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23:たまには兄妹水入らず①

兄妹の和気藹々。ルーティエはしなびれ中(笑)


******



「アオちゃん、まだ喧嘩中?口を利かなくなってもう二日目だけど……ルーティエ兄さんは部屋へは入れてもらえないから、食堂でアオちゃんが来るのを待ってるけど、かなりしなびたキュウリみたいになってたよ」



 ルティの暴挙に腹を立てた私は、あの後すぐに部屋に引き籠り、例えルティが扉の前で土下座をしていようとも謝罪を受け入れないままでいた。ちなみに【ルティ入室厳禁!】と入り口に貼ってある

 

 ゴーちゃんとルティはドンタッキーを食べずに、走り去った私を追いかけて来てくれたんだけど(すぐに捕獲されたけど無言及び無視)、夕食の時間になっても一向に食い意地だけが取り柄の私が来ないことに驚愕していた。ちなみに私は空間魔法にしまってあるお菓子を食べて生き延びていたんだけどね。絶食は無理な話ですよ


 翌日になって、いよいよ心配になったゴーちゃんが立ち入り禁止にされているルティの代わりに、朝食を持って部屋を訪ねてきたのだ。完全に巻き込んでしまいまして、申し訳ない



「またしなびたの?でも今回はまだ許してあげないっ!だって、あのポスターのせいで、ジロジロ見られるようになっちゃったんだよ?あの日はすごく恥ずかしかったんだから!

 ルティがカッコいいからさ、一緒に写ってる平凡な女は誰!?みたいにきっと査定されているんだよ……久しぶりにベッコリベコベコに自信喪失したし……」

 


 あれ見たらいっそのことルティ単体とか、ルティ、ゴーちゃん、キラ君とかの美形三銃士辺りがモデルをしたら良かったんじゃないかと思う。

 なんでOKしちゃったかなぁ自分……気分はぺしゃんこの空き缶だよ。ゴミ箱入りたい……



「えぇっ!?僕はアオちゃんへの心配度がむしろ増したくらい、すっごく可愛く撮れていたと思ったけどなぁ?もちろん実物の方がもっと可愛いんだけどね」


「うぅ……ゴーちゃ~ん!大好き!天使!お兄ちゃんは世界一だよ!!」



 ゴーちゃんの肩におでこを乗せて、片腕にしがみつくと、ゴーちゃんがヨシヨシと頭を撫でて慰めてくれた。ふぁあ~マイナスイオン出とる~

 ゴーちゃんも中々にシスコンが過ぎるからね。身内の贔屓目ってやつなんだろうけど、素直に嬉しい



「ふふ、ありがとう。僕も天使過ぎるアオちゃんが大好きだよ。じゃあさ、せっかくだし……今日は僕と過ごさない?アクセサリー作りとか、あ、本もたくさんあるよ」


「うんうん!いいね、やったー!そうだよね、ゴーちゃんと兄妹水入らずなんて初めてだよね!」



 ゴーちゃんとはもちろん、本当の兄妹じゃないってお互いにちゃんと理解はしている。

 でも、どういうわけか……少なくとも私はゴーちゃんをハッキリ兄として慕っている部分がある。(なんなら弟でも全然良かったんだけど)


 自分でも不思議なんだけど、すごく自然にそう思ったんだよね。ルティの従兄弟だから空気感が似ているのかなぁ?いや、ピュア度はぶっちぎりのNO.1だよね、ゴーちゃんは。とにかく一緒にいると心が浄化されるというか落ち着く?ありがたい存在、、、でも仏じゃなくて天使ね。

 

 ラトさんの方がルティの実のお兄さんなのに、なぜかそんな気持ちにはならなかったのが不思議だなぁ……いや、そっちの感覚の方がむしろ普通なのか。う~んでも、悪い人でもないんだけど、接点が少なかったせいかもしれない。

 やはりゴーちゃんの天使過ぎる容姿と雰囲気が罪なのかな。ラトさんは残念ながらチャラ男認定だったしね。こんなものは答えがなくてもいいのだ。お互いが認定しているんだからそれで良し!



***



「ここが僕の工作部屋兼読書室だよ。ようするに趣味の部屋だね。自分の部屋はちゃんとあるんだけど、寝るか着替えるかする為だけに行ってる感じで、家ではほとんどここにいるよ」



「そうですね。坊ちゃまはご自分の部屋をほとんど使用されないので、片付けも掃除もとても楽で助かります」


「うわぁ!カーモス!!」

「カーモスさん!?いつの間にっ!」



 澄ました顔で『摘まめるものをお持ちしました』と言って、部屋の中のテーブルに休憩スポットのようなものを作り上げていく。小さなバイキング会場のようだ

 

 軽食として小さな一口大のオニギリはもちろん、出汁オムレツ(所謂だし巻き卵)、キャベツとベーコンでちょっと洋風の味噌スープ、和食だけではなく、焼き菓子や紅茶なんかも置かれている。

 

 友達の家に行ってこんなにもてなされた経験はない。田舎のおばあちゃん家に行くと、お茶、たくあん、野沢菜、麩菓子、落花生、お徳用チョコレート菓子、そしてなぜかおはぎまでどんどん並んでいく光景を垣間見ている感じ。もうこれはすでに立派な食事に入るのでは?



「カーモスさん、こんなに食べ物が置かれるって……ティータイムの域を超えている気がするんですけど……」


「アオイお嬢様はご存じないと思いますが、坊ちゃまは一度集中してしまうと、食事も摂らないことが多くて……こうして視界に入るところに置いてあれば多少は食べて下さるのです」

 

「カーモスさん、すごいっ!!ゴーちゃんの健康管理はカーモスさんがしていたんですねぇ。よし、私もちゃんとゴーちゃんが食べる様にちゃんと声掛けしますね!」


「ありがとうございます。アオイお嬢様のお声でしたらきっと坊ちゃまにも届くでしょうから、ぜひお願いしますね」


「カーモス!余計なことをアオちゃんに言わないでよ。僕がだらしない子供みたいじゃないか!」


「おや、そうですか?少なくともこれだけあれば、誰も邪魔することなくお二人の時間を楽しんで頂けるかと思ったのですが……余計な気遣い、でしたか。

 しかしこの方がアオイお嬢様も食べたいときに気兼ねなく食べられるかと。このところ食堂へいらっしゃらなかったので、バーべもフランベも寂しがっておりましたよ」


「あ、バーべさん達にはごめんなさいって伝えて頂けませんか?ちゃんと食堂で食べるようにしますね」


「バーべ、フランベへの伝言、確かに承りました」


「それにしても、出汁オムレツも味噌スープもちょっとアドバイスしただけなのに、すぐにアレンジできちゃう辺りは、さすがプロの料理人さんですね!バーべさんとフランベさんに喜んでたって伝えて下さいね」


「そちらも伝えておきますね。それでは邪魔者は去りますので、何かございましたら……まぁ、あってはならないのですが、大声で呼んでくださいね」


「カーモス!!」


「あはは!カーモスさんでもジョークを言ったりするんですねぇ。カーモスさんは全然邪魔なんかじゃないですけど、他にもお仕事があるんですもんね。むしろ私が邪魔しないように、大人しくしていますね」


「そうだよ。いつも通りなんだから、こちらに構うことなく、カーモスは自分の仕事を優先したらいいじゃないか!」


「ふふふ。ではお言葉に甘えまして……あ、坊ちゃま、本日はあのしなびた男は私の方で面倒を見ますし、ご主人様も奥様もご帰宅は遅いので食事は不要だと伺っております」


「あぁそう……だから何?さっきから何が言いたいの?」

「いえ?特には。ただのご報告にございますが、なにか?」

「別に……」



「ゴーちゃーん!この綺麗な小さい石って何?宝石の原石か何か?」

「あ、うん?どれかな?気に入った色のあった?」



「……では、()()()()()



「ありがとうございました」と振り向けば、もうすでにカーモスさんの姿はなかった。本当に神出鬼没で、幽霊バリに結構びっくりする。



「アオちゃんはほとんど宝石の類を身に着けていないけど、なにか理由でもあるの?」

「え、なにも理由なんてないよ?そういうのに疎いだけっていうか。

このピアスはルティが護身用にって作ってくれたんだけど、今のところ活躍せずに済んでるよ。耐物理攻撃と耐攻撃魔法だったかな?あくまで悪意を持った攻撃に対してのみだから、転べばケガするんだけどね」


「じゃあ、作ったら身に着けてくれる?宝石達も身に着けてもらえないと意味がないからね」

「うんもちろん!あ、じゃあ、ピアスがいいかなぁ…一番なくさなそうだから。ゴーちゃんも器用なんだねぇそんなに簡単にアクセサリーって作れるものなの?」


「どうかな?人によるのかもね。じゃあ僕が教えてあげるから、練習で僕の分を作ってみてよ」

「えっ!?私にできるかなぁ……失敗したら買い取るね」


「あはは。心配しなくても、この箱の中のものは僕が自分で見つけてきたものだから、気にしなくて大丈夫だよ」

「そうなんだ……ちょっと安心したよ。じゃあまずはどうしたらいいの?」



 多少安心はしたけど、宝石ってそんじょそこいらに転がってるようなものなの?掘ったり、削ったりして見つけるんじゃないのかな??けど、ゴーちゃんは土魔法が得意だから魔法で掘り当てるのかもしれない



「まずは好きな石を選ぼうか。どれがいい?」

「う~ん……」



 どうせ作るのなら…と考えたところで、頭に思い浮かぶのは彼のことで……練習してうまく作れそうなら彼の分も作らせてもらおうかなと考えた。



(彼に会いたいな……)



 話し掛けるきっかけができるといいなと思いつつ、綺麗な石の箱を覗き込んだ





ありがとうございました!

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