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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第二章 上沢高校を巡る陰謀

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ぎゅってして

 結局、夜になってしまい行動がままならなくなったクラウドたち。

 ところ変わって、特別教科の教室棟である、六角堂校舎の家庭科室。


「こら、うまいー」

「美味でござる!」


 家庭科の実習の残りと思われる、米や冷蔵庫の中身と、晴海が準備していたカレー粉を使って夕飯のカレーを作った。

 晴海は作り慣れているのか、急ごしらえなのにめちゃくちゃうまい。


「クラウドくん、このカレー……どう?」


 ちょっと、不安げに尋ねる晴海。


「ああ、ものすごくうまいぜ。絶品だ!」


 思ったそのまま、おせじ抜きに言うクラウド。

 晴海は、その言葉を聞いてパッと顔をほころばせる。


「よかったー、あたしキャンプ料理だけは得意なの」


 キャンプ料理だけって事は、普通の料理はなんだか不安だが、ニコニコしている晴海を見て、野暮は言いっこなしだなと思うクラウド。


「やっぱり、みんなで食べると美味しいね♪」


 十数分後。結構いっぱい作ってあると思ってたのだが、ものの見事に平らげてしまった。

 クラウドたちの満足げな様子に、晴海はとても嬉しそうに後片付けをしている。

 クラウドはもっと、どんがらがっしゃーんとなる事を想像していたが、意外に女子力高けえなあと、茶をすすりながら思った。


「今日はもう寝て、明日またがんばろうね!」

「もう寝るのか。よく考えりゃ、オレ昨日から風呂入ってねーんだよな」

「きゃー、クラウドくん不潔ー!」

「しょーがねえだろ。インディコ、昨日はどうしたんだ? お前も家に帰ってないんだろ?」

「職員の宿直室のお風呂を、先生がいなかったから勝手に使わせてもらったよ」

「そんなのがあるなら、早く言ってくれよ」

「でも、拙者は風呂道具や着替えは持ってないでござる。雨森兄弟も手ぶらでござるよ」


 クラウドとブラザーズは、顔を見合わすとニヤッと笑う。


「心配すんなよ。オレは三雲雑貨店だぜ」


 クラウドは、ポンと背中のリュックを叩いて言った。



 *



 アオーーン、オンオン……。

 どこからか響いてくる、犬の遠吠え。


 クラウドは、風呂上がりの火照った体を冷ますべく、教室棟のベランダに出ていた。

 空を見上げれば、おそらく十日か十一夜の月が、闇夜を照らしていた。


 クラウドは月を見るのが好きである。

 特に、半月から満月になる過程の状態が、特にお気に入りである。

 これから大きくなっていくぞという姿を見ると、自分も頑張ろうって気持ちにさせてくれるらしい。

 決して、その期間の月が、おっぱいを横から見た形を想起させるからではない。

 クラウドが月に向かって、手を伸ばしてもみもみしているが、それはたぶん手のマッサージである。


 アオーン! ワンワン!

 野犬の鳴き声がうるさくて不粋だ。学校の敷地内に入り込んでいるのだろうか。


「ちぇっ、せっかく良いところなのに」


 何の良いところか分からないが、クラウドが上げていた手を下ろした、その時。


『クラウド! てえへんだ、てえへんだー!』


 ブラザーズが、息せき切ってやって来た。


「何だよ、うるせえな。三角形の『底辺』だー、とか言うんじゃないだろうな?」

「違う、そんな冗談言ってる場合じゃない!」

「インディ娘ちゃんが、倒れた!」

「何だとっ!?」


 クラウド達は、晴海たちがいる1-10教室へ急ぐ。


「インディコ! 大丈夫か!?」


 見ると、仰向けに倒れている晴海。

 その手首を押さえて、症状を診ている雷也。


「脈が速くて、呼吸が浅いでござる。おそらく、過呼吸症候群のようなものだと思うでござるが……」


 見ると、晴海の顔色から血の気が引いており、小刻みにガタガタ震えている。


「インディコ! しっかりしろ!」

「犬……」

「え?」

「犬、こわい、助けて……」


 晴海は犬への恐怖で怯えているのか?

 外ではワンワンワン、ワオーンと、未だに収まらない犬の鳴き声。

 クラウドは、急いで教室のベランダに飛び出し。


「うるっせえぞ、クソ犬ども! 犬鍋にして食っちまうぞっ!」


 言葉が通じたのか、気圧されたのか。

 犬たちはあわてて逃げて行ったのだろう、あれほど(うるさ)かった喧噪が、シーンと静まりかえる。


「よし、静かになったな。もう大丈夫だぞ」


 クラウドは晴海に近寄って語り掛けるが、荒い呼吸と身体の震えが止まらない。


「寒い……」

「待ってろ、今すぐ毛布かなんか持ってきてやるから」

「クラウドくん……、ぎゅってして……」


 立ち上がろうとする、クラウドのジャケットの裾を掴み、晴海は(あえ)ぐように言う。


「え?」

「ぎゅってして……」


 晴海はクラウドに抱きしめてほしいと訴えているのだろうか。

 クラウドは、思わずブラザーズ達を見る。

 3人はあごを動かし、早くやってやれというジェスチャーを見せる。

 当然、とまどうクラウド。

 だが、衰弱している晴海の様子をみると、もたもたしている暇はないように思われる。

 やましい気持ちはないからな、これは治療なんだからな、とクラウドは自分に言い聞かせて、晴海の身体をおそるおそる抱きしめる。

 晴海は女性にしては背が高い方で、身長はクラウドとも大差ないが、線が細く、頼りなく儚げで、柔らかい。


(こいつ、こんなに軽かったのか……)


 へたをすれば、男よりもわんぱくな晴海だが、こうしてみると、やっぱり女の子なんだなと改めて認識させられる。

 そのうち、晴海の震えが治まり、険しかった表情が和らいでいく。


「あったかい……」


 晴海はそうつぶやくと、すーすーと寝息を立て始めた。


「寝た……のか?」

「そうみたいでござる」

「しばらく、そうしてやってた方がいいんじゃないか?」


 クラウドは、晴海の身体を床に下ろそうとしたが、ブラザーズに言われて思い直す。


「まさか、インディコがこんなに犬が苦手だったとはな……」

「なんか、トラウマでもあるのかなー?」

「そういやクラウドも、昔、野犬に食われた事があったなー」

「食われてたら死んでるぞ。咬まれて入院した事はあるけど」

「お前は、犬怖くないのか?」

「まあ、犬は嫌いだな。今度咬まれたら、十倍にして噛み返してやるよ」

「お前はホントに、女の子以外にゃ強いよなー」



 *



 それから、数時間後。

 いいかげん腕がしびれてきたクラウドは、ようやく晴海を床に下ろす。

 ブラザーズ達は、とっくに新聞紙にくるまって寝ている。

 薄情な奴らだなと思いつつ、今回の件について変にいじって来なかった事については、心の中で感謝をする。

 クラウドは晴海が風邪をひかないように、晴海が使っていた寝袋を掛け布団がわりにかけてやる。

 そのあと、2日目の余裕も出たせいか、なんとなく晴海のほっぺたを、プニプニとつついてみた。


「う、うーん……」


 いやいやと首を振る晴海。面白いけど可愛い。


「黙ってりゃ、普通に可愛いんだけどな……」


 だが、改めて考えると。


「まあ、黙ってなくても、可愛いか……。もうちょっと胸が大きければ言う事ないけど」


 そこは、断固として譲れないのか。

 そして、クラウドはふと考える。


 何だかんだ言って、オレって頼りにされてるよな。

 第一、見ず知らずのオレに助けを求めるなんて普通は考えられないし、最初の『付きあってくれませんか』ってのも、半分は本気だったりして。

 もしかして、オレに気があるのか?


 改めて、晴海の寝顔を見る。時々にへらと笑顔を見せながら、すやすやと満足そうに眠っている。


「……オレに限って、んな訳ねーか」


 こういう事に関しては、さっぱり自信が持てないクラウド。

 モテない男は、勘違い男になるのを恐れ、どうしてもネガティブに考えがちである。

 そして、先ほど抱きしめた晴海の身体の感触を思い出し、1人、欝々悶々とする。


 今日もクラウドは眠れそうになかった。



 こうして、5月3日の夜は、慌ただしく更けていったのである……。

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