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美少年の頬笑みは危険な香り  作者: ミケ~タマゴ
3/5

♡03話 王宮舞踏会で

  


「お嬢様、お迎えの方がおいでなさいました」


 今日は王宮舞踏会の日です。支度を済ませて、大きな姿見の前で、着付けをしてくれた三人のメイド達が、最後の確認をしてくれているところで、メイドが呼びに来ました。


 きれいに上に結われた髪には小さめの銀のティアラ。端には花の銀細工がついていて、小さなダイヤがたくさん埋め込まれキラキラと光っています。


 先に小粒のダイヤが付いた、揺れるとキラキラ光る細い銀の鎖が二本付いた、花の銀細工の中心にダイヤが埋め込まれた耳飾り。胸元には銀の鎖に、端から段々と散りばめられたダイヤが多くなっていく、首飾り。首飾りの両端には小さな花の銀細工がついていて、ティアラや耳飾りとお揃いになっています。どれも豪華で上品な作りになっていました。


 白いドレスはふんだんにレースが使われ、腰から下は花びらのようにレースが重なっていました。胸元と肩口にもレースが使われています。下半身は贅沢にレースが使われ、上半身は光沢のある白のサテンで、体に合ったすっきりとした線が出る作りになっています。豪華でありながら、清楚な雰囲気もあるドレスでした。


「完璧でございます。お美しいです」

「白い花の精のようでございます」

「全力で取り組んだ成果が出ております」


 メイド達は口々に称賛の言葉をかけてくれた後、肩に花模様の白いショールをかけて送り出してくれました。


 玄関ホールにつくと両親と二人の少年がいました。


「おお、綺麗だ」

「まあ、なんてよく似合っているの」


 両親が嬉しそうに声をかけてきます。


「わあ、姉上だよね? 姉上なんだよね? どうなっちゃったの?」


 驚いてのけ反る弟は、褒めてるのか、貶しているのかよく分かりません。


「キレイだ……」


 感動したように呟いた少年の方を見ます。


「キレイ……」


 思わず呟き返してしまいます。肩口まで合った白に近い金の髪は、首もとが出る長さに切られています。前髪を後ろに流して、ふわふわしていた巻き毛は、落ち着いた大人っぽい感じで整えられていました。


 衿の端が外側に折れた白のシャツ。綺麗に結ばれた白のボウタイ。タイと同じ白のドレスベスト。

 上着の胸ポケットからは白いシルクのポケットチーフで出来た三角の山が段々に重なり、三つ見えています。二本の側章が入った黒のトラウザー。光沢のある黒のエナメルの靴。足の長い、細身でしなやかな少年の体に黒の燕尾服がよく似合っています。


 キレイと言うより、美しいと言う方が正しかったかもしれません。こうして正装した少年を見ると、背も高くなり成長した事を感じました。グッと大人っぽくなった少年に見とれてしまいました。


「マリ……コホッ、」


 名前を呼びかけてこようとして、少年は口元に拳を当てて咳払いしました。

 表情を引き締め、姿勢を正すと胸に手を当てて優雅に一礼します。


「セオフィラス・マリオン・ハーラグッロ・テンシスーマイルと申します。本日はこんな花のように美しい女性と過ごせる役目を任されて幸せです」


 いつもより、低めの声で大人っぽく挨拶の口上を口にしていく少年を、微笑ましく見つめました。少年の後にドレスを摘まんで膝を曲げ、礼を返しました。


「マリサリーヌ・ララリス・モモコ・ウエストラッキーフィールドですわ。こんな素敵な、宝石のように麗しい殿方と過ごせる時間を持てる幸運に感謝しますわ」


 いつもより高めの声で、賛辞を交ぜてこちらも大人っぽく優雅に挨拶を返すと、少年が一度瞬きをしました。

 元々うっすら桃色の頬の色味が、赤く濃くなりました。どうやら、照れているらしいと分かって微笑ましさが、一層増します。

 口元に笑みを浮かべた少年と、こちらも笑顔を浮かべて見つめ合いました。


「わあ、猫が飛び交ってるぅー。口から砂が噴き出そう」


 黒っぽい布で体を隠した、血の繋がりのある小僧が何か言いました。少年と二人で小僧の方を向きます。


「あら、レイ、なぜいるのかしら? あなたは舞踏会には行けないでしょう?」


「ああ、ほらでも、見送ろうと思ってさ。姉上がデビューする記念の、ヒィ!」


 少年の方に視線を向けた小僧が、顔をひきつらせて、語尾を跳ね上げます。


「そうね、記念日になるわね。そう言う事なら、お見送りありがとう」


 お礼を言うと真っ青になった弟がコクコクと頷きました。


「そろそろ、出発しようか」


 父の声がかかると、少年がこちらを見ました。近づいてきて、姿勢よくスッと手を差し出してきます。


「お手をどうぞ」


 声をかけられて、差し出された手の上に手を載せました。






       ◇◇◇



 あれから、両親と四人で馬車に乗り、王宮に来ました。王族や主要な方々への挨拶も済ませした。両陛下や、王族や高位貴族の方々のダンスも終わりました。


 今は今日社交界デビューする、白いドレスの女性を伴ったカップルのダンスの時間です。


 大広間のダンスのために空いた空間に腕を組んで進むと、手を離して向かい合いました。

 お互いに礼をすると、近づいて右手を伸ばし、少年の伸ばされた左手と手を重ねます。左手は肘を曲げて持ち上げると、少年の右腕の付け根の裏のあたりにそっと添えました。

 少年も形よく肘を曲げて右腕を持ち上げると、手のひらを左側の背中の肩甲骨を押さえるように当ててきます。真正面ではなく、体を左側にずらせて、少年と向かい合いました。


 

 かかる曲は、秋の実りを祝うワルツです。曲の始まりとともに予備のステップから、ワルツを踊り始めました。大広間にフワリと白いドレスの花が一斉に咲きます。

 二人でリズムに合わせてステップを踏んでいきます。段々と緊張も無くなって、笑顔が浮かびました。

 緊張がとれて、力の抜けてきた体を少年のリードに合わせます。ステップが軽やかなものになり、重なったレースの裾がフワリと広がります。少年の燕尾服の裾も翻ります。曲に合わせて踊る時間は楽しく過ぎていきました。

 もう、何度か二人で練習したかいがあり、息ぴったりに踊る事が出来ました。


 無事踊り終わると、少年が右肘を出してきたので、左手を添えました。二人で中央から引きあげます。


「よかった。二人でうまく踊れたね」

 

 少年が笑顔で話しかけてきます。


「ええ、最初はとても緊張したけれど、楽しく踊れたわ」


「ねえ、僕は大きくなったんだよ。こうして舞踏会で、一緒に踊れるくらいに……」


 同じように笑顔で答えると、少年は足を止めてこちらを真剣な表情で見つめてきました。いつもと声も口調も違います。


「僕はきみを『マリサ』と呼びたい。ちゃんづけはもうやめたい。きみにもただ『セオ』と呼ばれたい」


「ええ、いいわ。レイもそうしてるものね」


 気持ちよく承知すると、少年が大きく目を見張りました。組んだ腕をほどいて、両手を上下させます。


「や、いや、そうじゃなく、いや、呼び捨てはいいんだけど、いや、意味が」


 何だか慌てた様子で話し始めます。


「あー、ねえ、あなた」


 アワアワと話している少年の背後から、可愛い幼い顔立ちをした赤いドレスの若い女性が現れました。童顔なのに胸元はボンと盛り上がっています。少年の背中に手を当てて、回り込むように少年の顔を見ます。女性の顔を見て、少年がギョッと目を見開くのが目に入りました。


「ああ、やっぱりあなただわ。こんな所で会えるなんて! お礼を言いたいと思ってたのよ」


「な、何の事でしょう! 僕はあなたを知りません! お人違いではないでしょーか!」


 慌てていた少年の様子が焦ったようなものになります。


「またあ、とぼけないで。この顔を見間違えるわけないでしょ! あなたが色々教えてくれたから、いいパトロンをつかまえられたわ。おかげで王宮舞踏会の余興で歌える事になったのよ」


「な、何の事だか……わきゃりません」


 女性の言葉に少年の答える声が上擦ります。


「あんなに親切にしてくれたのに、何でとぼけるの? まあ、いいわ。お礼を言いたかっただけだから。本当にありがとうね」


 不思議そうに首を傾げた後、女性は焦る少年の頬に口づけして、ニッコリ微笑みました。


「じゃあね。また、劇場の楽屋にも来てね。サービスするわ」


 そう言って手を振りながら、去って行きました。


「……あれは今、売り出し中の歌姫かしら」


 赤いドレスの女性の後ろ姿を見送りながら、呟きます。


「さ、さあ、やだにゃ、誰と間違えられたのかにゃ」


 頬に派手な赤い口紅の跡を付けた、他人のマセた小僧が、化け猫─いえ、バカネコ化しています。


「あなたを人間違(ひとまちが)いするのは、難しいわね」


「あ、ああ、そう言えば、ここの庭園は素晴らしいんだって。行こう! 見に行こう!」


 目を細めて小僧を見ると、小僧が叫ぶようにそう言って、手を掴んできました。





      ◇◇◇




 大広間から庭園に出ました。手を握り、引っ張るようにここまで連れてきた小僧の歩調が、ゆっくりしたものになりました。


「ここの道には、あちこち明かりが置いてあって、夜でも花が楽しめるようになってるんだって」


 姑息な小僧が、どこから仕入れた知識か、口紅を付けたまぬけ面で説明してきます。


「今は、秋の花なのかな。四季折々で花を観賞できるように工夫してあるんだって、さすが王宮の庭園だよね」


 早口で説明してくる、とぼけた小僧と庭園の小道を歩きます。

 歩いていると、道の向こうから男女が歩いて来るのに気づきました。

 茶色の髪の女性と、輝くような銀色の髪のスラリとした背の高い男性です。遠目でも男性の容貌が美しいのが分かりました。


「ああ、見てはいけないものが!」

 

 焦ったような声を上げた小僧に道の脇に追いやられ、背後から手のひらで目を覆われました。

 暫くすると、側を人が通り過ぎていく気配がしました。


「何? 何で目隠しなんてしたの?」


 目を覆っていた手のひらが外されると、おかしな小僧の顔を見ます。


「見たら目の潰れそうな男が、女性とイチャイチャしながら歩いて来たんだよ。

 あれは見てはいけないものだった。僕の方が、後、何年かすれば絶対美しい男になるし……」


 あかしな事を言うおかしな小僧に、再び手を引かれ、庭園の小道を歩き始めました。


 歩いていると、また道の奥からこちらに近づいてくる男女の姿が見えました。

 青色の髪の女性と珍しい藤色の髪の背の高い男性でした。

 何だか男性の歩いてくる姿に惹きつけられます。胸の奥がザワザワするような雰囲気のある、男性だと思いました。


「ああ、目にしてはいけないものが!」


 また、叫んだ小僧に慌てたように道の脇に寄せられ、今度は後ろ向きにされました。道の方に振り向けないように背後から覆い被さってきます。少し経つと、人が側を通り抜けていく気配がしました。


「何? 何で後ろ向きにしたの?」


 覆い被さっていた体が退くと、変な小僧の顔を見ます。


「見たら目から犯されそうな男が、女性とベタベタしながら歩いて来たんだよ。

 あれは目にしてはいけないものだった。僕の方が後、数年もすれば絶対に色気のあるいい男になるし」


 変な事を言う変な小僧に、また手を引かれ、庭園の小道を歩き始めました。




 


 二番目のカップルの青年の髪色を藤色→菫色→藤色


 変えようと思いましたが、戻しました。1日の変更でしたが、不快な思いをしたり、混乱された方がいたら申し訳ありません。  m(__)m

 作者の頭が考えすぎで混乱してました。

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