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迫りくる脅威

森の中を少年達が走っている。

暗闇の中、黒い影から逃げているのだ。

それを森の主であるフクロウは木の上から悠々と眺めていた。


少年の内の一人が黒い影に足を絡め取られ、倒れ込んだと同時に胴体を真っ二つに切断された。血しぶきが飛び散り、辺り一面が血で覆われる。先頭を走っていた立派な剣を携えた少年が、思わず立ち止まった。  


「ジャドス!」少年は叫ぶ。


四人の中では一番年配だと思われる少年が、叫んだ少年の手を取り、引っ張って連れて行こうとする。


「いけない! フェンリル、立ち止まらずに逃げるんだ!」


「嫌だ! 俺はここで戦う!」


「聞き分けの悪い奴め! お前が死んだら、誰がこの世界を救うんだ!」


「仲間を救えずして、世界を救えるか! 俺はここで戦うぞ!」  


フェンリルは叫び剣を抜こうとした。

年配の少年は、後方を走ってくる屈強な体つきをした少年に助けを求める。


「くっ! ライオス! 力を貸してくれ!」


「オルフェン! 分かった!」


ライオスとオルフェンはフェンリルを押さえつけると、引きずるように走り出した。


「くっ! 離せ! ライオス、オルフェン!」


逃げ出そうとする3人の少年に、黒い影の魔の手が襲いかかった。黒い触手のようなものが、ライオスの腕を絡め取った瞬間、ライオスの腕が吹き飛んだ。黒い触手はオルフェンの足にも忍び寄り、膝に巻きついたと思った瞬間、オルフェンの両足が切断され、倒れ込んだ。


「ライオス! オルフェン!」


「逃げてください! フェンリル様、貴方は我々の希望なのです!」


ライオスは切り落とされた腕を押さえながら叫ぶ。


「俺達のことは気にするな! ここでやられるほど落ちぶれてなどおらぬ!」


オルフェンも釣られて叫ぶ。


「すまない! 二人とも!」


フェンリルは涙を拭うと駆け出した。二人の命はそこで燃え尽きた。

 

************************


「これは……うっ!」


「見つけたぞ! 覚悟しろ!」


気がつくと追っ手が、追い着いてきていた。肩に弓矢をくらい、フェンリルは腕を押さえた。


「ここまで追っ手が来たということは、ライオスとオルフェンは!」


「あぁ、あいつらか。それなら始末しといてやったぜ」


「くそ、俺のせいだ。俺が足を止めたから! もう逃げ場はない」


気がつくと前方は崖だった。もうあとがない。ここで戦うしかないのだ。フェンリル背中の剣を構えた。


「おい、ちょっと待って!」


空から影が降ってきて、フェンリルと追っ手の間に立ち塞がった。

 

「助けに来てやったぜ」


金髪にエメラルドの瞳を携えた少年がニカッと笑った。

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