8:普通の罰則が、普通ではない
ブクマ、いいね、ありがとうございます!!
今週も仕事バリバリ風に見せつつ、ほどほどに頑張ります!
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私が入学して二日目、なぜか私は一躍、時の人扱いになっていた。
「アオイ君、おはよう……その、昨日はみんなを助けてくれて、ありがとう……
もう会えないんじゃないかって思っていたから、、、強い人族もいるんだね」
「え、おはよう!もう会えないってどういうこと?私は全然強くないと思うけど……?」
話し掛けてきたのは知らない間に決まっていた、クラス委員長のボーン君。
好きな食べ物は骨なので、骨を抜いたあとの可食部分をキラ君へあげたり、キラ君が骨と可食部分をわけたあとのドンタッキーの骨を譲ってもらっているとか。あの時の骨の山は彼用だったのだろうか?
名は体を表すシリーズが多いな……Bone
彼はダークエルフには珍しい、ビン底メガネを掛けているけど、モテ防止かな?髪はツーブロックアシメで灰色、顔は青白く、体つきも骨ばっていて、なんていうか……お肉も食べなさい、お肉も!
骨だけは丈夫そうだ。
「ア、アオイお姐さま……アタシ達、アオイお姐さまの机は特に入念に磨きましたわ!」
「アオイ姐さまに救って頂いた、この命、今後はアオイお姐さまをお守りする為に役立てます!」
「死ぬ…いえ、アタシが正気を失っている時に身を挺して守ってくれたって……うぅっお姐さまカッコいいっ!」
「あ、うん……おねぇさまってなに?『姉』じゃなく『姐』に聞こえるのは気のせい?
それと、私の机だけ明らかに昨日見た学生机とは違ってないかな?」
どう見てもヨーロピアン風のアンティーク机だと思うんだよ。
磨くって、ヤスリかなにかで削ったってこと?だとしたら匠の技だよこれ。
これは昨日のダークエルフ女子’S、のイーロ、ハニー、ホヘットさん。いろはにほへと……?
何がびっくりって、昨日はギャルっぽい……というか、お色気に全振りしたような制服の着こなしだった三人が、今日は私と同じゆるふわおさげで制服も正しく着ていた。相変わらずバスト部分は窮屈そうではあるが、図らずもアンダーバストの支えとなってしまったボタン部分でどうにか収まっている。
真面目スカート丈・巨乳・三つ編みってある種の男子には萌えるのではないだろうか?むしろ昨日とは別種類のフェロモンがムンムンである。同じ女性として、ちょっとだけ羨ましい……
しかし、昨日とは髪型は違っているのに、なぜ私とお揃いになっているのか謎だ。情報漏洩してるみたいです!!
昨日ギャルっぽく見えたのは、三人の髪色が明るいシルバーベージュで胸丈くらいのギャル巻きだったから。それでも、三人お揃いでのツインテールは仲良し感もあって、私は可愛いなと思っていた。この辺はまだ若干おばちゃん目線だったのかもしれないけど。。。
少子化である魔人族にあって、三人は珍しい同年の親戚同士らしく、姉妹のように仲良しだ。
「おぉ!アオはよー。今日は休みだと思ってたのに、まさか登校してくるとは……お前、中々やるじゃん」
「キラ君、『アオはよ』って……ちょっとうまいね。
ねぇねぇ、なんで私が登校することが、こんなにびっくりされているの?
ゴーちゃんも朝からほとんど話さないし、今日は一定の距離をあけて、護衛のようにいるだけなんだよ……」
妹期間はわずか二日で終わってしまったのか……グスッ
今日は天使のような微笑みは一切封印されていて、常時 真顔で少し冷たい印象を受ける。
ただ、キラ君が言うには、むしろこっちの表情の方が学園では見慣れているそうなので、そうなると昨日の方が無理をさせたのだろうかと気になるところでもある。
「いや……まぁ普通に考えて、罰を受けたやつが翌日にピンピンした状態で来るとかありえねーだろ。
ゴーシェは多分、自分をかばったせいでとか、自分が守ってあげられなかったことを、海よりも深く反省してるんじゃねーか?」
チラリとゴーちゃんを見ると「その通りです」と言わんばかりに、黙って頷いている。
とりあえず、今日は護衛のスタンスでいくようだ。はぁ……
「その、『普通罰を受けるとなる状態』って、た、例えばどんなのがあるっていうの?」
聞くべきかどうか悩んだけど、今後の参考までに聞いておきたく候
「んー?あぁ、普通は軽くても松葉杖で登校できるくらいとか、罰則期間が明ければ治癒してもらえるけど、どっかパーツが使えないようにされるか、残念ながら退学……ってやつかな。
まぁ学園内の罰は厳しいからな。それで平和が守られているのもあるっちゃあるけど、たまにスリルを求めて悪さするアホな奴とかもいんだよ」
「え……で、でも、トイレ掃除とかゴミ捨て場掃除とかは?危なくないやつよね!?」
「は?本気で言ってんのか?掃除はアオも迷った旧校舎のだぞ?あそこは昔使ってた訓練棟で、まず旧校舎に入った時点でアリ地獄にかかったようなもんだ。
少しずつあの迷路のような廊下を変化させて中心へとおびき寄せ、最後は逃げ道も塞がれてしまうんだ。あの廊下は生きているからな、食事をするんだよ。
アオはたまたまオレがあの日、あの場所で、サボっていたから助かったんだぜ?それだけでも、結構な強運の持ち主だと思うぞ」
だからキラ君は廊下じゃなくて天井を歩いていたってこと!?壁と天井だけがセーフティゾーンって時点で、人族には無理ゲーではないでしょうか?
じゃあ、あのままあの場所にいたら、私は全部丸ごと胃袋行きだったってこと?これ、運気が戻っていなかったら、あのドンタッキーの骨と並んだのは私なんじゃない……?ひぃぃぃぃ
【神いいねb】どころか【神感謝b】があれば高速連打したい気分!!
「だから、昨日の罰はあんなにしつこかったのか……」
ようするに何も知らない私は、散々自分の命を軽んじるような発言ばかりしていたってことだもんね。
昨日は泣くと、むしろ更に罰はエスカレートするばかりだったから、おかしいと思ったんだよね。
……って、いやいや思い出すな、忘れろ!!忘却の彼方へ!さぁ、行くぞっ☆
「お前、ホントに大丈夫か?顔が赤くなったり、青くなったり……やっぱり相当、精神面にくる罰に耐えたんだな。
まぁ魔人族じゃないし、かなり溺愛している感じだったから、アオを傷つけるまではしないだろうとは思ってたんだけど。
でもお前ら異種族カップルだろ?なにかあれば責任取ってやんなきゃなとは思ってたんだ」
「……うん。内容は死んでも言いたくないけど、耐えたことは間違いないね。
でも、異種族カップルだと何かあるの?キラ君が責任取るって…もしかして、わざわざ見舞金を!?」
私がボロ雑巾にように成り果てていたら、治癒費用とか精神面部分での慰謝料みたいな?でも、キラ君やゴーちゃんは基本的に保護側みたいなものだから、そんなことする必要もないんだけど
「何ってそりゃあ……」
「アオイおはようございます、45分ぶりですね。
あぁ……特急で仕立てさせた甲斐がありました……神がこの世に与えたもうた聖なる服、『聖服』!今日もとても愛らしい……私の聖徒」
いや、45分ぶりって初めて聞いたけど?そして今朝もこの制服持ってきたのルティじゃん。着てすぐに見てたでしょ?基本の型があるんだし、昨日と変わりないはずだよ。
「いや、これただの学園指定の制服だよね?そして聖徒じゃなく、生徒ね。ルティいつから宗教活動始めたのさ!私は入信した覚えもないよ」
「ふむ。私が立ちあげるなら、<アオイ狂>でしょうか?」
「そこは否定し難いところだよね!そして、「うまいこと言ったな」みたいな顔すんな!!
って言うか、これって破れた部分を繕ってもらっただけじゃなかったの?一から作り直しをたった一晩で!?」
なんて迷惑なお客っ!!ほぼずっと一緒にいたのに、いつの間に発注したのだろうか……しかし心なしか、少し肌触りが良くなったような気が……
「はぁ……私が今はそれを征服する側にいるのですね……ちょっと滾ります」
なにをちょっと韻を踏んだ感じに言っているんだろうか?悪ノリ感が半端ない。熱でもあるのか?
「ルティはただの一教師だからねー?学園を乗っ取る気でいるの?」
嫌々しているんだと思ったけど、案外彼は教師を楽しんでいるのだろうか?
いつかチュチュアートと戦う日が来たりして??んなわけない
「うぇ~い!ルーティエ先生、アオイさん、はよっす!オレの制服もどっすか?似合うっしょ?」
「あ、ハガネ君。おはよう」
チャラ男にしか思えない話し方なのに、実は制服はキチンと正しく着ているし、マッシュショートの黒い髪は、乱れてもいないというアンバランスさが不思議な竜人族の男子、ハガネ君。
特に人族とのハーフとかではなく、ご両親がワノ国の『SHINOBI』が大好きな、ワノ国フリークなだけとか。黒い髪はわざわざ染めているらしい。
彼も昨日はどこかでサボっていたようで、朝の会と帰りの会しか教室にはおらず、事件のことなど知らない。忍びすぎたか……
「……ハガネ君、でしたね。おはようございます、君の一般的なただの制服?まぁいいんじゃないですか。
誰にでも似合うようにできていて良かったですね。デザイナーに感謝したらよろしいかと」
「ひゅ~今日も辛辣ぅ~明日も制服チェックおねしゃーっす!」
おでこをペチンと叩いてご機嫌に教室に入っていく辺り、忍べなくとも、メンタルは鋼のようである。ちなみに口笛はうまく吹けていないで、空気が「ひゅ~」っと鳴っただけだ。
「ルーティエ先生ぇ♡今朝は昨日よりも艶やかでお美しいですわ……生徒の制服もいいですけど、わたくしの今日のスーツなんてい・か・が?
先生のことを想ったら…やだぁ、また胸が大きくなっちゃったみたいで、ボタンが閉まらなくってぇ」
隣のクラスの担任である、グラマラスなセクシー教師キスミー=ピューマーは、ルティと私がいるときに、あえて挑発的に絡んでくる。それも視線は私の胸を見ながら……別にそこまで小さくなんてないし!大きすぎても肩こりになっちゃうんだから!!
口元に艶ホクロがあり、獲物を狙う唇はグロスでつやっつやだ。内心では『女豹』と呼んでいる。
「はぁぁ。キスミー先生、あなたはまず、ご自慢らしいその胸を少しは隠すことを覚えたら如何でしょうか?
あなただけではなく、他の女性も似たようなものですが。皆全く同じ塊にしか見えませし、品がありませんね。
他にも長所があるのでしたら、そちらをまず磨いた方が余程宜しいのでは?まぁアピールポイントが他にもあれば、ですが。
あと、その唇……あまり油っぽいものは授業前には食べない方が宜しいかと。ギトギトしておりますよ」
「あー…はい。申し訳ございません……」
女豹はズコズコと、自分の受け持つ教室に戻っていった。アディオス…
昨日もこんな感じで朝からあしらわれていたのに、切り替えが早いのか、全くめげない彼女のメンタルの強さにだけは素直に賞賛したい。
明日も挑戦するのだろうか……
ありがとうございました!