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18:私の考える清いデートとは② ☆

例えるなら、はちみつレモンくらいの糖度?



******



 気になる……ちょっと、いつもと違うような気がする


「そこまで手を繋いで行きましょうか」なんて言われて、もちろんルンルンで繋いだわけだけど……



 その、、、手繋ぎが今日は随分と指が絡んでいるといいますか……ただの手繋ぎなのに、妙に艶めかしいというか、なんで親指がそんなに器用に動くの?その時折、スリっと指の間とか指を撫でてくるのは何?お陰で全く会話が頭に入って来ないんですけど!!


 それに、たいした距離を歩くわけじゃないけど、ずっと私の頭頂部付近にバッチバチに視線が突き刺さって、上向けないんだけど。見たら石になるかもしれないしね。

 そして、なんで前を見てないのにぶつからないのか謎。



「普段ほっそりとしたうなじを出しているのも、私はすごく好みなのですが、あえて隠されていると、そこを暴けるのが恋人の私だけなのだという優越感に浸れて…とても、いいですね」



 似合う似合わないじゃなくて、ルティがうなじを見たかったからあのヘアスタイルだったの?

 すでに恥ずかしさでお腹一杯なのに、彼が更に甘い椀子そばを投入してきた。ギブアップ!!もう無理、蓋下さーい!!



「いえ、これはあえてじゃなくて、単に私が上手にできないからでありまして……」


「私ですとつい、少しでも長くあなたに触れていたくてアレンジをしてしまいますので……自然体に一番近い姿を見られるのは寝起きと髪を梳いている時くらいですからね。貴重です」



「え?」

「はい?」



「えと、今って別々の部屋で寝ているじゃない?髪を最初に梳くときはわかるけど、なんで寝起き姿を知っているの?せいぜい寝ている姿だよね」



 いくらなんでも、私だって洗顔、歯磨き、髪を軽く梳かす程度はしてからルティに声掛けてるんですけど?翌日の服を置いていく大きな妖精さんだもんね?君は本当に自分の部屋で寝ているのかね?



「……あ、ほらちょうど着きましたよ。結構近いでしょう?」

「……ソウネ」

 


 話どころか、さっきまであんなにガン見だった目まで逸らしたよ!

 疑いのジト目でとりあえず見る……こちらを見ない。うん、ほとんど容疑を認めたようなものだよね。これは黒だな……



***



 とりあえずデートなので、無理矢理だけど気を取り直して。。。

 以前の魔獣で爆走とは違い、本日は優雅にパカラッチョ。そう、車でドライブはできないけど、馬でドライブというか遠乗りはできるわけで。ただの移動ではなくデートでってところがまたイイ……

 

 しかし、また気になる……


 「ねぇ、ルティさんや、ちょっと密着し過ぎではないかな?」

 「……え、なんですか?よく聞き取れなくて……」



 いや、絶対嘘でしょ!?普段はめちゃくちゃ聴力いいじゃん!

 朝だって私が身支度終わって「よし、これでいいかな」って呟きすら拾って、「入って宜しいですか」ってすでに入っていたくらいじゃない!!あれはマジでビビるからね!?


 腰がガッチリガードされているのは、まぁ安全の為ありがたいけどさ、身体まで隙間なんてないんじゃないかってくらいぴっっったりなのはナゼ?

 それに息を吹きかけつつ、耳元にそっと話しかけてくるのヤメテ!


 すでに「あれ、これって清いデートのはずだよね?」って疑問符がいくつも浮かんでいるんですが?



 疑問符が浮かんでは振り払いを繰り返している間に、目的地には到着していた。またも会話が全く頭に入ってこなかった……とりあえず「うん、へぇ、ほぉ~」と相槌を打っていただけだ

 

 



「わっ、わぁ~!すっごいねー!ここまでたくさん植わっているのは私、初めて見たよ!たくさん揃っているとやっぱり綺麗だね~」



ルティが連れて来てくれたのは、今が見頃だと言うひまわり畑。一体どれくらい植えてあるのだろうか、ひまわりが背丈よりも高いせいで、奥までは見えない。



「喜んで頂けて良かった……やはりアオイのイメージ花と言ったら『ひまわり』なので、ひまわり畑にひまわりのようなアオイを連れてきたかったのです」

「え~私はひまわりよりも小さいし、しゃんとして上を向いてないんだけどなぁ」


「向いているではないですか……私の方を」

「あ、ふふ……確かに!」


「ほら、その笑った顔がひまわりなのですよ」

「もうっ!」



 甘い……ハチミツのメープルシロップ和えに黒蜜を添えたくらい、彼氏が激甘い!!

 ぽぽぽっと一気に顔が赤くなった私を見て、クスクスと上機嫌に笑いながら一通り見て回った後、「次は恋人専用のピンクのひまわりコーナーへ行きましょうか」と腰に腕をまわし、エスコートされる。



「ここなら人目も気にならずお弁当を食べられるのでは?」


 連れて来られた先は、ピンクのひまわりがナルトのうずまきのような形状で植えられていて、入り口からもこちらの様子がわからないように工夫されていた。

 きちんと区画に番号がふってあり、予約したカップルのみが使用できるようになっているという


「わぁ……ピンクのひまわりがこんなにたくさん」

「『あなただけ見つめてる』覚えていますか?」


「え?…う、うん。そりゃあ覚えているよ。あの時、初めは揶揄われたって思わなかったから、ドキっとしたし」

「揶揄ってなんていなかったのですよ。真実見つめていたのですから……ただ、あの時はアオイが困っているような反応だったので誤魔化しただけです」


「い、今まさに困っているので、お弁当にしてもいいですか!!」

「ふふふ、本当に照屋さんですねぇ。いいですよ、お腹も空きましたね」



 私が唯一、いや、今は多少っていうレベルだけど、少しは喜ばせる自信があるのがお弁当。学園でも毎日ではないものの、週2、3回は三人分のお弁当を作っている。なんせ学食も美味しいもので、全種類制覇してみようかなと挑んでいる最中です

 

 中でもルティは少し甘みのつけた卵焼きが大好きで、必ずと言っていいほど、お弁当には入っている。プリンがエルフ族に人気な時点でも薄々気付いていたけど、フレトー、プリン、卵焼き……どれも卵と甘いが共通している。ならば、きっとミルクセーキなんかも売れるに違いない、アイさんにいつか飲んでもらおうかな



「はい、ではルティ好みの甘い卵焼きだよ。あ~ん」

「ん、ほんのり甘い卵焼きはやっぱり美味しいです。ではアオイは……これでしょうか?オニギリ」


「あ~ん…むふふ。当たりの鮭だ!ヤッター!じゃあ次はルティにこれだ、BLK()サンド!」

「あっ!ベーコン・レタス・木の実のサンド!私の好物ばかりですね!」


 ちなみにBLN(ナッツ)サンドじゃないのかよってツッコミはなしで!



***



 すっかりお弁当も食後のデザートも食べ切ってお腹は満たされた……いや、パンパンになるまで食べてしまったので、しばし休憩中。学ばない女だな私も……

 

 ここのカップル専用の場所には、暑い日差しを避けるのにはちょうど良いタープのようなものが張ってある。

 初夏ということもあってすでに汗ばむ陽気ではあるけれど、午後からは雲も多くなってきて、暑さも幾分か和らいできた。


 まぁ暑さの原因は外の気温だけではなく、ルティがピッタリと私の肩を抱き、頭もコツンと寄り添っているからというのもあるのだけれど。。。

 直射日光の中なら絶対したくないけど、せっかくの雰囲気をぶち壊すほど私も野暮ではないので、今は気合で乗り切ろうと『心頭滅却すれば火もまた涼し』を脳内で唱えているが、滅却しきれず『暑い』しか浮かばない。あぢぃ~



 周りはピンクのひまわりで囲まれているけれど、地面はシロツメクサの白とグリーンでより一層ピンクを引き立たせている。

 どのみちあまり身動きできないので、うっすら記憶に残る花冠を作ってみようかと思い立ち、せっせと編むことにした。案外、身体は覚えているもので、やりだしたら自然と手が動き、いびつながらも作ることができた。



「おや?アオイは髪を結ぶのは苦手ですが、そういったことはできるのですね」

「失礼な!自分では見えない部分をやるのが苦手なだけだし!でも編み込みは何回やっても、もじゃもじゃにしかならないんだけどね……よし、できた!」



 作る様子を見ていただけだと思っていたら、彼も花冠を作っていた。

 悲しくなるくらいクオリティが違う…白とグリーンの配置とか計算されているなと感じる逸品だ



「はぁ、作らなきゃ良かったなぁ。ルティの見ちゃうと私の花冠のなんといびつなことか……」

「そんなこと言わず……私のものはアオイに差し上げますので、その花冠を私の頭にかぶせて頂けませんか?」



 そう言って彼の花冠は私に被せ、私のいびつな花冠は彼に被せた。良かった、イケメン補正でいびつであろうともオシャレに見える。洋服でいうところの着崩し感?あえてのいびつ、みたいな。



「アオイ、シロツメクサの花言葉はご存じですか?」

「えー、待って!こんなこともあろうかと花言葉の本持って来てるんだ……」


「おや、感心ですね」

「でしょ?う~ん……あった!……『私のものになって』だっ…!?」



 顔をあげた瞬間には、彼と唇が重なっていた。角度を変え口づけながらも、彼の長い指が私の髪をゆっくりと梳いて首筋を撫でていく。



 耳に入る音は、ひまわりがそよそよと風に揺れ、葉っぱ同士がこすれる音と二人の吐息だけ

 彼の唇が離れ、閉じていた目を開けると、うっとりと私を見つめるルティと視線が絡んだ



「本当に一日も早く……『私のものになって』頂きたいです」

「今だって十分、ルティのものな気がするけど?ふふ。他が入る余地もないじゃない」


「当たり前ですよ。余地も近づく隙も与えたくありませんからね」

「私の恋人は独占欲が強くていらっしゃる……」



 <お手々繋いでデートして、最後に軽いフレンチ・キスをして解散>を清いお付き合いとして想定していた私。

 結局は予想を遙かに超える密着度と、人目がないところでのキスの嵐……『清い』とは一体なんなのか今一度考え直したくても、私がプロデュースした手前なんとも言えず。

 

 今後もこれが標準となったせいで、むしろ今までよりも濃密になってしまった気がするのは、、、気のせいだと思いたい




 ルーティエと

 清い交際

 いと(かた)


     アオイ心の俳句





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