第6話 台パンのエリーシア
パチスロにより借金漬けとなった山神を引き剥がすように街をでた俺とエリーシア。
帝国に向けてようやく進む事ができる。
今日は快晴、そして順調な旅路である。
街から離れた場所にモンスターが少しでたりもしたが遠距離からパチスロ台をぶつけて難なく倒す。
パチスロ台で倒せぬ敵など存在しないのかもしれない。
そして、何時も通りお昼近くなると小休止して身体を休める。
出発の際に宿屋の女将が持たせてくれた豪華山の幸弁当がありがたい。
俺とエリーシアは笑顔で頬張る。
「旨いな!」
「美味しいでありますね!」
「女将に感謝だな!」
「そうでありますな」
良い行いは良い循環を生む。
この世界で始めて泊まった宿の飯は微妙だったが街が違えば飯のレベルも違う。
女将の飯は最高だ!
「そういえば、この世界の人達って家族でもまったく容姿や形態が異なるんですね」
「パチンカス殿の世界はそうじゃないでありますか?」
「俺は祖母の若い頃に似てると言われた事があるね。 それと兄や妹とも顔が似ていたし、角とか耳や尻尾のある人もいなかったな」
「みんなパチンカス殿みたいな顔なんでありますか?」
「まあ、多少異なるとこあるけど……」
「じゃあ見分けがつきにくいから人違いとか多くありそうでありますな」
「そうだね。似てて見分けつかないからオレオレ詐欺とかそういった犯罪があったりする世界だったな」
「似てる人が自分になりすまして悪いことするでありますか? 怖い世界でありますな」
「そう言われるとそうだね」
少し誤解を与えてしまったような気もするがよしとしよう。
「では、そろそろ出発するでありますよ! 今日は早くついてワタシもパチスロやりたいであります!」
今日のエリーシアはノリ気だ!
そんなエリーシアの背中に乗せてもらい街道を行く!
人馬で身体強化の魔法が使えるエリーシアの背中はとても快適だ。
普通に歩いたら本来1日とかでは、絶対つかない距離を楽々と走破できてしまう。
街についたら何時も通りの手続きをして街に入る。
街というには活気はなく外壁も建物もボロい。
寂れた街の印象を受ける。
山神の街が立派で活気があり過ぎてそう感じてしまうのかもしれないが……。
この世界の街はこれぐらいが平均的なのかもしれない。
屋台で軽く飯を食う。
予想通りの不味さである。
寂れた宿で部屋をとる。
エリーシアとノリ打ちするので二人で泊まれる個室にした。
さあ、パチスロタイムだ!
今日のパチスロ機種
『Lガールズ&パンツァー最終章H1』
「ガルパンはいいぞー!」である!
AT入れて
上位ATの戦車道無限軌道入れて万枚だす!
今日こそ万枚出す!
「戦車道! 始めます!」
レバーオン!!!
……。
……。
しかし、今日のエリーシアにはとんでもないパチスロの試練が待ち受けていた……。
俺のアームは何時も通り良い仕事をしている。
投資も少なく深くハマらずに出玉も順調に増やし続けている。
問題はエリーシアである。
「エリーシア! 台パン! 台パンだけはいけねぇ! それだけはやっちゃ駄目なんだ! 負けてる時に台にパンチしたい気持ちは痛い程にわかる! しかし、しかし、駄目だ! 駄目なんだ! 台パンだけはしちゃなんねー それはパチスロ台に対する冒涜なんだ! それはやっちゃなんねー!」
俺はエリーシアの身体を掴んで抑える。
「ぐぎゃ!」
台パンを止める事はできたが、パワフルな人馬さんは俺の身体をいとも簡単に吹き飛ばした!
「許せないであります! ワタシのクレジットが全部なくなったであります!」
エリーシア様がお怒りである!
あの何時もニコニコなエリーシアがキレている。
レア現象だ!
パチスロ打ちにとってもっとも恐れていたことがとうとう起こってしまった。
パチスロを打ち続けていればいつか負けるときはくる!
その時はいつか来るものである。
早いか遅いかの違いでしかない。
今日のエリーシアのヒキは最悪だった。
開始からCZばかりで全然ATに入らない。
天井でATにはいっても単発単発の連続でエリーシアのクレジットは0になってしまった!
エリーシアはがっくりうなだれている。
「大丈夫だエリーシア!」
俺はエリーシアに追加でクレジットを1000程分け与える。
「パチンカス殿! 良いのでありますか?」
「かまわないよ。 まだまだクレジットには余裕がある! 多分、もう少し回せばきっと出るさ! あともう少し回せば出るはずだ」
「パチンカス殿ー ありがとうであります。 ワタシ必ず戦車道無限軌道に入れて玉を出すであります!」
……
……
その後エリーシアは爆勝ちした!
パチスロ台に飲まれた分を全て回収しさらにはプラス域まで回復させた。
「やったな! エリーシア!」
「やってやったであります!。 パチンカス殿!」
俺とエリーシアはハイタッチして感動を分かちあった。
ナイスファイトである。
「負けてる時は凄く腹ただしい気持ちになるでありますが、出玉が増え始めると全てが許せる気持ちになるであります! パチンカス殿! パチスロとは面白いものでありますな!」
「ふふふ、それがパチスロの闇というものだよ! くれぐれも飲み込まれないことだ! 後、台パンしないで良かったろ?」
と、俺は恰好をつけてみる。
「台パンはやはりまずいのでありますか?」
「うむ、台パンは駄目だ。ツキも運気も落ちるし、意味もなく手を怪我する恐れもある。 だからやっちゃなんねー」
「気おつけるであります」
「分かってくれるならそれでよいよ」
「それで、エリーシアは何か欲しい物はあるのか?」
「今のところないでありますが、ポーションは貴重でありますし交換したいとこでありますが。 クレジットをもっと貯めたい気持ちもあるであります」
「負けて全てを失う前に換金するというのも賢い一手といえるかもしれんがな。 まあ、エリーシアのクレジットだからな、好きに使いなさい!」
「パチンカス殿ありがとうであります」
「いや、エリーシア! こちらこそありがとう! おかげで俺のパチスロ能力のレベルも上がった!」
本日の結果!
パチンカス
投資枚数 658枚
回収枚数 2568枚
エリーシア
投資枚数 8456枚
回収枚数 1010枚
【実績解除 一撃 万枚突破】
パチスロレベルが5になった!
景品交換に宝石が追加された。
アメジスト
トパーズ
サファイア
アクアマリン
ダイヤモンド
ペイナイト
ターフェアイト
アレキサンドライト
宝石か……。
何か使い道があるのだろうか?
謎である……。
そして、1日が終わった。
エリーシアもお疲れでグースカピーである。
やれやれ……勝てて本当に良かったな。
心からホッとしたのは言うまでもない。
パチスロ用語もかなり覚え始めたエリーシア。
順調にパチンカスになりそうな予感がしますね。