾き、空に赤みがさした夕方のころ。
将棋部を名乗る、着流しの集団と接触し、古文書の事を問い質したところ、いきなり戦闘が始まった。
「棋士は、何手先も読むことができる」
「貴様らの動きを読む事など、雑作も無きこと」
「喰らえ、天童将棋駒スプラッシュ!」
将棋部の手から散弾が放たれる!
「うわーっ! 目が……、目がーっ!」
「マズい! 兄者が眼球をやられたー!」
「隊列を崩すな! 攻め込まれるぞ!」
所詮、将棋部とたかをくくっていたクラウド達だったが、予想外の強さに一気に窮地に追い込まれた。
「ここはあたしにまかせて!」
晴海がパチンコをつがえて、クルミ弾を放つ!
晴海の腕前を知るクラウドは、おそらく当たらないと予測し、次に来るだろう敵の攻撃に備える。
ところが。
「ぐえっ!」「ぐわっ!」「ぐおっ!」
ビシ、ビシ、ビシッっと、次々に弾丸が的確に敵を射抜く。
動揺が隠せない将棋部は焦った様子で叫ぶ。
「なぜだ! 私達は完全に弾道を読んでかわしているはず!」
「なぜ、あんな弾が避けられない!」
これを好機と見た晴海は。
「敵は怯んだわ! 攻めるのは今よ!」
『うおおおおおーーーっ!!』
晴海の指揮に、クラウド達は一斉に将棋部に攻めかかる。
苦戦はしたものの、なんとか敵を抑えることに成功した。
「なぜだ……、私達の読みは完璧だったはずなのに……」
神妙にお縄についた将棋部の嘆き節に、晴海は大上段から言い放つ。
「あんた達の読みよりも、あたしのパチンコの技が勝ったようね」
「そんな……。ま、参りました……」
「じゃあ、古文書の情報を教えてくれる?」
「敗者は勝者に従うもの。全てお話します……」
「……もう、出てきて大丈夫かしら?」
戦闘に巻き込まれないように、晴海に隠れておくよう言われていた山瀬は、茂みの中から姿を表す。
「バッチリです。古文書の情報も聞き出しました」
晴海は、山瀬に向かってVサインを送る。
「あなた達の戦いを見てたけど、夏山さんは射撃が上手なのね」
「へへへっ、なんか急に腕が上がったみたいです♪」
と、上機嫌で山瀬に自慢する晴海。
しかし、全てを理解しているクラウドは。
「たぶん、インディコのパチンコが下手すぎて、将棋部の奴らの予測外の動きをしたんだろうな」
「そうだなー」
「おそらく、そうでござる」
ブラザーズも雷也も同調するが、それを言っても晴海の士気が下がるだけなので、4人はあえて口をつぐむ。
そして、身動きの取れない将棋部の鼻の穴に、ブラザーズが将棋の駒を詰め込んでいた事も、やりすぎなので口をつぐむ。
日も沈んでしまったので、今日の探索はこれをもって終了となった。




