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【書籍化&コミカライズ】元公爵令嬢フェリシアは前を向く ~婚約者がお姉様に恋してしまったので、500年後の世界で幸せになります~  作者: ごろごろみかん。
3章:【運命の人】制度には、裏がある

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運命の人、それは██魔法?

そんな、大事なことを今になって気がつく。


もう、フレンツェル公爵家の娘ではない。


お父様に勘当される覚悟でプレゼンするつもりではあったけど、フレンツェル公爵家どころか国さえなくなっていた……と聞いてどうすればいいのか。


(不安になるのは、何も分からないからだわ。まずは、知らなければ!!)


そうだ。何事も、情報収集が大切!!


私は何とか気持ちを持ち直して、顔を上げた。


リアン殿下は、難しい顔をして眉を寄せていた。

恐らく、さっきの私の言葉を考えていたのだろう。


「フェリシア様は、自ら封印を施されたわけでも、長年立てこもっていたわけでもない……ということなのですよね?」


確認されて、私は頷いた。

それから、ずっと疑問に感じていたことを口にする。


「そもそも、五百年も同じ空間に居続けることは可能なのでしょうか?私は人間です。五百年も生きられません……」


私に五百年が経過したという感覚は無い。


私にとっては五日間だ。

部屋の壁時計を見て過ごしていたのだから、それに間違いはない。

私の言葉に、リアン殿下がゆっくりと言った。


「……我々は、あなたを嘆きと悲しみの魔女だと思い込んでいました。あなたが、自ら望んで部屋に入ったのだと──」


「待ってください。その、嘆きと悲しみのって何ですか?私は嘆いても悲しんでもおりませんわ。五日、部屋に籠っていたのはやるべきことがあったからです。自暴自棄にひきこもったわけではありません」


「……封印された部屋の魔女に纏わる噂は、諸説あります。だけどそのどれもが一致しているのが」


そこで、リアン殿下は言い難そうに視線を逸らす。

それから、小さく言った。


「……『彼女は婚約者に裏切られ、失意の底に落ちた』というものです」


「は……」


思わず、呆気に取られてしまった。

婚約者に裏切られたのは、確かに合っている。

フェリックス様は、あれを裏切りとは言わないだろう。

彼には、裏切ったという自覚がないからだ。


『お姉様を望むことは【運命】なのだから仕方ないこと』


彼は本気でそう思っている。

運命なら、裏切りではない、と。


確かに裏切られはしたけど。

それでも、失意の底に落ちて絶望してはいない。


それなら、私も私の人生を生きようという、転機になっただけで。


ふと、私は考えた。


(……リアン殿下は、どこまで知っているのかしら)


顔を上げ、私はリアン殿下に尋ねた。


「あなたは、お姉様とフェリックス様のことをご存知なのですか?あのふたりは……」


【運命】だったのだ、と続けようとすると、その前にリアン殿下が答えた。


「はい、知っております。魅了魔法によるものですね」


「そう、運命の人──…………。えっ!?魅了!?!?」


令嬢にあるまじき素っ頓狂な声を出した私を見て、今度はリアン殿下の方が困惑したようだった。


「過去の文献には、アグネス・フレンツェルが魅了魔法を行使し、王太子フェリックスを篭絡したと記されています。それが、(のち)の第一次魔法大戦を引き起こしたきっかけ(トリガー)だったと、後世の人間……つまり、我々は思っています」


「お姉様とフェリックス様は、運命の人でした。彼らの手の甲には揃いの紋様があって……神殿も、それを祝福しておりましたわ。予知の神官が言ったのです。魔法使いには、運命がいると」


焦りのあまり、私の言葉は取りとめのないものになってしまう。

これでは、リアン殿下からしたら、私が何を言いたいのか分からないことだろう。


(落ち着いて、要点をまとめないと)


混乱する頭を静めようとするが、なぜ?どうして?何で?ばかりが脳内を駆け回る。


だって、運命の人は絶対的な制度で──。


それが、魅了……魔法、によるものだったなんて。


もし、そうなら。


それなら、私は。


フェリックス様は。


ツォアベラーの社交界は。


(皆、騙されていたことに──)


混乱する私に、リアン殿下が酷く落ち着いた声で、言った。


「紋様……というのは、こういったものですか?」


そして、彼はおもむろに袖のカフスボタンを外し、それを捲った。

白い肌が露わになる。


私は、それを見て息を呑んだ。

リアン殿下の手首の内側──そこには、見慣れた赤の紋様が、刻印のように刻まれていたからだ。

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