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【書籍化&コミカライズ】元公爵令嬢フェリシアは前を向く ~婚約者がお姉様に恋してしまったので、500年後の世界で幸せになります~  作者: ごろごろみかん。
4章:過去への時間旅行

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リアン殿下の呪い


マグノリアの近くには、ライティングデスクと椅子があり、もし、ぶつかれば──相当な痛みを伴うはずだ。

足だって、捻り方によっては私のように酷い重症になる可能性もあった。


(あれはものすごく……めちゃくちゃ痛かった!!)


そういえば、あの怪我は誰が治してくれたんだろう──?


ふと浮かんだ疑問は、焦燥でかき消された。


彼女に、あんな痛い思いをさせるのは酷だ。

あの痛みを知るから者だこそ、言える。


これ以上、犠牲者を出してはいけないと私は手を伸ばした。

しかし、やはり──間に合わない。


「っ……」


それでも手を前に、前に出した、その時。


ふ、とマグノリアの体が不自然に停止した。


「……!?」


逡巡は、一瞬。

すぐに、私は彼女の手首を掴んだ。



勢いよく引き寄せ、彼女を抱きしめる。


「大丈夫ですか!?」


すぐにパッと体を引き離し、彼女の両肩に手を添えたままマグノリアの顔を覗き込む。


彼女は未だ、動揺した様子だった。

緊張を帯びた顔で、視線を彷徨わせ、やがて私を見る。


「え、ええ……。あの、今」


「え?」


聞き返すと、彼女は僅かに沈黙した後、首を横に振った。


「……ううん、何でもないわ。お見苦しいところを見せてごめんなさい。あなたが、嘆きの魔女様ね」


彼女が、私の肩を手で押して、離れる。


先程の勢いはどうしたのか、マグノリアは静かに言った。


「私は、エヴァレット公爵家が娘。マグノリア・エヴァレット。嘆きの魔女であるあなたに、話があって来たの」


「……はい」


「あなたが本当に五百年前の人物かどうかはともかくとして。私は、お願いがあるのよ」


やはり、彼女も私の素性には半信半疑なのだろう。

淡々とした様子で彼女は私に言った。


「どうせくだらないことだろ」


茶々を入れたのは、ザックスだ。


「なっ……!」


マグノリアは、思わずと言ったように口を開きかけたが、すぐに咳払いをした。


「ンッ、ンン。その男は置いておきましょう。私は、リアン殿下の婚約者になりたいの。だからあなた、あの呪いを解いてくれない?」


マグノリアは、ザックスが言葉を挟んだことで、先程の調子を取り戻したらしい。

腰に手を当てて、ハッキリとそう言った。


私は──


「…………はい?」


思わず、間の抜けた声を零した。

なぜなら、彼女の【お願い】は突拍子のないものだったからだ。


(リアン殿下の婚約者になりたいから……魅了の特異魔法を解除する??)


困惑する私に、マグノリアが眉を吊り上げる。


「っもう!!鈍いのね!分からない?あれがある限り、リアン殿下はまともな恋ができないのよ。ただでさえ、あの方はアンジェラのせいで女性不信なんだから……」


「アンジェラ?」


また、私は聞き返した。

先程から、話が噛み合っていないような気がする。

彼女は、【嘆きの魔女】である私を探していた。


(魔女じゃないんだけど……この呼称、どうにかならないかしら……)


ちなみに嘆いてもいない。

そんなことを考えながら、私は数秒考え込んだ。


チク、タク、チク、タク。

…………チーン!


答えを出した私は、ポンッと手を打った。


「なるほど、マグノリア様はリアン殿下が好きなのですね?」


「──!!」


問いかけると、彼女の顔がボッと赤く染った。

真っ赤に熟したりんごのようだ。

とてもわかりやすい反応である。


(ハッキリ言い過ぎちゃったかしら……)


流れがよく分からなかったので思わず口に出してしまったのだが、ここは察して黙っていた方が良かったかもしれない。

彼女は唖然とした様子だったが、すぐにカッと、今度は怒りで頬を赤く染めた。

そして、マグノリアは声を荒らげて言った。


「なっ、何!?それなら何か悪い!?……そうよ、私はリアン殿下が好き。だから婚約者になりたいの!アンジェラが余計なことをしてくれたせいで、リアン殿下は全く相手にしてくれない!!だから、あの呪いを解く必要があるのよ!お分かり!?」


「リアン殿下が相手にしないのは、あなたの性格に問題があるからだろ」


「ザックスは黙ってて!!」


ぴしゃりと言ったマグノリアは「コホン」と咳払いをひとつして、ハッキリと私に言った。


「つまり、魔女様。私にとって、あの呪いはとても不都合なの。アンジェラの未練がこびりついているようで、私としても気分が悪いわ。だから、あなたが本当に五百年前。ツァオベラー王朝にいた嘆きの魔女だと言うのなら、その力を証明して見せて」


怒涛の勢いでまくし立てる彼女に、私は呆気にとられていたが、少しして、私は彼女に尋ねた。


「アンジェラって……どなたですか?」


「……聞いてない?アンジェラ、っていうのは──」

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― 新着の感想 ―
一瞬時が止まった? ザ・ワールド!?
>アンジェラって誰ですか? 嘆きの魔女(仮)様、気になるのはそこですか。 殿下関係の話聞いてたから予想はつくと思うんだけど、 直接名前までは確認してなかったか。決めつけず確認するのは大事か……
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