20:MBA祭の裏側で~事情を知らない人が首を突っ込むものじゃない~
ブクマ、いいね、ありがとうございます!
今話のみ体育祭後の番外編です
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「アイさ~ん!シルバーさ~ん!……カーモスさんまで!」
「アオちゃん、走ったら危ないよー」
3位入賞の喜びを早く伝えたくて、二人の側へ駆け寄った。一緒に付いて来ていたルティは、教師としての仕事が少し残っているからと途中まで送ってくれてから別れた
「ゴーシェ……私は少々キラに教育的指導をしてまいりますので、アオイについていて下さい」
「キラに……?あ、冷やかしの…はい。わかりました。でも、ほどほどで戻って下さいね。せっかくのお祝いムードですし」
「それは当然です。アレにあまり時間を割きたくはありませんので」
「ハハ……」
キラ君への教育的指導のことなど全く知らない私は、アイさん達のところへ向かったけど、なにやら入り込み辛い状況に思えて、ゴーちゃんを呼びに戻ってきた
「あれ?アオちゃん、アイさんのところへ向かっていたのにどうかしたの?」
「う、うん。なんかアイさんとシルバーさんと……あの大爆弾転がしに参加していたタキシードの仮面の人が言い争っているように見えて…どうしよう?」
アイさんの足にしがみつくタキシードの仮面の人をアイさんが反対の足でグリグリと蹴り、シルバーさんは、ノースリーブから出ている美しい…はずの腕に血管まで浮き立たせて、本気で引き離そうとしているとわかる。とてもシュール。
そしてそばにいるカーモスさんは……なぜか優雅にお茶を飲んでる。しかもティーポット有りで
えと……助けないの?
「……う~ん、とりあえずどうしたのかだけでも聞いてみようか?」
「うん、そうだね」
とりあえず一番そばで見ていたであろうカーモス氏に事情聴取だな。
「カーモス、アイさん達は一体どうしたの?助けなくていいの?」
「あぁ、坊ちゃまにアオイお嬢様。あそこの方達のことでしょうか?
ただの痴話喧嘩かと思いまして他人のふり……いえ、見守っていたところでございます。それに私が間に入る方が危険かと」
「……う、、、んまぁ、お前が間に入る方がある意味危険ではあるけどさ。でも全くの他人ではないだろ?」
そうだよね。何も事情を知らない人が入ると禄なことないって言うし。
アイさんも仮面の方も強そうだもんね。それに…もしもっ!仮にでもっ!この人が学園長先生なら手は出せないし、本当は結構強いんだもんね??
「そうですよね。カーモスさんがケガとかしたら困りますからね!一応身内とは言え、部外者は手を出し辛いですよね!」
「おや、まさか私の心配でしたか……ふふふ。アオイお嬢様はお優しいのですね」
ルティはカーモスさんを『陰湿ムッツリ執事』って酷いことを言っていたけど、そういう片鱗を一度も見たことないから、イマイチそうは思えない。至って紳士的だしね。
ただ、基本的に気配消してくるから怖いっちゃ怖いけど
「あらん!アオイちゃんじゃない!ルーティエちゃんってば逃げたわねっ!か弱い乙女二人が必死に抵抗しているってのに見捨てて……」
「あ、いえ、ルーティエ兄さんは生徒指導の仕事がまだ残っているようでして……」
「ゴーシェちゃん!この変態仮面野郎をどうにかしてくれなぁい?全く動かないのよぉ!!コイツ」
「アイさん!私の雄姿を見てくれてましたよね?私は仮面の下からずっとあなたを見つめていました!途中で恥ずかしがって俯いた姿が……可愛かった♡」
「気持ち悪くて吐きそうになったから下向いたんでしょうがっ!お陰で途中からはまともに見れなかったわよ!!」
バチーン!と派手な音を立てて、ついにアイさんから平手打ちがぁぁぁ!!あわわわわ大丈夫?ねぇ歯みたいなものが転がったけど、あれってそのままで大丈夫?
カーモスさん、今あえて歯を蹴らなかった?『歯、でしたか?小石かと思い、つい条件反射で…』ってすごく胡散臭いんですけど
「ああっしゃい高♡アイさん!ついにアイしゃんの方から私に触れてくれるなんて……手形を状態保じょんできないものでしょうかっ」
はうわぁぁぁぁ!歯が、歯がぁぁぁぁぁ!!やっぱり彼はチュチュアートでは!?いや、まだご親戚の可能性も無きにしも……
「だいたい、スチュアートは特にチームに貢献してなかったじゃないの!相手チームを拾うばっかりで、いてもいなくても変わらなかったわ!」
「しょ、しょんな……私、支援をしょっ先してやってましたのに……」
ノォォォォォォ!!!アイさん、そこは名前ぼかして欲しかったです!変態、変質者、ストーカー……いや、碌な言い換えがないな……
「スチュアート、貴様、いつまでそこにいるつもりです?」
ルティ!!っていうか、今は雇用主じゃないの?学園長に貴様って……あ、魔法誓約書か?これがそうなのか?
私はとにかく一人だけハラハラドキドキで、ルティと学園長先生の動向を見守っていた
「シェ、シェー!!ル、ルーティエしぇんしぇい……」
「このまま竜王のところへ貴様を連れて行って戸籍から抹消してもらうこともできますが…それが希望ですか?」
「しょ、しょれだけはぁ!!ここしか私を受け入れてくれるところはないのでしゅ!!ご勘弁をー!!」
「ならば、今すぐ消えろ。あと、変態タキシードの仮面男は貴様ではなく別人。そうですよね?」
いつもながら、話し合いという名の命令が怖い。軍曹や、ルティの軍曹モードはおっかない
そして、変態タキシードの仮面男って……呼び名がすでに犯罪者じゃね?
「シェ、シェ~……」
「とほほ」みたいな意味合いだろうか?
「私も鬼ではありません、今日の舞台を用意したことに敬意を表して、貴様が欲しがるであろう報酬を一つ用意しておきました。学園長室の机の上に置いてありますが…あと5分でゴミ回収されるように手配してありますので、早く戻られては?」
「シェ!?ホントでしゅか!かしこまりでしゅ!!では、アイしゃん、その他のみなしゃん、ごきげんよう!」
アイさん以外は「その他のみなさん」なんですね。ここにも極端がいたとは
「それにしても報酬って一体何を用意したの?」
「ん?あぁ、使用済みのリボンですよ」
「え?アイさんの?それって本人が嫌がるんじゃ……」
「やーねぇ!アオイちゃん、私リボンなんて普段から使ってないわよぉ」
「あ、そう言えばそうですね……じゃあ誰の?」
「キスミー先生のですね。先ほど無理矢理『これ、使って下さい♡』と押し付けられたもので。ならば多少でも学園長の慰めになれば、キスミー先生も一教師として本望かと。
まぁ学園長がどう扱うのかは興味もないのでわかりませんが」
「あーー……そうなんだね」
女豹は苦手だけど、今回はちょっと……「お気の毒に」と言ってやりたい
「キスミー先生が『使って下さい』とおっしゃって、それをルーティエ兄さんが言われた通り使ったのですから、何の問題もありませんね!さすがルーティエ兄さんです」
「えぇ!ゴーシェちゃん……あなたはKwaiiんだから、ルーティエちゃんとは違った方向に成長して欲しいとシル姉様は思うわよ」
「そうよぉ、少なくともヘタレ―ティエのようにはならないようにしなさいね」
「母上?たった今窮地を救った息子に対しての台詞がそれなのですか?学園長戻しましょうか?」
「う、嘘よっ!そんなことないわっ!頼りになる息子って最高ね☆ね、アオイちゃんもそう思うわよね?」
ちょっ、急に私にパスを回さないでー!
ウインクバチコーン☆ってことは、あとヨロピコー☆ってことですね?
「そ、そうだよ、ルティが一気に解決してくれて本当に助かっちゃった!ルティはヘタレなんかじゃないよ?いつもカッコいいって私思ってるから、ね?」
「ふふ。多少、母上に誘導された感はありますが、アオイは嘘をつきませんものね?私もあんな部外者のせいで、アオイとの時間を減らされては困りますので」
「ううう、嘘なんかじゃないよ!カッコいいって毎朝言わされ……じゃなくて、思ってるからつい口に出ちゃうっていうか……へへへ」
「うん、アオちゃんはしょっちゅうルーティエ兄さんのことカッコいいって言ってるよね。僕も実際そう思うし」
さすがゴーちゃんナイスアシストだよ!!
「そうそう!大人の余裕感?……はたまにないこともあるけど。あっ!あと包み込む包容力……もキツ過ぎることがあるけど。強いけど怖い、イケメン過ぎて隣にいる平凡な私が辛いけど……あぁ平凡……」
人をどうとか言う以前の問題じゃない?平凡女が語るなよ、みたいな
「アオちゃんは平凡なんかじゃないよ?食べる姿なんて子リスみたいで可愛いし、背も低くて可愛いし、走っていても歩いてるみたいで可愛いし、手を繋いでないと躓くのが心配だけど可愛いし、怖がりであわあわしている姿も可愛いよ」
「???ゴーちゃん後半にいくにつれて、褒めるより貶されている気がするのは気のせい?」
「あれぇ?褒めたつもりなんだけど、おかしいな……」
「坊ちゃんはもう少し女性の扱いについてお勉強し直した方が宜しいかと……」
「カーモスまで!?そんなに酷かった?」
「アオイも私を褒めているのか貶しているのかわかりにくかった上に、勝手に一人で落ちて行かないで下さい。大人の余裕が普通程度しかなく、束縛気味で、恋人に恐れられているイケメンってことですよね?最悪じゃないですか!私の方こそ泣きたいです」
「いや、そんなこと……ない、ような?」
「お二人は『清い男女交際の仕方~基本編~』から学び直されてはいかがですか?もしくはアオイお嬢様ももう少し慎重にお付き合いなさるお相手は見極めた方が宜しいかと」
「え゛っ!?私早まったんでしょうか?」
「ア、オ、イ……?」
「ひぃっ!ごめんって、人族ジョーク!ただのおちゃめなジョーク!!ルティが一番!ルティ最高!」
「う~ん。今回はアオちゃんが悪いかもね……そのジョークだけは笑えないからね」
「はい。以後気を付けます……」
アイさんのパスを受けたせいで変な方向に話がいって、結局ハズレを引いたのは私だけなのでは?なんだか府に落ちないけど……
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あの後、全校生徒で広ーい敷地で使用された道具などの後片付けをし、閉門ギリギリでようやく終わった。すっかりお腹もペコペコだった私は、ゴーちゃん、ルティを誘い、入賞特典を早速利用する為、お馴染みのドンタッキーへ立ち寄った。
ちなみにアイさん、シルバーさん、カーモスさんはテイクアウトを利用し帰って行った。お家で一人寂しくコーディエさんが待っているんだと思うと、ちょっと可愛い。
カーモスさんは夕食の一品に使うのかな?かなり購入していたけど……
ぷんすこルティのご機嫌取りの為、またも食べさせ合うという羞恥プレイを行うはめになった。しかも今回は四人席が空いていたのに『三人で四人席は申し訳ないのでは?相席も嫌ですしね』と尤もらしいことを言いながら、結局また二人席+私ルティの膝席にされた。三人席は存在していないんですけど?
それでも『無料で食べ放題は最高だね!』と三人で仲良く頬張っていると、厨房の方から体格のいい、どう見ても堅気には見えない眉毛の立派なドワーフ系のおじさんがガン飛ばしながら近づいてきた。
「ね、ねぇルティ……私達、騒がしかったかな?怖い店員さんみたいな人が出てきたよ、出た方がいいかな?」
「ん?店員ですか……?おや、あなたは……」
「よぉルーティエ久しぶりだなぁ!」
いや、ダレーーーーーーー!?
ありがとうございました!