特異能力の片鱗
「畜生、やっちまった! 面倒くせえ!!」
ガストンは毒づいた。
ガストン達は本当はセージ達の監禁は考えていなかった。時間を浪費するなど以ての外、全員この場で倒してしまう予定だったのである。
「追いかけないんですか?」
ガストンは一瞬迷った後、答えた。
「この先は曲り角がある。隠れるのにちょうどいい岩陰も多い。うっかり取り逃がすかもしれないから却下だ。」
「しゃーねーな。俺はギルドに戻って報告してくるから、お前らはここで見張りやってろ。唯一の出口であるここさえ塞いでしまえば連中は出てこれない。粘る様なら追い立てる用の仲間を追加に寄越すから我慢してくれ。」
不満を口にする3人を適当にあしらうと、ガストンは街に戻っていった。
水晶の岩陰に隠れ、ギリギリまで近づいて彼らの話を盗み聞きしたペトラは、そっと洞窟の奥のセージ達の元へ戻った。
セージとヒカリに会話の内容を伝えるも、二人の返答は芳しくなかった。
壁に凭れ掛り、空返事をするのみである。
ペトラは焦った。
「あの様子では、私達を監禁するだけでは済まないと思います。早くここから逃げないと……」
「メールの機能が復活するのを待つか、運よく誰か通りかかる事を祈るしかないな。」
切迫した状況だというのに、セージが心の底から投げやりだ。
そんな彼の様子にヒカリはやりきれなくなった。
(本当に、出来る事は何も無いの……?)
涙に滲む視界で、それでも何か手立てを探そうと、ヒカリは情報画面に目を走らせる。
そしてヒカリは現在使用可能な己のスキルに目を通した。
ファースト・ネクス・フルストライク
ファースト・エクス・バウンドショット
フォース・ネクス・アーマーキル
・
・
――視界にノイズが走る――
(あ、あれ…?)
ヒカリは表記を見て目を疑った。
ファースト・エクス・ヒールライト
ファースト・ネクス・コメットハンマー
フォース・フィール・スパイダーネット
サード・ネクス・パワーヒール
・
(所持スキルが――書き換えられた……?)
軽戦士のスキルでは無くおそらくは聖職者のスキルが表記してある。
ヒカリは目をこすって再度画面を見返す。
ファースト・アルド・ファイアボム
ファースト・エクス・ウインドカッター
セカンド・フィール・アシッドレイン
サード・ネクス・ショックウェイブ
・
・
(……???)
また、変化している。
途方に暮れて、セージとペトラの方を向くと、二人はぽかんと口を開けてヒカリを凝視していた。
「…………えっ……?」