バレンタイン直前SP:小話 私のどこが好きなの?~とある日の一コマ~ ☆
☆7000PV達成感謝!
↓付き合いたてのカップルのお話です(笑)↓
☆舞台はまだリイルーンのルティ個人宅に同棲中の2月にあったお話です
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ザクッザクッザクッ…――
今日はバレンタイン……この世界にはない風習だけど、ルティに話したらぜひ再現して欲しいと、暗に手作りチョコのおねだりをされ、今頑張ってチョコレートを細かく刻んでいる。
リイルーンは気温も一定で季節感がわかりにくいのもあって、いつも間にかクリスマスや正月が過ぎてしまい言い出せずにいた。はじめてのイベントは節分だっただろうか……渋いな
それにしても、きちんと量らないといけない系のお菓子作りがすこぶる苦手な私には、ホットケーキミックスという最強の粉がない世界で、焼き菓子なんて高度なものは作れない。ふと、卵5個もつかったシフォンケーキを高級蒸しドーナツのようにしてしまったことが思い出される。あの時は泣いた……それ以来、ケーキというものはプロが作ったものを買うべきだ、と認識を改めた
それに完全に言い訳だけど…バレンタインの話をしたのも、確かに自分なんですけども!まさか今日の今日でねだられるとは思わなかったんだもんっ!
もっと事前に計画していれば、プロに教えてもらったりとかできたのに…ブツブツ
結論、自業自得。
どうにか無い知恵を絞って閃いたのが【チョコレートフォンデュ】。刻んだチョコレートに生クリームを入れ、溶かすだけの素晴らしい一品。
果物はいつもの通り、どれだけ貯め込んでいるのかはわからない、歩くフルーツパーラーな彼が提供のバナナやイチゴとマシュマロはないので、バケットをカットして用意してある。
その一番大切なチョコレートと生クリームを、焦がさないように溶かすという、このフォンデュ最大の難所に差し掛かっているというのに、キッチンが良く見えるカウンターに座る彼は、飽きもせず私をうっとりと眺め続けていて、そろそろ穴が開きそうである。
「はぁ……今日のアオイも可愛らしい。胸元がハートでフリルのエプロンがまた……好きです♡」
いや、それをどこからか用意してきて、着るよう指示したのはあなたですよ。
どこの世界でも一度は憧れるものなのだろうか?ハートのフリルエプロンは……
「あーうん、ありがとう。
……あのさぁ、ルティが私のこと好いてくれているのは素直に嬉しいんだけど、そんなに毎日うっとりするほど、どこがそんなに好きなの?」
え?なにその如何にも驚愕してますって顔!?そんなに衝撃的なこと言ったかな?ここに吹き出しをつけるなら「アンビリーバボー!」と叫ぶムンク顔というべきか……
「な、なんてことでしょうか……今までお伝えしてきていたつもりでしたが、もしや私の脳内でしか言っていなかったということでしょうか?」
「いや、どのことを指しているのかもわからないんだけど、脳内でも実況してるんだ……」
「多分、私の脳内の妄想を含め、全てお話ししようものなら、アオイがドン引くと思いますので、かなり控えめにしてきたつもりだったのですが……くっ、これは大きな失態ですね」
「え?今までで控えめだったの?じゃあこれからも控えめモードでお願いしようかな…はは」
絶対に脳内妄想を聞いてはいけないと私の本能が訴えているので、なんとしても阻止したい所存。知らなくてもいいことが世の中にはあると、大人になってから知ったからね。
「脳内妄想までは、トップシークレットになりますが、せめてアオイの愛すべきところくらいは述べさせて下さい」
「は、はい……」
あまりにも真剣な表情で言うものだから、こちらもつい喉がゴクリと鳴ってしまう
「まず、出会った頃から瞳が一番好きです。その黒く、宇宙を思わせるような瞳に見つめられると、すぐに私の心は捕らわれてしまうのです。そしてその瞳の中に私が映っているのを見ると、アオイと私がまるで一つになったような、そんな幻想すら抱かせるのです。
唇も、そこから紡がれる言葉や声も好きです。唇なんて“口づけせよ”とばかりにぷっくりと愛らしく、いつでも私を煽ってきて理性を試させてきますし、声はすごく落ち着くトーンで、どんなに辛辣な物言いであろうとも、人を陥れるような悪意を持った言葉や嘘は吐きませんよね。
恥ずかしがり屋な部分は長所としか呼べません。「嫌、恥ずかしい」と言いながらも、頑張って私を受け入れて下さるところなんて、萌え死に必至ですし。
もう、今のアオイに見慣れてしまったら、身体つき一つとってもドストライクなので、直球で言わせて頂けるのでしたら、早く自由に触れられる間柄までに進展したいというくらいでしょうか。
私は「待て」ができるエルフですからね、時間はたっぷりありますので、アオイが私の全てを受け入れてくれるまで待ちますよ。
それからアオイの愛のスパイス入り小悪魔料理はもう反則技ですよね?一口目で「おいしい…好き♡」となりますからね、特に…」
「わかった!!ありがとう!超理解したわ!!」
息継ぎは一体どこでしていたんだろうか?そしてその女性は誰の話なのかとも思う。
ものすごい長いニュース原稿読み上げてるのかってくらいの熱量ですね
「え?もう理解されたのですか?まだ触りの部分でしたのに……」
「いやいやいや、いいかな。うん、いやぁ愛されてて幸せだなって思ったよ。非常に思った、お腹一杯だわ。胸焼けしそう」
「私もあなたに胸を焼かれて焦がしております♡では、またいつでも心配になりましたら聞いてくださいね。
そもそも300年以上フラフラと自由に一人で生きてきて、アオイが初恋だと申したでしょう?
これがただの気まぐれなわけないですよね。毎日ドキドキさせられっぱなしです。両想いになった今、向こう100年は余裕で離す気はありませんので。長寿の恋愛を舐めないで頂きたいですね。
簡単に好きにならない分、惚れ込んだら絶対捕まえる気で挑むのですよ」
「えぇ……ルティ結構簡単に好きになってなかった?今はもちろんルティ大好きだけど、確かに強引な所が多かったよね。あと気付いたら付き合っていたような気もしなくもないような??
それに100年も離したくないほどのラブラブカップル並みに過ごせるってすごいね。私は人族だから、多分そこまでラブラブな状態を保つって難しい気がするよ~」
とりあえず10年くらいしたら、一度は倦怠期を迎えるんじゃないかと心配している
でもアイさん、コーディエさん夫婦は仲が良さそうではあったなぁ……結婚何百年なのかはわからないけど。種族的には可能なことなのかな?今度、長続きの秘訣を聞いてみようかな
「ふむ。アオイに惚れたのはもはや運命ですので、仕方がないことですよ」
「運命か……うん、まぁそうとも思えなくも、ないか……」
「中々長い時を仲良く過ごすことが想像できないようですね?
でも、それならそれで、私が努力すればいいだけの話です。ただ、アオイも同じ長寿になったので、少しだけ時間の感じ方がエルフ寄りにはなってきていると思いますよ?
短命な人族がいきなり長寿になってしまうと、喜びよりもむしろ絶望を感じる方が多いと思いますし。その辺りの感じ方は以前とは違うのではないですか?」
なんか、一日を忙しなく過ごすというより、まったりのんびりマイペースに過ごすようになったような気もするけど、そういう影響があるってことかな?
「言われてみれば、今は絶望や不安とかはあまり考えたことなかったかも。長いなぁとは思うけど。
今はその時間をどう使おうかなって考えることの方が多いかもしれない」
「ですよね?だから大丈夫です。あとはもう魔法誓約書にサインをいれて頂くだけですので。
さ、結婚しましょうか!」
「なにその『さ、冷めない内に頂きましょうか!』みたいな言い方。前から気になってたんだけど、どうしてそう結婚にばかりこだわるの?色んな形の恋愛はあるけどさ、好きになって、お付き合いを初めて、相手をよく知った上で結婚したいじゃない。ルティの頭の中ってどうなってるのよ」
「私が考えることといえば、99%くらいがアオイのことでしょうか。1%は仕方がないので他のことの為に空けてありますが」
極端にもほどがあるし、さすがに私がその域に達するのは難しいと思うんですよね。せめて私60%、その他40%で十分かと……
「そ、そうなんだ……まぁいいや。それで、今両想いになって私はとても幸せではあるんだけど、恋人のルティさんはこの関係に不服があるってことなんでしょ?どうして?」
「恋人なんて別れるのも簡単じゃないですか!一瞬ですよ?一瞬!!その点、結婚は魔法誓約書を交わすものなので、多少縛ることができるのです。特別な場合を除いて、双方の合意なしには簡単には別れられないのですよ。そもそも私は絶対に合意しないので、必然的に離婚はできないというわけですね」
そんなご機嫌に「ね、魔法誓約書はメリットだらけですよね」みたいな顔されても、相手が「え、それってすごいね~じゃあ結婚しよ!」って返事をするような内容と思います?いや、彼は思っているから言っているのか……
「………え、と……一つ言わせてもらうと、結婚怖い。なんかルティがヤンデレっぽくて怖すぎる!今のプレゼンで私の結婚願望はだいぶ遠のいたからね!」
「なんと!?ですが、私達は出会った頃からずっと一緒におりますし、そして現状は愛し合う恋人同士、さらに同衾といい、深い口づけを交わす程の関係にまであって、結婚しないという選択肢があるのですか?」
「ちょっ言い方!同衾ってやめて。添い寝ね、健全な添い寝!!それから確かにずっと一緒にいるけどさ、まだ付き合って数ヶ月程度じゃない。エルフは気長なんじゃなかったの?」
「待て」ができるエルフですと言った発言は、知らない間に撤回されていたの?もしくは10分程しか効果がないのだろうか
「気長ですよ。それはそれは……とても気長だと思いますけど?忍耐も相当なものだと評価して頂きたいですね。
更に二人の愛を深める為に、もう少し先に進みたいと私は思っておりますが、アオイのペースに合わせて必死に我慢しているのですよ?
そうだ、私達には話し合いが必要だとアオイも常々言っておりましたし…これから、なんていかがですか?もしかすると、私が思うよりも考えが進んでいる可能性もありますよね」
マズイ。。。話の流れが宜しくない方向に流れ出した……「私が思うよりも」ってあなたはどう思っているのでしょうか?聞きたいけど、これも聞いたら自分が不利になりそうなので聞かないでおこう
「……よ、よぉーし!チョコも良い感じに滑らかになったよ~、少し熱いからどいてどいて~」
「なんともタイミングがいいですね……はぁ、私が運びますからアオイはソファに座って待っていて下さい」
「ありがとう、じゃあここに置いて……はい完成~ハッピーバレンタイン~!」
「ふむ。これがバレンタイン……それで、このあとはどうするのですか?
私達のように愛し合う恋人同士は、このまま普通に食べるわけではないですよね?」
「くっ……やはり気付いてしまったか……わかった。恋人たちのバレンタインだもんね……では一投目、アオイ行っきまーす!!でやっ!!」
ハートっぽくカットしたイチゴにフォークを刺し、溶かしたチョコレートの海で泳がせる
ふぅふぅと少し冷ましたものを、期待の眼差しで待っている彼の口に運び入れた。
「どう?おいしい?
えと……ルティ、好きになってくれてありがとう!大好きだよ、これからも宜しくね!」
「~~~っ!!アオイ…嬉し過ぎます!こんなに美味しいチョコレート、生まれて初めて食べました。今度は私からも宜しいですか?」
やった!私のターンが思ったよりも早く来た!ずっとチョコバナナが食べたいなって思っていたのよ~なんなら祭のチョコバナナみたいくしたいくらいだけど、今回はカット済のバナナです
「うん、じゃあ私バナナがいいな。チョコバナナは鉄板だもんね!」
「バナナですね……はい、満遍なくたっぷりとチョコをつけましたよ……どうぞ」
あ~むぅ。
チョコが溢れる程、たっぷりついていて美味しいぃぃ!溶かしただけなのにちゃんと作った感あって良かったぁ~。
簡単なのにチョコフォンデュいいじゃない!もう毎年これでいいんじゃないかな?バレンタインはこういうものだってことにしておこうかなぁ
「んむんむ。チョコたっぷりはやっぱりいいねぇ~」
「それは良かった……アオイ、私も別な種類が食べたいです」
「ん?違う種類のっていうと、バゲット?バナナ?どっち?」
あ、アーモンドみたいな木の実があったよね~。たくさんあったらアーモンドチョコレートが作れるんじゃない?それいい!あとで出してもらおうかな。
案外ルティも「この木の実にもチョコつけていいですか?」だったりして
「……アオイ、です」
「んむぅーーー!?」
(さっきたっぷりとチョコを絡めていたのはこの為だったのー!?)
彼は私の唇についたチョコレートを舐めとるように、上唇、下唇と順に啄んでいった。
もちろんそれだけでは終わらず、私の舌に残る甘い余韻すらも味わおうと彼の口づけが深くなる。
はじめは抗おうと思ったけれど、彼のチョコレートよりも甘く、蕩けるようなキスに酔った私も煽られ、気付けば互いに食べ合うような深い口づけを繰り返していた。
「ふふ。私が世界一好きな甘味は“アオイのチョコレートフォンデュ”になりました♡まだまだソースはたくさんありますからね、アオイも“ルティのチョコレートフォンデュ”のお代わりは如何ですか?」
「ちょ、ちょっと私には高級過ぎて……一つで十分みたぃ……」
「では私の口にはとても合いましたので、私だけ“アオイチョコフォンデュ”をお代わりしますね。アオイはリラックスしていてくれていいですよ」
「え、嘘!ちょ、待って!!んむぅーー!」
結局、彼が満足するまで続いたチョコレートフォンデュ。後半は本当にチョコに酔ったというか胸やけしそうになった。もうこれは定番にしてはいけない……
来年はちっっっさく、3粒程度のものにしようと固く、固く誓った私なのであった。
抹茶青汁を飲みながら執筆しました。ただ、ひたすらに甘くしてみました……ルーティエの為に
シフォンケーキが高級蒸しドーナツのくだりは私の実話です(笑)厚みが3cmしかない、とても卵味が濃厚な蒸しドーナツにしか見えないものが出来上がりました。少し黄身がついたままの泡立て器をそのままメレンゲ作りに使うという初歩的ミスです