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28.5:閑話 書店員ブクマ―の幸難(さいなん)

短めですが、昨日のブクマ―氏の心境です


5月30日改稿済



******



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……怖かった……」



 緊張から解き放たれ、私は大きく息を吐く



 ようやくルーティエライト様と同志アオイ君が……(いや、フィアンセ様か)お帰りになった。

 正直、500年生きてきた中でも三十指に入るほど濃い一日であったと言えよう。

 おや、指の数が合いませんね、些末なことです。

 


 驚きと感動、恐怖を一気に短時間で経験すると、最終的には『無』になるのですね。初めて知りましたよ。それに、あの紅い鳥籠の美しさたるや……

 どう考えても勝ち目もなければ、逃げ場もなかったですからね。目が合った瞬間から、自然とひれ伏しておりました。野生の本能ですよね。

 

(あ、これ私死ぬな)


 死を覚悟したのは本当ですが、この美しい芸術作品の中で死ねるのなら、それはそれで本望だと感動に打ち震えました。



 ご存じかとは思いますが、私はサインが欲しかったほど、お兄様であるラトナラジュ様とルーティエライト様の大ファンですからね!

 その、ルーティエライト様と一度のみならず、二度もお会いすることができて、私をその視界に入れて頂けたのですよ?ありがたき幸せ!!

 


 コアなファンに知られたら、呪われるレベルですよね。おぉ、コアい、コアい!

 ふふふ……ちょっと私、ぶっ壊れかけてますかねぇ?

 


 討伐でしか見ることができないような<紅い雷光>を、まさか自身が狩られる側として目の当たりにできるだなんて……あぁ最高!

 もうこれは嬉々して、時世のポエムでも詠んじゃおっかな?なんて思ったところで、同志アオイ君(脳内ではそう呼ばせてもらおう)がルーティエライト様に説得を試みているではないですか。

 


 この極限状態でポエムを詠んだら、どんな作品になったのだろうかと思った節もあったので、少し残念に思ってしまったことは秘密です。

 


 しかし、よくよく考えたら、思い描いていた病弱で可憐な美女ではなかったものの、お会いしてみたいと思っていたルーティエライト様と恋人であるアオイ君と夢の共演……いえ、驚演?が、アリーナ最前列で見れたのですよ?プレミアムチケット級ですよね?

 チケットが存在していたら、額に入れて飾りたかったくらいです。


 アオイ君は恋人であるルーティエライト様(『ルティ』と呼んでおりましたね)の怒りゲージを、少しでも下げようとご尽力されている様子でした。

 そして、恋人とのイチャコラを見られることに抵抗がある方……と見ていて判断出来ましたので、空気を読み、私は思いっきり耳を傾けるのみに専念したわけです。(聴力アップです)

 


 アオイ君が私をチラッと見て、ちょっとホッとした表情をしたのを見逃してはおりませんよ。心配しなくても、私は捕らえられている美しい鳥に過ぎませんからね。ピチチチチ……ほぅら鳥です。



 ただ、ちょっとアオイ君を気の毒に思ったのは……ルーティエライト様は、アオイ君の作戦に気付いていらっしゃるようだ、ということです。

 アオイ君はその逆で、気付かれていないと思いながら、必死に作戦を決行しておりましたけど。

 

 ルーティエライト様がご納得しないが為に、どんどんご自身が蟻地獄にハマっていっていることに気付かれていないご様子でした。ハラハラ1割、ドキドキ9割です。



 少々同志を哀れに思い『もうその辺で十分ですよ』と助け船でも……と顔を上げた瞬間



(――…っっ!!!)



 顔は彼女へ向けたまま、視線だけこちらに向け、威圧を掛けてきました!

『余計な口出しはするな、見るな』……と言われたように思いました。

 

 あの瞬間、私は道端に咲く地味な野草になるしかないなと悟りを開きました。同志は大切ですが、推しの不興を買うわけにはいきませんからね。所詮、自分が一番かわいいもので。


 

 それに、怒っている様子ではありますが、どれほどルーティエライト様が彼女を慈しみ、大切にし、そして愛しているのかなど、瞳を見ればすぐに気付きます。もう、それはそれはヤベーなって思うレベルで。

 彼女が嫌がることをしない……かはわかりかねますが、ケガをするような事態にはならないのは確実ですしね。

 どういった経緯でお二人が知り合い、お付き合いまで至ったのかが非常に気になるところです。



 今回の交換条件に関しては、残念ながら言い出しっぺが彼女の方からですので……今後は事前に対策を考えておくことをおススメ致します。



 それにしても、同志アオイ君は人族でしたが、多国語でもペラペラみたいですし、あの<ぷりん・あっら・もうっどっ!>の腕前を見るに、きっと料理も得意なのでしょうね。

 


 あれは【美文化遺産】に残した方が良いのでは?と思える作品でしたね。美しい……



 そうは思っても、私の中では人族と添い遂げたいという願望は……やはり寿命の関係で考えられないんですよね。

 それでも、あの他者を寄せ付けなかったルーティエライト様を骨抜きにし、仲が良く、相思相愛の様子を見てしまうと……やはり私も『どちゃくそ羨ましいっ!』とはなります。

 


 それに、ビクビクしながらも潤んだ瞳は……ちょっと小動物みたいで可愛い、なんて……ちょーっと、ほんのちょーっぴりですけど思いました。



 ただ、恐ろしいので今すぐ記憶から消し去っておきますが。。。はい、消去。



 正直、今回は巻き込まれた感は否めませんが、トータルで考えれば、感動のビッグウエーブばかりでしたからね。せいぜい、ファンサ祭りの過剰摂取で若干、動悸が激しいくらいですか。ふぅ。

 


 まぁ、『消されなければ、全て良し』と言うやつですよね。素晴らしい格言だ!



 今頃、彼女はルーティエライト様からの『お願い(命令)』を告げられているのでしょうか?何を言うのかまではわかりませんが、恋人同士ですしね。

 彼女にとっては、きっと羞恥に悶える内容であるのだろうなという事くらい、容易に想像できますね。って私如きが予想できるようなことではないのでしょうけど。

 

 以前お渡ししたサービス本、多少はお役に立てているのでしょうか?

 そういえば、あれはエルフ同士のものでしたので、今度人族向けのものをお渡し……は、もうできないでしょうかね


 それにしても、『ミズギ』というのは風呂場で着用する服のようなものなのでしょうか?直感ですが、大変良いもののような気がします。



 同志アオイ君は、しばらくはこの店で働いてくれるようだし、明日は秘密を守ってくれたお礼に、とっておきの純愛小説(BL本)を読ませてあげようと思う。



―――だからアオイ君、今日は頑張れ……羞恥と言う名の骨は拾ってやるからな!!





 はぁ、私にピッタリの方が、自ら飛び込んで来ないものか……

 良縁、やっぱりお待ちしております








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