14:睡眠は大事です
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昨日の夜は雲がかかっていて月もよく見えなかったのに、今日はスッキリとした青空。これから気温も上がってくるんだろうけど、まだ朝方だからか過ごしやすい。
「いやぁ~今日はいい天気だ!清々しい朝だよねぇ!……あれ、みんなどうしたの?体調悪いの?」
あれれ?隣で悟りを開いちゃったみたいな顔しているルティに関しては、うん。多少お察しではあるのだけど、一人広々と寝ていたゴーちゃんは、普通に見えてなんとなく不機嫌?な感じだし。
キラ君は……おかしいな、なんでそんなに不満気な顔して私を見てくるのかな?ん?口パクでなんだよ……『お・ま・え・の・せ・い・だ』ってなんで!?私が何をしたってのさ!!無視するなー!!
まぁいいや。カーモスさんは体調不良……ではないんだろうな。なんていうか気だるげ?
いつもと違うパリッとしていない髪型が、大人な男性のプライベート感を醸してる……私の主観ですが。
そしてどういうわけか女子’Sが一人も朝食場所に現れないという不思議な状況……混沌!!
「あーーー…ハニーはちょっと体調悪ぃから、今日は一緒に帰らずに別荘でゆっくりしてから帰るって」
「えぇ、大丈夫!?お見舞いはできないの?」
「あぁ……まぁ、うん。確かスッピンは見られたくないって言っていたような……」
「ええっ!?いつもそんなに濃いメイクしていたかな?すごく可愛いのに……」
まぁ、見られたくない部分ってのは人それぞれだよね。嫌がってるし、体調悪くて寝ているなら、ここの管理している方に手紙とプリンでも置いていこうかな
「カーモスさんはイーロちゃんとホヘットちゃんとは……その、一緒だったんじゃないんですか?」
「ええ、先ほどまで一緒でしたよ。私は徹夜でも平気なのですが、彼女たちは慣れておりませんから、朝方ついに気を…」
「アオちゃん!!」
「ひぇっ!な、何?ゴーちゃん」
急に話を遮るようにゴーちゃんが声を掛けてきて驚く。普段は人の話は最後まで聞くスタンスだというのに珍しい
「カーモスは二人と朝まで夜着会をしていたから朝方寝たところなんだって。アオちゃんもあの日はそうだったでしょ?ルーティエ兄さんに布団ごと簀巻きにされて、寝たまま帰ってきたもんね」
「ふぇっ!?す、簀巻き!!私そんな姿で帰って来てたの?知らなかった……それでも目覚めないってある意味すごいな私。その節は、大変申し訳ございませんでした」
「プッ。お前寝たら起きないタイプかよ、寝ている間に誘拐されても気付かなそうだな」
「へへへ……確かに。熟睡タイプなものでして」
確かに笑い事じゃないな……一人で寝るの怖くなってきた。でも最近、忍び込んでるんじゃないか疑惑のあるルティがいるから多分、大丈夫だろう。
いや、ある意味では大丈夫ではない気もするが。私のセーフティゾーンの感覚がおかしくなってきているな
「そんなことキラが心配しなくても、ちゃんとルーティエ兄さんや僕がアオちゃんを守るから気にしなくていいだろっ!」
「お、おう……そうだな」
あれ?やっぱりゴーちゃん、思った以上に激おこだよねぇ?カーモスさんがいなかったから?いや、基本的には一緒になんて寝ていないし、そもそもは一緒に来る予定もなかったもんね。
男性に取り囲まれて女子は私一人という、何とも居心地の悪い雰囲気の中、なんとか手早く朝食を済ませ、絶賛モヤモヤ中のゴーちゃんを私達の部屋へ招いた。ちなみにルティはまだ若干ぽやぽやっとしていて、ちょっと眠くなってきているのかもしれない。可愛い……
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ルティがウトウトしだしてきた為、ゴーちゃんにお願いしてベッドへ誘導してもらった。
専ら家ではティーバッグ派だったド素人の私が紅茶を用意してみる。ふむ……わからんな。
とりあえずティーブレンダーであるルティ配合のカモミールティーだから、美味しく飲めないこともないだろう。量は……こんなもんでいいかな?少ないより多い方がいいのか?
「ゴーちゃん、はいどうぞ。私が入れたお茶だからイマイチかもしれないけど……」
「ううん、ありがとう。アオちゃんのお茶も……ゴホッ!うん、、、美味しいよ。でも、二人の部屋にお邪魔しちゃってごめんね」
一応アイスティーにしているのだけど、私は氷属性はないので多少冷えた水は用意できても氷入りは作れない。ゴーちゃんも得意なわけではないけど、『それくらいなら作れるよ』と言って、小さな氷を魔法で出し、私と自分のティーカップに入れてくれた。
うん、やっぱりこのくらい冷えた方が……ゴフッ、まだ飲める味だ。おかしいな?茶葉同じなのに……
「ううん、そこは気にしなくていいんだけど。ゴーちゃん、勘違いじゃなければ今日ちょっと機嫌悪いのかなって。何かあったの?私で良ければ聞くよ?」
「あ、うん。ごめん怖がらせちゃった?……全然大した理由じゃないんだ。ただ僕、枕が変わると寝れないタイプだったみたいでちょっと寝不足気味でさ……それでイライラしてたんだと思う。関係ないのにごめんね」
「あ~~それならなんかわかるかも!私は抱き枕かそれっぽいのがないと中々寝付けなくて。リイルーンに行く前にしばらくユーロピアの宿にカンヅメ生活していたことがあったから、その時の暇つぶしの一つで自作してたんだぁ」
「へぇ、抱き枕……?ってどんなやつなの?」
「ほら、これが今の愛用品の抱き枕『オダキさん二号』。ユーロピアではそば殻が手に入ったからそれで作っていたんだけど、こっちに来てターキーの羽が手に入ったから、ふわふわの羽毛製も作ったの!」
生地の質感とかにもこだわりだしたら、どんどん理想を求める始末。ちなみに『ソバdeオダキ一号』とシルクの生地で作ったターキー羽毛の『もふっTOオダキ』と合わせて三つもある。
シルクで私用のピンクとルティ用の黒を作ったんだけど、素材は良かったのに、気付くといつもどこかに行っちゃって、ツルツル素材が駄目なのかな?と私のピンクは分解して別生地で作り直しておいたのだ
ちなみにルティからはやんわりと抱き枕は断られ、ちょっと凹んだけど、理由が『私は本物のアオイを抱いて寝たいので』と言われ、鼻血が出るかと思ったことも記憶に新しい……
「へぇ~これが『抱き枕』かぁ、なんか良さそうだね」
「じゃあ黒シルクの方使ってみる?私は寝相が悪くてシルクだと逃げちゃうみたいで、へへへ。こっちは肌触りもいいし、同じく中身は羽毛でふわふわだよ!ほらほら、ルティの隣に転がってみて!!」
「え、ええっ!?ここで?ちょっとアオちゃん、わっ…」
全く、妹に遠慮する必要なんてないのに。ゴーちゃんは軽く押しただけで、ベッドにコロンとひっくり返った。
そうそう、そしてこれをぎゅっと握って……うん、足はこんな感じで……
「よしっ!いかがですか~?お客様。抱き枕とゴーちゃん……サイコー似合う!!汚れが目立たないように黒にしたんだけど、ゴーちゃんならやっぱり白が良かったかなぁ」
「………ううん。僕はこの色が好きだから、このままでいいかな。この抱き枕…確かに、いいね、、落ち、着く」
まぁ確かに男子はだいたい黒、グレー、青とか?そんなんを好む傾向にあるよね
「……ん?ゴーちゃん?」
あれれ…そんなに眠たかったのか、濃い目の味が微妙だったカモミールティーとの相乗効果なのか……私って寝るのは天才の域だけど、寝かせる才能もあるのかもしれない!
とは言え、二人が気持ち良さそうに寝ているのを見ていると、食後のまったりタイムで若干眠くなる私。
目の前には生ける抱き枕ルティが寝ているな……
「女子’Sもいないなら、どうせどこにも行けないし、私も寝ちゃおうかな」
ゴーちゃん、ルティ、私で川の字になって寝てみたけど、こちらの世界のベッドは大きめなので全然大丈夫そうだ。
ゴーちゃんはルティを背にして寝ているし、このまま全員右向きで寝てしまおう
「ふふふ。抱き枕もいいけど、ルティは落ち着く良い匂いがするし、こっちの方が寝付くの早いんだよね……」
ふわぁぁ~…本当にすぐ寝れそう
そういえば、なにかを忘れている気がする……何だったかな?
……まぁいいや、起きてから考えよう
ありがとうございました!