素晴らしい家族
読んで戴けとら幸いです。<(_ _*)>
澄人の父、母、兄と思われる死体が仲良く血塗れでダイニングテーブルを囲んでいた。
皆テーブルの上に肘を載せ、手首と手首を合わせ真っ赤なリボンで繋がれ、死ぬ間際の壮絶な表情をその顔に湛えていた。
澄人が満面の笑顔で何か話しているが、裕太には何を言っているのか解らない。
裕太は激しくなる呼吸を抑えて言った。
「素晴らしい家族だ!!
おめでとう、澄人
最高の家族だね! 」
そう言って裕太はにっこり微笑み喜びに浸った。
澄人は満面の笑みを浮かべる。
裕太にはこうなる事が解っていた。
何故ならこうなるように裕太が澄人を誘導して来たからだ。
その日澄人は食事を与えられず空腹を抱えながら家族が食事を摂っている光景を見せつけられた。
以前はそれを当たり前に受け入れていたが、その時その輪に入る事を許されない差別を感じ涙か零れた。
愛したい愛されたいと言う欲求が芽生え、それが叶わない事に絶望を感じる。
その時、裕太の声が頭の中で言った。
「殺せばアイツ等は従順になる」
裕太に依存し切っていた澄人はキッチンから包丁を持って、まずは後ろから回り込んで父の胸を思い切り刺した。
父親が椅子から転げ落ち兄と母がそれに気付いて驚き腰を抜かした。
恐怖に足が竦み動けなくなっていた家族を殺すのは容易い。
従順になった家族をテーブルに座らせ理想の家族像を描くのはこの上無い喜びだった。
作業しながら鼻歌を歌うほど澄人の感情は解放され、喜びに溢れていた。
裕太はこの家族の肖像を自作の芸術作品のように満たされた気持ちで眺めていた。
再びこの感覚を味わえた事に深い喜びを感じる。
裕太の両親を殺したのは裕太本人だった。
ネグレクトに遇おうが命の危険を感じるような暴力を振るわれたとしても裕太は生きる事を諦めず、体内に怨みだけを溜め込んでチャンスを狙っていた。
決行の日、裕太は母親の瑠美江を先に殺し積年の怨みを籠め何度もめった刺しにした。
そして何も知らず会社から帰った父文敏をドアの陰から迎え撃つ。
余りにも簡単に事が運び、裕太は戸惑う。
それでも窓のガラスを割り父の運動靴を履いて割った窓から外へと飛び降り、外からの侵入者が再び窓から逃げて行ったように交錯するのは忘れなかった。
勿論その靴を近くの川へと投げる事も怠らなかった。
そして最高の免罪符、11歳の子供が両親を殺す筈が無い。
それらが裕太を守り、裕太は罪に問われることは無かった。
ここの死体たちは澄人の優しさが滲み出ている。
何匹もの小動物を殺した経験で得た知識が発揮されていた。
澄人は余計な苦しみを与えないように包丁で皆急所をひと突きで死なせている。
それが澄人と裕太の大きな違いである。
澄人にはこの愛すべき人々の肖像を完璧にする必要があった。
「裕太.........」
裕太が澄人を振り返ると澄人は包丁を構え、満面の笑みを湛えている。
「大好きだよ、裕太
だからオレの家族になって」
この家族には愛が溢れている.........。
欲求に素直な家族は一言も彼に不満など言わないだろう。
fin
最後まで読んで下さり有り難うございます。m(_ _)m
久しくリアルに没頭していたせいか、この頃は思うように文章が書けないので、もうリハビリと割りきって書きました。
ろくに食事も与えられない11歳の子供が重たい死体を椅子に座らせたりするのは不可能なのですが、そこは生暖かい目で見守ってやって下さい。(ToT)
反省点だらけの作品で、読み直すと泣けて来るのですが、そんな作品を読んで下さったあなたに心から感謝です。
精進して、もっも納得の行く作品書けるように頑張りますので、また機会が在りましたらご一読願えれば幸いです。
お身体大切に、お元気でまたお逢いできる日を楽しみに。ヽ( ̄▽ ̄)ノ