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10:MBA祭の参加種目&放課後の甘いファストフード ☆

☆体育祭ゾーンに入り始めました





******



 「アオイを守る会」発足から早一ヶ月。

 

 トイレに行く時は、両腕を持たれたまま向かうので、転びはしないが、受刑囚にでもなったような気持ちになる。

 でも、女子の仲良し同士って腕を組んで歩いたりしていたなぁって思い出してからは、そういうことだと思うようにしています。

 なんにせよ、よくわからないがクラスにまとまりが芽生え、他と比べても真面目で優しいクラスメイトに恵まれたなぁと思っている。



 そんな中始まる、マジック・バトル・エイド祭……略すとMBA祭。

 もちろん、経営学修士の集まりではない。響きだけは賢そうなこの大会は、前世で言うところの『体育祭』だ。

 基本的にどんより空な魔国だけど、5月頃や夏場は比較的晴れの日が多いとか。屋外で思いっきり体を動かせる貴重な季節。


 普段はあまり関わらない魔法科と武術科が年に一度、本気のぶつかり合いで盛り上がるとか。

 ちなみに魔法科でも私のような支援型はエイド班に配置される……というかされていた。

 しかもMBA祭後の感想を書く係。なんじゃそりゃ、支援するなってことかな?



 今クラス内で話し合われているのは、どの競技に誰が出るか、そして私をどの競技なら出せるか、である。

 もう、口を挟んでも無駄なことに薄々気付いてはいるので、大人しく聞いている。私、空気読めるので!!



「今日はMBA祭の参加競技を決めていきたいと思いますが、まずはアオイ君の参加する競技を5つ、先に決めたいと思います!

 僕としては、アオイ君は『狩る者恐争(きょうそう)』が一番無難ではないかと思うけど、みんなはどうかな?」


「あ~アオにはそれがいんじゃね?」


「え、借り物競争?楽しそう!!キラ君、私にもできる系なの?」


「んー。アオのお題が何になるかが問題だけど、全員で予想を立てて、各自色々準備しておけば戦う必要もなくなんだろうし、いいと思うぜ?ただし、万が一の時は棄権する方向な?」


「ゴーちゃん、これって…た、戦いとかが絡むものなの……?」


「うん。書いてあるお題が……例えば「ノート」だとして、()()()行くんだけど、狩られる相手も当然抵抗するからね、持ち主を倒して奪うか、相手が降参して渡すかしないと駄目なんだよ」


「借り物じゃなくて、狩る者ってそういうこと!?こわっ!」


「でも、逆に挑みに行かなければ、この競技では同じ走者への攻撃はNGとなっているからね。ケガのリスクは減るんだよ。だからお題を見て、僕らが対応できないものが出てしまったら、大人しく棄権してね」


「う、うん。そうするよ……」



 競技もなんか別のものに聞こえるし、思っているのとは違うのかもしれない。

 「勝つ為に死ぬ気でやれよ!」とか言われなくて本当に良かった。

 クラスメイトの優しさ、プライスレス♡



「あとは……障害物抗争は?あれならお姐さまにも勝機があると思うわ!」


「障害物……こうそう?ってイーロちゃん何?」


「網やレーザートラップ、処刑台を渡って、最後に飛び箱…の中に入っている飛び道具、クロスボウや投げナイフ、投石器、槍、手裏剣の中から早い者勝ちで武器を選んで戦い、勝者が1位になるものです。お姐さま」


「は?これも競争じゃなくて抗争なの?さすがに私なんてすぐに死んじゃうよ……」


「いえいえ、お姐さまに狙って頂くのは2位の座ですわ!

 まずスタートしたら結界を張って、ゆっくりと歩いてゴールを目指して下さい。

 恐らく全ての障害は破壊されてると予想されます。

 他の者が処刑台を越えた辺りで抗争しているので、立っている者が一人になるまで見ていて下さいね。その一人がゴールしたら、屍を越えてお姐さまが2位となる寸法です♡」


「えぇ…それって、インチキみたいにならないかなぁ?」


「アオちゃん、これだって立派な作戦の一つだよ?

 それに、僕らは魔法には長けているかもしれないけど、武力は劣るからね。

 色々と工夫しないといけないんだよ」


「そう言われるとそうなのか……うん、わかったよ」


「あとは僕とアオちゃんで『二人二脚レース』かな。僕がアオちゃんをおんぶして走るだけだし」


「二人一組なのに、私は走らないの?」


「そうだよ。その代わり、どんな担ぎ方であれ、相方が足を下に着いたら失格になっちゃうんだ。アオちゃんも責任重大だよ?」


「うん!じゃあゴーちゃんにしっかり掴まっておくようにするねっ!」


「クラス全員参加のリレーは、とりあえず転ばない速さで走ってもらってバトンを繋いでくれたらいいし、あっ!『ドンタッキー食い協走』があったね。今年は僕とアオイ君で組もうか?」


「ドンタッキーってよくキラ君とボーン君が食べてるやつ?いいね!食べたいなっ」


「一緒に手を繋いで走って、僕がドンタッキーを取って、骨と可食部を分けてあげるから、アオイ君が肉部分、僕が骨部分を食べてゴールすればいいし」


「その場で協力し合って食べる競技なんだね……早食い頑張ります!!

 それにしても、出場しないといけない競技数がすごく多いんだねぇ。あ、応援団とかはないの?」


「そりゃ、もちろんあるっしょ!俺とダンチョがこのクラスでの応援団で、イーロ、ハニー、ホヘットがチアガールをやるんすよ」


「へぇ~ハガネ君が応援団、意外だね。普段、忍んでる(サボってる)から目立ちたくないのかと思ってたよ」


「俺、昔から応援団で使用しているワノ国アジェア伝統の竜王太鼓をフンドシ一丁で叩くの夢だったんだぁ。当日は俺の魂のビートを響かせるから期待しててくれよなっ!太鼓も青い竜が巻き付いているデザインでカッコいいんだぜ~」


 応援団って学ランとかじゃないの?フンドシ一丁って……気合が凄い

 でも、口を開かなければ真面目な学生にしか見えない彼の太鼓姿は案外合っているのかもしれない

 ダンチョ君はドワーフだけど珍しく体格も大きいし、見た感じは武術科の筋肉ムキムキ系だから、ロングの学ランに白い手袋とかあれば、すごく似合いそうだなぁ~

 女子’Sも姉妹みたいに似ているし、可愛いからチア姿もきっと可愛いんだろうね!



――…パン!パン!

「はい、一旦座って下さい」



 今は、生徒が主体となって進める学活の時間だったので、ルティは窓際に座ってずっと様子を見ていた。

 どうやら時間が予定よりも少し押しているようで、時計を気にしている。



「はい。それでは無事アオイの競技も決まりましたし、あとは適当にみなさんでくじ引きでもしてさっさと決めてしまいましょう。

 帰る時間が遅くなりますし、今日はアオイと放課後デートの日なので、時間を削られては適いませんからね」


「ルティ先生、プライベートをバラすのやめてって言ってるでしょ!それに、今日はゴーちゃんも一緒なんだから!」


「うん。今日は近くにオープンしたドンタッキーを食べに行くんだもんね?楽しみだね」


「くっ、アオイと二人きりが良かったというのに……」


「元々はキラ君にオープン特典のクーポンを貰って、三人でって話だったのに。

 ルティ…先生が割り込んだせいで、キラ君が遠慮してくれたんでしょ?」


「当たり前ですよ。ゴーシェはギリギリ我慢できますが、キラは駄目です!」



 ルティは『味見』発言以降、いまだにキラ君を警戒している。

 私的にはあんなの揶揄っただけだと思うし、キラ君は友人としても良いクラスメイトだと思うんだけどなぁ。

 

 誤解を生まないように、三人でってキラ君も気を遣ってくれたんだと思うんだけど、駄目だったか。

 

 まぁ、口もきくなってわけじゃないからいいんだけどね。学校では結構話せるし。

 だいたいが肉系の話だけどね。。。健康状態が心配だわ



 公私混同甚だしい担任にもすっかり慣れている、空気の読めるクラスメイト達は、言われた通りくじ引きをして残りの種目をサクサク決めていた。




******



「結局、ゴーちゃんは『二人二脚レース・狩る者恐争・クラス対抗リレー・塔倒し・大爆弾転がし』に決まったんだね。私、ゴーちゃんの出番の時はすっごい応援するからね!!」


「ありがとう!アオちゃんに応援されるなら、カッコいいところ見せなきゃね!」



 うちわとか自作できないかな?【お兄ちゃん頑張って!】とか【ゴーちゃん笑って!】とか書いて振るんだけどなぁ。でも、ゴーちゃんはすっごくモテるんだって。

 ルティの口癖じゃなけどさ、もう当たり前過ぎるからびっくりもしないんだけど。

 

 ダークエルフとエルフのハーフなんだけど、肌色はへーリオスさん似で色白……けど、顔の造形はモルガさん似で甘く、ほんのり色香が漂うような中性的な美青年!!

 そりゃあ女子が放っておくわけないよね?でも見た感じ、体つきはまだひょろっとして見えるから、もっとたくさん食べた方がいいと思う。



 実は、その女性関係で私もいじめられないかなとか心配はあったんだよね

「アンタ、ゴーシェのなんなわけ?あ゛ぁんっ!?」とか

「妹ぶってんじゃねーぞコラァ!!ブスがっ!」とか

 ……まぁこれは杞憂に終わったんだけど



 多分、ルティが私と恋人関係だと言いふらしているから、男二人を手玉に取っていると思われるよりは、きちんと妹ポジと捉えてもらえているんだと思う。周りの子達が大人っぽすぎて、ライバル視されるような見た目でもないのもあるけど。

 

 私は至って普通に18歳くらいだと思うんだけど、なんせ他の女子は2歳差程度なのに色気が凄いからね。妖艶というか……メロン2個を相手にリンゴは勝てませんって。

 そもそもルティ(魔王)と言う恋人がいて、他の男を手玉に取るなんて……考えるのも恐ろしい


 言いふらしは如何なものかとは思ったけど、私にとってもゴーちゃんは初めてできた『天使なお兄ちゃん』なので、離れることにならなくて良かったと思う。



「ゴーシェの応援は結構ですが、私だって『クラス対抗リレー』のアンカーで走りますし、『狩る者恐争』の時に<恋人・エルフ・結婚したい人>などのお題が出た時は、一緒に走る気満々ですからね!」


「そんなお題なんて入るわけないでしょ。なんなの?その偏りのあるお題は。職権乱用でそんな仕込みしたら、しばらく口利かないからね!!」

 

「……ひどい。まだ何もしていないのに。アオイと一緒に学園で過ごすのを私だって楽しみにしていたと言うのに、最近ちょっと冷たくないですか?」


「……うっ。ごめん、そうだよね。いくらなんでもそこまでするはずないよね……疑ってごめんなさい」


「怒っていませんので大丈夫ですよ。でも、たまには私もアオイに甘えても宜しいですか?」


「甘え??うん、いいけど……」



***



「アオイ。ほら、お口を開けて?」

「………ルティ、これって甘えなの?恥ずかしくて死にそう……」



 オープンしたばかりの店内は大賑わいで、席も二人掛けしか空いていなかった。

 だからって……ゴーちゃんとルティが座って、そのルティの膝の上に私が座るって!!



「はい、十分甘えておりますよ♡こうしてアオイを膝にのせて抱き締めながら、フライドターキーを食べさせ合う。まさに愛し合う恋人同士ですよね」


「いいなぁ~僕もアオちゃんに食べさせてあげたいなぁ。あ、ポテトいる?」


「うぅ~食べるけどー……今度からはテイクアウトにするー!

 オープンしたてだから、お客さん多いし、すっごく注目されてるじゃない!」



「そんなの気のせいですよ。皆さんメニュー選びに夢中になっておりますからね。

 ほらほら、私の手からターキーを食べるのと、口に加えたポテトをアオイも口で受け取るのと、どちらがいいですか?ふふ。やはり、前菜はポテトの方でしょうか?」


「選択肢がおかしいっ!もうっ!ターキーを食べます!!」

「残念。では、はいどうぞ」



――はむ。じゅわぁぁ

 口に含んだ瞬間に、罪作りなカロリー爆弾が口内の隅々まで広がる。うっっま!!



「………!!!んーーんん、んーー!!

 ル、ルティ、ルティ!!これ、これ食べたことある味!!まさに『食べたくなるよね!ドンタッキー♪』ってやつだよぉぉ~!

 こっちの肉質の方が若干弾力が強いけど、ドンタ最っ高~♡

 これだけはやっぱり再現できるものじゃないから、もう二度と食べれないと思ったのに……」

 


 うぅ……おいしぃぃ~グスッ懐かしい~よぉぉ



「そうなのですね。思いがけず故郷の味に出会えて良かったですね……

 ほらほら、泣かないで、ゆっくり食べて下さい。私も少し頂きましょうか」


「うん、食べてみた方が…」



 間違いなく、ルティも満足のいく味に違いないよ!と思いながら、ルティの感想を待つようにワクワクと見つめていた……でも彼の口が向う先は……

 ――…チュッ



「………え?」

「うん、確かに美味しい!アオイ味のターキーは病みつきになりそうです」


「うわぁ…わぁ…アオちゃん、お兄ちゃんは見てないからね?口についていたターキーをルーティエ兄さんが食べたところなんて、全っ然見えなかったからね!!」



 ゴーちゃん詳細説明をありがとう。そして、それ店内にいる他のお客さんにも聞こえてる!!

 死ぬっ!今度こそ、恥ずか死ぬっ!!!



「もういいっ!残りは全部ルティが食べてよー。恥ずかしいから、もう食べない!」

「おや?まだ1本分も食べていないのに。では今度はアオイが食べさせて下さい♡」


 

 これも、イヤだけど、さっきのよりはマシ!!大きめに突っ込んで早めに食べさせちゃおう



「はい、どうぞっ!」

「あ~ん……」



 唐揚げ丸々1個分くらいの大きさにしたのに、大口を開けても変顔にならないし、唇についたチキンの油分をペロリと舐める仕草がなんともエロい……私の偏見だけど

 ちくしょうっ!悔しいけどカッコいい!!

 



 私がルティに食べさせている間、ゴーちゃんにポテトをどんどん口に運ばれ、またもっきゅもきゅと頬がリスのようになってしまった。




 いや、どうせならフライドターキー食べさせて……







どうせなら、NBAにしたかったのに残念!MBAが経営学修士って私は初めて知りました(偶然です)

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