表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/136

24:たまには兄妹水入らず②

評価、いいね、ありがとうございます!

☆明日のお話については後書きに書いてあります

 


******



 大小、様々なサイズ、色合いの宝石のルースがたくさん詰まった箱をゴーちゃんと一緒にのぞき込む。

 その中の一つ、オレンジとピンクの二色のグラデーションがかった珍しい宝石に私は視線が釘付けになった。



「ゴーちゃん、宝石って必ず一色ではないんだねぇ、一つで二色って……お得な感じする」

「プッ、お得って……ふふ、この石が気に入ったの?手に取って光にかざしてみて。良ければそれにしようか」


 そっか、箱の中と単体で見るのでは見え方も違うよね。気になる石を取り出し、そばにあったライトで透かしてみるようにあててみた。



「うん。……おぉっ!ライトに当たるとまた色味が違って見えるね!見てみて……あっ!」

「うん?どうしたの、傷でもあった?」


「ううん。すごい!この宝石はゴーちゃんの瞳の色と少し似てるなって思って」

「本当だ、少し色味が似ているかもね。これにするの?」


「うん!あ…でもやっぱりやめた方がいいかな?瞳の色はゴーちゃんがこれから出会う大切な人の為にとっておいた方がいいんだよね?詳しくはないんだけど、そういう風習なんでしょ?」



 そんな勘違いさせるようなものを身に着けていたら、未来のゴーちゃんの花嫁候補が怒ること間違いないよね。ギリギリ思い出して良かったぁー。少しは進歩したな、自分!



「ふふ。それなら大丈夫だよ。そもそも石の種類がそれとは違うし。白っぽい髪の色はゴーシェナイト、瞳は母上寄りではあるけど、僕のはベリルだからね。だから名前もゴーシェナイト=ベリルなんだよ」


「あ、同じ意味合いの石じゃなければいいのかぁ!そうだよね、似たような石をつけていただけで目の敵にされても困るもんね」


「そうだよ。石にこだわりを持っているのはエルフ族がほとんどだし。うちも両親がエルフとダークエルフだから知ってるってだけだしね。他の魔人族はその辺はあまりこだわりないんじゃないかな?

 ちなみにダークエルフは宝石は好きだけど、花はこの天候のせいで中々種類が育たないものもあって、あまり詳しくないんだ。

 うちは父上の趣味で温室に花を育てているから、比較的華やかではあるんだけどね」


「ちょっとした違いがやっぱりあるんだねぇ。

じゃあこれにする!これなら、ルティからもらったピアスと並んでいても違和感ないもんね」

「また片耳にするの?……じゃあ同じ石で僕もアオちゃんとお揃いでつけてもいい?」


「ゴーちゃんとお揃い!?いいの?でも可愛い色味で……いや、ほんわか天使ならむしろアリか……」

「じゃあ、少しはカッコよくなるように、僕はアオちゃんにこの黒のオニキスで作ってもらおうかな。それなら締まるでしょう?」



 普段、生真面目な子が休日はちょっとヤンチャしちゃってます、みたいな?甘い中にもちょっとスパイス入れてみました、的な?……ええやんっ!?即採用!!


「天使と堕天使の融合!!アリ寄りのアリだねっ!むしろ良いと思う!!」

「う~ん……納得の仕方がイマイチわからないけど。じゃあ石も決まったし早速作っちゃおうか。って言っても繋ぐだけだからすぐできちゃうんだけどね」


「あっ、形の加工ってゴーちゃんはできる?できれば二種類お願いしたいんだけど……」


「ん?形を変えたいの?いいよ」



***



 確かに石とピアスを繋ぐだけの作業で、ゴーちゃんは説明込みでも3分くらいで作っていた。

 でも私の方は、あくまで固定したい場所にのみ、魔力を込めなくてはならず……かなり魔力を圧縮しないと壊れてしまうと言われ、ゴーちゃんにサポートしてもらって一時間、ようやく作ることができた。【宝石=高価、壊れる=弁償】が頭に浮かび、かなり緊張したけど、その分集中力は増した気がする



「アオちゃんの魔力はとっても暖かいんだね。僕のは冷たくなかった?」

「ん?魔力ってみんな暖かいわけじゃないの?ゴーちゃんは冷たいとは思わなかったけど、私緊張していたから、逆に落ち着く魔力に感じたよ。冷静になれるというか、安心感??」


「安心感……?そっかぁ良かった。よく冷たいって言われるから、そうなのかなって気になってたんだ」

「でも、魔力はともかく、ゴーちゃんは指先冷たいよ!よし、ごしごし摩擦しよう!あと指マッサージも」


「じゃあ、ピアスの魔力固定が落ち着くまで休憩にしよっか?アオちゃんに指マッサージされている間は、お兄ちゃんが可愛い妹にオニギリを食べさせてあげます」

「やったーおにぎりっ!では、一生懸命マッサージさせて頂きますっ!」



 そのまま軽食を一緒にとったけど、考えてみたら『食事をとるように声掛けします』と豪語しておきながら、逆にゴーちゃんに声を掛けられる始末。まぁ、概ね目標通り、ゴーちゃんに食事を摂らせることができたのだからよしとするか……。ほとんどが私の口に吸いこまれていってしまってる気もしなくもないが


 その後は、ご自慢のミニ図書館のような部屋へ行き、思い思いに本を読んで過ごした。

 初めはゴーちゃんも青年男子だし?見つけてはいけない本とか、よしんばお宝(BL)本なんてあったらどうしよう~っていうかないかな?と密かに期待して探してみたものの、最初に目に入ったのが『経営学のススメ』、『貿易学』の本だった時点で、天使な兄を心で汚した自分に平手打ちをしておいた。仏門に下るしかないな……



 こちらの世界でいうところの恋愛小説?っぽいものを読んでみたんだけど、著者が魔国の人だからなのか?恋の駆け引きがほとんどなく驚いた。

 結構直球的な表現が多くて……こう、じんわりくるとかトゥンクとくるというより、衝撃的な出会いをして、即好きだ!、私も好きかも!?となり、口づけすらも野性味溢れる感じで展開がとにかく早い。

 その好きになるまでのストーリーだけはぎ取られたような内容に疑問符が浮かんだんだけど、魔国ではそれが主流らしい。


 せっかちさんな国民性なのかな?


 ゴーちゃんも『人気らしいぞ』と珍しくキラ君が本を持ち込んだので読んでみたけど、あまり好みではなかったそうだ。良かった……天使が毒されなくて

 

 でも、ゴーちゃんも全く恋愛物を読まないわけではなく『この本は表現が詩的な感じでとても良かったよ』と別の恋愛小説を持って来てくれたけど、そちらは読後に少し浸っちゃうくらい良かった。

 さすが天使のおススメ書物……イメージすら崩さない



 すぅー…はぁぁぁぁー…本に囲まれた部屋の匂いって落ち着くなぁ~

 夕方まですっかり没頭してしまって、そろそろ戻ろうかと工作部屋に移ると、いつの間に来ていたのか、カーモスさんが夕食の準備をしてくれていた。デキる旅館の女将!?



「わぁ、私の分はパンじゃなくてご飯にしてくれてる!カーモスさん大好き!」

「せっかく整えてもらったみたいだし、このまま食べちゃおうか?

 それと、今日は随分アオちゃんを独り占めしてしまったし、食べたらルーティエ兄さんと仲直りしておいで?心底嫌いになってしまったとか、そういうのじゃないんでしょ?そろそろ許してあげてよ」


「う゛……はい」

「確かに僕もあのポスターには思うところはあったよ?でもあの表情を引き出せるのもルーティエ兄さんだけなんだなぁと思うと…悔しいけど、それだけ二人は想い合ってるってことじゃない。多分、良いポスターを作りたかっただけなんだと思うよ。宣伝とかそういうのはどうでもよくて」


「うん……確かにそうかもしれない。なんか朝から気合が入ってたし。私を緊張させないようにしていたから……」

「でしょう?あのルーティエ兄さんが、大切なアオちゃんに恥をかかせようだなんて考えるわけないもの。むしろ見せたくない派でしょ?実際、あまりに出来が良すぎて回収しようとしていたくらいだしね」


「はぁ……わかった。私もそろそろ可哀想かなって思ってたし、声も、聞きたいし……

 でも、今日寝る前までは私がゴーちゃんを独り占めしてもいい?滅多にないから嬉しくて!たまにはゴーちゃんとも夜空を眺めたりしたいの」

「それはもちろん僕だって嬉しいよ!じゃあ、冷めない内に食べようか」



 ほぼ丸一日、天使な兄ゴーちゃんの放つマイナスイオンで、私の心も浄化されたような気がする。そんなことを言ったら『ゴーシェナイトは魂を浄化する石とも言われているんだよ』と言われ、大いに納得した。すんなり兄として惹かれた理由は、もしかしたらこれだったのかもしれない

 


 3、40分くらいだったけどゴーちゃんと月を眺めたあと、その足でしなびたルティの部屋を訪ねた。もはや長期間熟成の奈良漬けのようになっていたので、何も言わず許してあげた。あと一日遅かったら酸っぱくなっていたかもしれない。

 こちらもほぼ丸一日、頼んでもいないのにカーモスさんにしごかれたとか。ほとんど無抵抗だったようだけど……ツンツン……生きてる?

 


 『仲直りの口づけをしてくれたらすぐに治ります』とこじつけも甚だしいことを言ってたけど、やつれ加減が半端なかったので、頬にチュッとだけしてあげることにした。

 

 復活した途端に、目ざとく私の耳に加わった見慣れないピアスはどうしたのかと突っ込まれたけど、これは天使な兄からの贈り物だから絶対外さないと私も譲らなかった。

 それに、ルティにもゴーちゃんに似合っていたから同じオニキスで片耳ピアスを作ったのだ。


 二人ともオニキスだけど、ルティが三日月の形、ゴーちゃんが星の形。私から見た、二人のイメージが月と星だったから。


 ルティのものは3回も失敗したけど、全て私の魔力だけで作り上げることができた。まさに私の愛を注いでできたピアスだと力説し、つけてあげたらご機嫌も治った。うん、黒はシンプルにカッコいい!

 二人共、輝くような銀髪と白髪だから、より一層黒が目立っているように感じる。従兄弟同士のお揃いもいいですな




 ルティもあの暴挙については『アオイは自分の恋人だから手を出すな』というような牽制を、世間に広く知らしめることができるなという思いがあったそうだ。

 でも撮るなら自分が一番良い顔を引き出したい!そう思ったら、ああなったと……

 



 まぁ愛するが故の暴走というか……でもやっぱり一言相談はして欲しい

 愛を囁かせたら供給過多になるのに、他の部分は一言足りないんだから困りものだよね。思い立ったが吉日みたいなところがあるし


 口を利かなかった二日間、辛かったのは私も同じ。

 


 一緒にいなかった分を埋めるようにぴったりとくっついて、その日はいつもよりちょっぴり遅くまで起きて、おしゃべりに花が咲かせたのだった






明日はゴーシェ視点での、3、40分ほどアオイと過ごしたという、月見会の話になります。

個人的にはおススメなので、ぜひ読んで頂きたいと思っています!

☆明日もAM6時に投稿予約済です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ