13:塔倒しのMVPはゴーちゃん一択!/前半戦②
次回は2月26日(月)AM6時に予約投稿済です!
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≪♪ お待たしぇ致しました~ちゅぎは高得点のかかった【塔倒し】でしゅ、とにかく早く倒しぇたもん勝ちじゃゴラァァ!!!≫
塔倒しは、ひと学年6クラス(武術3、魔法3)から更に精鋭として選ばれたクラス代表2名×3クラス分の合計6人で1つのチームとなり参加する大型競技。倒すものが塔である為、この競技だけは各科1チームずつ、学年で2チームの計6チームでの戦いとなるのだ。
まさに目線の先には鉄筋コンクリート製の塔みたいな建物が6つ並んでいる。
私達のクラスからは、なんと、もやしっ子だと思っていたゴーちゃんと、見た感じでも納得のキラ君が代表で出場する。
「あっゴーちゃんが指揮をとってる!お兄ちゃんカッコいい!頑張ってー!!」
「アオイ……あなたの前に結界を張って守っている私を差し置いて、ゴーシェを褒めるのですか?」
塔倒しは破片が飛んできたり、爆風があったりする為、各クラス担任が結界を張って生徒を守ってくれている。ルティはクラス全体に結界を張っているのに、更に私にもう一つ結界を張っている。手厚い保障……ルティ損保
それでも『たまには兄としてカッコいいところを見せないとね。頑張るから応援して!』と言われて応援しない妹は、もはや妹ではないのだ!
「だって大会なんだから出場しているクラスメイトを応援するのは当然でしょ?
ダンチョ君もハガネ君も応援団として頑張ってるし、イーロちゃん、ハニーちゃん、ホヘットちゃんもチアガール姿で応援してるじゃん」
「くっ、私だって出場すれば活躍できたのに……いいですか?私ならあんなオモチャのような塔など一人で楽々倒せますからね!秒です、秒!」
「別に張り合わなくても……ルティの本当の強さはわかってないけど、私の恋人が強くてカッコいいことくらいはちゃんとわかってるのに」
「ア、アオイ……♡好きでっ……」
「おっとー」
抱き着こうと飛び込んできたルティをするっと躱し、間もなく始まる天使な兄の応援に集中した
「持ち上げといてヒドイ……ツンデレはデレで締めてこそではないのですか!?」
「ゴーちゃーん!キラくーん!頑張ってねー!!」
ルティすまん……シクシク泣きつつもきちんと守ってくれて、ありがとう
私達のクラスは現在8位/18位。一見低いようだけど、一年生の中では断トツの一位である。やはり経験の差もあって、全ての高学年を出し抜くのは中々簡単なことではない。
倒した順に与えられる得点は、逆転も狙えるほどの高得点が上位3チームにはつくらしい。当然、今優位なクラスであったとしても油断はできない為、どの学年、チーム共に絶対に譲れない戦いのようだ
≪♪ しょれではMBA祭、前半戦の最後の大勝負【塔倒し】……思春期と一緒にぶっ壊しぇーー!!≫
上位に食い込む為の命運を掛けた戦いが、ついに始まった!
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開始の号令が掛かってから、3分程が経過した。
ルティが『秒で倒せます』と言っていたから、てっきり一瞬で勝負がつくのかと思いきや、見た目ではわかりにくいけど、特殊な加工を施してある塔だそうで、全クラスがまだ塔を倒してはいなかった。
それでもやはり最年長の三年生・武術チームが、塔にヒビを入れ込むところまで進んでいて一歩リードしている形となっている。
一方、我らがゴーちゃん(とキラ君)はまたも何やらメンバーと話していて、現状塔に変化はない。
まさかゴーちゃんに限って諦めるなんてことはないと思うけど、どうするのだろうか?
話し合いが終わったようで、ゴーちゃんと数人のメンバー、キラ君と残りのメンバーが移動し始める。
ゴーちゃんと数人のメンバー達は、何かを唱えながら手を地面に充てている。ルティは無詠唱もできるけど、攻撃魔法の場合、詠唱をした方がより威力は強くなるのだと、当初座学で教えてくれていた。
そうなると、これは数人がかりで行う大型魔法か何かなのだろうか?反対にキラ君達と残りのメンバーは目を閉じ、かなり集中しているように思える。こちらも口元を見ると何かを唱えているようだ。徐々に体にオーラのようなものを纏い始めた。
魔法のある世界にいる割に、生活魔法的なものばかり見てきた私としては、これはいよいよ本格的な魔法が見られるのかな?とこの時はただ単純にドキドキして見ていただけだった。
「塔が倒れるので、魔力風がきますよ」
そうルティが言った直後、魔力風といわれる爆風が応援席や観覧席まで届いていた。一応結界があるので直接肌に感じることはなかったけれど、結界にぶつかる爆風の音がその強さを物語っていた。
土煙が晴れるのを待ちながら、薄っすら見えてきたところで、6塔中2塔が倒れているのが目に入った。残念ながらそれは三年生の武術チームと魔法チームの塔だった。
ゴーちゃん達の塔の方を見ると、地面を隆起させ、塔の1/3ほどを持ち上げて傾けさせていた。その傾いている中間より上のみに、キラ君達が集中的に魔法攻撃を打ち込んでいるようだ。
そして気付けば同じく半分ほど傾いているニ年生の魔法科と、根元を半分以上破壊している二年生武術科との三つ巴戦のようになっていた。
現状一位と二位が決まってしまっているので、残る高得点の席はあと一つ。残りの一年生武術科も後を追っているけれど、力配分を誤ったのか、またはチーム相性なのか……なんらかの理由で三位に食い込むことはなさそうに見える。
「こういう時こそ応援だぁぁぁ!!」
「よっしゃぁ!ゴーシェ、キラを…一年の魔法科を、応援するしかないっしょ!」
「「「みんなぁ、彼らのチームに届くように応援するわよぉ☆」」」
「みんな、、、すごい……」
ダンチョ君が応援団服に身を包み、勇ましく応援歌を叫び歌う、ハガネ君は確かにフンドシ姿ではあるけれど、叩く竜王太鼓がみんなの声援と共に地面を揺らすほど、竜の咆哮と魂の籠った演舞に鳥肌が立った
二人の迫力に気押されかけたけど、そこに可愛いチアガール姿の女子’Sが和ませつつも熱く応援し、踊っていた
塔が倒れるのもあと少し……だけど、あと一枠しかない高得点の座は3チーム共 絶対に譲れない。ある意味一位、二位の戦いよりも、皆が注目していることがわかる。
応援以外の声は聞こえない
どのチームが三位を手に入れるのか、観覧席でも皆が固唾を飲んで見守っていた。
その時、まず先に動き出したのは二年生の武術チーム。半分以上破壊が進んでいたこともあり、塔がゆっくりと倒れ始めたのだ。
しかし、ニ年生の魔法チーム、ゴーちゃんのチームの塔も数秒差で倒れ始めた。こうなると塔の頂上部分が先に地面についた方の勝ちとなる。
横に倒れていっているのはゴーちゃんチームと二年生武術チーム、ニ年生魔法チームは真っ直ぐ崩れていっているので、このままだと頂上部分だけ地面に着かずに残る可能性もある。
「ゴーちゃぁぁぁぁん!!キラくーーーん!がんばれぇぇぇぇ!!一年生チーム、がんばれぇぇぇ!!」
私にできることなんて応援くらいしかないけど、ゴーちゃんが『カッコいいところを見せる』と言ったのだ、最後までしっかり目に焼き付けておかなくちゃ
一瞬だけチラッとこちらに目を向けたように見えたゴーちゃんが、フッと口角を上げ、倒れ始めている棟の頂上付近に飛び上がる
「ゴーシェもアレに躾けられただけあって、中々イイ性格をしているようです……」
ルティがよくわからないことを呟いていたけど、視線はゴーちゃんに集中していた。
―――ドォゴォォォォォォンンン……!!!
――ゴォォォォォンンン!!
――ズゥゥゥゥゥンンン!!
三つの塔がいっぺんに倒れたこともあり、魔力風と砂埃が合わさって視界が非常に悪い
「ル、ルティ、結果は?」
「ふふ、自分の目で見てみるといいですよ」
砂埃も収まり、視界が晴れる……判定の旗が上がっているのは―――
「一年生のチームだっ!!!」
「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
「「「きゃーーやったー-!!すごいわ!すごいわ!」」」
「か、勝った……すごい、一年生が三位に入った」
ボーン君がフラフラと立ち上がり、拍手をしていた。
ホントにホントにカッコ良かった!なんならこれがフィナーレなんじゃないかってくらいの盛り上がり方だったよね?これでまだ午前の部だっていうんだから、午後はどうなるのだろうか?
自分が参加する分には、若い気持ちでいるのに、応援する側となると、50代の私が戻って来て…ついつい感動してしまう。こういう協力プレイは特に
終わる頃には、私の涙腺は崩壊しているかもしれない。グスッ
キリよく、午前の部は今話で終了です。
次回は昼休憩から始まり、前半戦より少し長めの後半戦が始まります