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17:舞・乱入DAY その2/後半戦③

ブクマ、いいね、ありがとうございます!

 


******



そして、ついにハラハラドキドキが収まらないまま競技開始の合図を待つのみとなった


 まず、スタート地点に置いてある、運動会ではお馴染みの大玉送りと同じサイズの……爆弾がおいてあるので先頭のペアが取りに走る。

 そして、やり方も大玉送りとほぼ同じ、違いは人数の少なさもだけど、送る距離の長さも片道1km×5と過酷を極める。

 

 さらに、他のチームへの妨害もOK、つまりは攻撃可ということ。ただし、攻撃に魔法はOKだけど、爆弾が下に着かないようにずっと浮かせておくのは反則とみなされるとか。

 

 この競技の怖いところは、爆弾というかこれまた特殊加工の手榴弾が玉のようになっていて、先頭ペアが玉を取る際に、安全ピンが外される。

 そして安全ピンがついていた部分に大きな衝撃(攻撃や落下等)があると……ドカン!である



 ルティは『こんな程度でケガをするようでは卒業はできませんね』とこちらも軽ーく言ってたけど……

 でも、今のところ概ね彼が言った通りの感じだったから信じていいかな。恋人贔屓(びいき)ですけど、ルティの言うことは信じられる。

 はぁ……ジャージ姿ですらブランドものに見えるほど、今日の彼もカッコいい♡


 ハッ!いかんいかん、競技が始まるってのに煩悩退散!!



≪♪ それでは、どのチームがいかに早く、無傷で大爆弾を元の位置に戻せるのか!?レディ…ゴー!!≫



 まずは足の速さに定評のあるハガネ君と、ダンチョ君が大爆弾を取りに走る。先に着いたハガネ君が大爆弾にしがみつき、安全ピンを外す、そこへダンチョ君が追い付き、ハガネ君が大爆弾にしがみついたままの状態で軽々と持ち上げ、持ち前の筋力を生かして向かうコースの方へと投げた


 一瞬何を血迷ったのかと思ったけれど、これも作戦で、身軽なハガネ君を乗せたまま投げることにより、空中に飛んでいる間の妨害を防ぐことができるとか。それにかなりの飛距離を稼げるので、ターンして戻ってくるのも早くなる。なるほど……人間業じゃないね。


 飛んでいる玉(便宜上、大爆弾を玉とさせて頂く)を追いかけるのは、走る姿もスーパーイケメンなゴーちゃん!目つきは真剣そのものだ。(鼻血注意報発令します!)地域の方や保護者はあくまでフォロー側なのか、今のところは全体の様子見をしているように見えた。


 ここまでで、一年生武術チームが誤って爆発させ失格、それ以外はどのチームも特に妨害等もなく、順調にほぼ同着なんじゃないかな?といった動きで、正直そんなに怖くなかったのかもしれないなぁ、なんて思って油断してしまった愚かな私。

 各チーム4周目の中頃に入り、急に空気が変わったように思えた瞬間…―――


 ドゴォォォォン!!!…―――

 ドゴォォォォン!!!…―――


「ひえぇぇぇぇ!!」



 何があったのかはわからないが魔法科2クラスの玉が爆発し、地面に大きな穴を開けていた。相手チームの生徒や保護者らには、即座に学園長っぽいタキシード仮面の方が、結界魔法を掛けていて無傷だったけど、何が起きたのか彼らもわかっていないようで呆然としていた。



「ね、ねぇルティ、今のは一体なんで爆発したの?」

「あぁ、あれはハガネが途中で『BUNSHIN(分身)の術』とかいうもので、分身した影武者がチームの玉に残り、ゴーシェらにフォローを任せ、実体のハガネが即座に相手チームに忍び込み、【吹き矢】という特殊な武器を使って爆破させていたのですよ。先に潰すなら同じ魔法科の方が厄介ですからね」



 いや、嘘やん……ハガネ氏がどんどんヒーローと化している。にわか忍じゃなく、もう免許皆伝でいいんじゃないかな?


 しかし、生徒が活躍したのはここまでで……元から血気盛んな武術科チーム2クラスが保護者同士、急に結託し出してこちらに集中攻撃を繰り広げてきた。

 生徒達はとりあえず玉を守ることに徹していて、実質、武術科2クラスの保護者ら12人対私達の魔法科保護者ら6人の戦いが始まった



「これは?止めなくていい系なの?それに人数差があっておかしくない?」

「武術科は脳筋が多いので仕方がないのですよ。こちらを『力がないから魔法に頼っている軟弱者』だと決め込んで目の敵にし、なにかと絡んでくるのです。本当に馬鹿で、愚かで、屑の集まりですよね」


「いや、そこまでは言い過ぎなのでは……?」



 するとそんな中、一人だけ挑発的な笑みを浮かべながら戦っている人物が目に入った……え、嘘!ラトさん!?

 戦うラトさんを見たのは初めてで、相手が武術科の、それもそれなりに力のある相手と見るや、割と遠慮なく魔法攻撃を繰り広げていた。

 

 以前、ブクマ―店長が熱く語っていた【紅蓮の炎と蒼穹(そうきゅう)の刃】の話。ラトさんは戦うことを楽しむように妖艶な笑みを浮かべていて、恐らく本気ではないんだろうけど、【地獄の炎と天から降る刃】って表現していた意味がわかるような気がした。


 相手チームを炎が囲み、一見すると雨のような蒼い氷の刃が空から次々と降っているようだ。手加減しているとはいえ、その迫力は凄まじいものがあった

 でも攻撃なのに、その美しさに目を奪われるって純粋にすごい……元Sランクは伊達じゃないんだ



「アオイ、今がチャンスかと……兄上に【魔法の言葉】を言ってあげて下さい」

「う、うん、わかった!スゥ―…

 ラトお兄ちゃぁぁぁぁん!!頑張ってーーー!!」



 大きく息を吸い込み、遠く離れたところにも届くようにと可能な限りの大声で叫んだ。それでもあれほどの爆発音の中だ、聞こえないかもしれないな……というのは一瞬で杞憂に終わる

 

 瞬間、首がフクロウの如くぎゅるん!とこちらを向いて『妹よ♡お兄ちゃん頑張るから見てて!(通訳ルティ)』と言ったと思ったら、相手の攻撃をスイスイと躱し、玉を炎を纏った素手で破壊した……え?素手?

 しかもかなり不気味なくらいデレた顔で仕掛けていたので、なんならさっきまでのカッコよさが一気に消えかけている



 ―――…ズゴォォォォォォォン!!!破壊と共に爆発し、相手チームの保護者らが冗談みたいに空を舞う。あーアニメとかで見たことあるなぁー

 

 それをすべて空中でキャッチし、地上へ戻す作業をなぜか学園長っぽい以下同文が行っていた。エイド専門の方なんでしょうか?



 そしてこの爆発の砂埃を利用して、カーモスさんとアーチェリーちゃん、ゴーちゃんがもう一つのチームの玉へ向かっていた。ゴーちゃんが相手チームの保護者らを、魔法で地面の足場をもろくし体制を崩させる、玉を守っているチームが一瞬だけ保護者側へ目を奪われた時、カーモスさんがバレーのアンダーパスのようなポーズでアーチェリーちゃんを空高く飛び上がらせ、相手の玉に向かって空中で素早くボウガンを構える。


 相手チームが空中の敵に気付いた時には―――



 トスッ!とボウガンの矢はまるでスローモーションのように、相手チームの玉のスイッチ部分にヒット…… 

 ドガァァァァァァン!!…―――大爆音と同時に、勝敗はついた



「アーチェリーさんの空中ボウガンの腕も少し上がりましたね。訓練の甲斐がありました」

「今のやっぱりアーチェリーちゃんなの!?すごい!すごい!カーモスさん、ゴーちゃんとの連携もカッコよかった!!やったね!ルティ、やったねー!一学年の部で1位だよ!!」



 私は嬉しくなってルティにハイタッチし、抱き着いた。イメージ的には大会で優勝した選手が「勝ちました~」と言って監督に抱き着くようなやつ。ちなみに得意げに解説していたけど、戦況を教えてくれたのは全てルティ。速過ぎて私の目では追いきれないですからね



「はぁ……やっとアオイからハグしてくれましたね。アオイ、私だってこのクラスを勝たせるために各自の特性を見ながら訓練してきたのですよ?影の立役者としてもっと褒めてくれてもいいと思いますけど」


「え?そうだったの……ごめん、言われてみたらそうだよね。ケガしない為だけに訓練していたわけじゃなくて勝たせる為のものだもんね。ルティはやっぱり先生向いてるんじゃない?本当にすごいよ!ルティがカッコよ過ぎて辛いっ!!」



 ここまで私のズッコケ以外、クラスメイトの誰もケガを負っていないのは、間違いなくルティの指導も一役買っているのだと思う。こんなに短期間で、私への対策や他の生徒への指導なんかをやってのけるルティはやっぱりスーパーダーリンであると思う!



 1位を掴んだ興奮もあって、彼とぎゅうぎゅうとハグしていると、シクシク泣いている男性の声が徐々に近づいてくる……敗れたチームの方かな?



「アオイちゃーん、俺頑張ったと思うんだけど……グスッ、1位に貢献したよねぇ?『お兄ちゃん』ってあの一回きり限定だったの?うっうっ…」


「ラト、少しは空気を読んで頂けませんか?見ての通り、私とアオイは今お互いの愛を確かめ合っているところなのです。人の恋路を邪魔するやつは、トドランにでも撥ねられてしまえばいいのですよ」


「お前のクラスに貢献した兄に向ってヒドイ仕打ち!」


「いやでも、ラト…お兄ちゃん、あんなカッコいい姿初めて見たからびっくりしました。ちょっと怖かったけど、お兄ちゃんのお陰で1位が取れて嬉しかったです。えへへ」


「おお!可愛い♡我が妹よ!さぁお兄ちゃんの胸に…」



 確かに、あの時のラトさんはすごくカッコよかった。それに一位への貢献度も確かにラトさんは大きかったと思う。ここは一つ軽いハグくらいはしなければならんのだろうか……ううむ



「アオちゃーん!1位取れたよ~」



 はわぁっ!光る汗が宝石のように美しい天使が手を振りながら満面の笑顔で私を呼んでいるではないかぁぁぁ!!

 無意識にラトさんの広げた手をスイっと避け、ゴーちゃんの元へ猛ダッシュで駆け寄った



「きゃーーーー!!ゴーちゃん!真剣な眼差しのゴーちゃんはめちゃくちゃカッコ良かったよ!!それに最後の連携プレーはすごかったねぇ、あれってカーモスさんと特訓したの?

 え?各自練習はしていたけど、急遽変更してあのクオリティ?すごいっ天才じゃない?やっぱりゴーちゃんは世界一カッコいいお兄ちゃんだね!!」


「ふふ、そうかなぁ?照れちゃうけど、ありがとう!アオちゃんにもっといいところ見せたかったんだけど、これは個人種目じゃないからね。身軽なアーチェリーさんが適任だと思ったんだ」


()()()()()()()()()ところが、やっぱりゴーちゃんの偉いところだよね。一人はみんなの為にってやつだよね!はぁ~益々カッコいい~」



 もはや私の記憶の中に両手を広げたラトさんの存在は消え失せていたので、そのままひたすらにゴーちゃんを称え、ゴーちゃんを崇め、ゴーちゃんを絶賛し続けていた



「おい、ルーティエ……俺とゴーシェの何が違うのだろうか?『お兄ちゃん』の響きが全然違うんですけど。しかもアオイちゃん俺には敬語だし……シクシク」


「まぁ邪心の欠片も感じさせないところなんじゃないですか?彼も全くないなんてことはないのでしょうけど、わざわざ表立って出すようなことはないですし。

 兄上は露骨過ぎるのですよ。恋人でもない相手に迫られれば引かれるのは当たり前では?とりあえず、競技は終わりましたので、保護者席にお戻り下さい。そのまま里へ帰られても構いませんけど」




「頬っておくといつまでもゴーシェと仲良くしているので、アオイを引き剥がしに行きます」と言い、たった一人の弟は立ち去って行く。

 最近は青春している奴らを見ていると、とても切ない気持ちになるのはなぜ?これが五月病というやつなのか?アンニュイってやつなのか?




「俺を慕っていた可愛い弟はもういない……シクシク」



 それでも、俺は諦めないぞ!



ありがとうございました!

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