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セレモニー開催

「ふう。ここまで来れば一安心ですね。」

「もみくちゃにされそうで大変でした。」

「皆盛り上がってて、凄かったもんね。」


 大活劇を成功に納め、プレイヤー達は最高潮に盛り上がっている。


 三丁目のメンバーはそんな熱気から逃れるかの様にギルド倉庫に逃げ込むと、各々木箱の上に座り込んで一息ついた。


 一同は視線を浮かない顔をしているセージに集めた。


「セージさん……リーダーの話断っちゃうの?」

「せっかく勧められてんのによー。」


 主要な顔ぶれのメンバーにリーダーとして指名されたセージであったが、当人は乗り気ではないらしかった。



「はっきり言って自信無いな。今回だって、助けてもらわなきゃどうしようも無かったし。……そんな資格は……」

 断りかけるも、なにか言いたげなヒカリの視線を感じ、セージは口ごもった。


 唯一の能力持ちのヒカリは、どうあってもこの騒動の中心から離れる事は出来ないだろう。なのに自分だけ言い訳をして逃げ出す様で、どうにも据わりが悪い気がしたのだ。


(それに、俺は事態を引っ掻き回した張本人だしな……。)

 主導権争いで混乱を呼んだあげく、話を断っておいて、「発言権だけはくれ」とは言い難い。


 黙って考え込むセージに、が呑気な調子で声を掛けた。

「考えすぎじゃねえか?ファルコンアローはボロボロだ。ヤバい目に合う事はもう無いだろ?」



 ――ファルコンアローのメンバーの多くは逃げようとした所を抑え込まれ、全ての装備を奪った状態でバトルフィールドに閉じ込めてある。アカザキ達は彼らのやり口を真似て、『呪いのナイフ』を装備させてから彼らを解放し、炎の神殿入り口を複数人数で封鎖する事でメンバーの無力化を図るつもりだ。


 しかし、グレイファルコンを含めた四名程、決してシステムの 『降参承諾』 をしようとしないプレイヤーもいた。

 その数人は、アカザキ主導の元、仕方なしにスキル 『スリープ』 をかけた状態でバトルフィールドに閉じ込めたまま交代で見張っていた。


 何にしても、ファルコンアローはほぼ無力化され、プレイヤー達が団結した現状である。今後は表立ってプレイヤーキルを行おうとする者は出ないだろう。



「青龍さん達だって協力してくれるんだ。そう気張らんでもいいんじゃないか?」

「そうですよ。私たちも陰ながらサポートしますから。頑張って下さい!!」

 鬼弁慶とペトラも発破をかける。


 セージが口を開いて何か言いかけたその時、

 ギルド倉庫の扉が乱暴に開かれた。



 ふぁるみーだ。彼(彼女?)は今度は作業服のようなコスプレをしている。


 ふぁるみーは、

「ゴラァ!! 何呑気に休んでるんだ三丁目ー!! 今が一番大事な時期なんだっつーに !!」

 とがなりたてると、セージとヒカリに文章の書かれた紙を押し付けてきた。

 突然の事に二人は目を白黒させた。


「え?な、何ですかこれ?」

「スピーチ原稿だ!今の内から暗記しとけ!! 直したいとこあったら早めに申告しろよー?チェック入れるから。あとセージ、お前には念押しとくが、『コーチョーセンセーのオハナシ~』なノリは論外だ!!」


「「は?」」

 三丁目一同の頭に大きな疑問符が浮かんだ。

 一同の顔を見渡したふぁるみーは、呑み込みの悪い一同に活を入れるべく声を張り上げた。


「だぁらーっ!凱旋とリーダー、ヒーロー就任祝賀セレモニー、そのスピーチ原稿だ!」


「「「はあっ ?! 」」」


(凱旋はとにかく……ヒーローとリーダー就任? スピーチ原稿 ?!)


「いや、何勝手な事やってるんだよ ?! しかもスピーチ原稿まで用意済みって、先走りすぎだろ !!」

 セージは焦ってふぁるみーを止めようとしたが、反対にふぁるみーに強い勢いでまくし立てられた。


「はああ? そっちこそ馬鹿言ってんな!! 鉄は熱いうちに打てって言うだろ !! 盛り上がりが冷めないうちに既成事実的に 『リーダー:セージ』 をゴリ押しておかねーと !! お前、ショボいって自覚あるならまず動け!!」

「ショボ……」

 ふぁるみーの容赦ない言い草に、多少慣れてきたセージもぐっさりメンタルを抉られた。


「ステージは歩道橋!今、設置してる所だから、その間に暗記しとけよ !! 段取りはその後な」

「ま、待て、俺はリーダーやるつもりは……」


 ふぁるみーはと来た時と同じ様に突風の如く去ってしまった。

 三丁目のメンバーは、慌ててふぁるみーを追い、歩道橋へと足を運んだ。


 そして、そこで繰り広げられている光景を見て度肝を抜かれた。



 ふぁるみーは手伝いの人員を駆り出し(主にファンクラブ員と通りすがりの哀れな犠牲者)、街中から様々な装飾品をパクりまくり、歩道橋をステージに見立てたデザインで盛大に飾り付けを行っていた。


 街中の、ゲーム進行と関わりの無い道具は、持ち去っても一定時間後に無限に湧き出てくる。しかし、街の外へ持ち出そうとすると一瞬にして消滅してしまう仕様であった。(例外は転移魔法陣経由で別の拠点となる街から持ってくる道具である。しかしダンジョンへは持ち込めない。)


 ふぁるみーはバリバリのエンターテインメント気質の持ち主だ。歩道橋の上でメガホンを持ってびしばし指示を出す姿はまさに水を得た魚の如しである。


 他にも、簡易看板を作りイベントの呼び込みを始めたプレイヤーも見受けられる。

 歩道橋から少し離れた隅の方では、青龍、トラ吉を含む各ギルドマスター達が集って談笑していた。

 さらに恐ろしい事に、どこからどうやって集めてきたのか、橋下では楽器を構えて演奏の練習を始めているプレイヤー一団まで揃っている始末だ。


「何てこった……」

 ふぁるみーのあまりの手回しの早さに三丁目のメンバーは戦慄した。



 セージがどこからどうやって制止すべきか考えあぐねていると、彼らの姿に気づいた赤毛の男が近寄ってきた。アカザキだ。


 鬼弁慶とペトラは、彼の姿を見て姿勢を正した。それを見たヒカリが急いで二人に倣う。

 ぽかん、としていたbuliteli をこっそりグリンクレヨンが急かし、二人もかしこまる。


「アカザキさん、ですね。遅くなりましたが、助けていただきありがとうございました。皆無事で、大変感謝しております。」

「いえ、俺達としても "けじめ"をつけておきたかっただけですから。」

 三丁目のメンバーが頭を下げるが、アカザキは首を振った。


「むしろ俺達の方が謝らなければいけないでしょう。あそこのギルメンとは、多少は顔見知りでしたから。ですがあの通り横暴を許してしまい、ご迷惑をお掛けしました。」

「つーかザキはさー、頭堅いみたいで、こっち来てしばらく立ち直れなくて使い物にならなかったんだぜー?」

「やかましいっ!!」

 遠くからでもこちらの話を聞いていたのか、ふぁるみーが会話に茶々を入れてくる。

 アカザキはぐわっと振り向いて口論の応酬をし出した。


 アカザキの印象は、口調も表情も硬く、規律に厳しい教師を彷彿とさせるものであったので、彼がふぁるみーと言い合う姿はセージ達には奇妙に思えた。

(水と油みたいな取り合わせなのに、気兼ねしない程仲が良いのか。)


 ――後日、何気なく尋ねたセージは、激高したアカザキにしこたま怒られる羽目になる。


 アカザキは気を取り直しセージに向き直ると、話を再開した。

「全員無事だったのは喜ばしい事ですが、事態は何一つ進展していません。奴の言い分にも一理あるので祝賀会に反対はしませんが、今後の相談に入りたいので早めに終わらせて下さい。――これからよろしくお願いします。」


「はい、よろしくお願いしま……」

(しまった !!)

 セージは緊張と話の流れに負け、つい了承の返事を返してしまった。これではリーダーを辞退すると言い出しにくい。

 しかし、アカザキはセージが撤回する暇もなく「引き続き捕えた連中を見張る」と言って足早に立ち去ってしまった。


「ねえ、行っちゃったけど、リーダーの話断らなくて良かったの……?」

 三丁目のメンバーは呆れていた。


「何やってんだか……」

「一気に外堀が埋まってってるぞ。」

「早くしないと、本当に大変な事になりますよ?」


 セージは額を抑えて考え込み――腹を括った。


「いや、やるよ。――どこまで出来るか判らないがやれるだけの事はやる。」


 三丁目のメンバーは「おーっ」と軽く歓声を上げた。


 セージは早速、渡された原稿の暗記に没頭し始めた。


 ヒカリモホッとして渡された原稿に目を通し、

 ピキリ、と固まった。


 ヒカリのスピーチ内容は、キャラ性を強調した様なベッタベタな文章だったのだ。

 ヒカリの様子がおかしい事に気づき、横から原稿を覗き込んだグリンクレヨンも「うわあ……」と軽く引いた。



 そうこうしてる間に、作業をしていたファンクラブ会員がどやどやとセージ達の元へとやって来る。


「ふぁるみーさーん、この原稿、どういう事ですかー!!」

「飾りの量足りないんで荷物持ち、手伝ってくださーい」「まだ派手にするのか?!」

「『ステージの後ろでドジョウ掬い係』 希望者います?」「何じゃそりゃあ !!」

「イベント用の衣装お渡ししますねー」「え、決めちゃったの ?! ワタシも選びたかったのにー !!」

「サクラもやってもらいますからー声上げるタイミングはー」「ふぁるみーさん、やり口が黒いですよ……」


 鬼弁慶達も、勢いに押されながらも楽しそうに動き回り始めた。

 セージは原稿から顔を上げ、そんな彼らを見て和んだが、もう一人、そこに居る筈だったメンバーの面影をそこに見て、僅かに目を伏せた。



 ――その日の夕刻、イベントが開催された。



 セージ達はどれだけの人数が集まるか不安に思っていたが、無事大人数が揃った様だ。


 軽快なトークやパフォーマンスを交えて、今回の一大活劇の立役者達や今後協力を約束したギルドマスターを紹介してゆく。

 大通りをひしめき合うプレイヤー達からはやし言葉や拍手が飛び交う。


 ステージが終盤に入り、セージが中央に立ってスピーチを行った。


 途中までは原稿通りに、流暢に進めて行ったが、

(しまった……)

 最後の文章を忘れ、セージはぴたり、と止まってしまった。


 見降ろす人混みの後ろ側で、誰かが慌ただしくカンペを掲げているのが見える。


(ふぁるみーには悪いが、ここは自分の言葉で言わせてもらおう。)

 セージは苦笑すると、締めの言葉を語りかけた。


「俺の目標は、『みんなで、笑って元の世界に帰る事』です。皆さん、どうか力を貸してください。宜しくお願いします――」



脳内シナリオを勝手に文章化してくれるよーせーさんが欲しいです……

って思ってたらニュースで見たわ。実在になるんかい?!

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