第2話 パチンカスと人馬エリーシア
異世界に来てからもパチンカスな俺の話をしよう。
そしてこれは俺のこの世界での大恩人、エリーシアの話でもある。
エリーシアとは艷やかな髪をした金髪セミロングの女性人馬である。
意志の強い緋色の瞳と胸の大きさが特徴的な帝国の情報士官である。
心優しく、礼儀正しいこの世界の俺の良き理解者でもある。
金髪の美人ケンタウロスことエリーシア。
かの女性には随分と世話になった。
というより今だに世話になり続けている。
この世界に来てからずっとお世話になりづけている。
この世界における最大級の恩人と行ってもよいだろう。
それになかなか聡明な人物だとも思う。
帝国の情報官という職業柄だろうか?
とにかく素晴らしい女性のケンタウロスである。
俺の慣れない異世界生活はエリーシアの献身的なサポートで成り立っている。
俺はこちらの世界に慣れるまでに苦労した。
高校で野球部に入った時くらい苦労した。
野球部の苦労とこちらの世界での苦労を比べるのは難しいが俺の人生経験の中で言うならそれくらいの苦労をしたなというくらいの実感である。
俺のいた私立の強豪野球部は厳しい環境だった。
下僕の1年、鬼の2年に悪魔の3年と呼ばれる程に上級生と下級生で身分の違いがありその待遇の違いは半端ではなかった。
俺のいた野球部出身者は口を揃えて皆こう言う。
「もしも、生まれ変わってもあの野球部だけには絶対に入りたくない! 10億円もらっても割に合わない!」
それぐらい厳しい野球部だった。
古き悪しき体育会系の文化で育った俺のメンタルはそれなりだと自負しているが、やはり世界が違いすぎるのはまた違った苦労をうむ。
こちらの世界の身分や立場の違い。
価値観の違いに戸惑い理解できない時が今だにある。
それでもこの世界でもパチスロ三昧の日々を謳歌できているのはエリーシアのおかげである。
エリーシアに荒野で出会えたからこそ帝国迄やってこれた。
今もこれからもきっとエリーシアへの感謝は忘れないだろう……。
今から俺が話すのはエリーシアと俺の帝国までの旅路の話だ。
____
俺とエリーシアが出会ったのは俺がこちらの世界に転移して間もない頃だった。
俺がこの世界に来た時、俺のパチスロ能力により辺り一面は惨劇の海となり更には無人の荒野とかすほどの災害が起きた。
パチンカスな俺はその後も、パチスロをずっと打ち続けたが途中でパチスロ台も椅子も消えてなくなり強制的にパチスロが打てなくなった。
困惑しながらも服に入れてたスマホを取り出し画面を見ると再稼働時間まで6時間と表示されていた。
スマホの画面はその表示でロックされて動かない。
6時間たてばまたパチスロが打てるということだろうか?
パチスロ台がなくなり本格的に何もやる事もなくなった。
夢の中でパチスロを打ってる夢とまだ勘違いしていた時である。
やる事がなくなっても目が覚めない事でようやくそこで現実に気づいた。
俺は異世界にいる!
恐ろしく遅い気づきだった……。
見逃して欲しい!
さりとて俺にはサバイバル技術はない。
サバイブ能力ゼロである!
格好はジャージ上下にトレーニングシューズ。
持ち物は財布とスマホとICカードしかない。
そして、無人の荒野に一人いてもどうしようもない。
だからとりあえず歩き始めることにした。
人の身体は体温を保てなければ数時間で死ぬ。
水がなければ数日で死ぬ。
食べ物がなければ2週間で死ぬ
100年もすれば寿命で大体死ぬ。
俺はまだ29歳である。
パチンカスだけどまだ生きていたい!
暑くもなく寒くもない荒野だが夜になればどうなるかわからない。
だから生存するために活動する。
またパチスロ打つために頑張る!
とりあえず人がいるところ!
村や町を目指そう!
6時間このまま動かないという手もあるが6時間後にパチスロが打てるかどうかはわからない。
誰かに助けてもらえる期待もできない。
とりあえず動くことを決めて無人の荒野を歩いた。
しかし、歩けど歩けど荒れた大地が続く。
次第に心が沈んで行くのが自分でもわかる。
元いた世界でどん底落ち目の時を思い出す。
何処にも居場所がない。
信じられる者がない!
何もない絶望感。
ここではない何処かに行きたいと彷徨うような気持ち......。
心はどんどん暗くなっていく……。
スマホをみたがまだ、3時間くらいしかたってない。
少し休憩してからまた歩く。
疲れたら休憩する。
そして、また歩きだす。
何もない無人の荒野でこの繰り返しである。
「きっつー」
更に3時間たった......。
まだ日は落ちてない。
太陽の位置的に後3時間もすれば暗くなるような気もする。
パチスロ遊技時間12時間とスマホに表示が変わった。
スマホの液晶に触れたら画面が変化した!
メッセージが色々流れたが無視して、そのままスマホをタップし続けたらパチスロの機種が画面に沢山表示された。
適当に機種を選んだ。
いや、嘘!
適当じゃない!
意識的に好きな機種を選んだ!
『L HEY!エリートサラリーマン鏡PA4』
を選んだ。
椅子もでてきた。
このままパチスロ打ちたい気持ちもやまやまだが。
今はこの能力の把握が先だろう。
どうやら時間制限付きの能力っぽいな。
俺は能力を時間の限り確認することにした。
なんとなく本能的にこういう事ができそうだという感覚はある。
しかし、なんだかそれがはっきりしない。
故にうまく操れない。
特殊な能力に目覚める感覚ってのが始めてだからだろうか?
出来る事を確認する。
スマホを操作してパチスロ台を選べばパチスロ台を出せる。
沢山の機種が登録されておりそれを任意で選んで出せる。
パチスロ台を遊技するにはICカード入れなきゃ駄目。
椅子も選んで出せる!
肘掛けタイプと肘掛け無いタイプの二種類選ぶことができる。
パチスロ台のみも出せるし。
椅子単独でも出せる!
ICカードは1枚しかないしだしたり消したりできない。
ICカードをパチスロ台に入れてる時はパチスロ台は消せない。
ICカードをパチスロ台に入れてる時だけ残りの稼働時間が減る。
パチスロ台を収納するにはICカードを抜かないと行けないようだ。
スマホも1台しかないしこちらもだしたり消したりできない。
パチスロ台は何台でも出せるがICカードを入れないと遊戯はできない……。
一人で複数稼働みたいなマナー違反はできないようだ。
が!
とりあえずはパチスロは打ち放題ではある。
スマホの画面から機種も選びたい放題!
最高かよ!
スマホがなくても出した事あるパチスロ台なら念じれば出せてしまう。
目の前に出したり、離れたとこに出せたり、空に浮かべる事だってできる。
まさに自由自在に物理的に操れる。
台の高さも最適化できたり調節もできる。
椅子も調節できるし出せる!
スマホからさらに細かくパチスロ台の数も機種も操作可能だった。
マジに最高かよ!
スマホには現在のクレジットが表示されておりさらには景品項目という表示がある。
「交換と追加と削除が選べるみたいだ」
しかし、交換するアイテムが何もない!
故に削除もできない。
何か追加する必要があるのだろうな。
とりあえず追加ボタンを押してみる。
追加する品をいれてくださいと表示された!
石を拾ってスマホにかざしてたりおしつけてみたが反応はない。
ひょっとしたらある程度価値のあるものしか追加できないのかもしれない。
価値のあるものしか入れることができない?
財布はどうだ?
現金は小銭しかない。
クレカとか会員カードとか免許が入ってる財布だがこれなら入れれるかな?
財布をスマホにかざしたが何も起こらなかった。
ダメ元でクレカや免許等いれようとしたが反応がない。
どうやら手持ちのものでは駄目なようだ。
それから色々と実証実験した。
パチスロ台を出したり消したりに回数制限はなさそうだ。
パチスロ台を出したり、消したりしても疲労感や消耗した感覚はまったくない。
この能力は体力を消耗するわけでもないようだ。
パチスロ台は自分が見える範囲なら何処にでも座標移動できるし召喚できることがわかった。
パチスロ台とパチスロ台をぶつけてみても何処も破損しない。
荒野の岩に向かってパチスロ台を投げ飛ばしたら岩が粉々になる程の威力だった。
「凄い威力のパチスロ台だ!」
とりあえずなんかやばそうなのがあらわれたらパチスロ台をぶつけて逃げよう。
パチスロ打ちたいだけの自分には必要のない能力な気もするがここは異世界だ。
とんでもないクリーチャーに出くわすかもしれないわけだし。
身を守る力はほしいとこである。
それから
パチスロ台を操作してやれる事を模索することにする。
できることは。
パチスロ台を出して盾にする。
パチスロ台を投げ飛ばして対象にぶつける。
身を守れて近距離も遠距離も攻撃できるのはありがたいな!
パチスロ台を沢山出してグミ打ちもできる!
グミ打ちは負けフラグだからできるだけやりたくないけどな!
パチスロ台はパチスロ台同士ぶつけようが地面に叩きつけようがなにしようが本当に一切傷がつかない。
ダイヤ以上に頑丈なのかもしれない!
と、能力の把握していたらモンスターに遭遇するんだから運が良いのか悪いのか!
現れたのはデカイ鳥である。
鷲に似た大きな鳥が空中に現れて俺に向かってきた。
人間並みのサイズの鳥が空から襲ってくる。
半端じゃない驚異である。
だが、パチスロ台を出して投げつけたら簡単に倒せた。
追跡性能と加速性能があるのかパチスロ台はデカイ鳥に向かって加速して命中して頭にめり込んだ。
デカイ鳥は頭が潰れて死んだ。
パチスロ台の威力半端ない!
モンスターを倒すと他のモンスターが引き寄せられるのかモンスターは立て続けに現れた。
デカイ鳥、
デカイ蠍、
デカイ芋虫、
デカイ牛、
デカイ蜘蛛
みたいなモンスターに複数出くわしたがパチスロ台をぶつけるだけであっさり倒せた。
気がつけば俺の歩く先はモンスターの死骸だらけになっていった。
こういう時に死骸から剥ぎ取りなりなんなりするべきなんだろうがそういう道具もないし技術もないし放置した。
荒野を歩けど歩けどモンスターはでてくる。
そして進展はない。
適当に歩いて村や街に辿りつくのは不可能なのかもしれない。
思えば6時間前にいた場所はモンスターがパチスロ災害による惨劇で消滅したから安全な場所だったのかもしれない。
考えなしに歩いてしまったと今はわりと後悔している……。
まさに後悔先に立たずなトホホな状況。
今更元いた場所に戻る気にもなれないし戻れる気もしない。
このまま体力が尽きて倒れたり、寝たりしたらモンスターにそこを襲われて終わる。
そんな気がするからろくに休憩もとれない状況になってきた……。
いっそ誰が助けが来るまで体力を温存して動かない方が良いのかもしれない。
そして、惨劇の荒野をあてもなく歩き続けた俺は力尽きて倒れた……。
____エリーシアサイド
エリーシアは思い出していた......。
パチンカスを拾う迄の事を……。
帝国の軍人エリーシア。
この女性人馬の仕事は上級情報官である。
上級情報官の仕事は幅広い。
異世界人の保護もその1つである。
エリーシアは帝国の貴族でもある。
貴族としても帝国に忠誠を誓いとても仕事熱心だ。
帝国の命令とあらば他国に戦場にあらゆる場所に顔をだして情報収集に走る事もあり肝も据わっている。
大陸中を飛び回り目端も聞く。
優秀な軍人なのである。
それでも、荒野で異世界人を探すのはなかなか骨である。
エリーシアが北の荒野にいたのは偶然ではないがパチンカスを拾えたのは偶然である。
帝国は異世界人を集めて保護しているこの大陸唯一の国である。
そして、帝国には優れた予言者がいた。
予言者は言った……。
「北のモンスターだらけの不毛な大地に異世界人があらわれる。
その者は世界に変革を起こし帝国を救う希望となりうる者」
といった内容だった。
しかし、予言の精度はあまり高くない。
北の大地は広いし、いつ現れるかもわからない。
しかし、無視もできない内容だった。
予言で異世界人が来る事が分かっても保護できずに死んでしまう事だってある。
そこで今回は複数の情報官が選抜されて長期的に北に送られる事となった。
その中にエリーシアも選ばれていた。
パチンカスが異世界に転移した頃、エリーシアは探知魔法を使いながらモンスターを避けて荒野を散策していた。
その時荒野に異変が起きた。
そしてエリーシアは巻き込まれないギリギリの場所にいて、パチンカスが起こした大災害級の現象を目の当たりにしたのだ。
エリーシアは荒野でこれまでちょっと見たことがないというレベルの大惨劇を見た。
荒野にいたモンスター達はおよそ人の力とは思えないぐらいにバラバラに損壊されて消滅した。
状況を説明するなら内側から外側に破裂して跡形もなく消えたという表現が1番近いかもしれない。
そして、残された大地には1人の人間がいるだけだった。
それがパチンカスである。
異世界人は帝国では重宝される。
異世界人はこの世界にない文化や知識を持っていたり特殊な能力を持っている事が帝国では知られている。
故に異世界人を見つけたら保護して国に招き入れるというのが帝国の方針である。
エリーシアは荒野をめちゃくちゃにした異世界人と接触を図るタイミングを見計らって恐る恐る後をつけることにした。
「もしも、異界より来たる破壊者だというなら。それが本物だったらやばいでありますな……。」
数万規模の軍隊もあっさり殲滅できそうな現象を起こす異世界人。
そんなアンタッチャブルな存在を目撃してしまった衝撃は大きく……。
エリーシアは少し臆病になっていた。
それも無理はない。
大陸の古い記録で異世界人が暴れて大陸の半分が焦土になったという記録もある。
そんな個人に近づくのは危険な気もする。
そうは言ってもそんなアンタッチャブルな相手にたいして接触して友好を図り保護するのが今回のエリーシアの仕事である。
他国に知られる前に帝国で保護する。
それが帝国の利益になると判断してそのパチンカスの後を慎重につけることにした。
一方、パチンカスはダラダラ歩いていた。
パチンカスは東に歩いていた。
モンスターがでたらパチスロ台をぶつけて倒す。
そしてまた歩き出す。
その繰り返しだった。
エリーシアにはパチンカスが目的もなく歩いてるようにもみえたが……。
モンスターが現れたら即座に殲滅する謎の能力を見て迂闊に近づくのは難しいと判断してしまった。
故になかなか近づけなかった。
エリーシアは慎重にパチンカスの後をつけていた。
そして更に時間は流れた。
そしたら、パチンカスは倒れて急に動かなくなった。
これは不味いと思いエリーシアはパチンカスに近づいて確認する。
パチンカスは本当に意識を失っていた。
「これは本当にまずいであります!」
エリーシアはすぐさまパチンカスを拾い上げてモンスターのいない安全な場所まで駆け抜けた。
____パチンカス視点
俺は荒野で倒れた。
そこまでは覚えている。
そして起きたら馬の背に腹ばいになって乗せられていた。
「うわ!」
その事にびっくりして馬の背から落ちそうになったが不思議な力が働いて体勢が戻って落ちなかった。
「あ、起きたでありますな。 死んでなくて本当に良かったであります!」
馬の背から前に人がいたからびっくりである。
(じ、人馬だ!)
と、声にだしたいところだがそうもいかない。
人間を見て人間だー!
と、声出すのは失礼かなと咄嗟に考え身構え、とりあえず俺は人馬さんの背から降りた。
そしたら人馬の女性はこちらに向き直して声をかけてきた。
「いやー。 生きてて本当に良かったでありますー。ワタシは帝国の軍人であり、エリーシア・ハイペリオンという者であります。 異世界人の貴方を保護して帝国まで案内しに来た者であります!」
とりあえず異世界に来て初めてコミニケーションがとれる相手が目の前にいる。
そして倒れた俺を助けてくれた。
人馬であるとかもう些細な事だ。
びっくりしてる場合じゃない。
「あ、えっと……。 ハイペリオンさんが俺を助けてくれたんですよね」
エリーシアさんは軽く頷き。
「ワタシの事はエリーシアと呼んでくれて大丈夫でありますよ。 もう話して大丈夫でありますか? とりあえず身体を調べるでありますね」
そう言ってエリーシアさんは俺の身体をあちこち丁寧に触ってくる。
いきなり呼び捨ては抵抗があるから無理。
「調べるって……あ、」
わりと力強くホールドされてて抵抗できない……くそ……。
「喉は渇いてないでありますか? お腹は減ってないでありますか?」
アンタは俺の母ちゃんか!
と、思わずツッコミを入れたくなるが我慢した。
水を少しもらって少し落ち着いた。
「異世界人さんは名前をなんというでありますか? どうやってこちらに来たか覚えているでありますか?」
とりあえず俺は能力で椅子をだして座りエリーシアさんと話をする。
「あ、それが異世界人さんの能力でありますね! 便利そうでありますなー」
人馬用の椅子は出せないから俺だけ椅子に座ってエリーシアさんはこちらに目線を合わせてくれてる。
「えっと、何から話してよいやら、とりあえず俺の名前はパチンカスって呼んでもらえたら大丈夫です!」
しまった!
元の世界で身バレしたくなくて名前を言いたくない癖がここでも出ちまった!
俺の馬鹿馬鹿。
そんな名前の奴おらんだろ!
「パチンカス殿? 変わった名前でありますな! 流石、異世界人であります!」
ま、いっか。
俺は実際パチンカスだしな。
とりあえず俺は自分の思いつく説明をした。
「えっと、答えになるかわからないですが俺は、多分、こちらの世界では馴染みある言葉かわからないけれど、異世界転生だか転移していまここにいるんじゃないかなと。パチスロ打ってたらとりあえず気がついたらここにいたんですよ、だから自分んでも今だに状況が分かってないんです」
「パチスロ?」
エリーシアさんは???
浮かべている。
「えーと。 なんと説明したらよいか。また、それは後で説明します。 とりあえず、お腹減ってしまっていて食べ物か飲み物分けて頂けたら有り難いです!」
そう言うとエリーシアさんはバッグから水と食べ物を出してくれた。
まじ助かるー。
「パチンカス殿。 できれば帝国迄ワタシに案内させていただければと思うのでありますが……」
行く宛もない俺には願ったり叶ったりの提案である!
エリーシアさんマジ助かります!
俺は帝国に行く事を了承した。
「帝国というところまで案内していただけるならそれも助かります!」
エリーシアさんはそれに頷き、更に質問してきた。
「あ、それと気になったのですが、パチンカス殿はどちらに行こうと思って歩いていたのでありますか?」
「いや、ただただあてもなく絶望しながら荒野を歩いていただけなんですよこれが……」
エリーシアさんは少し複雑な表情をしている……。
馬鹿と思われたかもしれないが事実である。
「承知したであります。 とりあえず近くの街道にでて町に行き支度してから帝国迄案内するであります。 街道に出ればモンスターに遭遇することも減りますし、その方が安全であります。そして、旅をしながらこちらの事もゆるりと学ばれるのがよろしいであります。 では案内するであります」
俺はエリーシアさんに色々教わりながらまずは近くの町に向かう事にした。
その道中色々と話もした。
「そういえば、エリーシアさんみたいな体型の人って多いんですか?」
(女性に体型の事聞くって俺は痴れ者?)
エリーシアはさんは普通に答えてくれた。
「人馬を見るのは始めてでありますか?」
「え?」
「顔に書いてるであります」
「書いてますかね?」
「はっきりと書いてあるであります。 パチンカス殿は分かりやすいでありますなー」
「ですかね?」
「そうでありますよ」
「いや、これは失礼。 現実だと見たことなかったものですから。 いやでも存在は知ってるというか……。 なんていうか俺の世界だと神話の生物というか、なんというか非実在なんだけど、そういう形態の人がいたらいいなーみたいなそういう事を考える人が沢山いたというか。 ファンタジーというか、フィクションのキャラというか、まあ、人気ある種族というか。認知度は高いけども、でも存在しないというか......説明が困難だなー おい!」
「世界が違うというのはなかなか難儀なことでありますな」
「そう! 難儀だよね! 難儀!」
(とりあえず同調しとこう)
「いやー、でも友好的な方に会えて良かったです。
エリーシアさんに合うまではどうしようって思いながらどうにもできないレベルで絶望してましたから。
エリーシアさんが声をかけてくれて本当に良かったというかなんというか、まあ、1人も孤独にも慣れてはいるんだけども、流石に知らない世界、知らない場所でいきなり1人は厳しいなーと思ってたので感謝しかないです」
「パチンカス殿は1人で異界からこちらへきたでありますか?」
「ええ、1人です。 最初は夢か幻か、ここが大規模な特撮施設という可能性も考えましたが、エリーシアさんと話してると、異界なんだなと実感が湧いてきます。少なくとも俺が元いた世界にエリーシアさんのような方はいませんでしたから」
「いないんでありますか?」
「いないです!」
「そうなんでありますな」
「そうなんですよ。 ナハハハ!」
「なんで笑うんでありますか?」
「失礼。 なんとなくです」
「なんとなくでありますか」
「はい……」
「…………。」
おかしなやりとりをしてしまったのか少しの沈黙が場を支配する.....が、エリーシアさんは良い人なので話をそっと戻してくれた。
「さておき、ここから帝国までわりと距離があるでありますからな、休憩しながらこちらの地図を見て説明するであります」
エリーシアさんは地図を出すついでに自分の荷物入れからまた飲み物や食べ物を出してくれた。
地味にまじ助かる!
さっきも少し食べたが、この世界の保存食みたいなものだろうか?
味気なく固いが腹が減っているので有り難さが勝る。
ゴチです!
「ご馳走様でした。 わりとお腹減ってたんで凄い助かります」
俺はわりと深々と頭を下げた。
「そんなかしこまらなくて大丈夫でありますよ。 気楽にいこうであります」
そう言いいながらエリーシアさんは地図を広げてくれる。
マジに良い人!
いや、マジに良い人馬さん!
「地図とかちゃんとあるんですね。 俺の世界だとアップル地図やゼンリン地図やスマホで簡単便利に現在地が把握できるんですが、こちらにそういった物はないようですね」
アップルやゼンリンと聞いてもなんらやらとなるエリーシアさんだが俺はそれをスルーした。
エリーシアさんが出してきたのは羊皮紙に近い紙質のメルカトル図法の平面の地図だった。
書いてる文字も不思議と読めるが地図をみる限り現代地球とはまったく違う場所にきたんだなとはっきり思える地図である。
「北東に位置するここが今いる現在地のバラス荒野であります。」
エリーシアさんが地図を指差して場所を教えてくれた。
「なのでここから南西に移動して街道に出て国境の街を目指すであります。国境からサハル平原を越えるとサハルバーグという大都市があるであります。そこで船に乗れば帝国領の港町ポートビルにつくであります。 そこまで行けば帝都まですぐであります!」
わりと長い道のりになりそうだ。
「サハルバーグの街まで順調に行けば60日前後でそこから船で10日くらいかかるでありますから帝国領のポートビルについたら、少しゆっくりしたいとこであります」
遠い......。
本当にそういう世界なんだな。
60日も歩くなんてできるだろうか?
自分が凄く心配になる。
俺の心情とは別にエリーシアさんは丁寧にこれからの話をしてくれる。
「あ、それからワタシの事はエリーシアと呼んでくれて構わないでありますよ。 帝国迄の道のりは長いでありますから気楽に気さくに行こうであります」
「ありがとうございます。 徐々に慣れていけたらと思います」
エリーシアさんはとてもいい人に感じる
異世界に来て始めてコミニケーションがとれた相手だからか簡単に信用してしまう。
エリーシアさんが実は悪い人で俺を奴隷商人に売り払うとかするようにはとても見えない。
だが、悪い人は良い顔をして近づいてくるし、良い人は悪い顔で近づいてくるという事もある。
とりあえずはエリーシアさんについていき大きな街まで行ってから身の振り方を考えよう。
エリーシアさんの説明的に俺には帝国迄来てくれないと困るようだが、出来ればエリーシアさんに依存しないで自分の事は自分で決める状態にしたいものである。
____エリーシアサイド
という考えも実はエリーシアには伝わっていたがエリーシアはパチンカスがこちらの世界に来て何もわからないなら無理もない考え方だなと感じで指摘はしないであげた。
エリーシアはとても優しいのである。
そして、エリーシアの中には対人交友三箇条というものがある。
相手を騙さない。
約束は必ず守る。
相手が困っていたら助ける。
この誠実さがエリーシアの魅力なのだが。
パチンカスにそれを察する能力はなかった……。
故にパチンカスはエリーシアを誤解してしまいそれが帝国で大きな事件となるのだが……。今、それは知る由もないことである。
長いので三行まとめ!
パチンカスは異世界でもパチスロが打てます。
パチスロを使って戦う事もできます。
エリーシアと出会い帝国を目指す事になりました。