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白蒼月種想譚~二つ月の望む世界(種シリーズ③)  作者: 汐井サラサ
番外編:ちょっと気になること2
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ガールズトーク(1)

※これを読まなくても本編には全く影響はありません。

 貴方にくすりっvをお届け出来れば幸いです。

「ねぇ、シシィ」


 こちらをどうぞ、と用意された服に袖を通し、背中を留めてもらいながら声を掛ける。最後まで留めて、裾を払うと、シシィは前に流していた髪をそっと後ろに流して梳き整えてくれる。


「私、毎日違う服でなくても全然気にしないんだよ」


 というか、勿体無い。

 一般庶民の私にいわせるとなんだか贅沢すぎるような気がするのだ。ここ一週間以上。私は一度も同じ服を着ていない。

 最初に着ていた夜会用のドレスほどの派手さはないけれど、誂えが良いのは良く分かる。

 どれも既製品などというものではないだろう。


「ですが、まだ、ありますし……折角マシロ様のために誂えさせたものですから」

「う」


 部屋を移動させて直ぐ、私は針子さんたちに襲われた。

 いや、襲われたというのは申し訳ないけれど……勢いが、そんな感じだったのだ。だーっと何人か寄ってきて、私の頭の先から足の先指の長さまで計って、ざぁっと潮が引くように引いていった。


 私がぽかんとしている間に全て終わったのだ。


「だって、ほら、えっと勿体無いじゃない、私一人にこんなに」


 わたわたと口にすれば、シシィは可愛らしく、ふふっと顔を綻ばせる。そして、私に椅子を勧めながら、私が腰を降ろすのを確認するとお茶の準備を始めてくれた。


 朝身支度を整えて、一杯の紅茶を飲んでから朝食。これが流れだった。


「マシロ様は珍しいことを仰いますよね? どの姫様もそのようなことは仰らないと思いますよ。勿体無いなどということがあるはずありません。全てマシロ様のためにあるものなのですから」

「……ええと……私は、その、ね」


 どろこんこ遊びをして洋服を次から次へと汚してしまう子どもではないのだ。ごにょごにょと口にしそうな私に、にっこりと微笑んでシシィはティーカップを私の前へと置いて話を続ける。


「それに、これはエミル様からの贈り物ですよ。色や全体のイメージなどは、エミル様のご指示で誂えたと聞いています」

「え、そうなの?」

「はい。お忙しい方ですが、生地もご自分でお見立てになったとか。ご本人がお召しになるものでもそのようなことされたことないのにと、仕立て屋が噂しておりました」


 そうなんだ……と、重ねて、ぽぅっと赤くなる顔を隠すようにティーカップを傾ける。

 贈り物といわれたら、無碍にも出来ない、出来ないけれど、それはそれで貢がれすぎだと思うんだけどな。


 ふぅと、両手で包み込んだカップに息を吹きかける。


 その様子を、暫らく眺めたあと、珍しくシシィから声を掛けてきた。

 何か聞きたいことがあるらしい。少し歯切れが悪そうに、もじもじとするシシィに私は話しても良いよと苦笑する。

 私の了承にも尚いい辛そうにしつつ、ややして意を決したように話を始めた。


「本日は、日中もマシロ様のお世話をさせていただくのですけれど、あの、カナイ、様は、いらっしゃるでしょうか?」

「カナイ? カナイって、あのカナイ?」

「はい」


 まぁ、私の知っているカナイは一人しか居ない。私はシシィの質問に、短く唸る。


「最近は、シゼの方が多いよね。今日は来るのかなぁ? 私も知らないんだけど」


 そう答えれば「そうなのですか……」と目にも明らかにしょんぼりとする。私はカップの中身を飲み干して、ソーサーに戻すとシシィを見た。


「何か用事があったの?」

「え! ぁっ! いえっ! そのような、用事など滅相もないっ! 私のようなただの使用人が用などあるはずありませんっ!」


 ……いや、そんなに必死に否定しなくても……。


「来てもらえるようにいってみようか? カナイが一番の暇人だって聞いたから、多分何とかしてもらえるんじゃないかな?」


 因みにアルファ情報だ。


「い、いぃぃえぇぇ!」

「……シシィ。それは、はいなの? いいえなの?」


 シシィの奇声に笑いながら聞き返せばシシィは真っ赤になって顔を伏せてしまった。可愛い……。


「シシィはカナイが好きなの?」


 椅子の背もたれを抱えて質問を重ねれば、シシィは「そんなっ!」と慌てて顔をあげて私と目が合うとまた伏せた。

 そして、もじもじとエプロンを苛めながら続ける。


「あの、本当に、そうではなくてですね。ええと、その、私がこちらに上がったのはまだ日も浅くてですね……その、カナイ様は私共の間でも、憧れといいますか、その……もう少し、……と、お近づきに、といいますか……それで、滅多にお会いする機会もございませんし」

「ああ、引き篭もりだもんね。あれ」

「いっ! いえ、そのっ!」

「ようするに、憧れの的ーとか、ファンとか、そういうのかなぁ?」


 ……個人的な話をさせてもらえるなら、アレが? といいたいけれど、夢見る女の子シシィにそんなことはいえない。


「でも、意外。人気投票! とかしたら、断然エミルとか上位に上がりそうだけど」

「めめめっ! 滅相もないっ! に、人気投票なんてっそんなっ!」


 ……ああ、あるんだ?


 何気にシシィの反応から察した。まぁ、仕方ないよね。ここに居るだけでも容姿だけで目を引く人も多い。私はふらふら出歩かないから分からないけれど、城内ってなるともっと沢山居るんだろうし? あ、ちょっと興味あるかも。


「で、で、誰の名前が挙がっているの?」


 知り合いは少ないけれど、確実に彼らの名前はあるだろう。

 シシィは顔を真っ赤にさせたまま逡巡したけれど、私の、凄い聞きたいっ! と、お願いっ! の強さに折れた。皆様にはどうかご内密に……と前置いて私との距離を詰め話を始めてくれる。


 隣に座ることを勧めたけれど流石にそこまでは了承してはくれなかった。


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