<感謝>SP小話:特別な友達
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ある日の学生食堂――
今日の日替わりは『シャーモンムニエルセット』。サーモンのような鮭のような?コルド国や魔国の北の寒い地域で獲れる魚とあって、楽しみにしていた。
私、ルティ、ゴーちゃんも同じセットを注文し、学食とは思えない味に舌鼓を打つ。うま……
「今日は当たりだったよねぇ」と食後にセットのサービスティーを飲みながら感想を話し合っていると、ルティに教務室への呼び出し放送がかかり、舌打ちをして渋々席を外していった。教師が舌打ちするんじゃない!
「ふふ、アオちゃん今日のシャーモン気に入ったみたいだね。うちでも出してもらえるよう言っておくね。でも、僕はアオちゃんが作った塩唐揚げの方が好きだけどね」
「本当?いやいや、プロには適わないよ~。でもありがとう、嬉しい。えへへ」
この素晴らしくふんわり、まったり、癒し系のゴーちゃんとのひと時を楽しんでいると、揶揄うことが生き甲斐と思われる男が声を掛けてきた
「おい、アオー」
「ん?……なんだお馴染みのキラ君かー」
面倒臭いなぁ~今日はなんのいちゃもんつけにきたんだよー。時間は有限なんだよ?
「お前って恋人のフルネーム言えないって本当か?どうせ俺のも言えないんだろ?」
「は……?なんでキラ君が私のトップシークレットの一つを知っているのよ?キラ君のくらいなら確か短かったから言える……ハズ」
ほぉん?言ってみろやの如くニヤニヤ見てきやがって……覚えられる容量がそもそも少ないから、いらんと思ったら覚えないようにしてるんだよね。馬鹿じゃなくて、あえてよ?あえてなの。
こやつの名前か…初日に聞いたんだよね、確か……
「……キ=ラー、だっけ?」
「【キ】って名前にどんな意味があんだよ?」
「間違えた!キラ=クンじゃない?」
「俺は常にお前からフルネーム呼びされてんのかよ。もれなく、アニキ達も親父もフルネームで呼ばれたら○○君って呼ばれてるみたいになんじゃねーか!全然覚える気ねーな。キラ=カイザーだわ」
「あ~キラ=サイダーね。夏にはよく売れそうな飲料名つけてもらえて良かったじゃん」
「飲みもんじゃねー!【さいだー】ってなんだよ!夏限定で人気出る名前をなんでつけようと思うんだバカ。そもそもカイザーは王家の姓だっつーのによ」
「そういや王家出身者か!くっ、サーセンっした……。確かに私はルティのも全ては言えないよ……」
しかし、このいじめっ子ボーイはどうでもいいが……どこから漏れた?ハッもしや!恐ろしい…王家の諜報部が出張れば、こんな情報なんてちょちょいのチョレギってことか?
正直、ルティには上二つ覚えていればいいと言われたから、ホントにそこしか覚えてないんだよね。これって大問題なのかな?恋人なのにって話?
「ぶはっ!ははは、マジかっ!!いや、カマかけただけだったんだけど、ルーティエのも言えねーのかよ!」
「あ゛あ゛ん!?なんだとぅ!キラ君には赤い血が通ってないの?人の古傷をえぐりよって……」
「あ?竜人族は赤い血じゃなくて、青い血だから通ってねーな」
「えぇ!?うそうそ!青い血だったの?見てみたい!!ちょっと切ってみよっか?」
ちょっと竜化してさ、尻尾の先っちょ辺りをスパっとやっちゃたらどうかな?ほ~らスパっと
「ヤメロ馬鹿!嘘に決まってんだろうがっ!お前はもう少し人を疑うことを覚えろよ。ホント危なっかしい奴だな」
「騙した張本人にそんなこと言われたくはないねっ!……これでもキラ君のことは『特別な友達』って思っていたのに……もういいっ!ただの『モブK』として今後は扱うから!」
「ちょっ!なんだよ『モブK』って……悪かったよ。ドンタの割引券やるから機嫌直せって、な?特別な友達なんだろ?お願いしますっ!」
「え、ドンタの割引券……!?ふ、ふ~ん…?じゃ、じゃあ、三枚で手を打ってもいいけど?なんなら一枚でもいいけどさ」
キラ君はプレミアム会員だから、半額クーポンとか1本サービスとか、結構いいもの持ってるんだよねぇ。帰りにテイクアウトで買って行けばいいよね。何だかんだみんな好きみたいだし
「はははっ!お前はホンット食い意地ばっかだな……あ、いや、良い意味で、だぞ!?俺は良いと思う!良く食う女は嫌いじゃないぞ?だからそのゲンコツはしまえって!!」
「ぐぬぅぅぅ!!ゴーちゃん止めないで!今日こそはコイツに鉄拳を打ち込むんだからっ!!」
身体強化をかけて拳を振り上げたところで、ゴーちゃんが止めに入った。大丈夫、こいつは一発叩いたところで、頑丈らしいから!!
「アオちゃん、落ち着いて?ここは学食だから、喧嘩しちゃうとアオちゃんが罰を受けちゃうから、ね?後で僕が……いや、ルーティエ兄さんにお仕置きしてもらえばいいよ」
「そうだけど……でも、それはそれで夢見が悪くなるっていうか、キラ君が夢枕に立つようになったら嫌だし」
「亡霊ってこと?中途半端なやり方じゃなくて、木っ端微塵の消し炭にでもしたらいいんじゃないかな?」
「おい、お前は『特別な友達』が一人消えることに、なんら感情は動かねぇのか?ゴーシェお前もだぞ!」
なんだよ今更『特別な友達』を盾にしてきてさ。お互いにそう思えないならそんなの成立しないじゃん!
「そもそも、キラ君がいっつもルティ…先生がいない時を狙って揶揄ってくるからいけないんでしょ!なんで普通にできないの?他の人には……あ、そうか。。。私が一番下っ端だからいじめるんでしょ!」
「バッ…んなわけねーだろ!年下なのはわかってっけど、それを馬鹿にしたことなんて今までもねーじゃん。普通にったって、アオには他の奴らにしてるような、王子の態度はしたくねぇし」
「キラ、君って……」
まぁ確かに年下を馬鹿にされたことはないか……ちゅうかね、前世は50歳だったんだから、厳密には年下じゃないんだよね。あっゴーちゃんにもその手でいけば姉になれたのでは?……いや、こんな頼りない姉じゃいかんな。よし、妹ポジでいよう
「キラ君……ごめん、王子の態度ってなに?え、他の人にそんなことしてた?全く記憶にないんだけど……そもそもキラ君って王子キャラではないっていうか、むしろヤンキー枠?あ、ヤンキーって不良のことね」
「おっ前なぁ……ふっふふ…ははは!!言っとくけど、学園の外で言ったら不敬罪だからな。まぁでも『特別な友達』だって言うなら、その態度でも不問にしてやるよ」
「モチロン君ハ『特別な友達』デス。不敬罪は良くないと思う、うん。権力を振りかざすの反対ー!!あ、プリン食べとく?」
権力の前に、ただの庶民なんぞ無力よ……これが王子の態度ってやつなのか?なるほど、確かにこんなのを毎回言われてしまうと、キラ君とは話もできやしないよね。
正直、素でズケズケ言い合いできるのも、出会いのせいかキラ君くらいだし、それにネタとしてもおいし…ゴホゴホ!いや、結構良い奴ではあるはずなんだよね。長年ゴーちゃんの自称親友をやってきているんだから
「ぷりん?あーあのクソ甘いやつか……あっ!!」
キラ君がブチブチ言いながらも受け取ったプリンが、フッとその存在ごと彼の手から消えた
「おや、クソ詰めが甘いキラ君ではないですか。なぜお前がアオイの至高のぷりんを持っているのです?」
「ルティ!違うの、これは権力の前には無力な平民風情からの献上品というか、有体に言えば賄賂っていうか。だからそれ返して!不敬罪は嫌だもん。学園に通えなくなっちゃうし」
「はぁ…ゴーシェ、これはどういうわけですか?アオイの説明はちょっと複雑でよくわかりません」
「はい……なんていうか、いつものようにキラがアオちゃんを揶揄って、それにアオちゃんが腹を立てて……学園外では不敬罪になるけど、『特別な友達』のままなら許すとかなんとか。ようするにキラはアオちゃんに相手して欲しいみたいです」
「はっ?ちがっ!そんなんじゃねー!!別にアオに相手して欲しいなんて思ってねーし!!」
「はぁ~あ、そんなにムキにならなくてもわかってるよ。キラ君は大勢のセクシー美女達に相手してもらうんだもんね。私はストレス発散の捌け口にちょうどいいんでしょ?まぁ小庶民ですからね、適任ですよ」
「キラ……庇いたいわけじゃないけど、友人を失くしたくないならきちんと伝えないと。アオちゃんには特に伝わらないよ」
「え、ゴーちゃん今のどういうこと?『私には特に』って若干「この子頭足りない子だからね」みたいなディスりが入ってなかった?私十分理解していたと思うんだけど……だよねぇ?ルティ」
「まぁ、私にはどうでもいいことですが、アオイを不快にさせる存在は近づけさせたくないですね」
「いや、答えになってないんだけど??どゆこと?」
もう、なんなんだか!三人だけワケ知り顔でさぁ。どうせ私はアホですよ!キラ君はムカつくことも言ってくるけど、結構掛け合いを楽しんでいたから仲良くなったんだとばかり思ってたのに、友人にすらなれてなかったってことでしょ?王子スマイルすら(見たくもないけど)する気もないんだもんね
「はぁぁ……もういいよ。お昼休み終わっちゃうし、ゴーちゃん教室戻ろう」
「うん、そうだね」
「あっ、お、おい……」
「アオイ、抱っこして行きましょうか?」
「え、ヤダ」
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「ふぅ~最後の授業が魔国史だと、やっぱり……眠くなる。窓際っていうのも良くないんだろうなぁ、危険な席だよね」
「ふふふ。アオちゃん、ほとんど寝てたでしょ?僕のノート、あとで写す?」
魔国史はルティが担当じゃないから、余計に緊張しないというか。ぶっちゃけゴーちゃんのノート見た方がわかりやすいんだよね。
およ?キラキラ王子がまたやってきたよ……今度はなんだぁ?
「ゴーシェ、それ俺も写したいから、今日お前ん家行っていいか?」
「キラ……君はまたサボってたの?」
「……ちょっと考え事してただけだ」
「ふうん。考え事、ねぇ」
「ふうん。どの女の子がいいか、考え事、ねぇ?
あ、ごめん。中々キラ君いじる癖が抜けなくて!一週間くらい猶予ちょうだい?練習して丁寧に扱えるようにするから」
「いい!そういうのヤメロ。お前が常識人じゃないのは今に始まったことじゃねぇから、アオはそのままでいてくれよ」
「おん?そういうキラ君は『常に色欲にまみれた竜人』を略しての常色人でしたかしら?あ、それとも色情狂いの情色人?
それに、そのままっていうのは、キラ君を変態スケコマシ野郎って思ったままでいいってこと?」
「それは本気でヤメロ。大体、そんなものは生殖本能だって言っただろーが!いい加減覚えろよアホイ!!」
「キラ!!アオちゃんへの侮辱は許さないよ!!」
「なっ!?アホイだと?つ、ついにそんなディスリワードを編み出すとは……さすがは王族…心が折れる。ゴーちゃん慰めて!」
「キラ、君は最低だよ!!アオちゃん、気にすることないよ、ヨシヨシ……」
「マジか……ごめん、言い過ぎた。てっきり言い返してくるかと思って。いや、そうじゃなくて、俺が言いたかったのは、いつも通りなんも変えないでくれってことだけで!
アオとはそういう友人関係でいたいんだよ。王子とか関係なしで、冗談を言い合える女友達なんてお前くらいしかいないんだ、失いたくない!」
え?失いたくないって……キラ君。。。可愛いとこあるじゃーん!!ちょっと、これも青春っぽくない!?親友とギクシャクからの仲直りみたいな?このネタ一応、店長に提案してみるか……もちろん男子校設定で。
「キラ君……でも、ごめんね?いつも冗談言ってる風に取られていたみたいだけど…あれ、ほぼ本音だから。てへっ!」
「本音かよっ!!……ってもういいや。お前はそれでいい…いや、それでいてくれよ」
「うむ。わかったぞよ。良きに計らいたまえよ~」
「調子こくなっバカが!!」
「キラ、ちゃんと言えたね」
「うっせー…」
「でも……あんがと」
「ぷっ、いいよ」
何だかんだでキラが一番友情に厚い気がする……。
★来週はLOVE LOVE LOVE。糖度UP週間となります♡