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16:眠れぬ夜は誰のせい



******



「アオイ………?」

「……………」



(え……?私なに受け入れちゃってんの?気は確かなの?)


 ただ、本を読んでて……それで質問されたから答えただけだったよね?




「アオイ、大丈夫ですか?ふふ。アオイとついに……く、口づけをしてしまいましたっ!言葉に出すと非常に照れますね。アオイが目を逸らさなかったので、見つめ合ったままで……まるで、二人の間だけ時が止まったようでした」



 そうそう、私なんて目を開けっぱなしでキスしてたよね?

 普通目を閉じるとこでしょ!?って違うわ、そこじゃない!



「それに、少し濃いめに入れたせいか、ミント味で……。今度はレモンティー味で、というのも如何でしょうか?アップルティー、ブルーベリーティー、色んなフレーバーで試してみるのも良いかと」



 そう、ミントの香りがしたんだよ。あれは私から……?いや、ルーも飲んでたからルーかな。

 って、それもどうでもいいっって!!

 なぜに彼は「キャッ♡」みたいに一人で盛り上がっているのさ!



「もしや、まだもの足りなかったでしょうか?そうですよね、私もそう思っておりました。アオイ、もう一度口づけても?」



 そうだよ、こんなの絶対おかしいって!やっぱり体が疲れているんだわ。

 うんうん間違いない!思考まで弱ってきてるんだな!そうだ、そうだー

 

 だよねぇ。いやぁやっぱり疲れを残すって良くないわ。無理は禁物っていうもんね!

 私ったらまだまだ若いつもりでいたわぁ。

 ほんっと駄目だねぇ~、キスをもう一回ね、うんうん……うん?



「違ぁぁぁぁぁぁう!!!!」

「おっと……」



 ドンッ!!と彼の胸元を押したけど、全く微動だにせず。チクショウ!Aランクめ……



「アオイ、急に暴れたら危ないですよ?落ち着きましょうね」


 宥める様に、頭をヨシヨシ撫でられる。。。これ地味にイイ


「う、うん。ごめんね急に…………じゃなくって!落ち着かなくなったのはルーのせいでしょ?なんであんな、あんなこと、、、したのよ!」


「え?アオイが好きだからに決まっていますよね?一応、ちゃんとキスがしたい意思表示をして、それをアオイも受け入れてくれたものだと認識していたのですが……。

 もしかして、そちらの世界での常識と違っていたのでしょうか?うっかり失念しておりました……」



 うーわー『好きだからキスしましたけどなにか?』的なことシレっと言われたぁぁぁ!!

 私もおかしいが、特にルーは四百四病の外をガッツリ罹っている最中だった!

 私の方が失念していたわ!このぉ、お馬鹿さんめっ!コツン☆


 あ゛ーー駄目だ。こっちが逆に彼が間違えた道に行かないように、修正してあげなきゃいけなかったんだ


 あれは…あれだ、ちょっとばかり口と口がぶつかったみたいな、ハプニング的なあれよ。

 そうそう、ご近所だった外国人の夫婦を思い出してみようよ。あいさつでチュッチュしてたじゃん?

 あーー、なーるほど?グッモーニン!からのチュッみたいなやつじゃん!

 はい解決~


 ふぅ……落ち着け。落ち着く時、落ち着けば、落ち着こう!!!よしっ



「ルー、過ぎた事はもはや過去の話、私達はこれからの事を話し合うべきなんじゃないかな?」

「私とアオイのこれからの……こと?それは、つまり……」


「そう、つまり……」

「結婚、ですね!!」



「全っ然違う!!全く違う!不正解、論外、はい退場、出場停止!」



「え?二人のこれからというワードで結婚以外に何かありますか?あぁ婚約でしょうか?結婚は秒読み確定でしょうから、少しくらいであれば婚約期間があってもいいですけど。

 結婚確約の誓約書を書いて頂けるのであれば、恋人でも、婚約でもどちらでも構いませんよ。そこはちゃんとアオイのご希望に合わせますからね」


「いや、誓約書書かす時点で、ほぼ強制に近いじゃん……怖いって。そうじゃなくて、ルー、仕事は最近どうしたの?冒険者だってパーティまで組んだのに、何もしないって良くないよ。

 私なんて一回も依頼受けていないんだよ?これって本来はいけないことなんじゃないの?」


「うっ。まぁ私はちょこちょことこなしてはおりましたので問題はないのですが……。アオイは、、、そうですね、一つくらいやらないと、いけないかもしれないような……?何でしたら私が手を回しておけば大丈夫かと思いますけど」



「ダメに決まってるでしょ!ほら、そういう大事なこと言わないんだからさ。私の身分証明書がなくなったら困るじゃない。

 今日、明日大人しくしておくから、大丈夫だったらギルドに行こう。薬草採取とかなら出来そうでしょ?」

「また何かありそうで心配なのですが……」



 私の信用度はどうやら壊滅的なようだね。



「ルーが一緒にいてくれるんでしょ?パーティーなんだし。それに私も結界の精度上げたいしさ。お弁当持ってピクニック感覚で行こうよ、ってそれは変か」

「二人きりで、二人だけのピクニック(世界)……つまりデート!それならばアリ、か……」



 何かブツブツ言ってるし、若干ルビがおかしい気がするけど。ダメかな?



「ルー、ダメだった?」

「いえ、私がおりますので心配ご無用ですよ!では明日まではゆっくり休みましょうね。

 お弁当は手作りを食べたいところですが、無理をして欲しくないので、私が買ってきますよ」


「えーおかず作りたかったなぁ。でもここキッチン使えないから無理か。何か益々ルーが過保護になってない?介護されてる気分で複雑だわ。ダメ人間まっしぐらで嫌になる」


「そんなことはありません。アオイが元気になったら、ちゃんと作ってもらいますよ。【ぷりん】をリクエストしても?」

「ふふ、了解。本当プリンにハマったんだね。食べ過ぎは注意だからね」


「うっ。ほどほどに、気を付けます……」



 うむ。作り手側が作りすぎないように気を付けましょうか



***



「ギルドに来るのも久しぶりだねぇ……あっユーロピアは始めてか」

「そうですね。都市部にあるのでかなり大きな建物ですよ」



 なんやかんやで行っていた活動と言えば、食い倒れツアーみたいなものだったしね。ギルドのことをうっかり頭の隅の隅の奥地にまで追いやってしまっていたよ。不真面目でスミマセン


 ミトパイ支部の方は少し大きめな一軒家くらいのサイズ感だったけど、人口に比例しているのかな?10階建てのホテルくらいの大きさで、冒険者ギルド以外に商業ギルドも併設されている。

 他には会議室や商品開発室、試作場所、訓練場、試験場なども建物の中にあるらしい。


 あとは上層部や一部の人が上階の住居フロアに住んでいるんだって。

 近くて便利だけど、逆にいつでも呼ばれるっていうね。良いのか、悪いのか…


 さて、建物の説明も聞いたし、早速依頼を見てみようかな


 とはいえ、のんびりやって来たから人気のものはもうないみたいなんだけど。

 残り物には福があるって言うじゃない?って自分の寝坊を棚に上げてみた



「ねぇ、ルー!良さそうな依頼を見つけたよ!!薬草採取じゃないけど、書籍整理だって。女性限定だし私でも出来そうじゃない?」


「ダメです。重たいものを持っている時に倒れたら大怪我をするでしょう?それに女性限定なので、()()そばで見ていられないじゃないですか。却下ですね」


「えーそんなぁ……やりたかったなぁ。でも、こういうのも依頼になるんだね。わかった。今回は言うこと聞きます」


「お願いしますね。ではこの薬草採取の依頼にしましょう。見分けがつきにくい薬草なので残ったのでしょう。でも私がいれば大丈夫です。

 ちょうど良い勉強になりますよ。近場なので安心ですね」


「了解。じゃあ、それにしよう」



***



「アオイ、どちらがスイセンで、どちらがニラでしょうか?」

「う~ん。こっちが……スイセン、こっちがニラじゃない?」


「残念。逆ですね」



 えー結構難しい!間違えて食べたってニュースあったくらいだもんなぁ

 これは中々見分けがつかないなぁ?



「では、次です。どちらが食用キノコでしょうか?」

「あっ、こっちが食べれるキノコで、こっちが有毒キノコじゃない?なんか見たことあるっぽい」



「……アオイは【絶対に】一人で薬草とキノコ採取はしてはいけませんよ。いいですね?」



 にーっこり笑ってるけど、このキノコ達は?

 え?ポイしなさい?あっはい。どちらも毒だったのか。引っ掛けだったのか、ヒドイ。

 手も出せ?あっはい。手が浄化されてる…キレイにしてくれてありがとう。



「ごめんなさい……。依頼を受けるときはメジャーな薬草とかにするよ……」


 とりあえず、毒キノコは間違えて誰かが拾っても良くないので埋めておこう


「そうですね。でも、今日が初めてなのですから仕方がないですよ」



 美男子に頭をポンポンされるおばさん。シュールだ……そして切ない。

 


 ルーがサクッと採取した依頼品の入った薬草袋を持ち、トボトボと歩く。結局ルーがいないと依頼一つ出来ない自分に凹む


 自分はもっとちゃんとやれていたと思うのに。ルーがいるから悪いの?ううん、違う。

 ルーは出来ないものをフォローしてくれているだけだもの、悪いのは出来ない自分。

 計画も何もちゃんと立てないで行動した自分が悪いだけだ



「私ってこの世界では自活して生きてはいけないのかな……やだな」



 寄生するだけで、何も出来ない人族を受け入れてくれるところなんてあるのだろうか?

 そんなところあるわけないよね。この世界で自分を証明できるものが冒険者証しかないし、さらには冒険もしていないし。不審者もいいところだ。転生したのは間違いだったのかな……



 あぁ、なんか……目の前がボンヤリと霞む―――



「アオイっ!!!」

「―――!!?」


 え?なに!?

 ルーが突然 私の腕を掴み、自分の胸に引き寄せた。勢いで袋が転がり、せっかく集めた薬草もこぼれてしまった。



「え!?急に何?魔獣?魔獣が出たの!?」



 どこ?どこから来るの!?け、結界張る?ルー、心臓がバクバクいってじゃない!?そんなに強い魔獣なの!?



「ハッ…ハッ…ハァァ……いえ、、、何もなかったです。でも、もう薬草は十分な量を採取しておきましたので、ギルドに渡したら宿に戻ってお昼を食べましょう」


「え、もう戻るの?来たばかりなのに。もしかしてルー具合悪い?身体震えているし、呼吸が乱れてない!?私の世話ばかりしてるから疲れたんだよ!!早く帰って休もう?」


「そう、かも……しれません。今日はもう帰って休んでもいいですか?アオイもそばにいて下さいね」

「具合悪い人を放っておくわけないでしょ?今度は私がお世話をするよ」


「良かった……頼りにしてます」



 そのまま急ぎ足でギルドへ戻り、報酬を受け取って宿へ戻った。


 ルーは顔色が悪く、熱はないみたいだけど、何かに怯えているように不安気で、とても一人で置いておけるような様子ではなかった。

 

 ルーは原因に思い当たることがあるみたいなのに、言いたくないのか教えてはくれなかった。

 そして、トイレや着替え以外で私がそばを離れることを酷く嫌がる様子を見せた。まるで、母親に置いて行かれる子供のように、今にも泣きそうな表情をするのだ。


 こんな状態の彼は初めて見たから、事情は気になったものの、話したくない事なんて誰にでも一つや二つあると割り切ることにした。

 それでも時間と共に、私がそばにいて手を握っている間は、割と症状は落ち着きつつあった。

 ただ、食事も口に運べば食べてくれるものの、その間も私の服をぎゅっと握っていた。

 

 寝る時は当然、自分のベッドへと離れたけど……途端に彼が不安定な様子になるので、ベッドを二つくっつけて、手を握ったまま眠ることにした。



(明日には落ち着いているといいな……)



 いつも明るく元気な彼が、こんなにも不安定になるなんて……

 心配で、その日は中々寝付けなかった






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