6:エビで鯛、私の料理でエルフが釣れたようです ☆
誤字報告ありがとうございました!
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すっかり見慣れた形になったブタタンのお肉。
大きいし、固いのかな?と心配していたけど、見た感じはしっとり柔らかそう~!見た目じゃ判断出来ないってことだね!
本日のディナーは、お肉ゲットの功労者ルーさんへ欲張りメニューにしました!!
・100%ブタタン ハンバーグ~葡萄酒のソース~
・ミラノ風カツレツ
・野菜たっぷり具沢山スープ
パン粉作りもしたいのもあってこのメニューにしたんだけど、またルーさんが魔法でカチカチのパンを粉砕してくれました。
きめ細かかったから、ミラノ風カツレツにピッタリ!挽肉も一瞬だった。私にもいつかできるかなぁ?一家に一人ルーさんがいたらフードプロセッサーいらないね。あっという間にパン粉も挽肉も完成!!
タネをコネコネしてハンバーグの成形をしていたら、ルーさんが興味持ったようで一緒にペタペタ……ハンバーグのタネは温まらない方がいいよと言ったら、手の表面に氷の膜?を張ってやっていた。天才か?!
初めはたどたどしかったのに、すぐにコツ掴む辺り、これは近い内に私は負けるだろうな……と悟ったよ。一を聞いて十を知る人ってこういう人なんだろうな。凡人もがんばろっと
でも、二人でなんだかんだ楽しく作ったから、ハンバーグもカツレツもたっぷり保存食として作れて良かった。
出来立てを空間魔法に入れたから、これでいつでも熱々で食べれるね!生活魔法と空間魔法はすごく便利で感動ものだ!お陰で全く攻撃魔法が上達しない。
あっ!そろそろ良い頃合いかな?よそったら完成だ
ぷぷ。ルーさんの顔に「まだかな、まだかな」って書いてあるみたいにソワソワしているね。ナイフとフォークもしっかり用意してある。
好みに合うかな?喜んでくれるといいなぁ。給食のおばちゃんはきっとこんな気分だわ
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「ア、アオイ……あなたはまた、とんでもないものを世に生み出してしまいましたね」
あれ?これどっちの感情?ぶるぶる震えてるし、視線はおかずを睨んでるんだけど。肉い、いや憎いのかしら?
「……やっぱり駄目だった?口に合わない?味付けが濃かったのかな……ごめん別なものに作り直そうか?」
「何を言っているのですか!今更戻せと言われても、ここに置かれたおかずはすでに私のものなので、アオイといえども返すことは出来かねます」
「と、言うことは……?」
またあのパターンか?
「絶品です!!!『かつれつ』はサクサクとした食感と、粉チーズとハーブが奏でるハーモニー!そしてトマトソースとのマリアージュが素晴らしい!
逆に『はんばーぐ』はふわっふわで口の中で蕩ける美味しさです!単体でも美味しいのに、葡萄酒のソースが更にはんばーぐの味を際立たせる良い仕事をしていますよね。どちらも、もはや芸術の域では?!」
うんうん要するに「美味しかった」だね。良かった良かった!!
ちなみにルーさんはどちらもお代わりして食べていたよ。
もう、木の実、果物生活は嘘だったんじゃないかとすら思える食べっぷり……
でもやっぱりソースとか醤油がないし、取り急ぎは出汁!顆粒、めんつゆ、鰹節、煮干し、昆布~!
出汁が欲しいよ~コンソメもブイヨンも固形の使っていたから、本格的に作るのはやはりできることじゃないしね
スープの方は野菜とベーコンから旨味が出るから、中々満足のいく出来栄えになった。
ルーさんはこちらもニ回お代わりしていたから気に入った模様。成長期なのかな?彼
「アオイの料理は食べると心も体も元気になりますね。食べ終わった後は幸せな気持ちで満たされます。もしかしてなにか魔法でも掛けているのですか?」
「ふふ。それは作り手としては最高の褒め言葉だよ、ありがとう!魔法の料理かぁ……ある意味そうかも?『美味しくなれ~』とか念じてるし。美味しいって笑顔が見たいな、喜んでくれるといいなって思いながら、真心込めて作っているからね」
「なるほど……真心、ですか。道理 で満たされるわけですね」
「あとは一人よりやっぱり大勢で食事はした方がより美味しく感じるものじゃないかな?そんなに特別なものを作っているわけじゃないし、家庭の味レベルだよ」
「いえ、少なくとも私にとっては特別な味がしますよ……こんなに食事が楽しみなのも初めてです」
「それは良かった。でも、調味料の種類が足りないから、なんとかあるもので試行錯誤してる感じかな。主食だったお米食べたいなぁ~味噌汁も飲みたいし」
「米……?ふと、思い出しましたが、ワノ国と言う東にある国でもコメは食べられていたような?種類が一緒かはわかりませんが、見たことがあります。5、60年前でしたでしょうか……ミソもあったかと」
え?ワノ国?響きからして私の故郷に似た国な気がする!!
「味噌も色々種類があるんだけど……いつか絶対ワノ国へ行って見てみなきゃ!」
「店先に並ぶものを見ましたが黄色っぽいもの、黒っぽいもの、赤っぽいもの、茶っぽいものとあったと思います。直接食べた時は非常に塩辛くて食べれないと思ったものですが、単体では食べないものなのですね」
和食が存在するかもしれないとわかっただけでも嬉しい情報だ!!!
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そうして一週間、二週間……いよいよ最終日の一ヶ月を迎えた。
間違いなく良い指導者に恵まれたお陰で、基本的な属性魔法・生活魔法の初歩レベルは難なく使えるようになった結界魔法も極薄ミルフィーユ結界を作れるようになった辺りから、一気に精度も増した!
そして、てっきり今日は昼には解散の話に触れるかなと思っていたのに、特に何も言われず気づけば夕方。一ヶ月お世話になったし、お礼も兼ねて夕飯に誘えば、二つ返事で喜んでついて来た。
食べたら食べたで、普段は言わないのに『お腹一杯なので、少し休憩してもいいですか?』とか言って、結局寝落ちしているし。寝落ちなんて初めてじゃない?
それでも明日の朝言うのかもしれないと思って、そのまま寝かせておいた。
正直今日は自分の宿を押さえていなかったし、この家作ったのルーさんだから、出て行くなら私になるもんね。
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朝になり『すみません、寝落ちしちゃったみたいで……朝食準備手伝います』とか言って普通に過ごす……
ん?解散は?
この一ヶ月間、四六時中一緒にいたこともあり、聞きたいことは都度聞けて効率も良かったと思うんだけど。
……卒検みたいなのがあるんですかね?
初回の時のような態度はもう全くないけど、あんなに早く依頼を完了させたがっていたのに、冒険者稼業は忙しいんじゃないのかな?
Aランクではあるけど、本当の実力はSランク級だって聞いたよ?
「あの、ルーさん、ちょっとお聞きしたいんだけど……昨日で一ヶ月経ったと思うんだよね。何かクリア試験みたいなものがあるのかな?」
食後のお茶の最中に、いよいよ話を切り出してみた。ルーさんには意外な質問だったのか、目をパチクリと瞬いている。
「試験、ですか?ありませんよ。逆に私からも質問なのですが、アオイは以前、この後もうしばらく一人で暮らしてみて、大丈夫そうであれば世界を旅したいとおっしゃっていましたよね?旅の目的は何ですか?」
「目的?あぁ、一つは海外旅行直前で亡くなってしまった自分の為で、もう一つはどうせ旅をするなら一番気に入った所で老後を過ごそうかなって」
この世界には身内も友人もいないし、まして介護してくれるような施設もないだろうから……みんなで支えあって暮らしているような街とかいいかな考えている。
ツイていない人生から運気も上がったみたいだし?良い出会いがあるといいけど。
「なるほど……そうなると中には危険な道を通ったり、盗賊や魔獣に出くわす確率もかなり高くなりますよね?
あとは一人の時に病気やケガなんかもないとは言えませんし。理想郷を見つける前に死んでしまう確率が高いと思うのですが?」
「うっ……そこ言われちゃうと痛いところなんだけど。
でもここも悪くないけど永住となるとちょっと違うというか、冒険者の街って印象なんだよね。だから国ごとの代表的な街を周ってみて、実際に軽く生活体験してみようかなって」
やっぱり甘い考えだよねぇ。でも、お金の問題もあるし。一人くらいなら細々とギルドの依頼を受けてなんとかならないかなぁと思ってたんだけど。
「でもそうなると護衛を雇ったり、安全性の高い乗り物で移動するならそれなりに高額にもなりますし…
失礼ですがアオイはそこまで余裕がある程お金を持っているのですか?」
だ、だよねぇ……やっぱり無謀なのかな、しばらくこの地でアルバイトとかする?でもそれじゃあ、貯まるまでにどのくらいの時間がかかるんだろう。この世界に来て一ヶ月で人生を詰んだ気分だよ
俯いて黙るしかなくなった。久しぶりに目の汗を拭ってもいいだろうか?
「アオイ、そこで私だと思いませんか?アオイにとってメリットだらけでしょう?気心は知れているし、魔獣、盗賊対応もできますし、解体もできます。それに使い道がなくて余っているお金も十分過ぎるくらいありますよ!」
「……は?ルーさんが?そりゃあ居てくれたら心強いけど。それってルーさんになんのメリットがあるの?A級冒険者を護衛で縛れるほどのお金なんて、私持ってないよ?」
「むしろメリットしかありませんよ。いずれは生涯のパートナーになる予定ですが、今は手っ取り早くパーティを組むでもいいですよ?
大切なパートナーであるアオイからお金なんて必要ありませんし、愛する者を守るのは当然ではないですか。むしろ喜びですよね。アオイのそばにいる事と、一緒に食事をとることがご褒美と言う名の報酬でしょうか」
頬を赤く染め、耳をピコピコさせながら、しれっと何か言ったが……パードゥン?
生涯のパートナーとな?
生涯のパートナー→生涯の伴侶=結婚?!翻訳機能バグったか?
あ、小害かな?確かにちょっと害はあるかも?でも愛、とは?
あい……アイ……サル?ちゃうかっ
「ごふっっ!!!……………………………は?」
あっぶなっ!!お茶を吹き出すところだったわ!
待て待て待て待て!!!!なんかこの人、おかしなこと口にしなかった?「愛する」って誰のこと?
周りキョロキョロ、誰もいない。まさか私かっ!?
えーーーーっと、ちょっと医者に診てもらった方がいいんじゃないかなぁ?確かに実年齢はそちらの方が遥かに上ですよね、ええ。でもさ、見た目だよ、良く見て?私50歳のおばちゃんだよ?ルーさんはどう見ても20~25歳くらいの美男子にしか見えないからっ!!
美を愛する種族って言ってたよね?言いたくないけどさ、目が腐っているか、逆に枯れ専なの?いや、肯定されても困るけど。
これはあれだな、おばちゃんが好きな若手アイドルに、実際に告白されたらそれは無理ってやつだよ。
憧れや目の保養は、離れた所から眺めるのが程良いと思うんだ。持論だけどさ、理想と現実ってやつよ
「料理ももちろん好きですが、そうではなく、あなた自身に惹かれているのです。それに魔力相性が私達は非常に良いみたいですし。可愛いアオイ……私と結婚しましょう!」
混乱中の為、私は何も言葉を発していないというのに、更にハッキリ【結婚】ってワードが聞こえましたけど?!
あと、かかかか、か、かわっ???
お、恐ろしくて口にできないっ!カワーーーー!?
きゃわーー!?
アレ?もしかして血痕って言ったのかな?鼻血は出て……ないな
人生初のプロポーズをまさか異世界で受けるとは……思ってもみなかったし、誰が思うかっ!!
もーう無理!キャパオーバー……
どうやら料理でエルフを釣ってしまった??なんてこった!!
私はバタンとテーブルに突っ伏し、意識を手放した
神様の言ってた『良い人見つけて幸せに』ってこういう事じゃないよね?
ねぇ、違うと言って!!
アオイは特に料理が特別上手なわけではありません。
ごくごく普通の家庭料理レベルで、一人で楽しむ為に色んなものを作ってみたりする好奇心が少しある程度です(食いしん坊なので)