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【書籍化&コミカライズ】元公爵令嬢フェリシアは前を向く ~婚約者がお姉様に恋してしまったので、500年後の世界で幸せになります~  作者: ごろごろみかん。
4章:過去への時間旅行

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五百年前の過去と、今


リアン殿下が案内してくれたのは、庭園の真ん中に位置する東屋だった。

白の椅子に腰を下ろすと、そよそよと心地のいい風が吹いてくる。

メイドがティーセットを配膳し終えた後、彼が口を開いた。


「本題ですが……あの時。私が言いかけた言葉を覚えていますか」


「あの時──」


数時間前に交わした会話を思い出す。

確か、最後の言葉は……。



『では、今も私の魔力は不安定ということでしょうか?だから、嘆きの塔であなたは私を見つけられた……?』

『それは──』



そこで、確か部屋の扉が叩かれたのだ。

その時のことを思い出し私は、顔を上げた。


リアン殿下は真っ直ぐに私を見ている。


(お兄様のリュミエール皇太子殿下もこのひとも……視線が真っ直ぐなのよね)


そして、目力が強い。

美形のなせる技だろうか。


そんな感想を抱きながら、私は頷いて答えた。


「私の魔力の話……でしたね?」


「そうです。あの時、私はある仮説を立てました。……まだ、可能性の段階で、断言まではできませんが──私はあなたに魔力干渉した(・・・・・・)ことがある(・・・・・)のではないでしょうか」


「…………えっ!?」


「推測するに至った根拠は、合わせてふたつです。まず、一つ目。嘆きの塔で、私はあなたの特異魔法の影響を受けなかった」


私は、呆然とリアン殿下の話を聞いていた。


リアン殿下が、私に魔力干渉をしたことがある……??

魔力干渉、すなわち、彼が私に魔法を行使したことがある、ということだ。


「…………」


数秒考えた末、私は強く思った。


(いやいやいやぁ!!)


流石に、それはないでしょう。


だって、それならいつ、彼は私に魔法を使ったというの??


私は、五百年前の……ツァオベラー王朝の時代を生きる人間だ。

そして彼は、現代──ルーモス帝国に生きるひと。


時間軸が違う。


そもそも、彼とは嘆きの塔で会ったのが──あれが初対面だ。


顔を強ばらせると、彼は真剣な眼差しで私を見た。

そして、リアン殿下は静かに言葉を続ける。


「そして、二つ目。これが、先程の仮説を立てるに至った大きな根拠です。……私は、あの場で私の魔力(こん)を見つけました」


「魔力痕、ですか?」


首を傾げて問い返すと、リアン殿下が硬い表情で頷いた。


「五大属性魔法は行使後、数十分から数時間程、その場に【魔力痕】として留まります。滞留時間は術者の魔法の腕によって様々ですが、私の場合は数十分ほど。前回、塔に赴いた際のものかと思いましたが──最後に足を運んだのは一月程前。そんなに長く、魔力痕は残らない」


「……意図せず、何らかの原因で滞留してしまった可能性は?」


魔力痕、という言葉自体ツァオベラー時代にはなかったのでいまいちピンと来ないが、本来有り得ない場所に有り得ないものを見つけた、とそういうことなのだう。


だけど、だからといって(イコール)私に魔法を行使したことがある……とは、いささか飛躍しているのではないだろうか。


困惑する私に、リアン殿下がまつ毛を伏せ、ひとつ頷いた。


(わあ、まつ毛が長い……)


予想だにしなかった言葉を聞いたからだろうか。

混乱のあまり私は、そんなどうでもいい感想が頭をよぎった。


リュミエール皇太子殿下は恐れすら感じさせる冷たい美貌で、リアン殿下は神聖さを感じさせる美しさである。


兄弟揃って美人(イケメン)とは、遺伝子ってすごいわ……。


私とお姉様の顔面格差に思いを馳せると、何ともしょっぱい気持ちになる。


そんな(くだらない)ことを考えていると、リアン殿下がゆっくりと口を開いた。


「確かにその可能性もあります。……ですから、フェリシア様。私に、あの塔の内部を調べさせて欲しいのです」


続くリアン殿下の言葉に、私は驚きに目を見開いた。


……というのも、てっきり、嘆きの塔(その内部は私の部屋なのだけど)には、既に調査の手が入っていると思ったからだ。


驚きのあまり目を見開く私に、リアン殿下が固い表情で私を見る。


「もし、あの部屋から私の魔力痕が確認できたら、確実です。私は過去、あなたに接触し、魔力干渉をし──」


そこで彼は言葉を切ると、難しそうに眉を寄せながらも、言った。



「……あの【封印された部屋】の結界にも、関与しているかもしれません」




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