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5:文化祭にいざ出陣!!



******



 コツ、コツ……じゃら、じゃらら……

 歩く度に鳴ってしまうこの鎖の音と、恐ろしさの増す靴のかかと音。靴の音は一人分……だって私は軍人さんに捕獲(抱っこ)されておりますのでね!!


 初めは一緒に歩いていたのよ。でもさ、そうすると絵面が……女王様みたいじゃない?ビビりの。かえって悪目立ちしちゃって、注目を集めるから歩くのをやめたら…抱っこされてしまった、というか。

 

 でも悲しいことに、ルティが私を抱っこすることなんて、特に驚かれもしないというか……MBA祭でもリレーで担がれていたしね。あれと同じと思って、私も受け入れたわけですよ……



 それから一緒に出て来たゴーちゃんだけど、それはもう、もう、、、。後ろに倒れかけたけど、そうなるとルティの首が締まってしまうので、必死にプルプルと感動を堪えていましたよ!!

 もうね、私ってば良い仕事したなって思った!いや、作ってないけど、神父にしようって言ったのと、デザイン案ね。


 もう素晴らしい!デザイナーさんとぜひ語りたい!!絶対後で美術部の一番絵のうまそうな人を引っ張ってきてゴーちゃんを描かせると決めている。

 もちろん私の脳内シャッターは連射モードで、今は動画撮影も同時に行っている最中だ。あぁ、ファンタジー系の神父服ゴーちゃん……私、浄化されそうデス。



「おや、赤ずきんちゃんは、私がそばにいてもすぐに妄想旅へ行ってしまわれるのですか?悲しいことですね、私の仮装ごときではご満足頂けなかったようで……」

「ひぃっ!ちちちち違うよ!!ほ、ほら、ゴーちゃんの神父服も私が一応案を出したからさ、似合っていて良かったなとか、さすがプロは違うなとか思っただけで、ルティの軍服は完璧だよ!」



 そう、雰囲気も込みでパーフェクトだと思う。美形の軍人マジで怖い



「ありがとう。アオちゃんのデザイン画がわかりやすいってデザイナーさんも褒めていたよ。なんか試着の時に『尊い』とかなんとか、アオちゃんみたいなこと言ってたけど」

「そのデザイナーさんとは同志になれそうな気がするよ!」



 やはり、萌えや尊さに異世界もなんもないのだよ!!



「アオちゃんもその猫耳のフードがとっても似合うし、リボンやフリルも可愛いよ。黒のブラウスも新鮮だけど、二人お揃いな感じが出ているね」


「そうかな?ありがとう!」


「それに、ルーティエ兄さんの軍服姿はとてもカッコいいです!魔国の防衛団もこういった服装にしたら人気が出そうですよね」


「私もこの歳で仮装はどうなのかと本当は悩んだのですが、クラスの出し物ですし、担任ですからね…なによりアオイの発案、望んだことじゃないですか?やるからには手は抜かない主義ですので」



 え……仮装を悩んでなんていたかしら?なんなら口挟んできて、仮装を即決してたよね?ルティは私が制服フェチなことに気付いているから、自分もそれくらい着こなせるというのを見せたかったんだと思ってたよ。以前カーモスさんを褒めたときに言ってたもんね



「うん。ホントにルティはカッコいいよ。そこにわざわざ狼の耳がついている事にも萌える…♡」

「燃えますか?ふふ…良かった。それに、アオイは私の軍服姿がお好きですよね?夏休みの時もそうでしたが、この服装の時のアオイの心拍数は格段に上がりますし、私を見つめる回数も増えますから」



 うん。イントネーション難しいよね。「燃える」じゃなくて「萌える」だよ!それと盗み見ていたつもりがバレてた!?


 いや、ちょっと待て。最後に「心拍数」って言ってなかった??いつ測られてんの?こわっ!



「私は常にあらゆる計測をされているのね……もはや隠せるものがなにもない、丸裸にされるとはこのことか……」

「そうですね。知らないことは知りたいですし、隠されていると暴きたくなってしまう習性がありまして……そしてあなたを真実、丸裸にするのも私だけです。

 さて、私達は前半が担当で、昼から休憩なので、一緒に他も見て回りましょうね」



 はて…前半の話の内容と、後半の内容が全く違うんですけど??もう、前半はチョキチョキ切っちゃっていいかな?よし、シュレッダー!ガーーバラバラバラ……消去完了!!



「本当に?あのね、部活動の出し物で生徒手作りの小物屋さんとか、お菓子クラブの焼き菓子屋さんとかもあって…そこに行ってみたいんだけど」

「いいですよ。私も一緒ですからきちんと確認もできますし。楽しみですね」



***



 こうして文化祭、午前の部は始まった。体育祭のように外部の保護者は呼べず、あくまで学園生が自由に楽しむ芸術祭のようなものらしい。まぁ今回に限ってはこんな姿は見られなくて良かったと思っているけれど。



「ほら、私の赤ずきんちゃん、口を開けてはくれないのですか?」

「食べる、食べるけど!どこからそのスティックパイなんて出てきたの」



 それにさっきみたいに横抱きのままにしてくれればいいのに、この鎖、都合よく伸び縮みしすぎじゃない?今度はめちゃくちゃ短くなっているせいで、離れられない!!

 

 鎖が繋がっている左手とルティの首輪との長さは20cmあるかないか……よって、私は大胆にも人前で恋人の首に両腕を回している状態である。本当は片側だけなんだけど、そうすると肩に腕を回して絡んでる人みたいだし、バランスも取り辛い。これも罰なのか……

 

 スティックパイは美味しいけど、このポロポロこぼれやすいパイをうまく食べないと、唇についた分はルティに食べられてしまうので、未だかつてないくらい上品に食べている。今ならミルフィーユもイケるかもしれない!



「そもそも、仮装を見てもらうのに教室から出ないで、私達だけなんで優雅にお茶してるのよ!」

「おや?私は一生懸命、客引きをしておりますが?ほら、私達を見る為に生徒があんなに列を成しておりますよ」



「……え?」


 私はひたすらにルティを見つめている状態だったので、後ろの状態には気付かず。フクロウ並みには回らんが、人の限界に挑戦した首回しをして確認してみた。……90度は回ったか?



「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「なんです?首を(ひね)られたみたいな声を出して……」


 え?へぇ~首を捻られるとこんな声が出るんだぁ……って知るか!!知りたくもないわ!!


「おきゃ、おきゃ、おきゃくさんが……隣の客はよくきゃき食う客が……」

「そんなに動揺しますか?当然、予測できるものと思っておりましたが……」



 気付かないわけだ。この男、防音結界かけてたし!!振り向いたらもの凄い並んでる!!いつの間にか待ち時間表示まで出ている!?準備いいな……ええ!まさかの180分待ち!?某夢の国並みの混雑っぷりに驚愕する



「え?どゆこと?そんなに仮装が物珍しかったってこと?」

「まぁ、それも理由の一つかと思いますが、今日はベストカップル賞を狙っておりますので、やるからには手を抜かないと申し上げたでしょう?」



「は?ベストカップル賞?そんなのあったっけ?お気に入り仮装の投票だけでしょ?」

「私達は二人で一つの作品です。トップを獲るということはベストカップルに相応しいといっても過言ではないと思うのですよ。似合いの仮装とは、すなわち似合いの二人ということと同義ではないですか」



「ん?理解できるようでできないような……まぁルティ独自の判定なんだね?ようは投票一位を狙いたいってことか」

「いつもは10秒以上凝視することは許可しませんが、投票するにはやはりベストカップルに値するのかを確認しないことには投票できないですよね?ですから、今日はある程度近くで見ることを許可してあるのです」



「え、そもそも10秒以上ルティを見たら駄目だったんだ……」

「そんなわけないでしょう?アオイを、ですよ。私は昔から見られ慣れておりますし、それに対して興味もありませんから」



 はぁあ?私ですかい!?見られた記憶もないよ、悪目立ち以外でさ。まぁ、この辺は恋人フィルターなんでしょうね



「……なんか、もういいや。どの道、今日はどう足掻いても、いや足掻いたら首締まっちゃうしね。どうにもならないってことでしょ?うん、諦めた、私は諦めたよ。罪人には拒否権はなしだからね。甘んじて受け入れます」


「……ふむ。私としても、アオイの笑顔が見られないのは本意ではありませんし……では、午前の公開イチャイチャを頑張ったら、アオイの買いたいものを全て買ってあげましょう。あとそうですね……私やゴーシェの仮装姿絵を描いたものを差し上げますよ」

「………なっ!!!?」



 え?え?え?今なっつった?姿絵っつった?しかもツーショッッッツ!!そ、そ、それって一枚じゃなくてもいいのかな?一人ずつのも欲しいし、私も一緒に入ったのも欲しい!!

 

 やれる!何度も失敗はしているけど、人生はトライ&エラーを繰り返して人は成長していくものだ!何度目かの女優業、やらせて頂きます!!そして姿絵もイタダキマス!!



「ふふふ。やる気になったようですね。全ての心の声が漏れていて本当に面白いです。でも、隠し事が下手なアオイが私は大好きですよ」

「うん、私も(趣味を)理解してくれるルティが大好き!ちなみに姿絵は何枚までOK?時間かかるなら他を見なくてもいいから、それだけは絶対に欲しいの!」



「私もアオイ単体と、ツーショット、あとは記念に母上用も必要ですので、時間の許す限り描かせましょうか?」

「はわぁ!!最高!もう今日は最高だねルティ!もう大好き!」



 うっかり、脳内が妄想旅に飛んでしまったせいで、チュッチュッと両頬に勢いでキスをしてしまった私。すると出入り口付近から『きゃあ!!デレたルーティエ先生が見れたわ!!』や『本当に付き合ってるんだな』といった声と、バターンと何人か滅多に見れない(と噂の)ルティの笑顔に撃ち抜かれた女子が倒れていた



「おい、お前らだけ楽しくイチャコラしてんじゃねーよ!ただでさえ入場者整理に忙しいのに生徒が倒れたら保健室に運ばなきゃだろうが!!」


「ごめん……ほんとにお恥ずかしい。私だって手伝いたいけど、命と接客の二択だったら命を選ぶでしょ?」

「どんだけ極端な選択肢なんだよそれ。お前らのそれ()はプレイの一種か?」

「全く、王族の割に本当に品のない表現ですね。【運命の赤い糸】とは思えないのですか?」



 は?赤い糸?ごめん、私にもそうは見えなかったよ……キラ君と同類です



「そういえば、キラ君のその仮装って……」

「おう、ボーンと一緒に近衛の制服にしてみた。どうだ?中々イイだろ?」


「良かったですね、そちらも万人に似合う制服で」

「……うるせーよ。先生は軍帽に狼の耳までつけて……まぁ合ってるけどな、ある意味」



 二人のクラスメイトをじっくり観察してみる。うん、カッコいいね。いいんだけど、なぁんか足らない。もうちょっとスパイス?いや、フェロモン?そんな感じを盛ったらどうだろうか



「……あっイイこと思いついた!キラ君とボーン君さ、その服装のまま全速力で汗を掻くほど走って戻って来てくれない?」

「はぁあ?このクソ忙しいのにかよ?ちゃんと理由はあんだろうなぁ?」


「キラ君……腐女子舐めんじゃねーコンニャロー!!心友を信じなさいっ!」

「なっ、なんだよ急に【婦女子】って……わぁったよ!おい、ボーン!ちょっと走りに行くぞ!!女王様のご命令だ」




 そうして素直な二人は、女王の助言に従い、走りに向かったのであった

 


 誰が女王様だよ!!



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