手詰まり
セージ達は騒々しい人波から逃げる様にギルド倉庫へ集った。
殺風景な場に重い沈黙が漂う。
「うちのギルドや街のプレイヤーに助力を求めてみます。」
青龍はそう言って倉庫から出て行ったきり、戻ってこない。
おそらく、説得に難航しているのだろう。期待は出来そうになかった。
「セージ、黙ってないで何とか言えよ。どうにも出来ないのか!!」
「……考えてる、だから黙ってくれ。」
「打つ手無し、かよ……ざまあねぇな。」
木箱に腰かけていたふぁるみーが舌打ちして立ち上がった。
そのまま出口へ向かおうとするのを見て、buliteli がふぁるみーに食い下がる。
「おい、こんな時にどこへ行くつもりだよ!!」
「ここで唸ってたって埒があかないだろ。」
「てめえだけ手を引こうっていうのか!! ここまで来て!!」
buliteli はふぁるみーに掴みかかろうとするが、不可視の力が妨害し、その体は不自然に動きを止めてしまう。
セージは口を開きかけるが、言葉が出ず床に視線を落とした。
ふぁるみーはそんな二人を見て鼻を鳴らすと、振り返らずに倉庫を後にした。
「くそっ、くそう!!」
セージは拳を壁に打ち付ける。
皆を巻き添えにしておいて諦めるのは許されない。
セージは光明を求めて必至に考えを巡らせていた。
――立地、情報、人物、地形、天候、システム、装備、スキル、籠絡、脅迫、交渉、陽動――
しかし思考は空回りするのみで、悪戯に時間だけが過ぎていく。
「……時間が近い。誰が捕まるか決めるぞ。」
鬼弁慶が静かにきり出した。
「まず、一人は儂だ。もう一人はbuliteli 、頼めるか?」
「待って下さい、人質には私がなります!!」
ペトラが鬼弁慶に異を唱えた。
「私は、ヒカリさんと一緒に居た所をはっきり見られています、どのみち見逃してもらえないでしょうから、私が……」
buliteli が反論した。
「俺が行く。逃げ出す機会を狙うとしたら、レベルの高い俺が捕まった方がいい。それにあんたが捕まったら、コイツ本当に倒れちまいそうだぞ。」
buliteli がヒカリに視線を移す。ペトラははっとしてヒカリの方を見た。
(どっちかなんて、選べないよ……)
ヒカリは泣きそうになった。
ペトラは確かにヒカリの心の支えだ。けれど、buliteli だって大事な仲間なのだ。口も態度もぶっきらぼうだが、本当に酷いことは言われなかった。
「装備は……どうせ奪われるだろうが、一応は持って行けよ?何が起こるか判らんからな。」
「だったらワタシ達も、途中まで付いて行くよ。」
「危ないだろうが !! 街に籠ってろ !! 」
「ヤダ、絶対ヤダ!! もう決めたもん!! 最後まで一緒に行く!!」
グリンとペトラは頑として譲らなかった。
「止めたって勝手に付いてっちゃうから!!」
「――行きます。絶対に。」
結局、鬼弁慶が折れた。
「……ハア。いつでも逃げられる距離は開けとけよ……」
「みんな、巻き込んでしまって済まない……」
セージは深く頭を垂れた。 そのまま頭を上げようとしない。
「今更、しょうがねえだろうが。」
buliteli の口調は静かなもので、責める態でないのがかえってセージの胸に響いた――




