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15:兄妹の二人二脚と女たちの障害物抗争!後半戦①

ちょっと長くなってしまいましたが、分割せずこのまま投稿します!



******



≪♪ え~学園長先生は急用の為、後半戦の司会代理は主任のゴラリ=ワイルドで執り行わせて頂きます。

 続きましては【二人二脚レース】です。パートナーとの信頼関係が試される競技となっておりまして、冒険者パーティを組んだ際に、負傷したパートナーを背負いながら戦い、無事逃げ切れるのか?という疑似体験ができる素晴らしい競技です≫



「二人二脚レースにそんなストーリーがあったとは……じゃあ私は負傷者役ってこと?」

「役で言ったらそうなるね。このレースでは相手に攻撃可ではあるんだけど、負傷者役には結界OKだからアオちゃんがケガすることはないよ、安心して?それに、ちゃんと作戦は考えてあるから大丈夫」


「う、うん。ゴーちゃんの言うことなら信じてるから大丈夫だよ!」

「ふふ。任せてね!」



≪♪ 第1レース、よぉい……≫


パァン!


 走者の人達を見回すと、みんなおんぶだったり、抱っこだったり、肩に乗せていたり…様々な背負われ方をしていた。

 そしてスタートの合図がなったのに、なぜか5秒ほどその場に止まってからスタートするという不思議な行動に出ていたゴーちゃん。パァン!が苦手系のタイプだったとか??あれ怖いもんね



「ねぇゴーちゃん、私が言えることじゃないんだけど、なんですぐにスタートしなかったの?最下位になっちゃったよ?」


「ん~?いいんだよ、それが作戦だから。とりあえずここから逆転を目指したいから、アオちゃんはしっかり僕に掴まっているんだよ?僕も魔法使ったりして手を離したりする時があるからね。あとは怖くないように背中に顔を伏せておいて」


「う、うん。わかった」



 さっきまは軽く流して走っていただけだったのかと気付いた。言った直後からの速さは凄かった!顔を伏せていなかったら頭が後ろに引っ張られるかと思ったレベルの速さで、私は舌を嚙まないようにしているのがやっとだった。

 

 そして最下位スタートしたことの意味は、先に進んでいるペアを攻撃して落とす為で、今回は無詠唱で行っていたから何の魔法かはわからなかったけど、小さな落とし穴を相手が足を下す直前に作りバランスを崩させるものだった…らしい。

 

 それでも勘のいい相手だと避けられたり、耐え抜く為、そうなった場合は更に深く大きな穴にして完全に落下させたり、背負っている相手と走り手の間に壁を作りパートナーを落としたりしていた…らしい。


 スピードが落ちた為、ふと顔を上げれば私とゴーちゃんペアしか走っていない状態となり、最後は普通の速度で走ってゴールした。

 全てにおいて「…らしい」と表現したのは、私は顔を上げられる状況じゃなかったから。ゴール後に後ろの惨状を見て、ゴーちゃんから聞いたものだ



「ほら、アオちゃん、僕たち一位だったよ~」

「うん……ゴーちゃん、あの…落ちた人達はケガとかしてないかな?」


「え?背負われてた子達は結界があるから無傷だし、走り手はどうかな?あってもどこか擦りむく程度じゃない?ふふ。それよりも体育着の汚れの方が心配だと思うけどね」


「え、嘘でしょ?あんなに大きな穴に落ちたのに!?汚れの方が心配ってどうして?」

「穴の下を柔らかい泥状のものにしてあるからだよ。これならケガもしないでしょ?汚れはするけど」


「あぁ良かったぁ~私の考えの方がここでの非常識なんだとは思うけど、やっぱり大ケガを負わせてまで勝ちたくはないっていうか、ゴーちゃんにはなるべく人を傷つけて欲しくなくて……」


「うん……。アオちゃんがそういう子だってちゃんとわかってるよ。だからルーティエ兄さんと、この作戦でいこうって話し合ったんだから。本当は前抱きにして初めから一気に一位で駆け抜けて行ければ、防御に徹して、攻撃はほぼすることもなかったんだけど……まぁそのスタイルは即却下されちゃったからね」



 う~ん……前抱っこは、私でもちょっと恥ずかしいし、抵抗あるよね。ルティの反対も今回は理解できるかな。それよりも、私が言うであろうことを考えてくれた二人の気持ちが嬉しい



「ルティと……ごめんね、私の我が儘につき合わせちゃって」

「こらこら泣いちゃ駄目だからね、ここはありがとうって言うところでしょ?」

「ん、ありがとう……へへへ」



 ゴーちゃんはおんぶの状態のまま、器用に頭をポンポンと撫でて慰めてくれた。やはり最高の兄である。



「ゴーシェ!あなた達は放っておくといつまでもベタベタと……アオイ、もう競技は終わったのですから、可及的速やかにゴーシェから降りましょうね。怖くはなかったですか?また立てなくなっていないですか?私が抱き上げておきましょうね」



 ひょいっとゴーちゃんから回収されて、今度はルティになぜか抱っこされている私。もうレースは終わりましたよー!

 

 私達は1レース目だったからわからなかったけど、落とし穴なんてものは子供騙しレベルなんだとその後に続くレースで知った。みんな本気で火球が飛び交ったり、竜巻おこしたり……物理的な攻撃まで、本当になんでもありだった。ゴーちゃんはそれらが飛び出る前にカタをつけたようだ

 

 魔人族って本当に丈夫で、結構流血していたと思っても、すぐに血は止まって傷が塞がっていて、びっくり&安心した……でも、やっぱり一瞬でも派手に血が飛ぶ瞬間は怖いので、ルティの背中に顔を伏せ、見ないようにしていた。そして、心底ルティとゴーちゃんの優しい作戦に感謝したのだった。



≪♪ はい、穏やかだったのは1レース目だけで、あとはいつも通りの血祭でしたね~ハハハ!

 では~次は……え~【障害物抗争】です。これはそのまんまですね、障害物を潜り抜けつつも、敵を排除していく、隠密業を目指す生徒には向いている競技となります≫



 隠密業を目指す生徒!?じゃあ、これはハガネ君に向いてそうじゃない?あ、彼もやっぱり出るんだね。しかも形から入るタイプかな?こういう外国人っていたよね感。ウキウキしながら忍び装束着ている忍者はいないでしょ



「アオ、このレースではオレがお前の子守役だ。お前何レース目だ?」

「第5レースだよ。子守って……そう言えばキラ君も20歳か……ちぇっ私の方が年下なんだよね。そうなると子守なのか、悔しいな」


「ぶはっ!アオってそういうとこ面白いっていうか可愛いところだよなぁ。うん、素直なのはいいことだぞ?なんならオレのことも『キラお兄ちゃん』って呼んでもいいぜ」

「あ、間に合ってますんでいいです。キラ君はおモテになるんでしょうし?妹募集したらすぐに集まるんじゃないですかぁ?大好きな妹キャラのメロンでも追い掛けてたらいいでしょ」


「あ?なんだそれ。メロンって、あぁ~あれか……なぁアオ、お前もしかしてメロンに劣等感でもあるのか?全然大丈夫だって、お前のだってオレが毎日ほぐしてやればそれなりにデカく…」

「ルー……もがぁ!!」



 こんのセクハラヤンキーめ!最近は良い人認定だったのに、やっぱりルティの言った通りのドスケベ変態野郎なんだ!!口から手を離せー!ルティに言いつけてやるっ!!



「アオ!落ち着け、な?ジョーダンだろ?よしよし、可愛いアオに特別なアイテムを授けてやる。だから言いつけるのだけは、面倒なことになるから勘弁してくれよ。アイツねちっこいからマジで嫌なんだよ」


「ふんっ!だったら初めからそういう発言しなきゃいいのに。…で、特別なアイテムって?」


「まぁまぁ……これだよ。ほら、どうだ?」



 とりあえず、『特別なアイテム』という響きが気になったので、『ル』の文字が出た時点でこちらに目を向けたルティには、叫ぶ為に充てていた手を投げキッスに替えて誤魔化した。うん、本人めちゃくちゃ耳をピコピコさせて喜んでるから良しとしておこう……ちょっと罪悪感



「えー……えっ!?こ、これは……」



 くだらなかった時点でルティを呼ぼうと決め込んでいた私だけど、確かに『特別レアなアイテム』だと思われる。こいつはやべぇ代物だ……



「な?特別なアイテムだろう?お前のレースメンバーは全員女だ、そいつらの好みも粗方調査して知っている。だからもしもの時はこいつを使って逃げきるといい。あ、一応こいつも渡しておこうか……」

「なになに?まだあるの?……ひぃっ!これってキラ君の半裸!?しかも際どいところでカットされてる念写ブロマイドじゃない……なんてもの渡すのよ!」



 このキメ顔のドヤり感が腹立つし、ちょっとキモイので、ギリギリの角を親指と人差し指の二本でつまむ。どうせ持つなら好みの推しの半裸にしてもらいたいものだ。

 これで、ルティに浮気を疑われたら、冤罪もいいところだと思う。



「バカだな、お前はエルフ族に囲まれすぎてっから感覚が鈍ってんのかもしんねーけど、オレもかなりのイケメンに入るんだぜ?んで、レースメンバーの中に、この間告ってきたやつがいたから、そいつにはオレの方がいいかと思って用意してやったってのに……」



 いや、キラ君が美形なのは初めっから気付いてるっての。ただし好みでもなければ、残念なセクハライケメンに成り下がったけどね!



「そ、それにしたってなんであんな……」

「はぁ…これだから初心なお子ちゃまは困るよなぁ~この国じゃこんなのは普通だって。お前だって、ルーティエって恋人がいるんだから、半裸どころか全身を何度も見てるだろう?それを今更……」



 は?全身を……?水着で一緒にお風呂に入っていた時は半裸は確かに見た……でも全身なんて、見たことないし、いや、見てないし!!見ないし!!え?そういう風に見られてたの?



「………もん」

「は?なんて?」



≪♪ 第5レースの生徒は並んで下さ~い≫

「全身なんて……見たことない、、、もん!キラ君のドスケベ変態!!」


 

 タイミングよく呼ばれたので、捨て台詞だけ吐き捨て私はその場を離れた。もう!レースどころじゃないじゃない!!



「あっ、おい!なんで俺がドスケベ変態なんだよ!しっかし、、、う、嘘だろう……あの執着っぷりで?……あいつ、不能だったのか……万能薬ってまだ残ってっかな?」





「……くしっ!!ふふ、アオイが私のことでも噂しているのでしょうか?それにしても、先ほどの投げキッス……可愛らしかったですね。思わず心臓を撃ち抜かれてしまいました♡キラに止められたせいで一回しかできなかったので怒っていたのでしょうね。キラには後ほど教育的指導が必要です」

 


 ルーティエの方は、アオイのファインプレー(投げキッス)により、非常に上機嫌であったが、くしゃみの噂は当たらずも遠からず、キラへの教育的指導が必要なのも強ち間違いではなかった



***



 第5レースがスタートし、私はクラスの子が考えてくれた通り、ゆっくり安全第一に障害物を越えた……というよりは、本当に障害物が破壊されている状態で、正確には破壊された障害物の破片を越えて行ったと言える。

 

 そして運命の場所である、ただのオブジェであって欲しいギロチン処刑台がある高台から、こっそりとこのレースの主旨である『抗争』の行く末を見守っていた。

 男子の激しさとは違うものの、女子ならではの苛烈さは中々に怖いものがある。なんだか浮気現場に遭遇して、取っ組み合いの喧嘩になっているような感じにも見える。


 程なくして終わった抗争。勝ちぬけた一人がゴール目前となったところで、作戦通りひょっこり私も出て行くことに。これまた安心、安全速度で屍の脇を手を合わせながら通り過ぎ……ようと思ったところで、誰かに足首をガシっと掴まれ転ぶ


ドシャァァ…――

「うっ痛ったぁぁぁ、低い鼻が更に低くなっちゃうよ……あぁ転んじゃってあとが怖いなぁ。膝あてがあって良かったけど」


「うっア、アンタずるいわよ……げほっ私達が戦っている時は隠れて…たんでしょ」

「ごふっごふっ、そ、そうよ……そんなやつ、、通してたまる…もの、です、か…」



 ひぃぃぃぃ!!マズイ!やっぱりインチキ作戦がバレちゃったよー!事実だけに反論もできやしないよ。う~ん、う~ん、考えろー考えろー。いや、かの有名人は言ってた、考えるな、感じろ!と。


 ……いや、なんも感じねー!!早鐘を打つ鼓動しか感じねー!!やはり同郷のジャパニーズ坊主のマネをしよう。人挿し指を頭にくるくる、座禅を組む……トンチよ、閃くのだ!!


 (空想木魚)ポクポクポク……

 ここでさらにケガをすると……うん、血で血を洗う未来しか見えない。それはダメ、絶対ダメなやつ!!

 ……チーン!!トンチきたーー!!

 あ、あれだ、変態キラ君からもらったあれを使うしか……



「ね、ねぇ?あなた達……これ、欲しくない?」


「は?インチキ女は今度はなにをしようって…はっ!?」

「ごふっ、ホントこれだから……って、え?」

「え、なに?なにがある……はぁっ!!!?」

「う、嘘でしょ……こんなお宝…どこで……」



 いつの時代、どこの世界でも推しの力って強力なんだね……半死状態だった子まで起き上がれているもん。なんなら傷も塞がっていっているようにも見える



「これ、みなさんでわけてくれていいから、このまま私をゴールさせて頂けないでしょうか!」


「「「「OK♡OK♡行って、行って~♡」」」」


「ありがとう!ぜひとも平和的な話し合いで分け合ってね!」



 良かった……変態キラ君、とりあえず命が救われたのでこれでチャラにしましょう。

 そしてありがとう……汗を体育着で拭く時のお腹チラ見せ+汗が滴った極上の天使ゴーちゃん、暑くて髪を高めのポニテにしてセクシーさが増していたルティ、自分でサービスショットとして半裸でノリノリのキラ君、まさかのすでに隠し撮りされていたハガネ君のフンドシ姿……

 

 ハガネ君とキラ君はともかく、ルティとゴーちゃんのは私も欲しかったなぁ。この世界にカメラはなさそうなのに、念写ってどうやってどこで撮ってるんだろう??



 そんなことをぼんやり考えながら、トテトテと安全走行で二位でフィニッシュ!!


「やったぁ~ルティ、ニ位で無事ゴールできたよ!」


「あぁ、アオイ!全く無事ではないじゃないですか!鼻と手が擦りむけてますよ。エイド班のところで洗浄し、治癒してあげますからね。ゴーシェはあの女子らの顔と名前を把握しておくように」


「わかりました。特に足を掴んて転ばせた者には、それなりの報復が必要ですよね?」

「その辺りはまた要相談ですね」


「ちょっと待って、待ってーー!!お願い!私ならほら、大丈夫だから。手も鼻もルティが綺麗さっぱり治してくれるんでしょ?それに、隠れることも作戦なら、油断したまま通り過ぎた者の足を掴むのも相手の作戦じゃない。これは勝負なんだし、それにルティとゴーちゃん(とキラ君、ハガネ君)のお陰で二位になれたんだよ。二人ともいつも助けてくれてありがとう、大好き!」


「アオイ……それを言ったらいつもこちらが折れると思って言ってるんでしょう?……はぁその通りですよ。わかりました」

「可愛い妹からの「お願い」と「大好き」には勝てないなぁ……まぁ大会だから勝負だしね」



 ルティだけでも厄介なのに、天使を怒らせて報復だなんて……恐ろしい

 危うく血で血を洗う戦いが現実になるところだった。理由が、転ばせて鼻と手を擦りむいたからって……どんな理由だよ!!次は全て肘あてと膝あての部分だけつくように…いや、それも難しいな



 こんなやり取りをしている間にキラ君のレースはあっさりと終わっていた。本人曰く、余裕でぶっちぎり一位だったとのこと。ただし、キラ君以外はゴールできず、途中棄権扱いになったらしいんだけど……一体何をしたの?

 

 残念ながらこちらも見逃してしまったハガネ君のレースは、序盤から忍んでいたらしく、スタートし、抗争が始まる前にゴールをすると言う早業を披露したとか……忍び趣味は伊達ではないのか。

 

 キラ君との絡みはうまく誤魔化せていたみたいだけど、なぜかキラ君は可哀想な者を見るような目でルティを見つめていて、ルティも気持ち悪がっていた



 気を取り直して、次は保護者、地域の方も参加OKの【大爆弾転がし】名前からして不穏なんだけど、気楽に地域の方なんかも参加できるのなら、思っているような危険なものじゃないのかもしれない

 


 


 またまたゴーちゃんが大活躍の予感です!




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