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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第二章 上沢高校を巡る陰謀

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19/93

アンバランス

「! なんで、あなたが『ユキ』の事を!?」


 ユキ? 聞いた事の無い名前に、クラウドは首をひねる。それにスワン・コンツェルンって……。


「氷室探偵社の情報網……というより、この事件の依頼人は、この学校の校長である、あんたも良く知るスワン・コンツェルンの会長だからな」

「何だって!?」

「そして、あんたが令嬢の親友で、本当の目的はその娘の救出であるのも、すでに聞いているって訳だ」

「じゃあ、最初からそれを知ってて、あたし達に近づいたって事?」


 言葉を失う晴海。ハナから雹河に踊らされていたのか。


「……あんた、とんだ食わせ者ね。でも、それなら話は早い。あたしは逃げないよ。あたしは絶対にユキを助け出してみせる。たとえ命を失ってでもね!」


 クラウドは、晴海の背中に赤い気炎が揺らめいている様に見えた。


「友情のためか? 何が、あんたを突き動かす? なんで、あんたをそうまでさせるんだ?」

「それは、あたしが冒険家(あたし)だから」


 しばし睨み合う、晴海と雹河。

 雹河は肩の力を抜くと、この男に似つかわしくない楽しげな笑みを見せた。


「負けたよ。あんたなら、大丈夫な気がしてきたぜ」

「あたしも雹河くんに言われたら、何とかなるかなと思えてきたよ」

「たいしたもんだよ、全く」


 雹河はサングラスを外し、ポケットに収める。

 そして、慣れた手つきで、晴海のあごを上向け。


「女なのにいい度胸だ。あんたみたいなイイ女は放っとけないぜ。ボクの彼女にならないか?」


 突然の告白に、それを見たクラウドは心臓が飛び出そうになる。

 対する晴海は、口を真一文字に引き締めたまま。


「ごめんなさい。あなたは悪い人じゃないみたいだけど、乱暴な人ってあまり好きじゃないの。どっちかって言うと……」


 晴海は、丁寧に雹河の手を振りほどき、クラウドの腕を取る。


「あたしは、クラウドくんみたいな人の方がいいな」

「イ、インディコ!?」

(お願い、演技だからじっとしてて……)


 雹河は、カチコチに緊張しているクラウドと、晴海を見比べ。


「ボクに言わせれば、てめえは彼女と釣り合ってない様に見えるがな」

「! お前、ケンカ売ってんのか?」

「忠告しているだけだ。釣り合わないといっても、容姿とかじゃない。内面的な所の話だ」

「どういう意味だよ」

「それぐらい、自分で考えろ。脳みそ持ってんのか?」


 まさに、一触即発の2人。

 晴海はクラウドの腕を、ギュッと抱きしめる。

 そんな、晴海の姿を見やった雹河は。


「……今日の所は彼女に免じて許してやる。ありがたく思え」


 自分から引き下がり、暴風警報は解除された。


「話は変わるが、てめえは『異世界』の話を聞いた事があるか?」


 異世界? 急にファンタジーな話になり、混乱するクラウド。


「大阪の通天閣がある?」

「それは新世界だ。くだらねえ事を言うな、殺されたいのか?」

「待って。あたし、知ってるよ」


 晴海はクラウドたちが自分の方に注目するのを待って、話し始める。


「子供の時だけど、町の中に違う世界の扉があるって聞いたことがあったわ。だから、あたしは探し歩いて、色んなところのドアやマンホールを開けまくった事があるの。怒られてやめたけど。でも、それがどうかしたの?」

「ボクも噂では聞いた事があったが、今回の事件で上沢高校の事を調べていく内に、こんな話を耳にした。異世界の入り口だった土地に、上沢高校が建っているとな」

「何だって?」

「まだ詳しく調べる必要があるが、この話が事件のカギを握っている様な気がする」

「へっ、メルヘンって柄でもねーだろ。なぜそう思う?」

「こういう言い回しは好きじゃないが、『探偵のカン』だ」


 晴海と似たような事を言う雹河に、クラウドはちょっと顔をしかめる。


「晴海、あんたも興味があるなら、調べてみるといい」

「雹河くん、色々ありがとう」

「異世界か。なんだかマンガみたいな話だな。お前らはどう思う?」


 ブラザーズは寝ていた。

 のみならず、雷也まで高いびきをかいている。


「おい! お前ら、寝てんじゃねーぞ!」

「う~ん、あと5……」

「5分とか言うなよ」

「5時間」


 クラウドは、リュックからバケツを取り出し、ブラザーズにかぶせてガンガン叩き鳴らす。


『うっわー!』

「寝ぼけながら、ボケんな!」

「だって、氷室の話長いんだもんよー」

「そういえば、ばいと代、まだ貰っていないでござる」


 雹河は懐から財布を取り出すと、一万円札を3枚抜き取る。


「1日分だったな、受け取れ」


 左手の蒼いグローブの指に1枚ずつ挟み込み、スナップを効かせて投げ放つ。

 ただの紙であるはずの万札が、奇妙な硬度を持ち、雷也の足元の床に深々と突き刺さる。

 が、すぐに形を失い、普通の紙幣に戻った。


「これは……? 手裏剣でもないのに、どういう仕組みでござるか?」


 雷也は万札を床から抜き取りながら、首をかしげる。


「氷室、お前……」

「これが、ボクの新しい能力(ちから)だ。そろそろ行くぜ」

「雹河くん、ユキが校長の娘だって事、他の人に知られちゃダメだよ」

「探偵はそんなヘマはしないさ」

「探偵なら、浮気調査かゴミでもあさってろ!」


 雹河はシニカルな笑みを見せ、サングラスをかけると、扉の方へ歩き去った。


「あいつ、ますます人間離れして来たなーってか、むしろ厨二に拍車がかかったというか」

「忍者みたいでござるな」

「お前が言うなよー」


 そして、なんだか晴海はピンと来た。


「あ。クラウドくんと雹河くんが仲が悪い理由って、もしかして『あっち向いてホイ』の?」

「氷室は校内予選決勝の相手だよー」

「やっぱりね。だから、クラウドくんを目の敵にしてるって訳か。プライド高そうだもん」

「まあ、それもあるけどー」

「クラウドと氷室の間には、絶対に相容れない壁があるわけで」

「?」


 クラウドは、雹河が立ち去った扉を見つめながら呟く。


「あいつが出張って来てるとはな……。めんどくさいけど、負ける訳にはいかねーな」

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