科学省
街が黄金に染まっていく夕暮れのことである。私は公園のベンチに座っていた。風に吹かれながら街を眺めているととても心地がいい。子供が無邪気にボールを追いかけている。この街も平和になったものだ。数年前までの出来事などなかったかのようである。
ちょうど五年前、私はある特務機関に属していた科学者だった。国の中枢である「科学省」直属の機関である。そこで私は「魔法」に関する論文を発表することだった。魔法とは、科学では説明がつかないような重大な事象を科学の枠外から考察する分野のことである。この分野にうかつに手を出すべきではなかったとあとから何度後悔したことか。
魔法と、現代科学はすこぶる相性が悪い。科学文明を持つ国と、魔法文明を持つ国は仲が悪い。なぜかといえば、どちらも得体のしれない知識を用いて文明を発達させているからである。私の国は科学で文明を発達させていたが、魔法についての研究も行うことになった。それによって文明の発展と国際社会での協調を図ろうという国の方針があったためである。私は科学者でありながら魔法研究を行うことになった。それから私は某国に命を狙われている。
悲しいことに、私の命が狙われようと誰も助けてはくれない。私が唯一できることと言えば、科学の力と魔法の力をどうにか駆使して対抗勢力に命を奪われないようにするくらいである。科学と魔法の双方を使いこなせるのは私くらいしかない。だから今のところどうにか命はある。
二
今日は科学省の仕事で、とある化学工場に行くことになった。配管がそこら中に張り巡らされており、蛇が大樹に巻き付いたようである。地面に生える雑草は、見るからに毒々しさを放っており、先ほど寄り道した公園で感じた春の息吹は全く持って感じられない。装置のギアにはぶりっとしたキノコが生えている。ついでにキノコの胞子が太陽の光に反射してちらちらとしている。風に吹かれて、微細な粒が同時に渦を巻いて空中を漂っている。実験室には美しい光を放つ薬品がたくさん置いてある。紫色の怪しい蛍光を放つガラス瓶や、澄んだ青色、青空が移っているかのようなガラス瓶もある。その色は私の水晶体を通して、何かを訴えかけているようである。その時、ラボの扉がきしむ音がした。何か忌々しい気配を感じた。ドアの窓からのぞく瞳は水晶玉ほどの大きさである。人間が管理しているわけではないようだ。




