見知らぬ村
「ここが僕達の村だ」
案内された村は見るも絶えない姿だった。
家は崩れかけていて、村人は痩せ細っている。畑は荒らせていて、ところどころに火がついている。
「これは酷いな。まるでモンスターに襲われたみたいだ」
「何を言っているんだ? 最近はモンスターの活性化が目立っている。こんなことはよくあることだ」
「モンスターの活性化? でも、今はモンスターはいないはずだろう?」
「君がどういうところで育ったのか知らないが、モンスターがいないなどはあり得ない。今はモンスターと人間の戦争が激化している」
「戦争? それはまるで……」
「話は終わりだ。あそこが医者の家だ。案内するのはここまでだ。この村はよそ者に厳しい。病を治したら早くここから出ていくことだ」
「あ、ああ……。案内してくれてありがとな」
セオは礼を告げると、リアンを背負い直し、示された家へと向かった。セオを見る村人の目が厳しい。よそ者に厳しいというのは本当のようだ。
ドアをノックしてみるが、返答がない。仕方が無く、ドアをゆっくりと開けてみる。
「せいや!」
「うわぁ!」
その途端、いきなりドアの隙間から槍が飛んできたのでセオは慌ててそれをかわす。槍は木に突き刺さり、木を貫通していった。
「うん? モンスターかと思ったよ。きちんとノックしてくれないと」
ドアから出てきたのは、小さな少女だった。エプロンをしていて、ところどころに血がついている。手には包丁が握られており、血が滴っている。
「ノックならしたよ。ところで、医者はどこだ? 弟が死にかけてるんだ」
「医者なら私だよ」
「嘘を言うな。こっちは真剣なんだ」
「こっちだって真剣だよ! 医者だったお父さんが死んだんで、私が変わりに後を継いだの!」
「そうだったのか。それは悪かった」
「うん、分かってくれればいいんだ。さぁ、その少年をここに寝かせて」
「分かった。でも包丁を振り回すのは辞めてくれ」
セオは指定されたベットにリアンを寝かせると、少女がリアンの体を診察し始めた。
「うーん、ダング熱かな。専用の薬草を飲ませれば治るよ」
「じゃあ、その薬草を飲ませてくれ」
少女の腕は確かだったようで、すぐにリアンの症状を断定した。
「うーん、そうしたいところなんだけど。今は薬草が切らしててね。あのモンスターが大勢いる山まで取りに行かないと、行けないんだ」
「じゃあ、そこに行ってくるよ」
「それは無茶だよ。お兄さん。あそこは屈強な大の大人でも無事では済まない」
「このままジッとしてても、どうにもならないだろ。俺は何を言われてもあの山に登るからな」
「分かったよ。じゃあ、私も同行するよ。患者を見捨てるのは信条に逆らうからね。大丈夫、少しは戦えるよ」
「助かる。ありがとう……えっと……」
「セリム。それが私の名前だよ」
「俺の名前はセオ、よろしくな」
セオはセリムと握手をすると、リアンの方を見た。
「待ってろよ。リアン」