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ギャグ短編6

生産職の苦悩



「セージさん、セージさん、大変です !! 怪しい集団がやってきて、鬼弁慶さんが連れて行かれました !!」

セージは慌てて駆け寄ってくるヒカリの言葉を聞いて面喰らい、首をひねった。


「えっ、何で鬼弁慶さんが?……はっ!まさかファルコンアローの残党がっ!!」

「……セージさん……いい加減その発想から離れて下さい……」


セージのトラウマは重傷だった。


「いやだってさ、誰が何のために鬼弁慶さんをさらうんだよ。怪しい集団ってどういう事だ?」

「ええと、何ていうか、その――」


ヒカリは何と表現すればいいのか分からず言い淀んだが、兎にも角にも伝えないと話にならない、とセージの問いにこう答えた。


「相手は……たぶん、邪教集団なんです !!」


「……は?」


「え、だって、そうとしか言い様が。」

「……邪教、集団……??」

セージは鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔になった。



プレイヤー達から情報を収集し、集団と鬼弁慶の向かったであろう居場所はすぐ判明した。


ブリック・ガーデン城内部、それも図書館と対になっている塔の内部だ。


そちらも大まかには図書館と似たような構造の造りの部屋となっており、一口に表現するなら『ファンタジー風、召喚儀式の間』といった場所である。


紫の光に満たされた空間で、上空と床には光を発する巨大で複雑な魔法陣が描かれ、中央には祭壇が設置、祭壇には魔王っぽい邪悪な姿のNPCが佇んでいる、といった部屋だ。


そんな塔に向かう途中の廊下で、セージとヒカリは早速異変に気付いた。


床にモンスターの剥製、悪魔の像、毒々しい草花、不気味な絵画といった怪しげな代物がわんさか転がっていたのだ。


二人は嫌な予感に襲われたが、ここで引き返す訳にもいかない。


セージは腹をくくって塔の入り口の扉を勢いよく開いた。

そして――


「なっ……何だコレ?!」

上擦った声で叫んだ。



ただでさえ怪しげな内部はさらにヤバげな場と化していた。


部屋には廊下で目にしたものと同じ不気味な置物が、意味深な配置で置かれている。

八角柱の角には絶え間なく蒸気を吹き出す鍋が置かれ、周辺の視界は半分、煙に覆われてしまっていた。

壁には赤ペンキで謎の文言がびっしりと書き連ねてある。


何より異様なのは、そんな場所に黒いフード付のローブを羽織り、顔に仮面を付けたプレイヤー達が所狭しとひしめき合っていた事である。


黒ローブの集団は、祭壇を取り囲む形で集い、取り憑かれたかの様にぶつぶつと呟き、時折奇声を上げながら一心不乱に猫じゃらしソード(おしゃれ用装備)を振り回していた。


そして肝心の鬼弁慶はというと、祭壇手前に胡坐をかいて座っていた。

これまた怪しげな装飾をわんさか施された状態で、その顔には諦観の念が浮かんでいる。



まさに「邪神を召喚しようとしてる」様にしか思えない図だ。

セージはドン引きして後ずさり、ヒカリもセージの後ろに隠れてブルブル震えた。


「あれ?セージさん?」

その時、熱心に祈っている一団の中から、黒フードの一人が立ち上がりセージ達の元へと歩み寄ってきた。


「こんな所まで足を運ぶなんて どうかなさったんですか?」


その小柄な姿を目にしたセージは、何とも言い難い表情を浮かべた。


「それはこっちが聞きたいですよ……一体何の騒ぎです?ケットシーさん。」


フードと仮面を外した黒猫はセージの問いに小首をかしげた。



「何ってセージさん、この間私達商人プレイヤーに常備して置く回復アイテムの他に強力な装備を複数製作する様に頼んだじゃないですか。」

「ええ、頼みましたね。」


これまでセージ達は強力な装備を貸し借りしてその場を凌いでいた。

だが、元の世界へ帰還する方法を探すため、今後はより危険なダンジョンに複数人数で挑む可能性が出てくる。

また、プレイヤー強制参加のイベント事件があった事からも、いざという時に備え質も数も揃えておくべきだろうという結論に至ったのだ。


ケットシーの話を聞き、改めてセージは黒ローブ集団のステータスを覗いた。そこに集っていたのは、確かに商人プレイヤーばかりであった。


「私達商人系プレイヤーも、お力添えが出来ると聞いてはりきって素材を集め、装備の製作にとりかかってきたんです。ですが……」


ケットシーはへにょり、と力無く耳と尾を垂らし、深くため息をついて言葉を続けた。

「ご存じだとは思いますが、強力な装備を作るのは果てしなく低い確率との闘いのです。」



『タクティス・アドヴァンテージ』は基本無料のゲームで、その収入源の一部に『強力な装備』販売も含まれていた。

なので、生産で強力な装備を作成するのは茨の道となっている。(むしろ、課金装備に比肩しうる装備を作成できる可能性が僅かでもあるというのは良心的な采配かもしれない。)


具体的な作成方法を上げるならば、まずは数種類の素材を集め、基本の装備を作る。そして、さらに素材を費やしてその装備を強化していく形なのだが、

強化する際、素材も装備も消滅する確率があるのだ。もちろん、消滅の確率は段階を踏んだ強化の際に跳ね上がる。



「手の空いてる方をかき集め、素材を集めては挑戦し、作った装備が消滅し、また作る、といった繰り返し――頑張って取ってきてもらった素材を幾つ浪費した事でしょう……『次こそは』と気合いをいれて作っても作っても消えていく装備、繰り返される1からの作業…… 折れるんですよ!! 心が !!」

ケットシーは魂の叫びをセージに訴えた。


「……で、自棄になって、全てを破壊しようと企んだ、と?」

「何でですか。成功を願って願掛けを始めただけですよ。この装飾は運気をアップさせるアイテムなんです。」


成程、とセージは一応は納得した。


「は、はあ……ご協力には大変感謝しますが、あまり根詰めないで下さいよ。 ところで、『願掛け』って何か特定の神様や悪魔に祈っているんですか?」

このまじないだと西洋式?運気を上げる神様って何だっけ?と悩みつつセージは尋ねた。


「いえ、特には。これは『神秘学と西洋式風水と新世紀ウィッチクラフトに詳しい』という『とある方』にレクチャーして頂いたおまじないです。」

「騙されてる !! それ絶対に騙されてるから !!」

セージは可能であれば肩をわし掴んでぶんぶん振り回しそうな勢いでケットシーに詰め寄った。



「あのう」

セージの後ろで困惑しながら話を聞いていたヒカリがセージの袖を引く。


「廊下の方から……すすり泣きが聞こえてくる気がするんですけど……」

「え?まさか、邪神じゃなくて怨霊が召喚されたとか?」

「怖いこと言わないで下さい !! ……あ、向こうに泣いている猫さんが」


言われてヒカリの指差す方を覗きこむと、ガラクタにまぎれて猫アバターの人が一人、いた。


「と、トラ吉さん……」


トラ吉は背を丸めて座り込み、泣きながら壁とお話していた。

「どうして、どうしてこんな事に……道を踏み外そうとしている友人を前に、私は余りにも無力だ……」


セージと共に廊下を覗き込んだケットシーは困惑した。


「トラ吉さんってば、何で落ち込んでるんでしょう?」

「これが自分を責めずにいられますかっ!!」


トラ吉はがばっと立ち上がり、可能であれば肩をわし掴んでぶんぶん振り回しそうな勢いでケットシーに詰め寄った。


「いい加減目を覚ましなさいっ!! 私はあなたをそんな子に育てた覚えはありませんっ!!」

「え……別に育てられてな……」

「うわあああんっ反抗期 ?!」



(何だコレ……ホント何だコレ……)


セージは気力をごっそり削り取られる感覚を覚えながらも、とりあえず事態を収拾しようと試みた。


「あー、お話は判りました。そういう事なら咎めませんが、何かトラブルを起こしたら速攻で止めさせますからね! 嫌がる人に無理強いもさせない様に! 何事も程々にお願いします。」


セージは黒ローブ集団に向かってそう断ると、錯乱しているトラ吉を何とか落ち着かせようと、ヒカリとケットシーも連れてその場を後にした。



「それじゃあ、儂もおいとまさせてもらおうかね。」

話が済んだのを見計らい、鬼弁慶は「どっこらしょっ」と億劫そうに立ち上がった。


しかし、


「えっ !! そんなっ、困ります」

「その強運にあやからせて下さいーっ !!」

「もうちょっとだけ、もうちょっとだけでいいですからっ !!」

黒ローブの集団は必死になって鬼弁慶に食い下がった。


「あんた達、全然分かってないじゃないかっ?! おい、セージ、戻って来い !! この人達を何とかしてくれーっ !!」


屋敷の中で鬼弁慶の助けを求める叫びがこだました。



ヒカリとセージで反省会 その2



セージとヒカリは沈痛な面持ちで向かい合っていた。


「……。」

「……。」

「……釈明を聞こうか。いや、今回は俺も悪かったけどさ。」

セージはため息をついて話を切り出した。


「だってせっかく私だけ変身できるんですよ!! なのにあんまり出番無かったんですし。もっと活用しなくちゃと思って。」

「だからか。それが理由であんたはbuliteli に成りすまして知り合い相手に片っ端から怒涛のオヤジギャグ連発をぶちかましたのか!!」

ヒカリはしょんぼりと縮こまった。


「まさか、buliteli さんがあんなにショックを受けるなんて思わなかったんです。」

「まあ、俺も『いつもと変わりなくて気づかなかった』って追い打ちをかけちまったから同罪だけどな……。」

そういやあいつ嗜好がじじむさいの地味に気にしてたよなー……でもアバターがあれで趣味が『盆栽と麻雀と時代劇』とかもう狙ってやってたんじゃないのかと……セージはひっそりボヤいた。


そうして、二人はのろのろとテーブルに残された書置きに視線を移した。


『探さないで下さい』


二人はのろのろと視線をお互いに戻した。


「どうしましょうか。」

「一応探し出して平謝りするしかないんじゃないか?」

二人は頭を抱えて途方に暮れた。



盆栽と麻雀と時代劇が好きな方、申し訳ありません。

鬼平犯科帳(小説)と水戸黄門(TV)は結構好きでした。もう記憶が怪しくなりましたが。

盆栽も趣があって素晴らしいと思います。(枯らしてしまうので欲しいとは言えない)

麻雀はルールをよく知らずコンピューターに負けまくってました。

話のストック使い尽くしたので次もしばらくかかるかもです。

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