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11:思ってたんと違う、ビーチバレーと魔国紳士の嗜み



******



 ドシーン!ドシーン!

 ここは砂浜だというのに、体育館で鳴り響くかのような音を立てている、一応【ボール】と名前がついているもの。


 おいおい、ビーチバレーだよね?下に着くと軽く跳ねてはいるけど、なんでボールがバウンドする度にドシン、ドシン鳴るの?

 ゴーちゃーん!一番軽いやつってあれで合ってるの?……そう、合ってるのか……へぇ

 

 それとさ、ただ砂のコートでやるんじゃないんだね。なんで所々えぐれてるの?ゴーちゃん得意の土魔法だろうけどさ。は?これが『バレー』!?まさか…“valley”→谷、渓谷を再現しているっていうの?

 あはは、じゃあマリアナ海溝なんかは海水がなければ、まさに天然のビーチバレー会場になるな…ってアホ!!落ちたボールが拾えないだろっ。



「ルティ、私は審判……いや、イマイチルールがわからないからやめておこうか。応援席で見学ということで宜しいでしょうか?」

「賢明な判断かと。では、私も一緒に見学するので、あちらの二人掛けシートへ行きましょうか」



 あ、あれはっ!オシャンティなプールサイドなんかにはよくある、サンベッド!!あれに座って、パイナップルとか刺さってて、毒々しい真っ青な色のドリンクをあえて飲む。リッチな雰囲気になるやつだよね~



「青くないけど、ルティの作った冷たいフルーツティーは美味しいよね!これ大好き」

「青??そうですね、このところ毎日アオイはこれを飲んでますよね。気に入って頂けて良かったです」



 あ~、少し雲はあるけどいいお天気で、透明度の高い海と星の砂浜。別荘から水着でそのまま来れてさ、これぞリゾートだよね……「幸せだなぁ」なんて海の若大将ぶいて、こちらは優雅にフルーティーを啜っている中ビーチバレーは白熱していた



「イーロ、カバーしてっ!!」

 ドシャーーン!!


「はいよ、ホヘット頼んだよ~!あっ谷に落ちちゃう!!」

 ドガーーン!!


「任せてっ!どっせーい!!おっと、落ちるところだった」

 ゴッ!!ドゴーーーン!!


「「ナイスーー!」」


 ピピッ!「チーム女子’S 1ポイント!!」



 ゴーちゃんは審判にまわり笛を鳴らしている。3:2でハンデがあるとは言え、女子’Sすごいじゃん!強いなぁなんて思ったら……のわぁぁぁぁぁ!!



「イーロちゃん!!イ、イ、イロイロと…あの、ほら…見えちゃってるよっ!」



 ポロリでワァオ♡が許されたのはコンプラが皆無だった昭和までだからっ!!早くしまいなさいっ!ゴーちゃんは…よし、目を隠してるね、ルティは……全く興味なく海を見てる、と。

 おいこら、キラ君にカーモスさん!遠慮なく見てるんじゃないよ!さては気を取られて点を奪われたな?バカヤロー!!



「はい、ターイム!イーロちゃんはイエローカード。試合中だけでもパーカー着なさい!審判が審判できません!」


「ええっ!せっかく見せる為に買ったのにぃ~」



 まさかの自らの仕込みやったんかい!?もう一枚イエローカードでーす!いや、退場!!ジャージ来てこんかい!!



「キラ君はともかく、カーモスさんまで……そこまで露骨に見なくてもいいんじゃ……」


「おや、人族の男性は見ないのですか?服を買った、髪型を変えた時など、見て感想を述べるでしょう?それと同様に、ご本人が見て欲しいと主張しているのですから、しっかりと観察し感想を述べることは魔国紳士の(たしな)みなのですよ」


「俺だって嗜みの一つだと王子教育で教わってるぞ?なのに、いっつもアオは変態だのセクハラだのって俺を責めてくるしさー」



 え、えぇ嘘!?女子’S本当?……なんとっ!激しく同意しているではないかっ!!

 ゴーちゃんもかな?……チラリ確認するも、相変わらず両手で顔を覆ったまま、しゃがみこんでなんか言っているので不明



「もしかしてルティも……そうなの?」



 彼は魔国の人ではないけれど、美を愛する種族なら身体の美しさだって愛でるよね?ラトさん辺りは間違いなくしていそうだし。



「私にそれを聞きますか?あなた以外の女性の身体を観察して感想を述べるなど……そんな時間の無駄なことを私がするはずないでしょう?疑われるくらいでしたら視界に入らないで頂きたいくらいですね」



 予想以上に辛辣なご意見だった……嬉しいけど、視界の範囲内に美ボディを今まさに晒している女性がいるので、もう少々オブラートにくるんで箱詰めにでもして欲しかった……

 目に見えて女子’Sが落ち込んじゃったじゃない!ごめん、これは私が全面的に悪かった!!



「うへぇ~ルーティエってかなり重た…じゃなくて一途なんだな」



 うん、漬けている漬物がぺしゃんこになるほど重いかもね。あと、キラ君ほぼ「重たい」って言っちゃってるから、ルティにバレてるぞー



「お嬢様方は気落ちされる必要はないのですよ。アレは特殊な人種となっておりますからね。それよりもせっかく素敵なMIZUGIを着ているのですから、そろそろ海の方で楽しみましょうか?」



「はい……カーモス様♡」

 目がもはやハートになっちゃっているホヘットちゃん


「喜んで、、、カーモス♡」

 ちょっとすでに二人の間になにかあったのか?呼び捨てになっているよ、イーロちゃん!



「ハニーは俺とな?そのMIZUGI、お前によく似合ってるぜ」

「キ、キラ様……嬉しいっ」

 こちらもカップル成立は秒読みっぽい。ハニーちゃんはともかく、キラ君はちゃんと本気なのかわからないけど。


 ここまでのことになるんだったら、キラ君狙いのキャンディちゃん、カーモスさんに一目惚れしていたアーチェリーちゃんも、せめて同じ土俵に立たせてあげたかったな。あのぶっちゃけガールズトークの後だけに、なんだか二人に申し訳ないような気持ちになった。

 

 ただみんなで楽しく海を満喫して楽しむだけと思っていた私は、やはり感覚がお子ちゃまだったのだろうか?

 


 ハッ!キラ君は今はもういいとして、考えてみたら我が兄ゴーちゃんだけ、守りを固め過ぎたが故にあぶれてしまっているじゃないかぁぁぁ!!

 あぁ、複雑……一人でいて欲しくもないけど、だからって誰でもいいってわけじゃないしね。とにかくゴーちゃんを一途に愛してくれる女子……魔国にもいるよね??なんならハーフなんだし、エルフ族と合コンとかする?

 

 ゴーちゃんのこの全てを浄化してくれそうな笑顔と声のトーン、それに最高の優しさライセンス持ちで、頭脳明晰、きっとよそ見もしない……この人が「僕、彼女募集中です」とか言ったら、もう大変なことになるのではなかろうか?私でマネージャー勤まるかな……


「アオイ、先ほどからキラを見たり、ゴーシェを見たりと浮気ですか?そのまますぐに妄想までして……」

「そんなわけあるか!ちょっとゴーちゃんのマネージャーが勤まるのか熟考していただけだし!」


「なんですかそれ。あまり本人の意思を無視して暴走しないようにして下さい」

「えーそんなのルティに言われ…いや、うん。わかった。ゴーちゃん、もう他の皆は海へ向かったから私達も行こう?」



 ゴーちゃんは相変わらずしゃがんで俯いたまま、バカンスを満喫する前に精魂尽きたように落ち込んでいる。身内以外の女性恐怖症なところでもあるのだろうか?それはそれで妹は悩みますね



「え?あ、う、うん。海単体を見るのはいいけど、その…MIZUGIを着てっていうのは僕にはちょっと刺激が強かったかも……へへ情けないよね」


「そんなことないよ。この国では割と一般的ではあるみたいだけど、同性の私にだって刺激が強かったもん」



 う~ん…これ以外に掛けてあげる言葉が思いつかない。なんならこのままゴーちゃんは帰りたいとすら思っているかもしれないなぁ。そんなことをうんうん考えていたら、スーパーマイペースなルティがうじうじしたゴーちゃんを見かねて声を掛けた。



「ゴーシェ、あなたはモー()の乳を見ても顔を赤くするのですか?」

「え、モーですか?さすがにそんなことはないですけど……」



 それはそうでしょう?モーに限らず動物や魔獣のお乳を見て興奮するようなら、ドン引くどころの話ではないよね?



「私からしたら、アオイ以外はその類に分類されるので、全く興味も沸かないということですよ。しかし彼女らよりも、むしろモーの乳の方がアオイの作る絶品プリン作りに役立っているので、重要度が高いと言えますが」


「今はまだいいけど、それ絶対女子’Sの前で言わないでねルティ……」


「なるほど……モーのお乳…確かにあれのようなものですよね!」

「ゴーちゃんも!!それ絶対女子’Sだけじゃなく、他の女性の前で言っちゃ駄目だからね?」



 すっごく複雑……イヤらしい目で見られるのも嫌だけど、もはや牛認定で見られるのも非常に複雑というか、傷つくんですが?苦労して鍛え上げたボディビルダー見て「ターキーみたいなもんだけど、アイツの方が食べれるからまだいいよな」って言っているようなものでは!?ほとんど侮辱!!



「ようするに自分の大切な人以外は、気になるようでしたらそうやって何かに置き換えて考えるといいですよ、という話がしたかっただけの例え話です」


「わぁ、さすがルーティエ兄さんです!ありがとうございます。そう思ったら、全く彼女達のMIZUGI姿も気にならなくなりました」




 私にもうまい置き換えは思いつかないけどさ、それでいいの?ゴーちゃん!!





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