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第8話 商人とパチンカスと太平道 中編1


 この世界の商人は大小様々なカートを引いている事が多い。

 馬車で移動する者も歩いて移動する者もカートを使っている。

 カートは2輪だったり4輪だったりで箱型だったり丸型だったりするが全てマジックバッグである。

 カートは商人ごとに個性がでるところでありリカクの引いているのは2輪の小さなキャリーカートだが少々派手目だ。

 赤を基調とした色で銀の鷲の意匠が彫り込んである。


「商人の持ってるカートって中がマジックバッグになってるんですよね?」

「そうだが」

 リカクの特徴的なツリ目が警戒色で俺を見上げる。


「なんか俺睨まれてるんですが? 俺なんか悪い事言いましたかね?」

 ヒソヒソと右隣のエリーシアに聞いてみる。

「カートは商人の命と同じでありますからな、同業ならいざ知らず興味を持たれたくないのかもであります」


「そんなもんなんですかね?」

「パチンカス殿も自分の財布の中身を他人に興味もたれたらいやでありましょう?」


「そう言われるとそうだな」


 カートの事にはあまり触れないでおこう。


 しかし、リカクの歩く速度に合わせると村に着く頃には日が暮れてしまいそうだ。


 そうなると……。

 夜にパチスロ打つ時間が減る。

 それは少し嫌だ。


「エリーシア。 俺とリカクさんを背負って移動はできますか?」

「まあ、わりと余裕でありますな」

「リカクさん。 というわけでエリーシアに乗せてもらいましょう。 エリーシアの背は乗馬をしたことなくても快適ですよ!」


「いいのか?」

 リカクは少し驚きの表情を浮かべる。


「よいでありますよ! 人を背負って走るのは得意であります!」

 エリーシアは得意気だ。


 リカクは自分のカートをさらに小さく畳み大事に両手で抱える。

 力持ちのエリーシアがリカクをひょいと軽く持ち上げて後ろに乗せて俺はその後ろに乗る。


 リカクの髪から独特の良い香りがした……。


 そして、2人乗ってもまるで問題ないように走り出すエリーシア。


「この世界の人馬はみんなこんなすごいんですかね?」


「はっはっはー、 ワタシはエリート軍人ですからこれくらい余裕なんであります」

「エリーシアは軍人なのか!」


 リカクは誰にたいしてもタメ口なのだが、なんとなく許せてしまえる雰囲気があるから不思議だ。


「じゃあ、パチンカスも軍人なのか?」

「そんなわけないじゃん」

「じゃあ、何者なの?」

「只のパチンカスだよ」

「なんなのよそれ、意味わかんない!」

 リカクは少しご立腹になり黙ってしまった。

 ま、エル・パソの街迄で一緒に行くだけの間がらだ。 

 そこまで親しくなる必要もないだろう......。


 エリーシアに乗せてもらったおかげであっさり国境の街、エル・パソについた。


 エル・パソの街は国境の大扉と面してるだけあってそれなりに大きな街だ。


 国境を越えればサハル平原である。

 この国ともお別れだ。


 エリーシアとリカクは街の入口で手続をきして俺はエリーシアの後ろから何時も通りについていく。


 街の中に入ったとこでリカクが少し重苦しい雰囲気で話してくる


「アンタ等は宿はどこでとるんだ? 

 お礼に良かったら奢らせてくれないか? 

 商人として他人に世話になりっぱなしでは立つ瀬がない......。 

 それに少し話したいこともある」


 こういう礼儀はわきまえてる奴なんだな。


「うーん」

 少し悩むな......。

「パチンカス殿が決めてよいでありますよ」


 エリーシアはよく俺の意思を優先してくれる。 

 最初は疑問に思う事もあったが今はそれが当たり前になりつつある。 


「なら、お世話になろうかな。 俺はこう見えて宿のクオリティにうるさいぜ!」


 そう言うとリカクの顔かパァっと明るいものに変わった。

「温泉と飯が旨い宿がある。 期待していいぞ」

 この世界にも温泉があるのか!

 そら楽しみだ!


 というわけでリカクについて宿に行く事になった。

 

 リカクに案内してもらった宿はそれなりに立派で高級旅館と言っても良い。

 流石ボンボン商人の御用達。

 部屋も畳のある清掃が行き届いた広い和室が用意されていた。

 

 宿の個室の食堂に案内してもらい3人で飯を食べる。


 飯は海の幸がふんだんに使われた海鮮料理でなかなか旨い。 

 異世界でも料理が旨い宿は偉い! 

 旨いから偉いよ!


「昼間は助かった。 改めて礼を言わせてもらう」

「当然の事をしたまでさ」

 少しカッコつけてみた。


「そのわりに、助ける助けないで揉めてなかったか?」


「そうだっけかな?」

 痛いとこ疲れたので秒ですっとぼけてみる。


「ま、助けてもらったことにかわりはないからな、ありがとな」


「困った時はお互い様であります! それに商人の方々が様々な物資を流通させてくれてる、そのおかげで世の中がまわってるであります! 商人のリカク殿を助けるのは当たり前であります」


 そう言われるとそうだな。

 エリーシアの言う通り助けて良かった!

 

 美味い飯で腹を満たした後。

 リカクは一息ついてから切り出してきた。


「さて、それで相談なんだが......俺を帝国迄連れて行ってくれないか?」


「何故?」


「エリーシアは帝国の軍人だろ?」

「違うぞ! エリーシアは行く当てのない俺のようなパチンカスの面倒みてくれる只のおひとよしだぞ!」


「そんな嘘つかなくてもアンタの顔にエリーシアは帝国の軍人だと書いてるぞ!」

 俺の顔は歩く情報漏洩装置なのだろうか?


「気おつけたほうがいいぞ」


「エリーシア俺ってそんな顔してますかね?」

「ワタシもそんなに身分は隠してないでありますからな気にしてないのであります」

 エリーシアのフォローが地味にきつい。


「それで? 引き受けてくれるか?」

「パチンカス殿に任せるでありますよ」


「断る理由もあまりないが、引き受ける理由もあまりないな、商人なら俺がリカクを帝国迄一緒に行くメリットを伝えるべきじゃないか?」


「アナタのその規格外の強さに惚れた......と、言ったら信じるだろうか?」


「信じるわけないだろ」

 リカクは助けられてすぐに惚れるようなチョロインにはとてもじゃないが見えない。


「嘘ではないのだがな、アナタがいればこの国から抜け出して帝国まで楽に辿りつき、一旗あげれるかとおもったのだが……」


「この国は駄目なのか?」


「ああ、駄目だ......国は太平道にほぼ染まっていてな商人にかける税も高くなり儲けもでないし、安全も保証されない」


「太平道ってなかなか凄いんだな」


「役人も買収されて、王も教主に洗脳されているという噂だ」


「なら、この国からさっさと出た方がよさそうだな」

「国境の大扉からサハル平原にでれるんだがこのサハル平原がわりと難所でな隊商を組んだりしなきゃ超えるのは難しい。 それでもアンタ等とならそれも楽に行けそうだ」


「報酬は?」


「カートの中身全部でどうた?」


「中に何が入ってるかわからないのに?」


 中に何が入ってるかはわからないのが少しギャンブラー心をくすぐられる……。

 

 まあ、一人より二人、二人より三人のが旅は楽しいという格言もあるしな。


「いいでしょう。 帝国迄一緒に行きましょう!」


 正直なところ商人の命であるカートの中身を俺に委ねる。

 そんなオールインなリカクの根性を俺は気に入ってしまった。


 チョロインなのは俺なのかもしれないな。


「帝国迄一緒に行くなら、俺もきちんと身分を証す必要がありますね」

「アンタ異世界人なんだろう?」

 くっ!

 なぜわかる?

 これも顔にかいてるというのだろうか?


「帝国は異世界人を集めてると聞いたことがあったからな、適当に言ってみただけだが当たったか?」

「......。」

 俺はチョロいのだろうか。


「異世界人は特殊な能力や知識を持ってると聞くが?」


「これのことか?」


 俺はパチスロ台を出す。

 機種は、

【L スマスロ 聖戦士ダンバインMF】

 リカクは近寄ってパチスロ台を興味深く観察する。

「触ってもいいか?」

「好きなだけ触っていいぞ」


「これは! 凄いな! こんな光る箱は見たことないぞ! パチンカス! アナタは本当に異世界人なのだな! 凄いぞ!」


 リカクはパチスロ台をまじまじと見てさわさわしている。


 パチスロ台に興味を持つとはなかなか見る目があるやつだな! 

 好感が持てる奴だ!

 リカクにもパチスロを教えてやるとするかな。


 そう思ったら、

 スマホに【リカク・ゴウショウ】を登録しますか?

 と、でたのてリカクを登録する。

 更に1000クレジット程入れてICカーを発行してやりパチスロの説明をする。


 だが、1クレジットは金貨1枚に換金可能だと教えると、「そんなものは気軽に使えないな」 と言ってスロットを回すのを諦めた。


「お硬いやつだな……」

「いや、アナタには既に大きな借がある。 その上帝国迄連れて行ってもらうのだ 帝国についてから借を返せたらまた遊ばしてもらうよ」


 案内するのはエリーシアなんだがな。

 それにエリーシアも山神も気にせずパチスロで遊んでいたからこういう反応されると少し戸惑うな。


 口は悪いが節度がある奴なんだな。


 とりあえずICカードはリカク専用だからと強引に渡したら受け取りはしてくれたが……。


「それでは、明日からまたよろしく頼む。 それとアタシの事はリカクと呼んでいいぞ! ではな。」

 リカクはそう言って席を立った。



 俺とエリーシアはその後二人でノリ打ちした!

 エリーシアもだいぶパチスロにハマりつつある。

 このまま立派なパチンカスに成長してくれたら最高なんだがな。


 さて、今日の機種は

【L スマスロ 聖戦士ダンバインMF】

 である。


 オーラカウンタとCZでボーナスを抽選。

 オーラボーナス後はSTへ。

 フェラリオボーナス後はチャンスタイムへ

 STループ率は約91%。

 上位STなら約94%。

 ST中ボーナスはベルナビ回数管理型。

 純増は約6.0枚/G。


 まあ、ST型のパチスロだな。

  STとはスペシャルタイムの事だ。

 決められたゲーム数がありゲーム数以内に規定の役を引くとゲーム数が再セットされる。


 まあ、要するにアームが強ければ永遠に出せる台ってことだ!


 というわけで

 オーラバトラー、ダンバイン!


 レバーオン!

 

 結果


 ......。

 ......。


 

 パチンカス 

 投資枚数 1800枚

 回収枚数 2806枚


 エリーシア

 投資枚数 250枚

 回収   1400枚


 今日の俺のアームはイマイチだったな!

 エリーシアも不完全燃焼だ!

 二人ともちょいプラスと言ったところだ。


 しかし、勝ちは勝ち!

 勝てば気分良く寝れるというものである。


 その後、温泉に入って寝た。


 明日はいよいよ国境越えかー。




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