特異能力 発現
ガストンに出口の見張りを任されたギーガ、グゼル、ゲジゲジが不貞腐れながらもその場に佇んでいると、しばらくして洞窟の奥からセージ達三人組が現れた。しかし――
(一人、メンバーチェンジしたのか……?)
デフォルトデザインの軽戦士の姿が見えず、代わりに青白い虎の獣人がパーティに加わっている。
__ LV12 重戦士 HP:280 MP: 55
(洞窟の奥に野良プレイヤーがいたのか……厄介だな……。)
キャラクター名が先程の初心者と同じなのに引っ掛かりを覚えるものの、3人はそう結論付けた。
「自分からのこのこやって来るなんてどういう風の吹き回しだ?こっちは手間が省けて有難いがな。」
セージ達は黙して語らず、ただ睨みつけるのみである。
(おそらくはバトルのどさくさに紛れてパーティから外した初心者を逃がし、援軍を呼ぶつもりだろう。)
「グゼル、パーティーから外れろ。洞窟の奥から新手が何人か来るかもしれん。そっちを頼む。」
軽戦士のグゼルはパーティーアウトすると、洞窟の出口近くに下がった。
「下らねぇ小細工しやがって気にくわねぇ。速攻ブッ殺してやる。」
バトルフィールドが展開され、プレイヤー同士の戦闘が始まった。
セージ
__
ペトラ
VS
ギーガ
ゲジゲジ
重戦士ゲジゲジはセージに向かって特攻し、通常攻撃でHPとAPを削る。そのまま2人は接戦に持ち込んだ。
ペトラはセージの後ろに控えた。防御力の低い彼女は一撃でもスキルを受けると危険だ。MPの残りも心もとない。
虎の獣人のプレイヤーは回り込んで魔術師ギーガを狙う。高レベルの魔術師は状態異常のスキルも豊富に揃っており、うかつにAPを貯めさせるる訳にはいかない。
ギーガの方も、いくらレベルに差があるとはいえ、ジョブの性質上接近戦に持ち込まれるのは宜しくない。獣人を牽制しようと速攻でスキルを放つ。
「ファースト・アルド・ファイアボム!!」
巻き起こった炎が獣人を焼く。
「ぁぐっ……!!」
__ LV12 重戦士 HP:160 MP: 55
たった一撃で獣人プレイヤーのHPが大きく削られるのを見たギーガはほくそ笑んだ。
ギーガはそれでも突撃してくる獣人から背を向けて距離を取る。そして振り返ったその時、
「何!?」
ギーガは我が目を疑った。ギーガを追いすがって近接攻撃をしようとしているのが『獣人』ではなく『赤いイメージキャラクターのデフォルトデザインの軽戦士』だったからだ。
(さっきの初心者がバトルに乱入してきたのか?!)
攻防を続けながらも、奇襲を危惧して獣人の重戦士の姿を探すが、何処にもその姿が見当たらない。
「何だこいつ……?! その軽戦士に気を付けろ!! こいつは……」
グゼルが警告の声を上げる。
デフォルト軽戦士が攻撃の手を休める。
そして、ギーガ、グゼル、ゲジゲジは見た。
――軽戦士、やんちゃな男の子がそのまま成長したかの様な赤い髪の若者の姿にノイズが走り、姿がブレる――
――数秒のノイズの嵐の後、その場に出現したのは――
銀髪をたなびかせる清楚で淑やかな美女だった|。
「「バカなっ!!」」
銀髪の美女は涼やかな声でスキルを詠唱する。
「ファースト・エクス・ヒールライト!!」
セージのHPが回復する。銀髪の美女はそれを見届けると再びノイズの嵐に包まれ、『青白い虎の獣人』の姿に変化した。
(あの初心者、変身できるのか?! そんなバカな?!)
「何だそれっ有り得ねえ!! テメェ一体何をしたんだ?!」
ゲジゲジは唾を飛ばして喚く。
再び虎の獣人に近接戦を仕掛けられたギーガは、重戦士のステータスに目を走らせ、目を剥いた。
__ LV12 重戦士 HP:280 MP: 55
(HPとMPが全快している?!)
全ジョブのスキルを使うだけに飽き足らず、変身を許すたびに全快状態に戻る。
他プレイヤーと一線を画するデタラメな能力だ。
ギーガは血走った眼で叫んだ!!
「グゼル、参戦しろ!! だが、こいつだけは絶対に殺すな!! どうやったのか吐かせる!!」
グゼルが参戦し、重戦士に向かって斬りかかる。その時、
「フォース・フィール・スパイダーネット!!」
獣人の重戦士に注意が向かっている隙を突き、戦線の中央付近まで回り込んだペトラが最後のMPを消費して足止めのスキルを仕掛けた。
ゲジゲジの足元に強靭な糸が絡みつく。
ペトラはそのまま洞窟の出口へ駆け抜けようとすした。
グゼルは標的をペトラに切り替え、ペトラに斬りかかろうとする。
「ファースト・エクス・バウンドショット!!」
獣人の戦士が即座に赤い髪の軽戦士に変身し、グゼルを弾き飛ばす。
ペトラは逃走に成功し、バトルフィールドを抜け出した。
セージは背後からギーガを斬りつけ、ギーガのアクティブゲージを大幅に奪ったのを確認するとペトラの後に続き、出口付近ギリギリに陣取り、最後に残った仲間を呼ぶ。
「ヒカリ|っ!!」
しかし、
「フィフス・アルド・マジックハンド!!」
ゲジゲジがスキルを放つ。
半透明の巨人の手が出現し、走り抜けようとした赤い髪の軽戦士―ヒカリを高速で鷲掴み、ゲジゲジの元へと手繰り寄せる。
「こいつだけは逃がしてたまるか!!」
だが、倒れ伏すヒカリの姿を見て顔色を変える。
――襟元にスカーフを巻き、大きなリュックを背負った二足で立つ桃色の猫――『ジョブ:商人』
商人は当然ながら戦闘能力に乏しい。しかし、パーティを組んでの戦闘で棒立ちという訳にもいかない、という訳かどうだか一風変わったスキルを取得出来る様になっている。
ヒカリがスキルを放った。
「フォース・アルド・ポジションチェンジ!!」
ヒカリの姿がかき消え、代わりにその場に間抜け面を晒したギーガが出現した。
消えたヒカリは先程ギーガが立っていた場所に出現する。
対象一体と立ち位置を交換するスキルだ。
ヒカリは即座に軽戦士に姿を変えると、出口へと再度走り出す。
慌てたギーガが攻撃スキルを仕掛けるも、耐え抜き無視して駆け抜けた。
――そしてグゼルを弾き飛ばしたセージと共に、水晶の洞窟を抜け出し、バトルフィールドからの逃走に成功した――
スキルてきっとーに書いちゃったんで後々いじるかもしれません。