5:豚さん…いえ、ブタタンは可愛いのは名前だけ
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おはようございます!
昨日は結構疲れていたというのに、目覚める時間は以前と変わらず……歳か
恐らく今は朝5時頃かな?
昨日聞いたら今は5月中頃みたいで、日も入り始めている
神様は面倒だったのか、一週間は7日間、一年は12ヶ月、一ヶ月は30日間だし、時間も一緒でほぼ丸パクリしたよね。
四季はある所とない所があるみたいだけど、これも地球と一緒と言えるのかな?でも逆に言えば覚えやすいからありがたい。ないものも多いけれど、魔法で補えている部分もあるしね。
ルーさんまだ寝てるかな~?とコソっと控えめにリビング側を覗くとルーさんの寝室のドアは空いていた。どうやらすでに起きているらしい。
そういえば彼はエルフってわかっていたけど、なんと400歳だとか!果てしなさ過ぎてよくわからない。『じゃあ見た目はともかくお爺さんなんですか?』っていうとやっぱり違うようだ。
なるほど寿命1000年くらいもある種族から見たら、確かに矮小な人族扱いも何となく理解できる気もしてきたよ。
ちょっと違うけど、70歳くらいの人生の大先輩に成人前の若造が食って掛かると考えたら……いや、申し訳ない。
でも人は見た目じゃないって言っても、こちらは相応のおばさんで、彼は大卒の子というか、社会人1、2年目くらいにしか見えないんだもん。
だいぶズルい。
そんなことを思いつつ、そういえばルーさんはいずこ?と外に出て周囲を探してみると『アオイ!おはようございます、気持ちの良い朝ですね』とルーさんの声が上から聞こえた。
木の枝に座る姿がまさにエルフっぽくて(ただのイメージだけど)絵になる。実際に彼はイケメンだしね。眼福、眼福、拝んでおこう
「おはようございます。寝起きの脳も、木々の爽やかな空気ですっかり覚醒したよ!良い場所を教えてくれたルーさんに感謝だね。ルーさんは早起きして何をしていたの?」
気さくに話せるようになったのは、昨日ルーさんが食後に『元の依頼期間は終わったので、明日から敬語はやめて欲しいです』と言ってきたから。そこはありがたく受け入れました。ずっと敬語はちょっと疲れるもので。
ルーさんの方はなぜか敬語のままなんだけどね。彼にはこれが標準らしいので良しとする。
「今日の花にちょうど良いリナリアが咲いておりましたので、少々摘んでおりました」
リナリアかぁ……花も全く名前同じなのかな?うちの庭にも種がこぼれて沢山咲いていたんだよね。
「朝早くからずっと花を探していたの?」
「いえ、基本的に早朝は日課の鍛錬ですね。身体の鍛錬を怠ると、すぐになまけ癖がついてしまいますし。もう毎日の事なので、やらないと落ち着かないと言いいますか。あとは精神統一の為の瞑想を少々……」
ごめん、ルーさんへの認識を今すぐ改めるね!
舌打ち男→気の利く良い人→現状:イケメンのスパダリ気質、努力の盛り合わせ~花を添えて~
たった数週間でこんなに印象変わる人も中々いない。
「Aランクは伊達じゃないんだねぇ。それに驕ることなく、日々研鑽を積んでるなんてすごいなぁ……冒険者歴300年くらいだって言っていたから、半端ない努力家だね。感心というか尊敬に値するよ」
ん?よく見たら急にルーさんの耳がピコピコし出した?それって動くの!?動物の尻尾みたい!!耳赤いけど、何かあったのかな?
「ア、アオイに褒めて頂けるとは思わず、とても嬉しいです。もっともっと努力して強くなるよう頑張りますから、そしたらまた……褒めて下さいますか?」
あれ?私さっきの言葉うっかり口に出してた?!というか、どこにもじもじする要素があったのか謎。
「え?うん、もちろん褒めるよ!あ、でも出来ればケガとかしないようにって意味で強くなって欲しいかな。防御は最大の攻撃とも言うしね。私の方は攻撃力より防御や不意をついて逃げる方に徹したいけど」
「ケガの心配まで……わかりました!かすり傷一つしないよう心得ておきますね。アオイは確かに防御力を先に鍛えた方が安心ですね。今日は結界魔法をぜひ使いこなせるようになりましょうね!」
「そうだね、精一杯頑張ります!」
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一通り教わった後に、結界を張ってみたんだけど、私の結界はラノベやコミックなんかでよく描写されていた四角柱タイプだ。
これは読み漁ってお陰かイメージしやすくて、比較的簡単に作ることはできたんだけど、精度はそんなに高いのもじゃないらしい。まぁ初心者ですからね
魔力量だけは多いらしいので、とにかく午前一杯は練習に練習を重ねることにした。
お昼はお弁当で持参した、少しスパイスが強めの大きな既製品のソーセージにレタス、刻み玉ねぎ、トマトソースを挟んだバゲットサンドとじゃが芋のポタージュを食べつつ、結界魔法を掛け続けた。
「ルーさん、範囲は狭いけど結界魔法のかかり具合とかどうかな?弱いから数で補ってみたんだけど……」
自分の体感比では、割と安定してきたように思えるんだけど。
「アオイ、頑張りましたね!一回目と比べてもだいぶ精度が上がっていますよ。範囲を広くせずに小さく凝縮し、重ね掛けしたのですね。魔力節約にもなりますが、繊細な魔力操作になりますので、これは中々できることではないのですよ」
「え?本当?やったぁ!嬉しい!!ルーさんにそう言って貰えると自信がつくよ」
そう、四角柱だと無駄な部分もあるなと思って、体の形に添うようにできないかイメージし直したらできちゃった、みたいな。あとはミルフィーユ状に五枚重ね掛けして強化している。
あくまで自分の身だけ守るのなら十分だよね。自活力がまた一つ上がったかな?
「では、今日のブタタン狩りの際に使用する結界としては十分と判断できましたので、食後のデザート代わりに木苺がたくさん実っている場所にご案内しますよ。
木苺はブタタンも好みますから、鉢合えばそのまま討伐出来ますしね、一石二鳥です」
うんうん。木苺イイねって思ってたけど、後半不穏な話出なかった?『木苺狩りだぁ』なんて夢中になってたら、こっちがブタタンに狩られちゃうんじゃない?
「ルルルル、ル、ルーさん!それって危なくないの?怖くて木苺味わう余裕なんてないよ私!」
「大丈夫ですよ、その為の私じゃないですか。アオイは結界魔法を張ったまま食べていてくれていいですよ。私がその間の見張りと、もし出てきたら仕留めますからご安心を」
そもそもブタタン狩りは今日のミッションだもんね。今晩のディナーになる……食材、そう食材狩りだ!討伐じゃない、狩猟だ狩猟!無理矢理だけど、落ち着くために別のことを……
やっぱり外国人にもウケが良いカツ系にするか……ミンチにしてハンバーグにするか……
よし、これは食材狩りだ!頑張るぞー!
って思ってた。実物見るまでは
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「ひぃ~~~~っっ!!!こ、これがブタタン?可愛いのは名前だけじゃんっ!見た目はオ〇コトヌシそのものでしょ!ぎゃ~~~~!!!」
木苺狩りとか、そんなのどうでもいいわっ!私の真横からヌシことブタタンが突進して来た!結界にぶつかってきて、ブタタンが一度鳴いたと思ったら、壁に激突したようによろけた。
その後、音もなくスッと上から現れたルーさんが、ブタタンのコメカミ辺りに人差し指を充て……たらブタタンは倒れ、体重に見合ったドシンという音と共に、動かなくなっていた。
ルーさんは、なにか直接脳に電気ショックみたいなものを与えたらしい……怖いけど、きっと血が飛び散らないようにと考慮してくれたのだと思う。
そして、ここで問題が解体なんだよね。覚えるしかないのか……?と戦々恐々としていたら『アオイが冒険者を生業にするわけじゃないのであれば、無理にしなくてもいいのでは?』とルーさんに言われた。
あくまでも私は万が一の為の防御を高めたいのであって無双したいわけじゃない。
冒険しない冒険者を目指したいのだ!
Q:じゃあ倒した場合どうするの?
A:解体屋に持ち込めばOK! (ルーさんはもちろんできる)
良かった!餅は餅屋、肉のことは肉屋だよね。解体業があって良かった!それに空間魔法で保管しておけば腐敗もしないし、空間魔法サマサマだよ!
お陰でほぼ手ぶらで行動出来てます。
空間魔法はその人の魔力量によって、しまえる容量も違うらしいけど、この適性だけはあって心から良かったと思う。適性がなかったら使えないものだから。
仕留めたブタタンは解体屋さんへ預けて、部位ごとに切り分けてもらうことに。その待ち時間を利用して夕飯の材料を買い足しにルーさんと市場へ向かいました。
う~む。。。結局のところ、最初のブタ料理は何にするべきか……決まっていない!
アオイの魔法は、攻撃系魔法は使う機会がないのと、本人が討伐したい等の意思が皆無な為、ほとんど宝の持ち腐れ状態です
クリーンとテレポート、結界、空間魔法でほぼ生きていくと思います。ルーティエが使わせるような状況にそもそもしていないののが一番の原因かな (;^ω^)